引き篭もり姫

上野佐栁

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引き篭もり姫

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 私の名前はフェリーナ.キララ.ラ.アムールだ。この国唯一の姫であり未来の皇帝陛下になるかもしれない。

 なぜ疑問形かというと私はここ十年引き篭もっているからだ。私は五歳を最後に外には一歩も出ていない。それどころか部屋の外さえも出ていない。

 「私はこの部屋に引き篭もって十年......そろそろ外に出なければ......」

 そう思いつつ怖くなり外には出れないでいる。

 「少し寝ましょう」
 
 私の趣味は読書と絵とお昼寝だ。特にお昼寝は大好きでいつもすぐに寝てしまう。

 「すぅーすぅー」

 「フェリーナ!僕ねぇ。大きくなったら君と結婚するんだ」

 「私と結婚?」

 「うん!だからそれまで待ってって」

 「うん‼︎」

 あの日約束した王子様はどこに居るのだろうか⁇昔聞いた話だと他国の第三王子だと聞いた。髪が金髪で目は優しい葉の色。あのお方はとても可愛かった。そんな記憶がある。

 「......」

 あの日の約束をしたすぐ後に私は外に出れなくなってしまった。理由はわからない。なぜなら覚えていないのだから。

 「......またこの夢?」

 いつも見る夢は名も知らない王子。

 「いつかまた会えるのでしょうか?」

 自分の気持ちに正直にこの想いを伝えることができるのだろうか⁇

 ドンドンドン

 「......どなたですか⁇」

 「私だ。フェリーナ。ここを開けなさい」

 「......はい。お父様」

 ガチャ

 「今日もこの部屋から一歩も出ていないのか?」

 「申し訳ございません」

 「いやいい。だが、そろそろ社交界デビューをしなさい」

 「え......」
 
 「お前はもう何年も遅れている。これ以上は先延ばしはしない。明後日の私の誕生にパーティーが開かれる。だから出席しなさい」

 「はい。わかりました......」

 「ではまた後日に」

 「はい......」

 そして明後日

 「......」

 「フェリーナ姫様⁇顔色が悪いですが大丈夫ですか?」

 「......」

 「フェリーナ姫様⁇」

 ガタガタブルブル

 「......」

 凄まじく怯えている。姫様はもう何年も人と会話などしていない。だから怖いのだろう?

 「フェリーナ。私が付いている。だから安心したまえ」

 「は、はい」

 ガチャ

 「プロンセス.キララ.ラ.アムール皇帝陛下ご入場‼︎」

 「うわー!皇帝陛下万歳‼︎」

 「えっ⁉︎」

 「ごほん!」

 「し、失礼ました」

 「フェリーナ.キララ.ラ.アムール姫様ご入場‼︎」

 「え?フェリーナ姫様っていつも部屋に引き篭もりの姫様?」

 「そのお方が外に出て来られた⁉︎」

 「嘘!私たちは姫様を直接見られるのね?」

 「嬉しいわ!」

 「......」

 ガタガタブルブル

 無理無理無理‼︎もう帰りたい。

 コツコツ

 「突然で申し訳ありませんが、フェリーナ.キララ.ラ.アムール姫様。僕と一曲踊ってくれませんか⁇」

 「......」

 金髪に緑色の瞳?

 「......すみません。お断りします」

 「え......」

 私はあの方しか踊りたくない。てか、人間が怖い‼︎

 私の人間不信はいつ治るのでしょうか?

 そう思わずにはいられないフェリーナなのであった。
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