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仮面舞踏会

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 「ラティス。最後の仕上げをしよう」
 「ウリス。手加減なしでお願いね」
 「約束するよ」
 あれから約一年が経過して、私は今、最後の仕上げをしている真っ最中だ。
 「レイセリファを使うんだ」
 「レイセリファ‼︎」
 「この魔法をかき消してみるんだ」
 「はい!」
 シュル
 風と風のぶつかり合いになりしばらくはボォーという音を立てていたが、次第にウリスの方の風が弱まっていく。
 「君の勝ちだね」 
 「初めて勝った......」
 「よく頑張ったね」
 「ウリス。私の修行に付き合ってくれてありがとう」
 「うふふ。どういたしまして」
 「愛された子よ」
 「神様‼︎」
 「そろそろ地上に行くと良い。地上では仮面舞踏会をやっているようだ」
 「わかりました」
 正直言って、まだお父様達に会うのが怖い。またあんな事を言われたら立ち直れる自信がない。
 「ラティス。途中まで送るよ」
 「ありがとう」
 仮面舞踏会会場
 「ラティス。忘れ物」
 「あっ!仮面......」
 「ラティスなら大丈夫。君は強い。だから自信を持ちなさい」
 「......うん」
 テラス
 仮面を被っているからわからないよね?
 「ユーヤス.サン.アイ.サーンドル皇帝陛下入場」
 「アリアス.イン.ユーネス皇女様入場」
 「......」
 アリアス。貴方は何処まで、陛下を洗脳しているの?
 「今日は羽目を外して楽しむが良い」
 その合図とともに流れる音楽。そして踊る人々。私は、アリアスじっと見つめてしまった。前に比べると驚くほどにセリファの魔力が増えている。どうして⁇どうしてこうなったの?いつからこうなったの?私は最初からアリアスを嫌っていたわけじゃない。お姉ちゃんとして貴方を愛したかった。でも今の私では無理な話だ。あんな事されたんだもん。許せないよ。
 「そろそろいいかしらね?いひひひひ」
 「アリアス皇女様⁇」
 「出て来たらどう⁇ラティス.ハンル.モールド。いいえ。ニーアス.サン.アイ.サーンドル‼︎」
 「......っ!?」
 ざわざわ
 こんな所でばらすなんて......何を考えているの?
 「出て来なくてもいいわよ。その時は此処に居る人のセリファをいただくわ」
 「アリアス.イン.ユーネス‼︎私は貴方の思い通りにはならないわ!」
 「面白い事を言うのね?私のお父様を殺そうとして死刑になったくせによく言うわ」
 「本当にニーアス元皇女様なの?」
 「モールド家のご令嬢が?」
 「嘘よね?」
 「でもアリアス皇女様が嘘をつくとは考えにくい」
 吐きそうだ。あの時の事は今でも鮮明に覚えている。あんなの忘れられるわけがない。それでも......。
 「アリアス。気付いているんでしょ⁇本当は冤罪だって事を知っているんでしょ⁇」
 「いひひひひひ!えぇ、もちろんよ。でも死んだ事実は永久に未来永劫消える事はないわ」
 「冤罪だって!?」
 「嘘!?」
 「ニーアス元皇女様は悪くないってこと⁇」
 「陛下も見下げ落ちたな」
 「しっ!そんなこと言ったら殺されるわよ!」
 「でもそれが真実なら......」
 「早く死んでよ⁇」
 「簡単に殺せるなんて思わないで‼︎」
 「いいわよ。セリファ」
 風⁇
 ボオオオオオオ
 「くっ‼︎」
 「凄いでしょ⁇あんたよりも私の方が凄いのよ」
 「クスクス。あははは‼︎こんなんで凄いとか本気で言ってるの?」
 「は?」
 シュルルル
 「わ、私の風が......かき消された?ありえない」
 「現実よ」
 「絶対にぐちゃぐちゃにしてやるんだから‼︎」
 「そんなの出来るわけがない」
 私達は同時に同じ事を叫んだ。
 「先に倒れた方が負け‼︎」
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