女魔導師はギルドに入ります

上野佐栁

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初ギルド

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 「はぁはぁ……」
 
 燦々と降る雪の中で、私は不思議な男の子に出会った。今年で十一か十二歳だろう?その男の子が私を見つめ何をしているのと聞く。

 私は答える。ここはどこなのか?そして、私は何者なのかを聞く。

 男の子はかなり不思議そうな顔をしながら私の手を取りとある建物に連れて行く。
 
 「じっちゃん!」
  
 そう男の子が呼ぶと奥から背丈の低い老人が出て来て男の子の頭を軽く叩く。

 「こらっ!マスターと呼べ」
  
 老人はそう言った。私は何がなんだがわからなかった。
 
 「ん?この小娘はなんじゃ?今年で十一か十二歳ぐらいに見えるぞ?」

 そう老人が言うと、男の子は私の代わりに説明をしてくれた。
  
 「それがよぉー。記憶がないんだって。ここがどこなのか自分が何者かも覚えてねぇんだって。それに頭から血を流しているのに表情ひとつ変えねぇーんだぜぇ?変わったやつだよなぁ?」
 
 男の子がそう言うと、また老人かはさっきよりも強めに男の子の頭を叩く。
 
 「イテッ!」
  
 本当に痛んだろう。目からは大粒の涙がポロポロと溢れ出している。
  
 「なぜ手当をせんかった?まずは手当が先じゃろ?」
  
 そう怒った口調で老人は言う。

 「あんな雪山で血を流しながら自分は誰かって聞いたらじっちゃんしかいないだろ?」   
 
 そうぼやきながら男の子は言った。

 その言葉を最後に私の意識は途絶えた。

 ドサッ

 「えっ?」

 「はっ?」

 暗闇の中で、私の名を呼ぶ声が聞こえる。だけどそれはとても怖くて自分が自分ではなくなるような感覚だ。

 「ルー……ルーシェル‼︎」

 私の名前はルーシェル⁇本当にそれが私の名前?私は一体何をしていたんだろう⁇何も思い出せないけど、何かとても重要なことをしていた気がする。誰かに何かを頼まれていた気がする。だけどそれすらももう思い出せない。

 「おーい。いい加減に起きろよ?」
  
 誰の声?ううん。この声ってあの男の子の声だ。

 彼の声に導かれるように意識が戻る。

 「……」

 「あっ!起きた」

 私がそっと目を開けると、男の子は私の顔を覗き込みさっきの老人を呼びに行った。

 「ここは……」
  
 そっか。私は男の子に連れられて知らない建物に入って気を失ったんだ。

 「おっ!目を覚ましたなぁ?」

 そう言いながら入ってくる。

 「……」

 「お前なぁ、こうゆー時はありがとうだろ?」
  
 そう男の子が言った。そしてお決まりのように男の子の頭を殴る。

 ゴンッ

 「いてぇーよ!」

 そうぼやきながら老人のそばを離れる。

 「お前さんはせっかちだ。今この状況も飲み込んでおらん少女に礼を無理強いしおって……馬鹿じゃなぁ」
  
 そう言った老人に腹を立てたのか何かを怒鳴り散らしていた。

 「さぁてと」

 近くにあった椅子を私が寝ているベットの横に置き、老人は私にいつかの質問をした。

 「お前さん。名前はわかるか?」
  
 「……ルーシェル」

 その名が本当に合ってるのかはわからない。だけど、その名前が私の名前のような気がした。

 「ルーシェルか。いい名前じゃなあ。わしはここのギルドのマスター、ギールーだ。そして、隅っこで頭を埋めているあやつはパーシェル.クックケールだ。あやつはああ見えてもドラゴンマスターじゃ」

 ドラゴンマスター⁇その名に聞き覚えある。確か……。

 「ゔぅっ!」

 「だ、大丈夫か⁉︎」

 私が何かを思い出そうとしたけど何思い出せなかった。余計に頭が痛くなるだけだった。
  
 「ルーシェルよ。お前はどこから来たのかわかるか?お前さんの能力は?」

 そうなおも質問する老人……いや、マスター。

 「わかりません。でも能力は多分、回復と炎、水、光属性の魔法系だと思います」

 私がそう答えるとマスターは一言こう言った。

 「そうか」

 これ以上の質問はされなかった。きっと、私のことを気遣ったのだろう。

 私には記憶がない。だから今は何も聞かずに戻るまで待ってくれるのだろ。

 「なぁなぁ。ルーシェルはなんでこんなに無表情なの?」

 「……⁇」

 何を言ってるのかわからない。私はかなり動揺していたが、それが顔に出ないだけだと思う。

 これから私はどうなるんだろ?

 そう思いながら私はギルドに身を寄せた。

 「ルーシェルの行方は?」

 「わかりません」
  
 「困ったぞ」

 「ルーシェルのあの力を我々ではない違うやつらに使われたら厄介だ」
  
 「あの子の両親を殺してまで手に入れたやつだ」

 「ああ、必ず連れ戻そう」

 私はまだ知らない。私を巡った戦いのせいで大勢の人が犠牲になるなんて、今の私は知る由もなかった。
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