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運命に逆らう者達その1

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 「さぁ、アリアス。この手で世界を終わらせなさい」
 「......」
 「こんな腐った世界なんていらない。もうノルも大切に思う人達も居ない。私をこんなにしたのはあいつらなんだから」
 「いひひ......」
 何がしたいの?自分は何者なの?人間?それとも化け物?名前すらもう思い出せない。でもひとつだけずっと心の奥底で叫び続けている名前がある。ラティス。その言葉だけが頭の中に響く。
 「......アリアスは神の力に耐えられるはずよ。まぁ耐えられなければラティスを利用すればいい」
 あの子も簡単に神の力に落ちる。洗脳には逆らえない。アリアスで証明された。打ち破るなんて出来っこない。
 その頃ニーアスは
 「ノワール‼︎」
 「わっ!?て、お前はラティスの前世の......」
 「ニーアスだよ」
 「お、おう。それで俺に何の用だ?」
 「アリアスがルークに洗脳された!このままじゃの世界が壊れる!」
 「は⁇はあ!?」
 「ルークの洗脳はアリアスよりも遥かに強い。このままだとこの世界もアリアスもラティスも失うことになる」
 「......」
 「そ、その話は本当なの⁇」
 「ラティス!?」
 「はぁはぁ......アリアスが洗脳されたって......アリアスには洗脳は効かないはずでしょ?」
 「そのはずだったけど、奥底に眠る想いが利用されたと思う」
 「奥底に眠る想い⁇」
 「うん。アリアスは私に......本物のニーアスに帰って来て欲しいのよ」
 「......」
 「どんなに悔やんでももうこの世にはニーアスは存在しない。私はセリファと願いの力で存在しているただのならず者。本当はこんな状態が続いたら人々を殺す存在になるはずなんだけど、ラティスが願った力で止められているの」
 「......」
 「貴方のお母様は別の存在ね。いわば霊体、幽霊的な存在ね。セリファになるってそういう事なの」
 「アリアスは元に戻せるの?」
 「......わからない」
 「アリアスはどうなるの?」
 「このまま魔法を使い続ければ確実には死が待っている。たとえ死ななくても死んだ方がマシなぐらい激痛と精神の崩壊が始まるわ」
 「助ける方法は!?」
 「ひとつだけある」
 「それは何⁇」
 「ノワールがやった方法だよ。自分の気持ちをぶつけるとか心の中に入るとかそんな感じ......でもあの時はマロンが居たから」
 「マロン?」
 「そっか。ラティスは覚えてないのね?マロンは神獣よ。貴方のね。ベールも貴方の神獣とは言わなくてもそれに近い存在」
 「マロンって私の中に居るの?」
 「多分そうだけど⁇」
 存在が消えていなければまだマロンはラティスの中に居る。だけど、マロンとラティスを今引き離すのは危険。もしマロンを引き離したらラティスの魔力が暴走する恐れがある。それを伝えたところでラティスはきっとマロンを自分の中から引き離すに決まってる。自分が傷付くのはいい。でも大切な人は傷付けたくないって考えの人だから。
 「私がアリアスを説得する。たとえそれが命を落とすことなろうと必ずアリアスは私が止める!」
 「......ラティス」
 もう何を言っても遅い。どうか誰も傷付かないで。どうか死なないで。お願い。
 そう願わずにはいられないニーアスなのであった。
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