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父と娘

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 「陛下はいつもそうですよね?」
 「は?」
 「いつも自分は悪くなくて、相手が悪いって思い込んで......自分の非を認めるのが怖い人‼︎」
 「なんだと......余が、非を認めるのが怖いと言うのか?」
 「そうですよ。貴方はずっと、立ち止まっているんですよ?皇后殿下が死んでからずっと、立ち止まっています‼︎」
 「そ、そんな事は......」
 「あるじゃないですか。貴方は約束だけは守る人です。皇后殿下以外に愛しているとは言わないとでも言ったんですよね?」
 「......っ‼︎」
 「でも愛の表現はひとつじゃない‼︎」
 「よ、余は......」  
 「アリアスもニーアスも本当は愛していたんじゃないんですか⁇違いますか?」
 「そんな事は永遠訪れるわけなかろ!」
 「これ以上は、僕も見過ごすわけにはいかないよ」
 「う、ウリス!?」
 「お前来るのが遅いぞ」
 「何処から湧いた?」 
 「んなのはいいんだよ‼︎」
 「ごめんね。神様に許可を貰うのに時間かかっちゃった」
 「ウリス.ロンド.マーチング!?神に等しい存在......何故こんな所に⁇」 
 「僕の役目は愛された子達を守ること。たとえ誰であっても傷付けるものは許されない」
 「余が悪いとでも言いたそうだな?」
 「悪いと思うよ?僕はね、愛された子を傷付ける奴が一番嫌いなんだよ」
 冷たくは笑うウリスはまるで、別人ようだった。
 「皇帝陛下には死んでもらうよ」
 「そんなの駄目だよ!?」
 「ラティス、君は少し黙ってくれるかなぁ?」
 ウリスが、私に対してこんなふうに言ったのはあったかなぁ⁇とても冷たくて、ウリスがウリスじゃないみたい。まるで、陛下とウリスの所だけ凍り付いたかの様にとても冷たかった。
 「余を殺す?面白い事を言うな?余を殺せるなどとほざいていられるのも今のうちだ」
 「君は、愛された子を殺した。だから僕は、皇帝陛下を八つ裂きにしたいって、ずっと思っていたんだ。やっと夢が叶うよ」
 「......余は手を出しておらんぞ⁇」
 「殺したも同然の奴が何を言っているのかなぁ?」
 「余が其方を殺してやろう」 
 「その前に僕が殺すよ」 
 何もしなくていいの?何も出来ないの⁇ただ黙って、陛下が殺されるところを見ないといけないの⁇
 「お、お父様......」
 「アリアスよ。余の汚点は其方だったわけだ」
 「......」  
 静かに泣く、アリアスを見ているとかつての自分を思い出す。
 「じゃあ行くよ」
 「ぐはっ!?」
 「息巻いていた割には弱いんだね?君、本当に皇帝なの?皇帝がそんなに弱いのは駄目なんじゃないのか?」
 「お父様!?」
 「あガッ!」
 「......」
 「次で最後だよ」
 グサッ
 「......」
 「ラティス!?」
 「だ、駄目だよ......こんな事したら貴方も陛下と同じで、駄目になる」
 「ウリス‼︎テメェー‼︎なに、ラティスを傷付けているんだよ‼︎」
 どういう事だ?ラティスがあんなに早く動けるはずがない。ラティスのスピードは一年間ずっと見ていたからわかる。なのにあのスピードはなんだ?
 「はぁはぁ......うっ‼︎」
 「ラティス‼︎大丈夫⁇」
 「この状況で大丈夫なんて言えないよ」
 「ごめんなさい‼︎私が......私がお父様を守るべきだったのに......私、何も出来なくて......」 
 「大丈夫だよ。アリアスは悪くない。悪いのは、ウリス、陛下の二人だよ」
 「......」
 どんな理由があろうと、人を殺していい理由にはならない。何も出来なくても弱くても誰一人として死んで欲しくはない。そう強く思った。
 
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