上 下
17 / 145

覚醒

しおりを挟む
 「おい!ラティス‼︎とっとと目を覚ませ‼︎」
 「......」
 「ノワール?どうしたんだい?」
 「は?お前......気づいてないのか?」
 「なにが?」
 「ラティスの手足を縛れ......」
 「ど、どうしてそんなことしなっちゃいけなんだ!」
 「いいからやれ!」
 「ニーアス」
 ピク
 シュル
 「風?」
 「止まれえええええ‼︎」
 「え?」
 シュルルル
 「いひひ。ニーアスの魔法はもう私の物!あははは‼︎」
 「クソが!」
 「......」
 「ラティス‼︎僕達のことわからないの?」
 「何を言っても無駄だ。一度洗脳されれば、よっぽどの事がない限りは......元に戻らない」
 「なっ!?」
 「ラティスを止めるぞ」
 「うん!」
 私何をしているの?頭の中がぐちゃぐちゃでわからない。
 「キュゥキュウキュウ‼︎」
 「......マロン⁇」
 「なんで?なんで、マロンが此処に?」
 「キュ!」
 何を言っているのかわからない。いつもならわかるのに今はわからない。
 「キュウ!」
 「大魔法使い様。私と、ニーアスの魔法に耐えきれる?セリファ‼︎」
 「か、カマ!?」
 カキーン
 「聖騎士⁇うふふ。面白いわね!いひひ」
 「キュウ!」
 「マロン。私のなんだっけ⁇ニーアスなの?ラティスなの?もうわからないよ」
 「キュウウウウ」
 「マロン⁇」
 マロンの体からほのかに魔力を感じる。
 「キュゥキュウキュウ‼︎」
 「もしかして......マロンを取り込めってこと?」
 「キュッ‼︎」
 「いやだよ。マロンとまだ一緒に居たい‼︎」
 「キュウ!」
 「マロンが消えて無くなるなんて嫌だよ」
 「......こ、心はいつも一緒だよ」
 「ま、マロン⁇マロンが喋った⁇」
 「目に見えなくてもラティスとマロンはいつも一緒‼︎」
 「うっ......うえーん!マロン‼︎私もマロンといつも一緒‼︎」
 「ひとつになってもマロンは、ラティスを見守ってるよ」
 「......うん。マロン。今までありがとう。ずっと一緒に居てくれて......側に居てくれてありがとう!大好きだよ」
 「マロンもラティスが大好き‼︎」
 「......さようならマロン」
 眩しい光と共に洗脳されていた体が自分の意思で動ける。マロンとの別れは辛かったけど、マロンは消えない。私の中でずっと生き続ける。
 「あははは‼︎ニーアス。そろそろ殺せ‼︎」
 シュル
 「......っ‼︎」
 風の流れが変わった?
 「どうした?ノワール⁇」
 「ラティス‼︎お前は俺のこと信じているよな?」
 「そんな言葉に耳を貸す必要はない」
 「俺は、ラティスを信じる!俺達は仲間で友達なんだ!」
 ニヤリ
 「そんな言葉が、ニーアスに届くわけがない。いひひひひ‼︎さぁ、殺せ‼︎」
 「......アリアス。私は、ノワール達を信じる‼︎」
 「ラティス‼︎」
 「な、なんで?まさか......洗脳が解けたの?たった一言......あんな言葉如きに負けたの?」
 シュル
 「ノワール‼︎全力で魔法を私にぶつけて!」
 「で、でも......それじゃお前が......」
 「私は大丈夫だから!やって!」
 「どうなっても知らねぇぞ‼︎」
 ゴオオオオ
 炎か。ノワールの魔法は強い。でも今の私なら受け止められる。だって、マロンと一緒だから。  
 「受け取れ!」
 ボオオオオオオ
 「なっ!?」
 風で炎を飲み込みやがった!?ノワールはこの時察した。マロンとひとつなったことを......ノワールは理解した。
 「お、重い......」
 押し潰されそうだ。でもこれなら、アリアスに勝てる!そして、私は皮肉たっぷりに......。
 「アリアス皇女様に煌めく星々の祈りを捧げます」
 「くそおおおおおおおお‼︎」
 バーン
 「はぁはぁ‼︎」
 「つ、次は負けない......からね!」
 アリアスはふらつきながら居なくなった。
 「ラティス!?大丈夫か⁇」
 「う、うん」
 「たく......いきなり落ちてくるなよなぁ?」
 「......ごめん」
 「いや、別に謝ってほしいわけじゃねぇよ」
 ギュッ
 「ん?どうした⁇」
 「うっ......うぅぅ。ゔえぇぇーん!」
 「......ラティス。マロンを取り込んだんだな?」
 ノワールはそう言った。私は軽く頷いた。もうマロンと会えない。その寂しさはかなりのものだった。
 「うわあああん!マロン‼︎マロン‼︎」
 「いくらでも泣けばいい。俺は此処に居る。マロンみたいに消えてなくならない。だから安心しろ」
 「......うん」
 「......」
 私はしばらくの間号泣した。みっともなく泣いてしまう私をただ黙って受け止めてくれるノワール。静かに見守ってくれるラクス。それだけで、私の慰めになる。
 「ラティス⁇どうした?」
 「はぁはぁっ!」
 「いきなりど......凄い熱だ!?」
 「ラティス!?僕の癒し魔法で!」
 「何処か休める所は......」
 ずっと北に行っていたが、神獣の森は常に移動していることに気づいた。そして、南に来ていて、モールド家がある所まで来ていた。
 「ラティスの家に戻るぞ‼︎」
 「え?あっうん」
 ノワールは空を飛び、ラティスとラクスを浮かせ(ラティスは背負っている)急いで、ラティスの家に戻った。
 「旦那様お帰りなさいませ」 
 「今日の報告は?」
 「特にありません」
 「そうか......」
 ドンドンドン
 「なんだ?騒々しい」
 「だ、旦那様‼︎ら、ラティス様、ノワール様がお戻りになりました!後、知らない男の子も居ました」
 「な、なんだと!?」
 「しかし、ラティス様は相当の熱があるようです」
 「なに!?」
 ラティスの部屋
 「はぁーはぁーはぁはぁ」
 苦しい。
 「ラティス!?」
 「しっ!」
 「今、ようやく寝たところです」
 「何があったんだ?」
 「ラティスがその......神獣を体内に戻した事により魔力が急に跳ね上がり少し耐えきれなくなったのが原因です」
 「......ラティス」
 顔を赤くし、苦しそうに寝ているその姿を見て、自分に出来ることは何もないのか⁇そう思うほどにラティスは弱っていた。
 「早く元気になってくれ......」  
 全てをあげていいから、ラティスを元気にしてくれと願わずにはいられない公爵だった。
しおりを挟む

処理中です...