引き篭もり姫

上野佐栁

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再会

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 「僕と一曲踊ってくれませんか⁇」

 「すみません。お断りします」

 「ど、どうしてでしょうか?」

 「名も知らない相手と踊る気はありません」

 「......」

 姫らしくちゃんと喋らなきゃ。ハキハキと喋り目を背けない。でも怖い!

 「失礼いたしまた。僕はアルムース王国の第三王子。アッミンド.クリム.ラージュ.カーリムと申します」

 「私は......フェリーナ.キララ.ラ.アムールと申します。以後お見知り置きをお願いいたします」

 「では一曲踊ってくれませんか⁇」

 「ごめんなさい。私は誰とも踊る気はありません」

 「そうですか......では僕はこの辺で失礼します」

 「......」

 「フェリーナ⁇顔色が先ほどよりも悪いが大丈夫か⁇」

 「......はい」

 やはり私は人と関わるのは苦手でまだどこかで恐怖心がある。小さい頃の記憶を思い出そうとすればするほど怖くなる。なんでだろう?わからない。

 「少し疲れたのでテラスで休んでいます」

 「ひとりで大丈夫か⁇」

 「はい。私を狙う人など居ませんから」

 「......」

 「ではお父様。ごきげんよう」

 コツコツ

 「......」

 頭が痛い。人が多い。誰も居ないあの空間に戻りたい。

 コツコツコツ

 「......」

 私はただあの部屋から出られなくなった日から人との関わりを絶ったつもりだった。でもまだ誰かと仲良くする機会があるのでしょうか?それは私にもわからない。

 シュー

 「夜風が気持ちいい」

 「......フェリーナ」

 「どなたですか⁇」

 「僕のこと覚えていないの?」

 「......」

 金髪に優しい葉の色の瞳。

 「......まさか」

 「ああ。僕だよ。フェリーナ」

 「ど、どうして?どうしてここにいるのですか?」

 「君に会いに来たんだ」

 「......」

 「君は変わらないね?」

 「え......」

 「美しいままだ。あの日僕の目に焼きついた景色が今でも目に見えるよ」

 「......」
 
 ズキッ

 「フェリーナ⁇」

 「なんでもありません。ですが、少し休みたいのでひとりにしてください」
  
 「わかったよ」

 「またお会いできて嬉しいです」

 「僕もだよ。じゃあまたね」

 「はい......」

 この違和感は何?確かに容姿は同じ。でも私が変わっていない?そんなはずがない。私は人間不信になってしまった。昔はそれなりに活発だったと思う。お父様にももう少しおとなしくしていなさいって言われていた。

 「あの人は一体どなたなのですか?」

 「やあー!アッミンド」

 「......グルーム兄上」

 「君のお姫様可愛かったよ」

 「会ったのか⁉︎」

 「うん。僕が君のふりをしたらあっさりと騙されたよ。可哀想な子だ」

 ガシッ

 「フェリーナに何を言った‼︎」

 「ただまた会いたいなって話をしただけだよ」

 「グルーム兄上!もしフェリーナに手を出したら僕は許さない」

 「クスクス。そんなふうに言われると欲しくなっちゃうな?」

 「絶対に手を出させない」

 「......」

 「僕はフェリーナに会うためにここまで来たんだ。それを兄上なんかに渡すもんか‼︎」

 「わかった。わかった。今はおとなしくしているよ。でもそのうち奪いに行くよ。あの子は騙されやすいようだしね」

 「......」

 「じゃあまたね」

 ゴン

 「くそ!油断した。兄上がフェリーナを狙うなんて......僕が守ってみせる」

 「フェリーナ。そろそろ帰るぞ」

 「はい。お父様」

 「今日はどうだった」

 「はい。懐かしい人にお会いした気がします」

 「懐かしい人?」

 「はい。私の名前を知っていたのですが......少し違和感を感じたのです」

 「......」

 「アッミンド王子様の方がなんだか懐かしい感じがしました。もし叶うのならもう一度お会いしたいかもです」

 「そうか。ならよかった」

 そう言いつつ。陛下の内心は許さない。そんな怒りの感情で埋め尽くされていることをアッミンド王子は知らない。
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