こんなハーレムラブコメ絶対オレは認めない!

OctoBer1993

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第2章

第21話

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ゲームセンターでの主人公チャンスもいつものごとくバラバラに砕かれたオレこと主人公の親友ポジ、千尋司ちひろつかさ
と愉快な仲間たちは、カフェを訪れていた。


時間帯のおかげか待ち時間無しで、席につけた。
店内は、オシャレな雰囲気でさすが人気店といったところだろうか。

席につき各自注文を決めると、それぞれ勝手気ままに会話を始めだす。

「ほぇー、意外にレトロな感じの内装なんですね」

「たしかに素敵な雰囲気ね。でも問題はプリンの味ね…」

日南が店内の感想を言うと、それに受けるように雨宮が話す。


「あ、やっぱり、わたしプリンのほかにパフェも注文しようかな?」

「おい、泉…。もういいだろお前、さすがに夜飯食えなくなるぞ」

野々村が例のごとく食い気を発揮すれば、タイヨウがツッコミに入る。


「すんませーん。注文大丈夫ですか?」

「はーい。かしこまりましたー」

オレが手を挙げながら大きめの声で呼べば、店員さんがすかさず反応してくれる。



……いやオレだけ、皆との会話じゃねーし。

なんとも親友ポジらしい裏方っぽさ丸出しの働きをしてしまった感が否めない…。

あれだな、親友ポジって気のきくヤツがなっちゃいがち…ってことだな、きっと。


例のプリンを人数分と、各々の飲み物を注文して、しばし待ちの時間となった。

そんな待ち時間に行われることと言えば、そうthat's雑談である。

そんなthat's雑談の先導をきったのは日南だった。

「そー言えば雨宮先輩はなんでこの時期に転校してきたんですか?」

一見、何の気なしに投げかれられたように見える日南からの雨宮へのその質問にオレは1人心の中で緊張が走った。


おい…。日南…。
その質問を今してしまうのか?


【転校生ヒロインが転校してきた理由】



それはラブコメの中では最重要事項の可能性が大いに有りのクエスチョンなのだぞ…。

いや、別に『転校してきたことに意味があるので、転校してきた理由などなんでも適当なポップな理由でいいんじゃい』のパターンも全然あるにはある。

全然あるのだが……しかし下手するとラブコメのストーリーの根幹を揺るがす事実が発覚する可能性もやっぱりあるわけで…。

理由次第じゃあ、転校生属性も無きゃ幼なじみ属性も無い、であろう後輩ヒロイン属性だけのお前のようなじゃくヒロインは、ヒロインレースがここで終了する可能性だってあるんだぞ!?

雑談とはその文字に雑という字が入っているようにとりとめのない、どーでもいい話をすればいいのでは無いだろうか。

なのに、こともあろうか後輩ヒロインの日南茜は、そんな重要なファクターを今ここでプリンを待っている間に済ましてしまおうというのか…!?


はっ…!
もしかして、逆に転校のくだりは今のうちにあっさりと消化しとこうという、日南なりの作戦か!?

その可能性に至り、日南の顔を確認する。

その顔は平静を装いながらも、笑顔のその瞳の奥には勝負師としての炎のメラつきがあることをオレは見逃さなかった。
オレじゃなきゃ見逃しちゃうね。


なるほど、それにしても大きな博打に出やがったな…。

しかしながら、目標のためならば危ない橋を渡ることも辞さないその姿勢、オレはキライじゃあない。

日南のことを、もっとセーフティーをしっかりと確認してからしか動かない小悪党だと思っていた自分を戒めなくてはならないな。


さて、肝心の【転校生ヒロイン】の雨宮の答えはどうなんだ…?

雨宮はその質問に対して、少し間を開けて、いつものように喜怒哀楽を感じさせないような無の表情を崩すことなく答えた。


「…そうね。まあ『家の都合』というやつね」


そう言い終えると、自分のカップを手に取り、口へと運んだ。

それは、それ以上の説明を紅茶と一緒に飲み込んだように見えた。

――と、下手な陽キャヒロインがやれば、なにやら転校には激重《げきおも》な事情があることをプンプンと匂わせる雰囲気と所作だが。
普段から喜怒哀楽を感じさせないことに定評のあるクール系ヒロイン雨宮鈴花にとっては平常運転。


必要以上の説明をしないことも、短い言葉で会話を済ますことによってあらぬ誤解を生んでしまうこともお構い無しというような態度こそ雨宮鈴花の普段からのブレない姿勢。


『家の都合』

それは、高校生が転校して来た理由としては、『まあ、そりゃそうだろ』という感想のみが出てくるばかりの答え。

とは言え、まだ知り合って間もない人間に対して『え?気になる!もっと詳しく詳しく』と他人の家庭の事情をぐいぐい聞けるほど、あつかましいヤツも中々いない。

ある意味、物語序盤の転校生ヒロインとしては100点の答えと言えるかもしれない…。


そんなことを察してか察さずかわからないが野々村が話題を少しずらす。

「じゃあじゃあ、この街に来たのは初めてなの?」

「……まあ、そう思ってもらって差し支えないわ」

なんやねん!!
その匂わせるような発言は。
伏線なのか!?伏線と思えってことなのか!?

イエスかノーで答えてくれろっ…!!


結局そこでお待ちかねのプリンの登場により、その話題も打ち切られ、転校して来た理由の根幹に迫るようなところまではいかなかった。

つまりのところ結果から言えば、日南のハイリスクのギャンブルは収穫ゼロの見返り無しである。

ちょっと考えれば、重要な話であればこんな注文待ちのカフェで『実は…』なんて始まるわけもないし、当然と言えば当然の結果だな…。

うーむ…。
これはなにやら重要なファクターになるのやらならないのやら。


まあ、しかしアレだな…。

もし言いたくないのならば言う必要も無いし。

むしろオレが主人公になるのにマイナスな情報なら今後もずっと言わないで欲しい。
…いやマジで。


「でもそれなら、わたし地元だから、ここらへんのことならなんでも聞いてよ!」

例のプリンでひとしきり(主に女子達が)盛り上がり完食した後に、さっきの話の続きを、お人好しの野々村がフンス!と自信満々に言ったが、すかさずタイヨウのチャチャが入る。

「家から数メートルのとこで迷子になってたヤツが何を言うか」

「それは、子どもの頃の話でしょー!!」

「いやでも小学6年生の時の話…」

「いいのー!!もう今は道しっかり覚えてるんだから!スイスイなんだから!出前もスイスイスイーなんだから」

「いやお前は、ハ○ちゃんか…?」

オレとしては何度も聞かされて、聞き飽きた、主人公タイヨウらしい、幼なじみヒロインとの幼少期エピソードで盛り上がっている…。

「もー!そんなことばっかり言ってると、今度タイヨウが迷子になっても助けに行ってあげないよっ…!?」

「いや…今さらこの年で迷子ならんし…」

もうええねん!
お前らの漫才。

「まあまあそれは置いといて、ここらへんでなんにか気になってるスポットとかありますか?雨宮先輩」

野々村とタイヨウのアホなやり取りを切るようにして、日南が雨宮に話をふる。

雨宮は顎に手をやり、少し考えてから、ぽつりと呟くように言った。

「……観覧車」


……観、覧車……だと…?


「ああ、やっぱりアレ目立ちますよね」

「たしかにな。でも雨宮、観覧車は平気なのか?あれ頂上まで行くと結構高いぞ。オバケ苦手だから高いとこも苦手かと思った」

「オバケが苦手だと高いとこも苦手って関連性が全くわからないわ、アナタそれ言いたいだけでしょ?アホな煽りは身を滅ぼすわよ?それに私はオバケも苦手じゃないんだけど」

そんなタイヨウ達のやり取りも、今のオレには耳から通り抜けていくばかり。ただ聞こえているだけという茫然自失《ぼうぜんじしつ》状態になってしまっている。

もちろんオレもここの近くに観覧車があることは知っている駅からも学校からもその姿は確認できるし、このカフェからもそう遠くないところに位置している。
転校生の雨宮が気になるのもよくわかる。


しかしダメだ……。

観覧車はダメなんだ……。

先ほどの映画館での雨宮のように、今オレは心の中で1人でプルプル震えている…。

まずいだろ!?
まずすぎるだろ…!?

この状況で観覧車は……。

もしかして行くとか言わないよな?

オレは恐怖のあまり方向感覚を失い、五感を失い、気を失いそうだ。

そんなオレを蚊帳の外に、皆の観覧車トークは止まらないようだ。

「……だったら、これから……」

「…まぁ……アリか……」

「……たのしそ…」

わずかに耳をかすめた言葉を、ちゃんと飲み込むと何かこれから行くような流れになっている……。

なぜこれからなんだ??
なぜ今日なんだ???

ダメだ…!
ダメなんだ!!

観覧車は……!

観覧車は……!!





………4人、乗りだ。
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