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神の祝福

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 「あのすみません。もう一度言ってもらえますか?」

 「だから神の力寄越せ」

 「……」

 みなさんこんにちは。リリスです。私は今、ゲームの管理人の月雲に神の力を寄越すように言っています。

 なぜかって?そんなの神の力さえあれは死ぬ未来だけは回避できるからだ!

 「私をこの世界に引き摺り込んだのは他でもないあなた方のせいでしょ?」

 「は、はい」

 暗い顔でそう答える月雲を見ていると少し罪悪感もあったが、今までのことを考えると綺麗さっぱりに消えた。

 「なんの償いもなしに無事に帰れると思ってるのかなぁ?」

 「い、いえ。そうなことは思っていません」

 かなりしゅんって顔になっているがどうでもいい。

 「私をここから脱出させるんでしょ⁇だったらゲームの管理人の権限で神力を寄越すべきよね?」

 私は圧をかけてそう詰め寄る。

 「は、はい。おっしゃる通りにいたします」

 諦めたような顔をしながら私に別の部屋で神の力を渡すからと一緒に移動した。

 「一応言っておくが、むやみやたらに神の力を悪用するんじゃないよ?」

 そう念を押すように言ってくるので腹が立った。

 「へぇー?ランキング一位のこの私に対してのこの言動ねぇ?馬鹿にしているのかしら?うふふ」

 私は素敵な笑みを浮かべながら言った。

 「すみません⁉︎」

 かなり怯えたような顔をしながら謝られた。

 「早く寄越せよ?」
  
 「はい!」
  
 月雲が私の頭に手を置き何かを唱え始めた。

 「……」
  
 数分後

 「リリス.クロップを神のことして神の力を授ける」

 そう言うと、体が光出しほっぺたの痛みが消え、体がすごく軽くなった。

 「シャルエルエットバルーエルさん。いいえ、リリスさん。どうか生き抜いてください」

 そう不安そうに言う月雲を見ていると、本当に心配しているんだなぁってわかる。

 「大丈夫。私は絶対に死なない」

 私はそうはっきりと言い切った。

 「リリスさん。僕もこのバグについては調査している最中だけど、この世界の人間にあんまり気を許さないで」

 「えっ?どういうこと?」

 私は言われた意味がわからなくて聞き返した。

 「もしこのゲームの世界に、君の魂が完全融合してしまったらもう……リリスさんは元には戻れなくなる。だから気を許しちゃだめだ」

 「……わかったわ」

 月雲はまた何か言いかけたけど、ソフィアとカルテが私を見つけて駆け寄ってきた。

 「リリス‼︎」

 「お母様⁇」

 ギュウウウウ

 「あばばばば⁉︎」

 すごい力で抱きしめられて動けなくなる。

 「すごく心配したのよ?それに神官様!私の娘を無断で連れて行くだなんて無礼にも程がありますよ!」

 「すみません。少し野暮用でしたので……」

 そう言いその場をそそくさと離れて行ってしまった。

 「リリス⁇怪我を治してもらったのね?よかったわ」

 「うん」

 月雲には悪いけど、私はもうこの世界の人に気を許してしまっているのよ。まだ信じきれていないけど、この二人は信用できるのかもしれない。

 ブーブーブー

 「なんだ?」

 「た、大変だ!」

 「池田⁇どうしたんだよ?」
  
 「シャルエルエットバルーエルさんの魂がゲームのシステムと融合しそうなんだよ⁉︎」

 「な、なんだって⁉︎」

 「でもまだ時間がかかりそうだ。持って後一年だ」

 「それまでにシャルエルエットバルーエルさんを……いいや。月影朱計美さんを連れ戻しに行くぞ」

 「了解‼︎」

 私はこのゲームのシステムに徐々に飲み込まれていることをまだ知らない。
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