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陛下の最後

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 「其方に......初め会った時誓ったのだ。ニーアスを守り抜くと......なのに余はニーアスを守るどころか傷付けてしまった。アリアスも守られはならぬ存在だったのに......」
 「......お父様」
 「余は過ちを犯し続けた。其方達を傷付けて罪滅ぼしもせんかった」
 「そんな事は!」
 「アリアスはどんな時でも余の側に居ったな。嬉しかった」
 「......」
 「皇妃と育てた娘を自らの手で死に追いやった事は今でも後悔している」
 「それはお父様のせいではありません!私が洗脳なんてしたから......だからニーアスお姉様は死んだんです。だからお父様が気に病むことなんてありません」
 「そんな事はない。アリアスよ。其方のせいではないのだ。いつからかニーアスを邪険にしておったのかもしれん」
 「......」
 そう。陛下が過ちに気付けなくなったのはきっと皇妃殿下が亡くなった時だと思う。
 「其方を育てるに合ったって余は良く知らんかった。ニーアスがこんなにも聡明なことに......」
 「ありがたき言葉です」
 違う。私が言いたい事はそんなことじゃない!でもなんて言えばいいの?もう陛下の命はあとほんのわずか。喋れていること事態おかしなことよ。
 「アリアス。其方に皇帝陛下の跡を継いでほしいのだ」
 「私は......皇帝の座よりも貴方に......お父様に生きててほしい」
 「すまぬ。それは無理な話だ。其方に継いでほしいのだ。其方なら必ず立派な皇帝になれる。そう信じておるぞ」
 「お父様‼︎私は!私は......お父様が大好きでずっとお側に居られると思っていました。いつかはお別れが来るとしてももっと先の話だと思っていました。なのにこんなのってあんまりですよ!うわああん!」
 堪えきれずに泣くアリアスをそっと引き寄せた。
 「アリアス。気持ちはわかるけど......お父様をもう休ませてあげましょう」
 もう助からない。ウリスの力さえ及ばない。だからせめて安らかに眠ってほしい。それが私に出来る最後の陛下への願い。
「アリアス......ニーアス......余は本当に其方達を......心から......愛......して......おる」
 「お父様⁇」
 「......」
 「ねぇ?返事をしてください。タチが悪いですよ?冗談はやめてください!?」
 私はそっとアリアスの肩に手を乗せた。
 「ラティス⁇」
 「......」
 「嘘よね?嘘って言ってよ?こんなにもあっさりと......こんなにも簡単に殺されるはずがない。お父様は誰よりも強くて聡明で......私の自慢な......お父様で......それで......それで......ううぅ。ゔわあああああん!」
 「うぅ......」
 「そんな死に方ってないよ!ルーク.ハート絶対に許さない‼︎洗脳して地獄よりももっと辛い痛みを与えてやる!」
 「......アリアス。憎しみに囚われないで」
 「ラティス?何を言っているの?ルークを倒すことが私達の目的でしょ?」
 「......そんなのは目的でもなんでもない。違うから」
 「なんでそんなこと言うの?私、皇帝になる。なってルークを徹底的に追い詰める!」
 「そんなことしたら!?」
 「そんなことをしたら何?私がルークと同じ駄目になるとでも言いたいの?」
 「......」
 「図星なんだ?ねぇ、ラティス⁇貴方何が出来るの?」
 「え......」
 「記憶もない。戦う力があっても以前のようには動けない。誰かの悲しみを前のように取り払うことも出来ない。そんな状態で私のことをとやかく言わないで!」
 ダッ
 「アリアス!?」
 アリアスを怒らせてしまった。そうだよね?陛下が殺されたんだもん。あんな言い方したら怒るよね?でも憎しみに囚われた人間を私は知っている。私も一度囚われそうになった。陛下の愛を独り占めする貴方に......。
 「ラティス。お前のせいじゃない。だから気にするな......とは言わない。だが、あんま気に病むな」
 「......うん」
 「アリアス皇女様は俺達がなんとか説得する。だからラティスは少し休みなさい」
 「......はい」
 「僕が送り届けるよ。ラティスは僕の妹だからね」
 「......」
 「あれ?僕だけ反応なし?それは悲しいな」
 少しは空気を読んで!送り届けてくれるのはありがたいけど‼︎今はそんな気分じゃないの!とは言えない。言ったら絶対に公子が傷付く。
 「僕の力が足りないばかりに君達を傷付けてごめんね」
 「......別にウリスのせいじゃない。だからウリスもあまり自分を責めないでね」
 「そうだね」
 「ねぇー。僕だけ反応がないのは悲しいよ!」
 「......ありがとう」
 「え?ありがとう⁇あっ!送り届けてくれるのが?いいよ。僕は兄だからね!」
 マジで空気読めないな?
 そう思ったラティスなのであった。
 
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