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ギルダーク

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 私はあの地獄のような書類の山を全部に目を通しサインをして正式なギルドメンバーになった。

 「ルーシェルが正式にフェザーの仲間になったことにかんぱーい‼︎」

 そんなが一斉にその言葉を口にする。私がフェザーに入ると、パーシェルがお祝いだと言って、ギルドのみんなを集めて歓迎パーティーを開いてくれた。

 「しっかりしよぉー。ルーシェルはもうちょい嬉しそうな顔できんのかよ?」

 そうパーシェルに言われてしまった。

 「普通に嬉しいよ?」
  
 スン

 私は笑っているつもりだが、みんなから見ると、私は真顔のままらしい。

 そのあとみんなとワイワイ歓迎パーティーをしてお開きになりかけた頃、一人の男性がギルドに入って来た。

 「ふーん。ここも辺鄙なところだと思ってたが、案外広いんだなぁ⁇」

 「誰だ?」

 その男性は熊のように大きく顔にいくつもの傷がある。

 「……」

 ドクンドクン

 身体中がその男性を拒絶している?初め会ったはずのその男性を私は知っている?誰なの?思い出せない。

 「お前さんはどこから来たのかのう?ギルドに入りたいんじゃったら明日にしておくれよ」

 そうマスターが言ったが、マスターの言葉など無視をして、私の方を見るなりこう言った。

 「ルーシェル早くしろ。帰るぞ」

 「えっ……」

 私の名前を知っている。やっぱりこの人どこかで……。

 「ん?ルーシェルの知り合いか?おっちゃん。迎えに来るのはいいけどさぁ、時間を考えろよなぁ?」

 そうパーシェルが言った。

 「テメェに用なんぞねぇーんだよ。ばーか」

 「んだと⁉︎」

 馬鹿にされたことに腹を立てるパーシェル

 「あ……ああ、ああああっ!」

 心が警告している。こいつから逃げろって警告している。

 「何をしている。ルーシェル早くこっちに来い」

 「はぁはぁっはっはっはぁっはぁはぁっ‼︎」

 息が荒くなる。うまく呼吸ができない。

 「ルーシェル⁇」

 今私はどんな顔をしているの?いつもみたいに真顔なの?わからない。

 「チッ!早く来いって言ってんだろがよお!!!!!!!」

 その怒鳴り声はまるで、私の五感を全て支配するかのように大きくとても怖いものだ。

 「……っ」

 声が出ない。さっきから声を出せない。助けって言えない。

 「これ以上ぐだぐだしていると前みたいにやるぞ?」

 前?前みたいに?パーシェルと初めて会った時に怪我していたのはこいつのせいなの?

 「早く来いよ」

 「あ……」

 「ルーシェルはフェザーの仲間だ。テメェみたいなやつに渡すもんか」
  
 パーシェルが私の手を取り私を後ろの方へと引っ張る。

 「……っ!」

 「なんのつもりだ?」

 不機嫌そうにそう言う。

 「名前すら名乗らないやつが、ルーシェルを連れて行く?そんなのさせるかよ!」

 私はこのギルドにいたい。だって、みんなが私を歓迎してくれた。私を暖かく迎えてくれた。こんな怖くて冷たい人の元になんか帰りたくない。

 「……らない」

 「は?なんて言った?」
  
 ものすごく不機嫌な顔で今にも殴りかかりそうな勢いで言う。

 「帰ら、ない‼︎帰りたくない‼︎」

 私の言葉にみんなが応えてくれる。

 「おおー!あんな不審者の元に帰る必要なんてない」

 「そうだそうだ!」

 「ギルドの子はわしの子供、孫同然じゃ。だから渡さん」

 「チッ!めんどくせぇなぁ!」

 そう言って、男性は手を大きく振り上げてた。

 「名前だっけ⁇俺はなぁ、ギルダークだ。覚えておけよ?」

 その名前にどこか聞き覚えがある。でもこいつは危険だ。みんなを守りたい。守らなきゃ。

 消えた記憶の中から誰かを守りたいと強く思う力が湧いて来る。

 私は気配を消し一度ギルドの外に出て、ギルダークの背後に回った。

 「俺の魔法は身体強化だ!つまり無限語でも発動させるんだよ!」

 そう言って、このギルドの窓を叩き割る。

 パキーン

 「て、テメェ⁉︎俺らのギルドを壊すんじゃねぇよ!!!!!!!」

 「ふん!だからなんだよ?」

 そう鼻高々に笑いさらにいくつもの備品を壊す。

 「無言語なら私にだってできる!」
  
 「な、なっ⁉︎」

 いつの間にこいつは背後に回った?気配を消していた?こんなやつらに気にかけなければ気づけた。

 「ブースト‼︎」

 そう言って、全身の体を強化するギルダーク

 「無言語は誰にでもできるわけではないけれど、それはひとりきりじゃない」
  
 無言語は覚えてしまえば簡単にできる魔法。つまり一度やり方さえわかれば誰にだって使えるのだ。

 「舐めるなよ!このクソガキが!」

 そう言って、私をお腹を殴る。

 「ぐっ!」

 ギルダークのパンチは肋をいくつか折り内臓が裂けるような感覚があった。だけど、ギルダークはひとつ選択ミスを犯した。なぜなら

 「あなたの相手は私じゃない」

 「は?何言っ……」

 そう言いかけたが、背後からパーシェルとガーディが攻撃を仕掛けて来た。

 「ドラゴンの息吹!」

 「リーフブレード‼︎」

 二人の攻撃はギルダークに当たりギルダークは地面に叩きつけられる。

 「ガハッ!」

 「や、やったか?」

 そうパーシェルが言った。

 「ぐふふ。グハハハ‼︎いい技だ」

 そう笑いながら何事もなかったかのように起き上がり二人を吹き飛ばす。

 「ガッ!」
  
 「グガッ!」

 ドーン

 「ぱ、パーシェル⁉︎ガーディ⁉︎」
  
 ズキッ

 「いっ!」

 駄目だ。痛くて立てない。

 「残念だったなぁ?テメェの攻撃なんてし痛くも痒くもねぇーんだわ」

 そう言って、ギルドの半分を崩壊させた。

 「ぎ、ギルドが……」

 「貴様!!!!!!!」

 サンデアが怒り空中から薙刀を取り出す。

 ギルダークがサンデアに攻撃を仕掛けるところまでは覚えているがそれで、私に意識は途絶えた。
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