悪党の執着心を舐めてた

上野佐栁

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20話

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 私は人生の中で一番後悔した時はそう今この瞬間だ。

 アデルから仮契約をしないかと言われた時すぐに断ればよかった。

 だって、アデルが私のそばを片時も離れずに引っ付いてくるなんて誰が予想できるの?

 たしかに四六時中とは言われたけど、ずっとじゃないって言ってたのにこの三週間どこに行くにもアデルがついてくるよ!!!!!!!

 「あのねぇ?アデル。私はひとりになりたいの⁇」

 私がひとりになりたいと頼み込んでみるが、アデルは決して首を立てには振らなかった。

 「だめよ。いつなにが起きるかわからないわ。それにあなたの身近にいる人たちも気をつけなきゃ!」

 アデルの警戒心はほんとに野生そのものだ。

 それが私のストレスになっているんだけどね。

 「アデル。すぐそこに散歩行くだけだからだめ?」

 アデルは私を睨みつけてため息をついた。

 「何度言えばわかるのかしら⁇いつどこで襲われてもおかしくない立場にいることをわかってちょうだい」

 アデルはピッタリと私にくっつきステラやルーン、侯爵様でも威嚇する始末だ。

 数日後のある日

 私はふと疑問に思ったことをアデルに言った。

 「そういえば私って仮契約に同意してないよね?」

 そう言うと、アデルはクスクスと笑いながら答えた。

 「ルディが否定しなかった時点で成立しているのよ?」

 「……」

 私は机に顔をつけて自分の浅はかさを恨んだ。

 最悪だ。なんでよりによってあの時にすぐに否定しなかったんだろ?

 アデルにはマジで本当に申し訳ないけど、鬱陶しいしひとりの時間が欲しい。

 「はぁぁー」

 私は大きなため息をつき今日もアディが私のそばから離れなかった。

 深夜

 「すぅーすぅー」

 「……」

 ルディはひとりになりたいお年頃かもしれないけど、今だけはだめ。

 「今はあなたの力を狙った奴らがうろついているのよ」

 そう。決して手に入らない天使格を狙ってね。

 「私たち異世界人はこの世界にやって来る時にそれぞれ力を分け与えられると同時に天使になる資格が得られる」

 そうしなければこの世界では十年も経たずに死んでしまうから。

 「ルディが早く天使になるって言ってくれなきゃ早死決定よ」

 「……」

 えっ?私死ぬの⁉︎

 実は起きてたルディちゃん。

 待って待って待って⁉︎情報力が多いよ。天使にならないと十年も持たずに死ぬの?

 考えてなかった。ルディと同じ道を辿らないために必死に未来を変えているのに天使にならないと死ぬってあの時言えよ!

 そう心の中で叫んだルディなのであった。

 「アデルはどこに行きやがった!!!!!!!」

 「もう数週間帰ってないね?」

 「あの馬鹿やろう。絶対にルディに干渉しまくってるな!!!!!!!」

 大正解

 「もう。ルディちゃんをこっちに引き込むのはいいけど、天使になるには同意が必要なんだから」

 「まぁそのために手段を選んではいられない。だからこそ死の直面に立たされれば天使になるはずだ」

 アデルは本当に私を守ってくれているとわかるのはまだ先のお話。

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