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第一章・俺の価値
好き
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借金の取り立ての出張からアジトへ帰った俺は、拘束された裸の少年を見て驚愕した。
「はは、ビビったろ、アイツ純血だぜ」
チャドはそう言いながら、俺へ昼食を用意する。柱に括り付けられ、高く上げられた細い腕と、下を向く小さな頭、寂しく丸められた綺麗な長い足…それを見つめながら俺は席に着いた。
昨日どうやってあの子を見つけたかの説明、これからの運用方法など、色々な話を聞くが、全てが耳を滑り、口に運ぶ食事も味がしない。
(あの子、大丈夫なのか)
寒い中、裸で放置されているのを見て不安が募る。
「なあ、細いしあの子、何か食わせないと死ぬんじゃないか?」
チャドの説明を聞いた後、可哀想になった俺は流石に温かい食事を摂らせたほうが良いのではと提案する。
だが、チャドは何度かそれを試したらしく、俺が言っても震えて食事をしないと言った。
(そりゃあ、一晩中強姦した男を怖がらないわけないだろ)
先程の説明で、楽しそうに彼の具合を話していたチャドにため息が出そうになる。
「つっても、このまま放置して死んじゃあ勿体ない、もう逃げられねぇことは分かるだろうし、そろそろ服着せて体あっためさせてやろう、俺が行く」
死んじゃ勿体無いと文頭においたのは、チャドからの支持を得るためだ。
チャドは親切なんて確証の得られない優しさよりも、利益から出る優しさを信じる男だった。
確かに、と眉を上げるチャドを横目に、俺は自分の食べかけを持ち、彼へと近づいた。
彼は近くで見ると本当に綺麗で、柄にもなくドクドクと鳴る心臓に自分でも笑いそうになった。
(…初めて見たな、こんなに綺麗な子)
顔ばかりに集中していたが、少し目線を横にずらすと、耳に大量の穴と、鉄の棒、宝石が飾られているのが分かる。
(…なんだ、これ)
想像しただけでも痛そうなそれに、俺達みたいなやつが、きっと以前にも彼を隠していたんだろうと思った。
普通に暮らしていれば今頃、純血なんて噂どころかこの国一丸となって世界中に自慢する。
酷いな、と彼が今までされてきたであろう仕打ちを想像しながら
(…は、)
また少し目線を下げると、同じような装飾が乳首にも輝いているのが分かった。
卑猥なソレに、目を奪われながらも、他の奴らと同類になりたくなかった俺は、気付かないふりをする。
俺が近付いて、泣いたらどうしようと思ったが、食事に少し拒否感を示すだけで、俺には大丈夫なようだった。
(…本当は嫌われてるとかだったらどうしような)
ネガティブが顔を覗かせながらも、チャドから貰った毛布を彼の下に敷く。
俺が毛布を敷こうとしたのが分かったのか、身体を浮かせる彼の腹筋が動くのを見て、危うく欲が頭をもたげそうだった。
(…ダメだ)
拘束を一旦外し、服を着せた後、チャドに怒鳴られながらまた拘束をつける。
腕を高く上げられたせいか、服を着せた時少し触れた、体温が奪われただけの体とは違い、氷のように冷たくなって、爪が少し青くなった手が痛々しかった。
少しでも温めてあげたくて、今着ている革のジャケット…初めて人を殺した時にチャドからプレゼントしてもらったそれを膝にかけてやり、またスープを浸したパンを差し出せば、口を開けてくれた。
「おい、時間だ」
だが、食事はこれからだというのにチャドが後ろから声をかける。
時間厳守のこの男を、説得する力量は俺にはなかった。
チャドが部下達に、彼に触るなと声をかけ、一緒に部屋を出る。
「まず、金を集める為にアイツの体液を信者に売る。今から行くのはその瓶の買い出しだ。…ああ、純血が手に入ったんだし、黒目作る為に交配させてた奴らも殺さないとな」
「2人で行く必要ないだろ、お前が瓶を買うなら、その…俺がしようか」
チャドの声を聞きながら、足を動かす。
先程の親切で減ったんじゃないかと思うチャドからの信頼を得る為だけに、そんな提案をした。
この仕事を始めて、最初は傷んでいた良心も、近頃は痛む場所も無くなるほど消えかけているのが分かる。
「はは!お前変わったなあ!最初はあんなに酷い、可哀想だと言ってたのに…殺しは俺がやってやるよ、お前が瓶買いに行け」
楽しそうに笑いながら、俺の頭を撫でるチャド。いつも通りのチャドに安心しながら、うるせえと度突き返して、俺は街に出た。
瓶を買って、鉄の扉が並ぶ廊下を進む。
劣悪な環境に鼻を押さえながら、チャドを探した。
扉を開けるごとに、一部屋ずつ。
血も出していない大量の死体を見る。
目を開いたまま倒れているそれは、紺色や茶色など、全て黒に近い目をしていた。
ほぼ全ての部屋を探して、残るはA1。
この中で一番綺麗にしてある部屋の前で、俺は深呼吸をして扉を開ける。
そこには、子供の首を絞めるチャドがいた。
「もう買い出しは済んだのか?」
数年前に生まれてから、薬を打ち体の自由を奪い、筋肉を極限まで減らした。
黒目に近い青色の目をした齢数年の混血の首に片手で絞める。
まるで殺しているのは人ではなく、魚か何かのようだ。
なんの悪気もなさそうに、こちらを振り返るチャド。
俺達に従順なように、信者の前で純血だと騙せるように。この子にだけはチャドも優しく接していたはずだった。
『ほら、予防接種の時間だぞ』
そう言って、笑顔で子供に薬を打っていたチャドを思い出す。
(…最初から、優しくなんてなかったか)
「ああ…買ってきた。帰ろう」
鉄の扉が並ぶ廊下を後にし、階段を登りアジトへ戻る。気分が落ち込んだ俺は、下を向きながら鉄板の廊下を歩いた。
「おい!お前ら何してる!」
だが、前で立ち止まったチャドが大きな声を上げるのを聞いて、目線を上げた。
「……ッ!」
なんとそこには、大量の水に濡らされた彼の姿があった。
急いで近付いて、彼の無事を確かめる。
辛そうに肩で息をし、湯をかけられたのか真っ赤な皮膚と、誰にやられたのか、顔と頭にはべっとりと精液がついている。
(…酷いな)
手で彼の顔を拭いながら、一瞬遅れて、ここにいたのは自分の部下だということを思い出す。
「すまない、俺達の教育不足だ。」
少しでも彼に嫌われたくないという心が出たのか、“俺たち”という言葉を使う。
責任を半分チャドに押し付けた形の言葉にハッとしながらも、俺は彼の拘束を外して、ハンカチで彼の体を拭いた。
(…あ、)
拭きながら、彼の胸と性器が勃っているのが見える。
顔を赤くする彼に、指摘しては酷だろうとまた気付かないふりをした。
後ろから、B 7に運ぶとチャドの大きな声がする。
B7…A1~10、B1~6は、先程までの死体が転がっている。
(…一つくらい部屋の間空けてやれよ)
時間だけでなく、キチンと数字どうり、大きさどうりに整理整頓しないと気が済まなかった昔のチャドを思い出して、これも指摘したところで変えられないだろうなと諦める。
持ち上げるぞ、と彼に伝えて軽すぎる体を抱き抱えた後、またさっきの廊下へと歩く。
彼を気にせずビジネスの話をするチャドに、また同類だと思われたくなくてそっけない返事をした。
(ここにいる時点で、彼には見透かされてるだろうけどな…)
腕の中で、ふうふうと息をする彼を少し盗み見ながら、B7に入りベッドへ降ろした。
チャドが、早速資金源…彼の尿を取るようで、指示を出された俺は、ベッドの四方へ手錠を括り、彼の腕を拘束した。
ベッドで彼に馬乗りになったチャドが、
さっき俺が買ってきた瓶を取り出して彼の股へと押し付ける。
「ッ"ぅ"あ"ン"ッ!♡」
大きな喘ぎ声と、震える身体に、見ているだけの俺は気が狂いそうだった。
精液は出るのに時間がかかるだけで量が少ないとイラついた様子で頭をかくチャドは、また時間厳守の精神か、彼から離れ俺に瓶を渡す。
射精した後、休憩させずに扱いて潮も取れと俺にまた指示をして、チャドが部屋から出る。
彼と2人きりになった俺は、早速後悔した。
こんな事したら、彼に嫌われる。
俺がチャドに代わり落札者と会えばよかったと思いながら、ゆっくりと彼が拘束されたベッドに乗った。
上から見下ろす彼の体は、薬を打った不健康な体とは違い、筋肉がないにも関わらず肌は白くハリがあり綺麗で、呼吸の度に動く腹は、ずっと見ていたかった。
だが、服を着ていても寒いこの部屋に裸でいるのは可哀想で、上半身だけ、床に落ちていた毛布をはたいてかけてやる。
(…ごめん)
心の中だけでそう言い、彼の性器へ手を伸ばした。
「ッぁ"…!♡あ"…ぁ"…!」
彼が俺の手に合わせて声を出す。
それだけで俺は興奮して、身体中の血が沸騰するのを感じるが、悟られないよういつも通りの呼吸をしながら、一定の速度で手を動かした。
彼の足が、ガクガクと痙攣しているのが分かる。
「ぁ"♡ぃ"く…"ッ♡イ"ッ…ぐ…!♡」
ッビュ、♡ビュル…ッ!♡
イくイくと、俺に報告しながら、二段階に分けて少ない射精をした。
彼の足がピン、と張り、俺の腰に当たる。
(…、ダメだ、これ)
俺は、彼の声と痴態に興奮した自分の股が窮屈になるのを感じる。
チャドに言われた通り瓶を持ち替えて、今度はきちんと声に出し
「…もう一回、ごめんな」
そう、彼に伝えた。
その後、何度も扱くが一向に潮を吹かない彼は、大きな喘ぎ声を上げた後、体を震わせて気を失った。
「っえ、…」
驚いた俺は、数回彼の顔をペチペチと手で叩くも、意識は戻らず、ふうふうと息をするだけの彼に焦り始める。
(ね、熱があるぞ…!)
遅れてそれに気付いた俺は、素早く四肢の拘束を解いた。
興奮で痛い股間は無視して、体を温める為に予備の布団を取りに行く。
警察に追われる時よりも本気で、全力で走り、すれ違った部下に
「大丈夫すか!?」
と叫ばれるが、無視して倉庫へ足を運んだ。
新めの毛布を2枚と、保温の為に、俺の部屋からダウンの布団を掴んで、また全速力でB7に戻り、彼の体に布団をかけた。
布団をかけながら、また彼が服を着てないのに気付く。
(これじゃ、風邪が悪化する…!)
辛そうな顔も綺麗で、見惚れそうになるが、我慢してまた走って、部屋を出る。
だが、水をかけられていたあの光景を思い出して、部屋に帰って鍵を閉め、また走った。
全速力で服屋へ着いた俺は、自分の財布と、服の値札を交互に見ていた。
(ぜ、全然ない…)
この仕事を始めたのは、弟達を食っていかせる為で、自分の小遣いなんて考えずに、ほぼ全財産を家に送っていた俺は、少しくらい持っとくんだったと後悔した。
「なあ、上下の服で、なるべく温かいのが欲しいんだ」
店員にそう告げるも、温かいのは高いんだとペラペラの服を渡される。
(…まあ、長袖だが…)
裸よりはマシかと思い、普段なら絶対買わない服を買って店を出た。
B7に入ると、俺は無言のまま彼に服を着せる。
どこを触っても傷一つなく、滑らかな肌に股間が熱くなるのを感じて、少し、少しだけだと下半身を露出した。
服を着せている途中でそんな事をしたので、まるで悪い事をしている気分になる。
(…寝ている少年で抜くのは、悪いことか)
冷静に考えて、悪い事だったと思い直すも、もう止める理性は残ってなくて、彼の顔を見ながら自身を扱いた。
「…ッ、……く、…」
彼の辛そうな表情、上下する腹、胸の装飾…全てが俺の興奮材料になる。
冷たい石に囲まれた小さな部屋で、隣の部屋には死体が転がることを理解しているのに、そんなこともうどうでもよかった。
彼の先程の喘ぎ声を思い出しながら、脳内で妄想を加速させる。
この子と、一緒になれたらどんなにいいだろう。俺を中に入れて、気持ち良さそうに揺すられる彼を想像すると、すぐにイきそうだった。
(ああ、クソ…)
「……ッく、!」
彼にかからないように、自身を下に向けて射精する。
白いドロドロとした液体が石畳の床に垂れるのを見て、欲でモヤがかかっていた頭が晴れるのが分かった。
(な、何やってるんだ、俺は)
冷静になり、顔が熱くなる。
先程まで彼の上半身にかけていた、古い毛布で雑に床と手を拭いて、服を着た後に急いで洗い場まで走った。
「あれ!?まただ、どうしたんすかー?!」
さっきすれ違った部下が、また声を上げるのを無視して、今度は洗い場へ直行した。
精液が固まらないよう、この時期なのに冷水で、汚れた部分だけを揉み洗いした後、当番が洗濯に持っていくカゴにそれを入れる。
(…本当に、ダメだ)
洗い場でしゃがみ込みながら、俺は寝ている彼を思い出す。
「…あ」
服を着せるのが途中だったのを思い出して、また俺はB7へと走った。
「はは、ビビったろ、アイツ純血だぜ」
チャドはそう言いながら、俺へ昼食を用意する。柱に括り付けられ、高く上げられた細い腕と、下を向く小さな頭、寂しく丸められた綺麗な長い足…それを見つめながら俺は席に着いた。
昨日どうやってあの子を見つけたかの説明、これからの運用方法など、色々な話を聞くが、全てが耳を滑り、口に運ぶ食事も味がしない。
(あの子、大丈夫なのか)
寒い中、裸で放置されているのを見て不安が募る。
「なあ、細いしあの子、何か食わせないと死ぬんじゃないか?」
チャドの説明を聞いた後、可哀想になった俺は流石に温かい食事を摂らせたほうが良いのではと提案する。
だが、チャドは何度かそれを試したらしく、俺が言っても震えて食事をしないと言った。
(そりゃあ、一晩中強姦した男を怖がらないわけないだろ)
先程の説明で、楽しそうに彼の具合を話していたチャドにため息が出そうになる。
「つっても、このまま放置して死んじゃあ勿体ない、もう逃げられねぇことは分かるだろうし、そろそろ服着せて体あっためさせてやろう、俺が行く」
死んじゃ勿体無いと文頭においたのは、チャドからの支持を得るためだ。
チャドは親切なんて確証の得られない優しさよりも、利益から出る優しさを信じる男だった。
確かに、と眉を上げるチャドを横目に、俺は自分の食べかけを持ち、彼へと近づいた。
彼は近くで見ると本当に綺麗で、柄にもなくドクドクと鳴る心臓に自分でも笑いそうになった。
(…初めて見たな、こんなに綺麗な子)
顔ばかりに集中していたが、少し目線を横にずらすと、耳に大量の穴と、鉄の棒、宝石が飾られているのが分かる。
(…なんだ、これ)
想像しただけでも痛そうなそれに、俺達みたいなやつが、きっと以前にも彼を隠していたんだろうと思った。
普通に暮らしていれば今頃、純血なんて噂どころかこの国一丸となって世界中に自慢する。
酷いな、と彼が今までされてきたであろう仕打ちを想像しながら
(…は、)
また少し目線を下げると、同じような装飾が乳首にも輝いているのが分かった。
卑猥なソレに、目を奪われながらも、他の奴らと同類になりたくなかった俺は、気付かないふりをする。
俺が近付いて、泣いたらどうしようと思ったが、食事に少し拒否感を示すだけで、俺には大丈夫なようだった。
(…本当は嫌われてるとかだったらどうしような)
ネガティブが顔を覗かせながらも、チャドから貰った毛布を彼の下に敷く。
俺が毛布を敷こうとしたのが分かったのか、身体を浮かせる彼の腹筋が動くのを見て、危うく欲が頭をもたげそうだった。
(…ダメだ)
拘束を一旦外し、服を着せた後、チャドに怒鳴られながらまた拘束をつける。
腕を高く上げられたせいか、服を着せた時少し触れた、体温が奪われただけの体とは違い、氷のように冷たくなって、爪が少し青くなった手が痛々しかった。
少しでも温めてあげたくて、今着ている革のジャケット…初めて人を殺した時にチャドからプレゼントしてもらったそれを膝にかけてやり、またスープを浸したパンを差し出せば、口を開けてくれた。
「おい、時間だ」
だが、食事はこれからだというのにチャドが後ろから声をかける。
時間厳守のこの男を、説得する力量は俺にはなかった。
チャドが部下達に、彼に触るなと声をかけ、一緒に部屋を出る。
「まず、金を集める為にアイツの体液を信者に売る。今から行くのはその瓶の買い出しだ。…ああ、純血が手に入ったんだし、黒目作る為に交配させてた奴らも殺さないとな」
「2人で行く必要ないだろ、お前が瓶を買うなら、その…俺がしようか」
チャドの声を聞きながら、足を動かす。
先程の親切で減ったんじゃないかと思うチャドからの信頼を得る為だけに、そんな提案をした。
この仕事を始めて、最初は傷んでいた良心も、近頃は痛む場所も無くなるほど消えかけているのが分かる。
「はは!お前変わったなあ!最初はあんなに酷い、可哀想だと言ってたのに…殺しは俺がやってやるよ、お前が瓶買いに行け」
楽しそうに笑いながら、俺の頭を撫でるチャド。いつも通りのチャドに安心しながら、うるせえと度突き返して、俺は街に出た。
瓶を買って、鉄の扉が並ぶ廊下を進む。
劣悪な環境に鼻を押さえながら、チャドを探した。
扉を開けるごとに、一部屋ずつ。
血も出していない大量の死体を見る。
目を開いたまま倒れているそれは、紺色や茶色など、全て黒に近い目をしていた。
ほぼ全ての部屋を探して、残るはA1。
この中で一番綺麗にしてある部屋の前で、俺は深呼吸をして扉を開ける。
そこには、子供の首を絞めるチャドがいた。
「もう買い出しは済んだのか?」
数年前に生まれてから、薬を打ち体の自由を奪い、筋肉を極限まで減らした。
黒目に近い青色の目をした齢数年の混血の首に片手で絞める。
まるで殺しているのは人ではなく、魚か何かのようだ。
なんの悪気もなさそうに、こちらを振り返るチャド。
俺達に従順なように、信者の前で純血だと騙せるように。この子にだけはチャドも優しく接していたはずだった。
『ほら、予防接種の時間だぞ』
そう言って、笑顔で子供に薬を打っていたチャドを思い出す。
(…最初から、優しくなんてなかったか)
「ああ…買ってきた。帰ろう」
鉄の扉が並ぶ廊下を後にし、階段を登りアジトへ戻る。気分が落ち込んだ俺は、下を向きながら鉄板の廊下を歩いた。
「おい!お前ら何してる!」
だが、前で立ち止まったチャドが大きな声を上げるのを聞いて、目線を上げた。
「……ッ!」
なんとそこには、大量の水に濡らされた彼の姿があった。
急いで近付いて、彼の無事を確かめる。
辛そうに肩で息をし、湯をかけられたのか真っ赤な皮膚と、誰にやられたのか、顔と頭にはべっとりと精液がついている。
(…酷いな)
手で彼の顔を拭いながら、一瞬遅れて、ここにいたのは自分の部下だということを思い出す。
「すまない、俺達の教育不足だ。」
少しでも彼に嫌われたくないという心が出たのか、“俺たち”という言葉を使う。
責任を半分チャドに押し付けた形の言葉にハッとしながらも、俺は彼の拘束を外して、ハンカチで彼の体を拭いた。
(…あ、)
拭きながら、彼の胸と性器が勃っているのが見える。
顔を赤くする彼に、指摘しては酷だろうとまた気付かないふりをした。
後ろから、B 7に運ぶとチャドの大きな声がする。
B7…A1~10、B1~6は、先程までの死体が転がっている。
(…一つくらい部屋の間空けてやれよ)
時間だけでなく、キチンと数字どうり、大きさどうりに整理整頓しないと気が済まなかった昔のチャドを思い出して、これも指摘したところで変えられないだろうなと諦める。
持ち上げるぞ、と彼に伝えて軽すぎる体を抱き抱えた後、またさっきの廊下へと歩く。
彼を気にせずビジネスの話をするチャドに、また同類だと思われたくなくてそっけない返事をした。
(ここにいる時点で、彼には見透かされてるだろうけどな…)
腕の中で、ふうふうと息をする彼を少し盗み見ながら、B7に入りベッドへ降ろした。
チャドが、早速資金源…彼の尿を取るようで、指示を出された俺は、ベッドの四方へ手錠を括り、彼の腕を拘束した。
ベッドで彼に馬乗りになったチャドが、
さっき俺が買ってきた瓶を取り出して彼の股へと押し付ける。
「ッ"ぅ"あ"ン"ッ!♡」
大きな喘ぎ声と、震える身体に、見ているだけの俺は気が狂いそうだった。
精液は出るのに時間がかかるだけで量が少ないとイラついた様子で頭をかくチャドは、また時間厳守の精神か、彼から離れ俺に瓶を渡す。
射精した後、休憩させずに扱いて潮も取れと俺にまた指示をして、チャドが部屋から出る。
彼と2人きりになった俺は、早速後悔した。
こんな事したら、彼に嫌われる。
俺がチャドに代わり落札者と会えばよかったと思いながら、ゆっくりと彼が拘束されたベッドに乗った。
上から見下ろす彼の体は、薬を打った不健康な体とは違い、筋肉がないにも関わらず肌は白くハリがあり綺麗で、呼吸の度に動く腹は、ずっと見ていたかった。
だが、服を着ていても寒いこの部屋に裸でいるのは可哀想で、上半身だけ、床に落ちていた毛布をはたいてかけてやる。
(…ごめん)
心の中だけでそう言い、彼の性器へ手を伸ばした。
「ッぁ"…!♡あ"…ぁ"…!」
彼が俺の手に合わせて声を出す。
それだけで俺は興奮して、身体中の血が沸騰するのを感じるが、悟られないよういつも通りの呼吸をしながら、一定の速度で手を動かした。
彼の足が、ガクガクと痙攣しているのが分かる。
「ぁ"♡ぃ"く…"ッ♡イ"ッ…ぐ…!♡」
ッビュ、♡ビュル…ッ!♡
イくイくと、俺に報告しながら、二段階に分けて少ない射精をした。
彼の足がピン、と張り、俺の腰に当たる。
(…、ダメだ、これ)
俺は、彼の声と痴態に興奮した自分の股が窮屈になるのを感じる。
チャドに言われた通り瓶を持ち替えて、今度はきちんと声に出し
「…もう一回、ごめんな」
そう、彼に伝えた。
その後、何度も扱くが一向に潮を吹かない彼は、大きな喘ぎ声を上げた後、体を震わせて気を失った。
「っえ、…」
驚いた俺は、数回彼の顔をペチペチと手で叩くも、意識は戻らず、ふうふうと息をするだけの彼に焦り始める。
(ね、熱があるぞ…!)
遅れてそれに気付いた俺は、素早く四肢の拘束を解いた。
興奮で痛い股間は無視して、体を温める為に予備の布団を取りに行く。
警察に追われる時よりも本気で、全力で走り、すれ違った部下に
「大丈夫すか!?」
と叫ばれるが、無視して倉庫へ足を運んだ。
新めの毛布を2枚と、保温の為に、俺の部屋からダウンの布団を掴んで、また全速力でB7に戻り、彼の体に布団をかけた。
布団をかけながら、また彼が服を着てないのに気付く。
(これじゃ、風邪が悪化する…!)
辛そうな顔も綺麗で、見惚れそうになるが、我慢してまた走って、部屋を出る。
だが、水をかけられていたあの光景を思い出して、部屋に帰って鍵を閉め、また走った。
全速力で服屋へ着いた俺は、自分の財布と、服の値札を交互に見ていた。
(ぜ、全然ない…)
この仕事を始めたのは、弟達を食っていかせる為で、自分の小遣いなんて考えずに、ほぼ全財産を家に送っていた俺は、少しくらい持っとくんだったと後悔した。
「なあ、上下の服で、なるべく温かいのが欲しいんだ」
店員にそう告げるも、温かいのは高いんだとペラペラの服を渡される。
(…まあ、長袖だが…)
裸よりはマシかと思い、普段なら絶対買わない服を買って店を出た。
B7に入ると、俺は無言のまま彼に服を着せる。
どこを触っても傷一つなく、滑らかな肌に股間が熱くなるのを感じて、少し、少しだけだと下半身を露出した。
服を着せている途中でそんな事をしたので、まるで悪い事をしている気分になる。
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冷静に考えて、悪い事だったと思い直すも、もう止める理性は残ってなくて、彼の顔を見ながら自身を扱いた。
「…ッ、……く、…」
彼の辛そうな表情、上下する腹、胸の装飾…全てが俺の興奮材料になる。
冷たい石に囲まれた小さな部屋で、隣の部屋には死体が転がることを理解しているのに、そんなこともうどうでもよかった。
彼の先程の喘ぎ声を思い出しながら、脳内で妄想を加速させる。
この子と、一緒になれたらどんなにいいだろう。俺を中に入れて、気持ち良さそうに揺すられる彼を想像すると、すぐにイきそうだった。
(ああ、クソ…)
「……ッく、!」
彼にかからないように、自身を下に向けて射精する。
白いドロドロとした液体が石畳の床に垂れるのを見て、欲でモヤがかかっていた頭が晴れるのが分かった。
(な、何やってるんだ、俺は)
冷静になり、顔が熱くなる。
先程まで彼の上半身にかけていた、古い毛布で雑に床と手を拭いて、服を着た後に急いで洗い場まで走った。
「あれ!?まただ、どうしたんすかー?!」
さっきすれ違った部下が、また声を上げるのを無視して、今度は洗い場へ直行した。
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