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第6章 彼方からの侵略者
第16話 星を見る者
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「リューク……? その男が救世主?」
ゾンダール将軍の返答を聞いて、この場にいる全員が不審な目でオレを見つめる。
特にジークヘルト将軍は、何か敵意のようなものすら露わにしていた。
もしかしたら、オレが異世界人を撃退したというのが気になったのかもしれない。
ひと呼吸置いたあと、そのジークヘルト将軍が口を開いた。
「リュークとやら、その頭の布は取ったほうがよいのではないか? 各国の長たちが揃うこの場において不敬であろう。アルマカインが誰を連れてこようと勝手ではあるが、礼節だけは守ってもらいたいものだ」
そう言われて、オレはゾンダール将軍とクラヴィス陛下の顔を順に見る。
2人とも、無言でオレに頷いた。
これについては、事前に話し合っていた。タイミングを見て、この布を外そうと。
オレは頭部の布をゆっくりとほどいて、黒髪を国王たちに晒した。
黒髪が見えた途端、ペルアニウス皇帝は悲鳴を上げて椅子から転げ落ちる。
「ひっ、ひいいいいっ! く、黒っ、黒い髪っ、異世界人だっ!?」
「どういうことだっ!? この場に異世界人を連れてくるとは、裏切ったかアルマカイン!?」
「そうか! 異世界人を追い返したのではなく、ヤツらの軍門に降ったということか! ここに来たのも、我らを捕らえるのが目的だな!?」
「侵略者の手先になるなど、見損なったぞアルマカイン!」
異世界人の襲撃から必死の思いで逃げ延びたペルアニウス皇帝は完全に腰を抜かし、そのほかの国王たちも椅子から立ち上がっていっせいにオレから離れた。
それと入れ替わりに、護衛の者たちは前に出てオレと対峙する。
騒然となった会議室で、真っ先にジークヘルト将軍が剣を抜き、問答無用とばかりにオレに斬りかかってきた。
「何を考えているか知らぬが、わざわざこの場に来るとは……殺しに行く手間が省けたというもの。万象総てを断つ、私の究極の一撃を喰らうがいいっ! 『真羅極式・崩魔無幻斬』っ!!」
ジークヘルト将軍はオレを殺すため躊躇なく必殺剣を振るったが、その渾身の一撃を左手の指で軽くつまんで止める。
「ばっ……馬鹿なっ!? 私の最強技を片手で防ぐだとっ!?」
ジークヘルト将軍の攻撃が失敗したのを見て、後方で機を窺っていた者たち――各国の将軍やカルザックの『ホーリーセブンズ』、魔導大国マグナスの魔導士長、騒ぎを知って駆けつけた弓矢隊などが、いっせいにオレに向けて攻撃しようとした。
ジークヘルト将軍、ゾンダール将軍、クラヴィス陛下がオレのそばにいるにも構わず、まとめて殺すつもりらしい。
その一瞬前に、オレは『魔王の囁き』を発動して命令する。
「全員動くな! 大人しくするんだ」
「がっ……こ、これはいったい……!?」
オレの言葉を聞いた者たちがその場に硬直した。
『魔王の囁き』の効果でいっさい体を動かせなくなり、全員恐怖で顔面蒼白になっている。
あまりの驚きに言葉を失っていたジークヘルト将軍が、やっとの思いで口を開いた。
「い、異世界人とは、全員これほどの力を持っているというのか……!?」
「世界はもう終わりだ……まさか国王会議に潜り込んでくるとは想定外であった。疾風のごとき謀略、敵ながらあっぱれ。異世界人よ、そなたに慈悲があるのなら、他の者には手を出さず私の首だけでご容赦願いたい……」
「えっ、待ってください! 別に皆さんの命を奪いに来たわけじゃないです! オレは皆さんの……この世界の味方です!」
ペルアニウス皇帝が命を差し出しながら降伏してきたので、オレは慌てて敵じゃないことを宣言した。
状況を理解できず戸惑っているみんなに、ゾンダール将軍が説明を続ける。
「さっきも言った通り、このリュークは救世主です。この場を収めるためにリュークは力を使いましたが、皆に危害を加えるつもりは微塵もありません。どうかもう一度、リュークについて話を聞いてください」
「…………いや、これは失敬した。私としたことが少々取り乱してしまったようだ」
ゾンダール将軍の言葉を聞いたあと、比較的落ちついていたルードベルグ国王が口を開いた。
そういえば、オレの黒髪を見たあとも、ルードベルグ国王だけは何故かそんなに怖がってなかった気がする。
さすがに驚いてはいたけど、努めて冷静な反応をしてたっけ。
オレが不思議に思っていると、ルードベルグ国王が言葉を続けた。
「実はうちのイグゼクタがこのことを予見しておってな。そもそもカルザックで国王会議を行おうと提案したのはイグゼクタなのだ。救世主の出現にはカルザックが相応しいと……。それがまさか黒髪の人間とは想定外だったので、思わず肝を潰してしまったがな」
「わたくしも驚きました。星の報せでは、救世主が現れることしか分かりませんでしたので……」
ルードベルグ国王の言葉に続いて、『星詠み』イグゼクタが発言する。
彼女のギフト『占星守護者』は、星の動きや瞬きを見ることで未来を予知する能力だった。
それでオレがここに現れることもあらかじめ知っていたようだ。
イグゼクタの能力は世界に知られているので、彼女の言葉を聞いて他国の王様たちも少しずつ落ち着きを取り戻した。
その様子を確認してから、みんなにかかっている『魔王の囁き』の効果を解除した。
恐怖で腰が抜けたか、もしくは安堵感か、大勢が膝から崩れ落ちる。
ゆっくりと剣を収めたジークヘルト将軍は、両目を瞑り、唇を噛みしめながら、自戒するように言葉を吐き出した。
「私の慢心、誠に汗顔の至り。極めたと思った我が剣が、児戯に等しいものだったとは……リューク殿、すまぬ」
「あっ、いえ、お気になさらないでください」
大混乱となってどうなるか心配だったが、無事信じてもらえてオレはホッとした。
ただ、まだ全面的に信用されたわけじゃないらしく、何人かの国王は疑心暗鬼な表情を隠せていなかった。
それについてペルアニウス皇帝も気付いているようで、国王たちに代わって正直な気持ちを告白する。
「リューク殿、そなたには本当に申し訳ないが、やはりどこかでそなたを疑っている自分がいる。何せ、敵は未知の存在だ。どんな策略を仕掛けてくるか、見当も付かない。とはいえ、そなたに逆らう気は毛頭ない。この世界は、そなたにしか救えないのだからな」
「分かってます。皆さんの期待に応えられるように全力を尽くします」
オレがそう答えると、ペルアニウス皇帝が右手を前に差し出してきた。
オレも右手を出し、その手を握る。
「うむ、では今後について話し合うため、会議を再開しよう。リューク殿がいてくれれば、きっと侵略を食い止めることが可能なはずだ」
ペルアニウス皇帝がそう発言したところで、会議室の外――王城前の大広場が騒がしくなっていることに気付く。
防衛のため会議室には窓がなく、オレのことでこの場もパニックになっていたので分からなかったが、城の外で何かが起こっているようだ。
何ごとかと確認しようとしたところ、会議室の外で待機していた騎士たちを掻き分けて、伝令係がこの部屋に飛び込んできた。
「たっ、大変です陛下っ、怪しいヤツらが襲撃に現れました! すでに我が軍は壊滅状態です!」
「な……なんだとっ!?」
報告に驚くと同時に、男の大声が大広場から聞こえてくる。
「聞け、国王どもっ! そこにいるのは分かっている。オレたちは降伏勧告をしにやって来た。もう1つ、リュークってヤツはここに来ているかーっ!?」
ゾンダール将軍の返答を聞いて、この場にいる全員が不審な目でオレを見つめる。
特にジークヘルト将軍は、何か敵意のようなものすら露わにしていた。
もしかしたら、オレが異世界人を撃退したというのが気になったのかもしれない。
ひと呼吸置いたあと、そのジークヘルト将軍が口を開いた。
「リュークとやら、その頭の布は取ったほうがよいのではないか? 各国の長たちが揃うこの場において不敬であろう。アルマカインが誰を連れてこようと勝手ではあるが、礼節だけは守ってもらいたいものだ」
そう言われて、オレはゾンダール将軍とクラヴィス陛下の顔を順に見る。
2人とも、無言でオレに頷いた。
これについては、事前に話し合っていた。タイミングを見て、この布を外そうと。
オレは頭部の布をゆっくりとほどいて、黒髪を国王たちに晒した。
黒髪が見えた途端、ペルアニウス皇帝は悲鳴を上げて椅子から転げ落ちる。
「ひっ、ひいいいいっ! く、黒っ、黒い髪っ、異世界人だっ!?」
「どういうことだっ!? この場に異世界人を連れてくるとは、裏切ったかアルマカイン!?」
「そうか! 異世界人を追い返したのではなく、ヤツらの軍門に降ったということか! ここに来たのも、我らを捕らえるのが目的だな!?」
「侵略者の手先になるなど、見損なったぞアルマカイン!」
異世界人の襲撃から必死の思いで逃げ延びたペルアニウス皇帝は完全に腰を抜かし、そのほかの国王たちも椅子から立ち上がっていっせいにオレから離れた。
それと入れ替わりに、護衛の者たちは前に出てオレと対峙する。
騒然となった会議室で、真っ先にジークヘルト将軍が剣を抜き、問答無用とばかりにオレに斬りかかってきた。
「何を考えているか知らぬが、わざわざこの場に来るとは……殺しに行く手間が省けたというもの。万象総てを断つ、私の究極の一撃を喰らうがいいっ! 『真羅極式・崩魔無幻斬』っ!!」
ジークヘルト将軍はオレを殺すため躊躇なく必殺剣を振るったが、その渾身の一撃を左手の指で軽くつまんで止める。
「ばっ……馬鹿なっ!? 私の最強技を片手で防ぐだとっ!?」
ジークヘルト将軍の攻撃が失敗したのを見て、後方で機を窺っていた者たち――各国の将軍やカルザックの『ホーリーセブンズ』、魔導大国マグナスの魔導士長、騒ぎを知って駆けつけた弓矢隊などが、いっせいにオレに向けて攻撃しようとした。
ジークヘルト将軍、ゾンダール将軍、クラヴィス陛下がオレのそばにいるにも構わず、まとめて殺すつもりらしい。
その一瞬前に、オレは『魔王の囁き』を発動して命令する。
「全員動くな! 大人しくするんだ」
「がっ……こ、これはいったい……!?」
オレの言葉を聞いた者たちがその場に硬直した。
『魔王の囁き』の効果でいっさい体を動かせなくなり、全員恐怖で顔面蒼白になっている。
あまりの驚きに言葉を失っていたジークヘルト将軍が、やっとの思いで口を開いた。
「い、異世界人とは、全員これほどの力を持っているというのか……!?」
「世界はもう終わりだ……まさか国王会議に潜り込んでくるとは想定外であった。疾風のごとき謀略、敵ながらあっぱれ。異世界人よ、そなたに慈悲があるのなら、他の者には手を出さず私の首だけでご容赦願いたい……」
「えっ、待ってください! 別に皆さんの命を奪いに来たわけじゃないです! オレは皆さんの……この世界の味方です!」
ペルアニウス皇帝が命を差し出しながら降伏してきたので、オレは慌てて敵じゃないことを宣言した。
状況を理解できず戸惑っているみんなに、ゾンダール将軍が説明を続ける。
「さっきも言った通り、このリュークは救世主です。この場を収めるためにリュークは力を使いましたが、皆に危害を加えるつもりは微塵もありません。どうかもう一度、リュークについて話を聞いてください」
「…………いや、これは失敬した。私としたことが少々取り乱してしまったようだ」
ゾンダール将軍の言葉を聞いたあと、比較的落ちついていたルードベルグ国王が口を開いた。
そういえば、オレの黒髪を見たあとも、ルードベルグ国王だけは何故かそんなに怖がってなかった気がする。
さすがに驚いてはいたけど、努めて冷静な反応をしてたっけ。
オレが不思議に思っていると、ルードベルグ国王が言葉を続けた。
「実はうちのイグゼクタがこのことを予見しておってな。そもそもカルザックで国王会議を行おうと提案したのはイグゼクタなのだ。救世主の出現にはカルザックが相応しいと……。それがまさか黒髪の人間とは想定外だったので、思わず肝を潰してしまったがな」
「わたくしも驚きました。星の報せでは、救世主が現れることしか分かりませんでしたので……」
ルードベルグ国王の言葉に続いて、『星詠み』イグゼクタが発言する。
彼女のギフト『占星守護者』は、星の動きや瞬きを見ることで未来を予知する能力だった。
それでオレがここに現れることもあらかじめ知っていたようだ。
イグゼクタの能力は世界に知られているので、彼女の言葉を聞いて他国の王様たちも少しずつ落ち着きを取り戻した。
その様子を確認してから、みんなにかかっている『魔王の囁き』の効果を解除した。
恐怖で腰が抜けたか、もしくは安堵感か、大勢が膝から崩れ落ちる。
ゆっくりと剣を収めたジークヘルト将軍は、両目を瞑り、唇を噛みしめながら、自戒するように言葉を吐き出した。
「私の慢心、誠に汗顔の至り。極めたと思った我が剣が、児戯に等しいものだったとは……リューク殿、すまぬ」
「あっ、いえ、お気になさらないでください」
大混乱となってどうなるか心配だったが、無事信じてもらえてオレはホッとした。
ただ、まだ全面的に信用されたわけじゃないらしく、何人かの国王は疑心暗鬼な表情を隠せていなかった。
それについてペルアニウス皇帝も気付いているようで、国王たちに代わって正直な気持ちを告白する。
「リューク殿、そなたには本当に申し訳ないが、やはりどこかでそなたを疑っている自分がいる。何せ、敵は未知の存在だ。どんな策略を仕掛けてくるか、見当も付かない。とはいえ、そなたに逆らう気は毛頭ない。この世界は、そなたにしか救えないのだからな」
「分かってます。皆さんの期待に応えられるように全力を尽くします」
オレがそう答えると、ペルアニウス皇帝が右手を前に差し出してきた。
オレも右手を出し、その手を握る。
「うむ、では今後について話し合うため、会議を再開しよう。リューク殿がいてくれれば、きっと侵略を食い止めることが可能なはずだ」
ペルアニウス皇帝がそう発言したところで、会議室の外――王城前の大広場が騒がしくなっていることに気付く。
防衛のため会議室には窓がなく、オレのことでこの場もパニックになっていたので分からなかったが、城の外で何かが起こっているようだ。
何ごとかと確認しようとしたところ、会議室の外で待機していた騎士たちを掻き分けて、伝令係がこの部屋に飛び込んできた。
「たっ、大変です陛下っ、怪しいヤツらが襲撃に現れました! すでに我が軍は壊滅状態です!」
「な……なんだとっ!?」
報告に驚くと同時に、男の大声が大広場から聞こえてくる。
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