怪物と言われた皇太子のメイドになります

決断

　あれから私が大怪我を負って二ヶ月が経過した。その間に殿下が現れることはなかった。
　「......殿下」
　私があんなことを言ってしまったから。だから殿下は......。
　「後悔してももう遅いよね?」
　更に一週間が経過した。
　コンコン
　「は、はい」
　「俺だ」
　「こ、皇帝陛下！？」
　なんで！？なんでこんな所に陛下が居るの?はっ！？
　「この国の希望そして光。皇帝陛下に精霊の加護がありますように」
　「うむ。マリアは此の宮を出て行くの
か?」
　「......え」
　「我が息子があんなことをしたんだ。出て行っても構わない」
　「......」
　出て行く。考えていなかった。ずっと此処で生きて行くって思ってた。でもそうだよね。殿下を深く傷付けたから......出て行けって言われても仕方ない。
　「もう少し......考えさせてください」
　「わかった。来週のこの時間にまた来る。悔いのないように選べ」
　「......はい」
　他の人から聞いた。私が大怪我をしたその夜。死ぬ寸前だったと......そして殿下はあれ以降外には出ていないと。
　「私は......どうしたいの?」
　此処を出て行くの?殿下とは会えないの?殿下の笑顔はもう二度と見れないの?
　「......」
　答えが出てこない。
　「はぁ......」
　気晴らしに庭園を散歩をしている。
　「......マリア?」
　「え?殿下......?」
　ダッ
　「ま、待って！？」
　「こ、こっちに来るな！」
　「殿下......」
　「俺は化け物だ！だから来るな！お前もどうせ内心俺が化け物だから見下せるとか思っていたんだろ?」
　「......」
　「俺のことなんてもうどうでもいいんだろ‼︎そうだろ?そう言えよ！」
　パチィッ
　「......っ！？」
　「何を言ってるの?私が殿下のことを内心化け物だって思っている?想像豊かね！それに見下してる?他のメイド達と同じにしないで‼︎」
　「......」
　「私はあの日、殿下に謝りたかった！あんなふうに突き放すつもりなんてなかった。それなのに......自分の秘密がばれて嫌だった。怖かった。殿下が私を嫌いになるんじゃないかって、不安だった」　　
　「俺はお前を嫌いになんてなれない‼︎」
　「だったら突き放さないで！私を見捨てないで！殿下のお側に居させて‼︎側に居たい......貴方のメイドで居たい」
　「マリア......」
　はっ！？
　正気に戻った。
　やばい。やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい。殿下を叩いちゃった。それにタメ口言いまくっちゃった。陛下に殺される！ひぃぃぃぃ‼︎
　「あ、あのす、すみま......」
　ギュッ
　「俺の側に居てくれるのか?もう俺を拒まないのか?」
　「......はい」
　殿下は思った。自分は大馬鹿者だと。マリアはどんな時でも真っ直ぐに向き合ってくれるのに自分は逃げてばかりだと。
　「俺の専属メイドなんだからもう俺に正直言っていいからな！」
　「わかり......ました?」
　「絶対に何処かに行くなよ?」
　「はい！必ず殿下のお側に居ます」
　今の私の正直な気持ち。
　そして来週
　「答えを聞かせてもらう」
　「はい。私は此処から出ていきたくありません！殿下のお側に居させてください」
　「それがお前の答えだな?」
　「はい」
　「いいだろう」
　「ありがとうございます‼︎」　　
　「しっかりと励みたまえ」
　「はい！」
　もう一度殿下の専属メイドとして頑張る！