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「あけおめ~!」
俺と旭輝と、それから陽介、三つのグラスが、新年に賑やかな挨拶と一緒に、カチャンと音を立てた。
「にしても、新年、どうしてる? 久我山さんとはうまくいった? って連絡したら、すでにくっついてるんだもんなー」
「あはは」
「教えてもらってないし」
「ごめんって。けど、陽介も忙しそうだったし」
久しぶりに会った陽介は髪色がぐんと明るくなっていた。銀色に見えるカラーリングが陽介の明るい性格にすごく合っている。
三人でテーブルを囲みながら、陽介がとても楽しそうに頬杖をついて、ふふんって笑って、俺と旭輝を交互に眺めてる。
「まぁ、忙しかったけどさぁ」
久しぶりに外で飲んだ。場所は前にも陽介と三人で来たゲイバー。陽介、酔っ払うと声ガ大きくなるから。会話が……ね。男同士の恋愛話とか、普段はスルーされてても、酒の席だとたまに絡んでくる輩もいたりするから。
「陽介は仕事は何してるのか、とか訊いても?」
「イケメンの質問には何でも答えます!」
陽介がわざと頬杖をついていた手をパッと頬のところで広げて、じっと旭輝のことを見つめる。得意の上目遣いで。
俺はこういうのできないんだよね。いまだに自分の顔の可愛い角度なんてわからないし。旭輝はその上目遣いににっこりと微笑んで、ピスタチオの殻を小さなお皿の中へと置いた。
「仕事は美容師。今度、久我山さんの髪も切ってあげよっか? 俺の気持ちいいよ? マッサージもちゃんと資格とったし」
「へぇ」
「もしよかったら是非」
陽介ってモテるんだよね。この話しやすさで。美容師ってこともあって人を楽しませるのが上手。
「よーし! それじゃあ、馴れ初めから聞いちゃおっと!」
そう言って身を乗り出した陽介に俺も旭輝も笑いながら、その馴れ初めを話し出したのは俺じゃなくて、旭輝で。とても楽しそうに話していて。隣にいながら、なんか、ちょっとくすぐったくて仕方なかった。
「ふぅ……」
ちょっと飲みすぎたかなぁ。
ほら、今もちょっとフラついたし。
トイレに、って席を立ったら、案外自分が思っていた以上に酔っ払ってることに気がついた。千鳥足なんてそこまで酔っ払ってるわけじゃないけど、少しだけ、ふわふわしてる感じ。でも、もう帰るから大丈夫、かな。
「……とっ」
二段、トイレに向かう廊下にあった段差にちょっとだけよろけた時だった。
「聡衣」
名前を呼んで、旭輝の手が俺の腕を掴んで支えてくれた。
「会計なら済ませた。トイレついてく」
「平気なのに」
「いいや」
なんか、笑ってる。少し薄暗い照明の中で、旭輝が笑っていて。
「前にもここで陽介と飲んだろ? 三人で」
うん。飲んだね。あの時は。
「あの時は彼氏でも何でもなかったから、トイレにって席を立つ聡衣のことが気になって仕方なかった」
あの時は知らない男が声をかけてきて。旭輝に助けてもらったっけ。
「あれ、すげぇ嬉しかった」
なんで? 嬉しかったの? ナンパされてるのに?
不思議そうに覗き込んでる俺を見て旭輝が笑って、それから旭輝も結構酔っ払ってる? 笑いながらいつもよりもキス魔になってる。俺の後頭部にキス? っていうか、鼻先を埋めて。
「彼氏っぽく振る舞えたからな」
ね、鼻先そこに埋めたままで話さないでよ。なんか照れくさい。
「あの時、聡衣の彼氏の振りをして、邪魔者を払い退けてさ」
俺は、ドキドキしてた。
「けど、あれだな」
「?」
「今はもう」
もう?
「あの時は嬉しかったのにな。今は絶対にちょっかいなんて出されたくなくなった」
他の人に? ちょっとでも?
「俺、独占欲、すごいな」
何それ、その、今知りましたって顔。
旭輝が呟いて。俺は、あの時以上に、ものすごく、ドキドキして。旭輝のしてくれる独占欲に浸るように頭を傾げて擦る寄る。
「酔っ払い……キス魔がひどくなってるし」
「あぁ、そう、酔っ払ってる」
腰に触れていた手が力を増して、しっかりと引き寄せる。
「すごく酔っ払ってる」
まるで酔っ払ってるから仕方ないだろ? って言うみたいに笑いながら、その鼻先を今度は俺の髪に埋めて、耳にキスをして。
「こうしてくっついてたら、他の誰も聡衣を獲ろうとしないだろ?」
そんな戯言を耳元で囁いた。
「おーい! トイレで一発やるのかと思ったぞー」
「ちょ! 陽介!」
「あはは。だって、トイレ長すぎ」
席に戻ると、もうコートを着た陽介が笑いながら、少しだけ残っていたお酒をもういいよねと一気に飲み干した。旭輝はその様子を見て、椅子に引っ掛けたコートを手に取るとそのままレジへと向かった。
「さてと、じゃ、帰ろっか。あ、これ、俺の分ね」
「うん。あの、待たせてごめん」
「マジでな。その分、少し割安にして代金払ってるから。なんて」
ヤッては、ないけど、その、やっては、ね。キスだけだけど、イチャついては、いた……かな。
「なんか、すごいねぇ……」
「陽介?」
「だってさぁ、そんな何年も前に接客してくれた店員にずっと片思いなんてするか? フツー」
「……うん」
「すごいよね。恋愛映画みたい」
「……うん」
「運命ってやつなんじゃん?」
そんなの。
「いいなぁ。誰か俺のゴッドハンドマッサージが忘れられなくて、ずっと片想いしててくれたりしないかなぁ」
「何それ」
「そんでその人が偶然再会して、俺はちょうど宿なしで」
ないよね。フツーさ。
でも、あった。
あったから、自分には到底あり得ない、ものが本当にあるんじゃないかなって。
「聡衣」
「あ! うんっ」
旭輝が、俺の……なんて、ちょっと思っちゃったり、なんて。
「今、行く」
これが、運命の……赤い……。
俺と旭輝と、それから陽介、三つのグラスが、新年に賑やかな挨拶と一緒に、カチャンと音を立てた。
「にしても、新年、どうしてる? 久我山さんとはうまくいった? って連絡したら、すでにくっついてるんだもんなー」
「あはは」
「教えてもらってないし」
「ごめんって。けど、陽介も忙しそうだったし」
久しぶりに会った陽介は髪色がぐんと明るくなっていた。銀色に見えるカラーリングが陽介の明るい性格にすごく合っている。
三人でテーブルを囲みながら、陽介がとても楽しそうに頬杖をついて、ふふんって笑って、俺と旭輝を交互に眺めてる。
「まぁ、忙しかったけどさぁ」
久しぶりに外で飲んだ。場所は前にも陽介と三人で来たゲイバー。陽介、酔っ払うと声ガ大きくなるから。会話が……ね。男同士の恋愛話とか、普段はスルーされてても、酒の席だとたまに絡んでくる輩もいたりするから。
「陽介は仕事は何してるのか、とか訊いても?」
「イケメンの質問には何でも答えます!」
陽介がわざと頬杖をついていた手をパッと頬のところで広げて、じっと旭輝のことを見つめる。得意の上目遣いで。
俺はこういうのできないんだよね。いまだに自分の顔の可愛い角度なんてわからないし。旭輝はその上目遣いににっこりと微笑んで、ピスタチオの殻を小さなお皿の中へと置いた。
「仕事は美容師。今度、久我山さんの髪も切ってあげよっか? 俺の気持ちいいよ? マッサージもちゃんと資格とったし」
「へぇ」
「もしよかったら是非」
陽介ってモテるんだよね。この話しやすさで。美容師ってこともあって人を楽しませるのが上手。
「よーし! それじゃあ、馴れ初めから聞いちゃおっと!」
そう言って身を乗り出した陽介に俺も旭輝も笑いながら、その馴れ初めを話し出したのは俺じゃなくて、旭輝で。とても楽しそうに話していて。隣にいながら、なんか、ちょっとくすぐったくて仕方なかった。
「ふぅ……」
ちょっと飲みすぎたかなぁ。
ほら、今もちょっとフラついたし。
トイレに、って席を立ったら、案外自分が思っていた以上に酔っ払ってることに気がついた。千鳥足なんてそこまで酔っ払ってるわけじゃないけど、少しだけ、ふわふわしてる感じ。でも、もう帰るから大丈夫、かな。
「……とっ」
二段、トイレに向かう廊下にあった段差にちょっとだけよろけた時だった。
「聡衣」
名前を呼んで、旭輝の手が俺の腕を掴んで支えてくれた。
「会計なら済ませた。トイレついてく」
「平気なのに」
「いいや」
なんか、笑ってる。少し薄暗い照明の中で、旭輝が笑っていて。
「前にもここで陽介と飲んだろ? 三人で」
うん。飲んだね。あの時は。
「あの時は彼氏でも何でもなかったから、トイレにって席を立つ聡衣のことが気になって仕方なかった」
あの時は知らない男が声をかけてきて。旭輝に助けてもらったっけ。
「あれ、すげぇ嬉しかった」
なんで? 嬉しかったの? ナンパされてるのに?
不思議そうに覗き込んでる俺を見て旭輝が笑って、それから旭輝も結構酔っ払ってる? 笑いながらいつもよりもキス魔になってる。俺の後頭部にキス? っていうか、鼻先を埋めて。
「彼氏っぽく振る舞えたからな」
ね、鼻先そこに埋めたままで話さないでよ。なんか照れくさい。
「あの時、聡衣の彼氏の振りをして、邪魔者を払い退けてさ」
俺は、ドキドキしてた。
「けど、あれだな」
「?」
「今はもう」
もう?
「あの時は嬉しかったのにな。今は絶対にちょっかいなんて出されたくなくなった」
他の人に? ちょっとでも?
「俺、独占欲、すごいな」
何それ、その、今知りましたって顔。
旭輝が呟いて。俺は、あの時以上に、ものすごく、ドキドキして。旭輝のしてくれる独占欲に浸るように頭を傾げて擦る寄る。
「酔っ払い……キス魔がひどくなってるし」
「あぁ、そう、酔っ払ってる」
腰に触れていた手が力を増して、しっかりと引き寄せる。
「すごく酔っ払ってる」
まるで酔っ払ってるから仕方ないだろ? って言うみたいに笑いながら、その鼻先を今度は俺の髪に埋めて、耳にキスをして。
「こうしてくっついてたら、他の誰も聡衣を獲ろうとしないだろ?」
そんな戯言を耳元で囁いた。
「おーい! トイレで一発やるのかと思ったぞー」
「ちょ! 陽介!」
「あはは。だって、トイレ長すぎ」
席に戻ると、もうコートを着た陽介が笑いながら、少しだけ残っていたお酒をもういいよねと一気に飲み干した。旭輝はその様子を見て、椅子に引っ掛けたコートを手に取るとそのままレジへと向かった。
「さてと、じゃ、帰ろっか。あ、これ、俺の分ね」
「うん。あの、待たせてごめん」
「マジでな。その分、少し割安にして代金払ってるから。なんて」
ヤッては、ないけど、その、やっては、ね。キスだけだけど、イチャついては、いた……かな。
「なんか、すごいねぇ……」
「陽介?」
「だってさぁ、そんな何年も前に接客してくれた店員にずっと片思いなんてするか? フツー」
「……うん」
「すごいよね。恋愛映画みたい」
「……うん」
「運命ってやつなんじゃん?」
そんなの。
「いいなぁ。誰か俺のゴッドハンドマッサージが忘れられなくて、ずっと片想いしててくれたりしないかなぁ」
「何それ」
「そんでその人が偶然再会して、俺はちょうど宿なしで」
ないよね。フツーさ。
でも、あった。
あったから、自分には到底あり得ない、ものが本当にあるんじゃないかなって。
「聡衣」
「あ! うんっ」
旭輝が、俺の……なんて、ちょっと思っちゃったり、なんて。
「今、行く」
これが、運命の……赤い……。
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