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第一章・俺の価値
アルフレヒト家へ
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王子様と、城下町まで歩いていた俺達は、暗くなる空を見ながら今までのことを話していた。
「…だから、その子を取り戻したいんだ。」
純血だということは伏せ、異世界から来たらしいという情報だけを伝える。
「そ、それは大変でしたね…!でも、その白い髪の毛の男は、どうして1日も経たずに彼の存在と居場所がわかったんでしょう…!不思議だ…」
顎に手を当てながら、うんうんと考える王子様。
他に特徴とかあります?と、なぞなぞを解くように目を輝かせた王子様に、僕は記憶を巡らせた。
「うーん…双子っぽい犬…いや猫、狐かな…騒がしい獣人を連れてた」
その情報を聞き、またもうーん…と唸る王子様。
「な、なにせ私は学校と家を行き来する日々で、兄達のように貴族ともあまり関わったことがなく…へへ…」
聞いたのにすみません、分からないかも、と頭をかいていた。
「でも、何か彼がこの世界に来たと分かったキッカケがある筈ですよね?何か仕事中に気づいたのかなあ…パトロール中の航空魔導士…?それか…」
横でぶつぶつと考える王子様を横目に、僕は早くキーチに会いたくて足を早めていたが、あ!と何か思いついたような声をあげる。
「識別水晶なら、この世界に何か、種類にもよりますが人間赤ちゃん、新種の草木など、新たなものができた時にそれを映します!
出生の記録をしているアルフレヒト家の長男なら、それが可能かもしれませんね!異世界から来た彼が、水晶に映るかどうかは分からないけど…私達と血縁も近いので、きっと白い髪の毛は遺伝してあるでしょうし!」
きっとそうだ!とスキップをしながら歩く。
ぴょんぴょん跳ねる王子様に、僕は期待が膨らんで問いかける。
「そ、その人に会いたい!会えるかな?!」
スキップをしながら、王子様は答えた。
「うーん、あそこは第二王妃が国民寄りの思想を持っていてちょっと…いやかなりうちの親と仲が悪くて…僕からの繋がりを求めるのならちょっと難しいかもです…。屋敷の場所くらいなら教えてあげることもできますが…、あ!そう!その第二王妃が産んだ息子は貴族なのに国民と混じり国の防衛に励んでいると聞きました!はぁ…カッコいいなあ…」
一眼でいいから貴族が戦うところを見たい…と、うっとりする王子様。
屋敷の場所だけでも、僕たちにとってはものすごい進展で、ありがとう!と礼を言う。
嬉しそうな王子様は、お互い様ですと城までの道を歩いていた。
「…さて!」
城の近くまで着いた王子様は、では待っていてください!と慣れたように塀を登り、城に入って行った。
大人しく城近くの広場で待つこと数十分、王子様は、側近らしき、貴族風の男を連れて戻ってきた。
「この度は…誠に…!」
僕達を認識すると早々にこちらへ土下座をする男。まさか筋肉のない人間に頭を下げられる、しかも土下座をされる日がくるとは思っていなかった僕たちは、狼狽えながら顔を上げてくれと懇願した。
「話は聞かせていただきました。これ以外にも、どんな事でも申し付けてください、全く、どんな礼をすればいいか…!」
有り余るほどの金を僕達に握らせながら、王達には知られない程度にしか手助けはできませんが、と例の屋敷への地図をくれた。
信頼できる馬車も呼んでいると、流石は王家の側近、ものすごい仕事の速さだ。
「これは職権乱用ですが、王家のハンコを使った手紙も渡しておきます、もし王子の予想が当たっているとして、心当たりがあるならきっとアルフレヒト家は真摯に対応するでしょう。」
男は、曲者なのは長男だけですから、それ以外に渡してください。と付け足す。
いつもは落ち着いているベアルも、早すぎる展開に頭が追いついていないようだった。
さあ、早く!と、僕達を馬車に押し込み、行き先を馬車の操縦者に伝える。
「また、王都に遊びに来てくださいね!」
と、1人だけ時間の進みが違うのではないかと言うほど余裕そうな王子様に、僕は手を振った。
(…無事でいてくれるかな)
あの白い髪の毛の男に酷いことされていませんようにと、それだけを願いながら、馬車の振動を感じていた。
「…だから、その子を取り戻したいんだ。」
純血だということは伏せ、異世界から来たらしいという情報だけを伝える。
「そ、それは大変でしたね…!でも、その白い髪の毛の男は、どうして1日も経たずに彼の存在と居場所がわかったんでしょう…!不思議だ…」
顎に手を当てながら、うんうんと考える王子様。
他に特徴とかあります?と、なぞなぞを解くように目を輝かせた王子様に、僕は記憶を巡らせた。
「うーん…双子っぽい犬…いや猫、狐かな…騒がしい獣人を連れてた」
その情報を聞き、またもうーん…と唸る王子様。
「な、なにせ私は学校と家を行き来する日々で、兄達のように貴族ともあまり関わったことがなく…へへ…」
聞いたのにすみません、分からないかも、と頭をかいていた。
「でも、何か彼がこの世界に来たと分かったキッカケがある筈ですよね?何か仕事中に気づいたのかなあ…パトロール中の航空魔導士…?それか…」
横でぶつぶつと考える王子様を横目に、僕は早くキーチに会いたくて足を早めていたが、あ!と何か思いついたような声をあげる。
「識別水晶なら、この世界に何か、種類にもよりますが人間赤ちゃん、新種の草木など、新たなものができた時にそれを映します!
出生の記録をしているアルフレヒト家の長男なら、それが可能かもしれませんね!異世界から来た彼が、水晶に映るかどうかは分からないけど…私達と血縁も近いので、きっと白い髪の毛は遺伝してあるでしょうし!」
きっとそうだ!とスキップをしながら歩く。
ぴょんぴょん跳ねる王子様に、僕は期待が膨らんで問いかける。
「そ、その人に会いたい!会えるかな?!」
スキップをしながら、王子様は答えた。
「うーん、あそこは第二王妃が国民寄りの思想を持っていてちょっと…いやかなりうちの親と仲が悪くて…僕からの繋がりを求めるのならちょっと難しいかもです…。屋敷の場所くらいなら教えてあげることもできますが…、あ!そう!その第二王妃が産んだ息子は貴族なのに国民と混じり国の防衛に励んでいると聞きました!はぁ…カッコいいなあ…」
一眼でいいから貴族が戦うところを見たい…と、うっとりする王子様。
屋敷の場所だけでも、僕たちにとってはものすごい進展で、ありがとう!と礼を言う。
嬉しそうな王子様は、お互い様ですと城までの道を歩いていた。
「…さて!」
城の近くまで着いた王子様は、では待っていてください!と慣れたように塀を登り、城に入って行った。
大人しく城近くの広場で待つこと数十分、王子様は、側近らしき、貴族風の男を連れて戻ってきた。
「この度は…誠に…!」
僕達を認識すると早々にこちらへ土下座をする男。まさか筋肉のない人間に頭を下げられる、しかも土下座をされる日がくるとは思っていなかった僕たちは、狼狽えながら顔を上げてくれと懇願した。
「話は聞かせていただきました。これ以外にも、どんな事でも申し付けてください、全く、どんな礼をすればいいか…!」
有り余るほどの金を僕達に握らせながら、王達には知られない程度にしか手助けはできませんが、と例の屋敷への地図をくれた。
信頼できる馬車も呼んでいると、流石は王家の側近、ものすごい仕事の速さだ。
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