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第一章・俺の価値
※好きになって※(微)
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ぎゅう、と俺を抱きしめる力強い腕に、心臓がバクバク鳴るのが分かった。
「…ッ、クリフ…!っあ!」
クリフが俺を抱きしめたまま一瞬起き上がり、またベッドへ、今度は平行になるように俺を下ろした。
身体がドキドキして、興奮する。
「…君は、その人に会いたいか?」
さっき、俺が先輩の兄貴の話をしたからだろうか、少し悲しそうな顔をして、上から俺に質問してくる。
(会いたい…けど)
「…別に、多分もう会えないし」
そう言いながら、閉じた足先同士を擦る。
「…俺達の、せいで?」
クリフは、俺の好きな人がこの世界にいると思っているのか、申し訳なさそうに聞いてきた。
「ち、違う…!この世界にはいないって意味…!」
(これじゃあ、なんか死んだみたいだな)
遅れてそう思いながら、大丈夫だとクリフを安心させる。
謝って欲しくて、悲しくさせたくて先輩の兄貴の話をしたんじゃない。
「…そう、なのか」
それでもクリフは、まだ悲しそうな顔で俺の首元へ顔を埋めて、俺の首元で数回呼吸をした後、俺の隣へ寝転んだ。
(あ、セックスする流れかと思った)
少し期待していた俺は、顔が熱くなるのを感じながら、隣に倒れているクリフを見つめる。
少し遅れてクリフがこちらを向いて、目が合ったまま数秒が流れた。
(…別に、待たなくてもいいのか)
なんとなく抱かれるせいで、女の子みたいに待ってたけど、そんなルールは無いことに気付いて、ゆっくり身体をクリフの方へ移動させる。
「…え」
俺はさっきと同じように、今度は四つん這いではなく全体重をかけてクリフの上に乗った。
上に乗った俺の背を、ゆっくりとクリフが撫でる。
「ん…♡」
いつもなら感じないそれも、今の状況では快楽に変換された。
(今日で俺、何回こんなことしてんだ)
俺って意外と体力あったんだなあと、他人事のように思う。
「君…、なんで…」
好きな人がいるんだろ、そう言いながら諭すように俺の背中を摩る。
(いるけど…だって会えないし…)
好きな人が居るくせに、不特定多数の人間と身体をつなげることに少し後ろめたくなって、自業自得に少しイラついた。
「良いじゃん、別に」
自分の雑さと、諭された恥ずかしさで少し涙目になりながら、クリフの股間に自分の股間も擦る。
「…ッん…!君…!」
「姫だって」
「はぁ…?」
俺がこんなにしてるのに、と傲慢に感じながら、先輩の兄貴の事を思い出していた俺は、久々に下の名前で自分を呼んでもらいたくて、コンプレックスに感じている自分の名前をクリフに伝えた。
「…俺の名前」
「…ッ」
息を呑む音がして、俺は身体を上にずらして今度はクリフの頬にキスをする。
名前を教えるなんて、クリフを先輩の兄貴の代わりにしてる。
その状況に気付いてまた罪悪感が心の中に広がっても、もうどうすることもできなかった。
(早く、早く俺を抱け…!)
そう願うように、恥ずかしくて涙目になりながらクリフの顔中にキスをした。
「…だ、ダメだ…!」
それでも、クリフは俺の肩を掴んで俺を止めた。
なんで、と言う前にクリフはまた口を開く。
「…ッ自分を大事にしろ、こんな事、しなくていい!」
顔を赤くして、少し大きな声で俺に言う。
勃起してる癖に、なんで。なんで。
俺とは違って、クリフはきちんとしてるんだろう。きっと、過去も未来も女の子を邪険に扱う事はないし、好きな人がいたら告白だってきちんと断る。
自分との、人間としての差を感じて、恥ずかしさが涙になって溢れる。
「…っあ」
俺の涙が数滴、クリフの首元に落ちる。
少し遅れて、ごめん、ごめんと謝りながら、クリフは俺を抱きしめた。
「…好きな人に、会いたいよな。辛い話をさせてごめん。」
そう言って、背中を撫でる手は優しいのに、
俺の名前は、呼んでくれなかった。
「…謝るなら、俺を抱けよ…ッ!」
ほぼ八つ当たりのように、泣きながらクリフの肩を叩く。
だが、依然として俺を抱きしめ拘束するクリフに、意気地なしと心の中で暴言を吐きながら、俺はいつの間にか眠っていた。
「…ッ、クリフ…!っあ!」
クリフが俺を抱きしめたまま一瞬起き上がり、またベッドへ、今度は平行になるように俺を下ろした。
身体がドキドキして、興奮する。
「…君は、その人に会いたいか?」
さっき、俺が先輩の兄貴の話をしたからだろうか、少し悲しそうな顔をして、上から俺に質問してくる。
(会いたい…けど)
「…別に、多分もう会えないし」
そう言いながら、閉じた足先同士を擦る。
「…俺達の、せいで?」
クリフは、俺の好きな人がこの世界にいると思っているのか、申し訳なさそうに聞いてきた。
「ち、違う…!この世界にはいないって意味…!」
(これじゃあ、なんか死んだみたいだな)
遅れてそう思いながら、大丈夫だとクリフを安心させる。
謝って欲しくて、悲しくさせたくて先輩の兄貴の話をしたんじゃない。
「…そう、なのか」
それでもクリフは、まだ悲しそうな顔で俺の首元へ顔を埋めて、俺の首元で数回呼吸をした後、俺の隣へ寝転んだ。
(あ、セックスする流れかと思った)
少し期待していた俺は、顔が熱くなるのを感じながら、隣に倒れているクリフを見つめる。
少し遅れてクリフがこちらを向いて、目が合ったまま数秒が流れた。
(…別に、待たなくてもいいのか)
なんとなく抱かれるせいで、女の子みたいに待ってたけど、そんなルールは無いことに気付いて、ゆっくり身体をクリフの方へ移動させる。
「…え」
俺はさっきと同じように、今度は四つん這いではなく全体重をかけてクリフの上に乗った。
上に乗った俺の背を、ゆっくりとクリフが撫でる。
「ん…♡」
いつもなら感じないそれも、今の状況では快楽に変換された。
(今日で俺、何回こんなことしてんだ)
俺って意外と体力あったんだなあと、他人事のように思う。
「君…、なんで…」
好きな人がいるんだろ、そう言いながら諭すように俺の背中を摩る。
(いるけど…だって会えないし…)
好きな人が居るくせに、不特定多数の人間と身体をつなげることに少し後ろめたくなって、自業自得に少しイラついた。
「良いじゃん、別に」
自分の雑さと、諭された恥ずかしさで少し涙目になりながら、クリフの股間に自分の股間も擦る。
「…ッん…!君…!」
「姫だって」
「はぁ…?」
俺がこんなにしてるのに、と傲慢に感じながら、先輩の兄貴の事を思い出していた俺は、久々に下の名前で自分を呼んでもらいたくて、コンプレックスに感じている自分の名前をクリフに伝えた。
「…俺の名前」
「…ッ」
息を呑む音がして、俺は身体を上にずらして今度はクリフの頬にキスをする。
名前を教えるなんて、クリフを先輩の兄貴の代わりにしてる。
その状況に気付いてまた罪悪感が心の中に広がっても、もうどうすることもできなかった。
(早く、早く俺を抱け…!)
そう願うように、恥ずかしくて涙目になりながらクリフの顔中にキスをした。
「…だ、ダメだ…!」
それでも、クリフは俺の肩を掴んで俺を止めた。
なんで、と言う前にクリフはまた口を開く。
「…ッ自分を大事にしろ、こんな事、しなくていい!」
顔を赤くして、少し大きな声で俺に言う。
勃起してる癖に、なんで。なんで。
俺とは違って、クリフはきちんとしてるんだろう。きっと、過去も未来も女の子を邪険に扱う事はないし、好きな人がいたら告白だってきちんと断る。
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「…っあ」
俺の涙が数滴、クリフの首元に落ちる。
少し遅れて、ごめん、ごめんと謝りながら、クリフは俺を抱きしめた。
「…好きな人に、会いたいよな。辛い話をさせてごめん。」
そう言って、背中を撫でる手は優しいのに、
俺の名前は、呼んでくれなかった。
「…謝るなら、俺を抱けよ…ッ!」
ほぼ八つ当たりのように、泣きながらクリフの肩を叩く。
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