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ゲームの管理人

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 前回のあらすじ。私は兄、カルテにより叔母宅を脱出!そして母親のソフィアに優しく抱きしめられて、ことの顛末を説明したまではよかったのだが……。

 「リリス!止めないでちょうだい‼︎」

 「お、お母様!だめだよ。殴り込みはだめ!絶対‼︎」

 私とカルテは必死に母にしがみついて、屋敷の外へと出さないようにしている。

 ちなみに私はリリスは五歳で、カルテは八歳だ。

 「母上。証拠もなしに何をするつもりですか?」

 そうカルテが尋ねると恐ろしい形相でこう答えた。

 「そんなの決まっているわ。リリスにしたようにお義姉様ビンタを食らわせてやるのよ‼︎」

 そう言い、また外へと出ようとするソフィアを必死に止めた。

 「お母様!お願い。私は大丈夫だから。だから私のそばを離れないでよ」

 「えっ?」

 ピタッと動きを止めて私の方へと向き直す。

 「え、えっと、その、私はお母様と一緒にご、ご飯を食べたいです」

 なぜ!今それを言うの?今言うことなの?私の大馬鹿!

 「リリス……なんて可愛らしいのかしら‼︎」

 「はあ?」

 いきなり明るい表情になり私とカルテの手を取り食堂へと足を運ぶ。

 なんとかなったの?この人はもしかして単純⁉︎

 「あっ!」
  
 いきなりソフィアが声を上げて、私たちにこう言った。

 「ご飯を食べる前に神殿に寄らなきゃだわ」

 「えっ?神殿?」

 私がそう尋ねると、ソフィアは少し不安そうな顔をしながらこう言った。

 「えぇ、この後神に祈りを捧げるのよ。それがこの国の掟よ」

 そう言い、私とカルテを神殿に連れて行った。

 「足が痛い」

 さっきまで、ソフィアに屋敷の中をぐるぐると連れ回された人。

 「リリスの頬の傷もすぐに良くなるわ」

 ソフィアはそう明るい声で言ってるけど、目は笑っていない。

 「……」

 何があるの?ソフィアが死んだ原因も神殿にあるのかしら⁇

 ゲームの内容を思い出せ。

 神殿

 私たちは馬車を降り神に祈りを捧げるために中に入った途端に知らない女性が私を強引に引っ張り別の部屋に連れてかれた。

 「り、リリス⁉︎」

 ガチャ

 「あ、あなたはどなたですか?」

 そう尋ねると、見知らぬ女性は土下座をし始めた。
  
 「この度は大変申し訳ございませんでした‼︎」

 「……へっ?」

 なぜか謝られたので呆然とそれを見守ることしかできなかった。

 「私くしどもの招待コードのせいで、シャルエルエットバルーエルさんの魂がゲームの世界へと迷い込んでしまったんです!」

 その言葉を聞いた途端に正気を取り戻すと同時に怒りが湧いた。

 「は?はあああ⁉︎ちょっとふざけんじゃないわよ!」

 「すみません!私たちも調査してからこっちに来る予定だったんですよ」

 その話を聞いてなぜか一度も感じたこともない殺意が湧いた。

ガシッ

 「え、ちょっ!」

 私は多分ゲームの管理人の人の両肩を持ちそのまま上下に乱暴に揺さぶった。

 「あんたらのせいで!私はバッドエンド確定のリリス.クロップになっちゃったんだけど⁉︎えっ!その落とし前どうつけるつもりなのよ‼︎」

 「ももももも、申し訳ございません‼︎僕もこうなるとは思いませんでした!」

 「えっ?僕?」

 必死に言い訳をしようとする管理人⁇の女性の中身は男?

 「え、あっ!この姿じゃ、どう見ても女性ですね⁇あははは。僕は、月雲区馬ですよ。あなたと何回会ったことがある正真正銘の男ですよ」

 そうヘラヘラと笑う月雲を見ているとまた殺意が湧いた。

 「私こんなにも人に対して殺意湧いたのは初めてだわ」

 「えっ?殺意って……ぎゃあああ⁉︎」

 私のその場で、月雲を殴り倒した。

 「あんたらの招待コードってやらはなんなのよ⁉︎」

 そう強めに質問するとすぐに答えが返ってきた。

 「簡単に言えばバグです」

 そうドヤ顔で言われるとまた殺意が湧く。

 「はぁ⁇」

 私は冷たく月雲を見下ろした。

 「ほんっとすみません!」

 そうまた謝り出した。

 「ここから出る方法はあるんでしょうね?」

 私はさらに冷たい目線で問いかける。

 「ひ、ひぁい」

 月雲はなぜか怯えている。

 「ささっと吐けやゴラァ!」

 「怖いです!シャルエルエットバルーエルさん!落ち着いてください‼︎」

 そうさらに叫ぶ月雲。

 「だ、脱出する方法はこのゲームのクリア条件です」

 「クリア条件?」

 私はおうむ返しでまた質問する。

 「はい。この招待コードはまだ未完成品なので、特別なイベントを確実なものとするためにもあなたに協力を仰ぎたかったんです」

 「どうして私なの?」

 そう問いかけると

 「えっ?だってあのゲームでのランキング一位を五年もキープしているでしょ⁇だから適任だって思っただけです」

 そうあっけらかんと答える。

 「あら?なぜだかまた殺意が湧いてきたわね?」

 「すみません!何もなかったようにもうしゃべらないので勘弁してください‼︎」

 そう必死に縋ってくる月雲。

 「で、その特別なイベントをクリアしない限りは出られないってことなの?」

 「はい。そうみたいです。なのでつきましてはシャルエルエットバルーエルさんに何になりたいかを問いかけたときに入力した願いはなんですか?」

 「それは……」

 あれ?私は何をお願いしたの?思い出せない。確かに私は願いを入力した。だけど、その記憶だけが何もなかったかのように思い出せない。

 「それは?」

 月雲は急かすように質問してくる。

 「……思い出せない」

 「はあ⁉︎」

 かなり驚いた顔で私に詰め寄る。

 「なんでですか⁉︎今回の脱出はこのお願いこそが要なのに!今あなたの体は植物状態で眠っているんですよ?それでいいのですね?ねぇ!」

 「……」

 私にさらに詰め寄ろうとするが、私のその前に一言お願いをした。

 「神の力寄越せ」

 「は?」

 突然のことで混乱したのか少しの間その場に固まってしまった月雲なのであった。
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