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第6章 彼方からの侵略者
第21話 不滅のドラゴン
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岩隈守、鬼島豪太朗、飛鳥礼斗の3人がカルザックに出向いていたときと同時刻。
ウインガリア帝国の北東にある秘境ゲルトラム山脈に、ヒョロリと痩せこけた人間の姿があった。
蛇を思わせるような顔つきの男――『ニホンジン』最強メンバーの1人、世羅竜司である。
彼はある任命を受けてこの地まで来ていたのだった。
ゲルトラム山脈は秘境と呼ぶに相応しいほどケタ外れに険しく、一流冒険者ですら太刀打ちできないような危険なモンスターも多数生息している場所だ。
奥地まで足を運んで無事に帰ってきたものなど皆無に等しく、ほぼ人跡未踏と言っていい未開の地である。
Sランク冒険者最上位クラスの者たちが束になっても、奥に到達することは容易ではないだろう。
そんな危険地帯なのに、世羅竜司は無人の野を歩くが如く、気ままにその足を進めていく。
ふとどこからともなく超巨大な蛇――危険度SS級モンスター幽界の巨蛇神が現れ、世羅竜司へと襲いかかった。
このモンスターは擬態が得意で、体色をカメレオンのように変えて風景に溶け込み、そのうえ相手の探知系スキルを妨害する特殊能力も持っている。
そのおかげで、体長30メートルもある巨体ながらも、相手にいっさい気付かれることなく間近まで接近することが可能だった。
多くのSランク冒険者が、この幽界の巨蛇神に為す術なく殺されているくらいだ。
世羅竜司も幽界の巨蛇神の接近には気付かず、その巨大な牙に上半身を噛み付かれる。
「まぁたコイツか。いったい何匹いやがるんだ、鬱陶しいヤツだぜ」
そうぼやきながら面倒くさそうに右手を振ると、それに当たった幽界の巨蛇神の頭部が粉々に爆発した。
噛み付かれたはずの世羅竜司は無傷である。
ただ、頭部が破裂したせいで、世羅竜司は幽界の巨蛇神の返り血を全身に浴びてしまう。
「あっくそっ、汚えっ! イライラして、ちょっと力を入れ過ぎちまったか。オレの能力は手加減するのが難しくて困るぜ」
世羅竜司はとりあえず顔に付いた血だけ拭き取り、また歩き始める。
しばらく進むと、今度は体長15メートル、翼を広げた翼幅は30メートルを超える巨鳥――八つ裂きの大鷲が上空から世羅竜司に襲いかかった。
八つ裂きの大鷲の羽ばたきから発生する巨大風刃波は、ノーマルドラゴンの首すら軽く切断する。
それをまともに数発受けても、やはり世羅竜司は無傷のままだ。
「あーホント面倒くせえ。小虫程度がオレに構うなっ」
世羅竜司は八つ裂きの大鷲目掛けてジャンプすると、先ほどと同じように拳で殴りつけた。
すると、八つ裂きの大鷲の頭部は紙細工のようにぺしゃんこに潰れる。
「よし、今度は手加減が上手くいったな。いちいち返り血を浴びてたんじゃたまったもんじゃねえ」
世羅竜司のパンチはどう見てもそんなに強い威力には見えないが、八つ裂きの大鷲の頭部はまるで硬さを失ってしまったかのように簡単に壊れたのだった。
細い小枝を無造作に踏み潰すかのように、出会うモンスターたちを軽々と殺戮し、世羅竜司はようやく目的地に辿り着く。
ゲルトラム山脈奥深くにそびえ立つ山の頂上付近に、巨大な横穴が開いていた。
穴の入り口は高さ25メートル横幅30メートルほどで、それは自然に形成されたものではなく、明らかに作られたもの――そう、生物の巣穴のように見えた。
これほど巨大な巣穴に棲む主は、果たしていったいどんな生物なのか……?
「おーい、誰かいるかーっ? いるなら出てこーい!」
世羅竜司は、やる気がなさそうな覇気のない声で呼びかける。
道中もずっと面倒くさそうにしていたことから、物事に対してあまり真剣に向き合わない性格らしい。
それはこの巣穴の主が現れても変わらなかった。
「なんの用で我を起こした? 返答次第では、塵も残さず消してやるぞ」
そう言葉を発しながら洞穴から出てきたのは、4つの頭と2本の尾を持つ、体長50メートルを超える真紅のドラゴンだった。
☆
「お前が最強の古代竜、神怒の四頭竜ってヤツか? 寝ていたところ悪いが、お前を殺しに来た」
世羅竜司は目の前の巨大ドラゴンを恐れず、不敵に宣言する。
この世界のどこかに数頭だけ生存しているという古代竜。
神怒の四頭竜は、その中でも最古にして最強のドラゴンだった。
通常のドラゴンとは違って人語を解する古代竜は、人類よりも高い知能を持つ超越者だ。
強烈なブレスだけでなく、『竜言語魔法』という特殊な超魔法も使うことができる。
人類ではけっして敵わない相手だが、神怒の四頭竜も人類と積極的に関わるようなことはなかった。
人が到達できない場所で、ひっそりと生き続ける『不滅の者』な存在。
遙か昔から伝説だけは語り継がれ、それを頼りに世羅竜司はここまでやって来たのだった。
「まだ生きててくれて助かったぜ。別の古代竜を探すのはちょっと骨が折れそうだったからな」
「我は死なぬ。世界が終わるそのときまで我は生き続ける。だが貴様の命はここで終わる。つまらぬことで我を起こした罪、その身をもって償うがよい」
取るに足らない人間に殺しに来たと言われ、神怒の四頭竜は久しく忘れていた不愉快という感情を思い出す。
とはいうものの、人間程度に何を言われても怒りの感情などは湧いてこない。
神怒の四頭竜にとって、人間など簡単に死んでしまう脆弱な存在なのだから。
「消し炭になって死ね」
どういう声帯をしているのか、神怒の四頭竜は噛み合わせた口をほとんど動かさずに言葉を発した直後、4つの頭のうちの1つが顎門を開けて強烈な火炎ブレスを吐いた。
その轟音は周囲一帯の空気を震わせ、数万度の熱によって金属も岩石も瞬時に気化する。
しかし、その超超高熱の炎を浴びても、世羅竜司はまったく無傷だった。
「ここは山頂近くでちっと寒かったから、体が温まってちょうどいいぜ」
「ぐぬっ……貴様、炎熱遮断の装備でも着けておるのか? ならば仕方ない、我の本気で塵も残さず消してやる」
神怒の四頭竜がそう宣言したあと、4つの口から不可思議な音が漏れ出した。
人間では理解できないその言葉は竜言語であり、神怒の四頭竜は『竜言語魔法』を発動するための詠唱をしていたのだった。
4つの頭が同時詠唱することで使用可能になる四重複合魔法。
「我の最強魔法を喰らうがいい、『極大の消滅波動砲』っ!」
そう言いながら4つの口から同時に発射された光線は、空中で合成されて巨大な光となり、渦を巻きながら世羅竜司に直撃する。
光が通過した地形は削り取られたように消滅し、さらに前方にそびえ立っていた数々の山すら消し飛ばした。
この凄まじい破壊力には、最強の肉体を持つ鬼島豪太朗すら恐らく耐えきれないだろう。
しかし、眩い光が弱まってくると、そこにはまるで無傷の世羅竜司が立っていたのだった。
「ば……馬鹿な、『極大の消滅波動砲』に耐えきれるものなど存在するはずがない」
「この世界の生物ならそうかもな。だが残念ながらオレは違う。相手が悪かったな」
世羅竜司は薄ら笑いを浮かべながらそう言うと、動揺している神怒の四頭竜に素早く近付き、頭部の1つを殴りつける。
すると、硬質な竜鱗に覆われた頭部は軽々破壊されてしまった。
「ぐおおっ、こ、この攻撃力は……!?」
痛みに思わず後ずさりする神怒の四頭竜だが、世羅竜司はすぐさま追いかけて別の頭部を破壊する。
「ぐああああっ!」
神怒の四頭竜の残り2つの頭部が同時に悲鳴を上げる。
神怒の四頭竜はかなりの巨体ではあるが、けっして動きは遅くない。本来なら、この程度の攻撃は充分躱せるはず。
しかし、世羅竜司の攻撃が見えていながら、神怒の四頭竜は何故かそれを避けられなかった。
この相手はヤバイ。自分では勝てない。
まさか、『不滅の者』であるはずの自分が死ぬ!?
神怒の四頭竜の本能は、生まれて初めて本当の恐怖を知る。
もはや逃げるしかないと悟った神怒の四頭竜は急いで空に舞い上がろうとするが、世羅竜司は当然それを許さない。
「わざわざこんなとこまでやって来たんだ。逃がすわけねえだろ!」
世羅竜司は長いチェーンを取り出し、神怒の四頭竜に向けて投げつけた。
そのチェーンが神怒の四頭竜の首にくるくると巻き付いたのを確認すると、世羅竜司はぐいっと引っ張る。
すると、舞い上がりつつあった神怒の四頭竜の巨体が簡単に引きずり落とされてしまう。
おかしい。どう考えてもこの程度の力に負ける自分じゃないと、神怒の四頭竜は困惑した。
というより、何故か力が入らないような感覚。
強靱な自分の体も、紙細工のように頼りなく感じる。
まるで自分は地を這うちっぽけなトカゲで、目の前の男は巨人のよう。
怖い、怖い、怖い。死にたくない。
そんな怯える神怒の四頭竜に世羅竜司は剣を振り上げ、そのまま素早く振り下ろした。
「あばよ」
恐怖で逃げることもできなかった神怒の四頭竜の体が、真っ二つに切断される。
こうして地上最強のドラゴンは小虫のように殺されてしまったのだった。
「さぁて、これで用事は終わったし、帝都に帰るとするか」
世羅竜司は神怒の四頭竜の死体から魔石を回収すると、『帰還石』で仲間のもとに戻った。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
『勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる!』コミックス第2巻が来週9/17頃に発売されます!
この素敵な表紙が目印ですので、どうぞよろしくお願いいたします。
ウインガリア帝国の北東にある秘境ゲルトラム山脈に、ヒョロリと痩せこけた人間の姿があった。
蛇を思わせるような顔つきの男――『ニホンジン』最強メンバーの1人、世羅竜司である。
彼はある任命を受けてこの地まで来ていたのだった。
ゲルトラム山脈は秘境と呼ぶに相応しいほどケタ外れに険しく、一流冒険者ですら太刀打ちできないような危険なモンスターも多数生息している場所だ。
奥地まで足を運んで無事に帰ってきたものなど皆無に等しく、ほぼ人跡未踏と言っていい未開の地である。
Sランク冒険者最上位クラスの者たちが束になっても、奥に到達することは容易ではないだろう。
そんな危険地帯なのに、世羅竜司は無人の野を歩くが如く、気ままにその足を進めていく。
ふとどこからともなく超巨大な蛇――危険度SS級モンスター幽界の巨蛇神が現れ、世羅竜司へと襲いかかった。
このモンスターは擬態が得意で、体色をカメレオンのように変えて風景に溶け込み、そのうえ相手の探知系スキルを妨害する特殊能力も持っている。
そのおかげで、体長30メートルもある巨体ながらも、相手にいっさい気付かれることなく間近まで接近することが可能だった。
多くのSランク冒険者が、この幽界の巨蛇神に為す術なく殺されているくらいだ。
世羅竜司も幽界の巨蛇神の接近には気付かず、その巨大な牙に上半身を噛み付かれる。
「まぁたコイツか。いったい何匹いやがるんだ、鬱陶しいヤツだぜ」
そうぼやきながら面倒くさそうに右手を振ると、それに当たった幽界の巨蛇神の頭部が粉々に爆発した。
噛み付かれたはずの世羅竜司は無傷である。
ただ、頭部が破裂したせいで、世羅竜司は幽界の巨蛇神の返り血を全身に浴びてしまう。
「あっくそっ、汚えっ! イライラして、ちょっと力を入れ過ぎちまったか。オレの能力は手加減するのが難しくて困るぜ」
世羅竜司はとりあえず顔に付いた血だけ拭き取り、また歩き始める。
しばらく進むと、今度は体長15メートル、翼を広げた翼幅は30メートルを超える巨鳥――八つ裂きの大鷲が上空から世羅竜司に襲いかかった。
八つ裂きの大鷲の羽ばたきから発生する巨大風刃波は、ノーマルドラゴンの首すら軽く切断する。
それをまともに数発受けても、やはり世羅竜司は無傷のままだ。
「あーホント面倒くせえ。小虫程度がオレに構うなっ」
世羅竜司は八つ裂きの大鷲目掛けてジャンプすると、先ほどと同じように拳で殴りつけた。
すると、八つ裂きの大鷲の頭部は紙細工のようにぺしゃんこに潰れる。
「よし、今度は手加減が上手くいったな。いちいち返り血を浴びてたんじゃたまったもんじゃねえ」
世羅竜司のパンチはどう見てもそんなに強い威力には見えないが、八つ裂きの大鷲の頭部はまるで硬さを失ってしまったかのように簡単に壊れたのだった。
細い小枝を無造作に踏み潰すかのように、出会うモンスターたちを軽々と殺戮し、世羅竜司はようやく目的地に辿り着く。
ゲルトラム山脈奥深くにそびえ立つ山の頂上付近に、巨大な横穴が開いていた。
穴の入り口は高さ25メートル横幅30メートルほどで、それは自然に形成されたものではなく、明らかに作られたもの――そう、生物の巣穴のように見えた。
これほど巨大な巣穴に棲む主は、果たしていったいどんな生物なのか……?
「おーい、誰かいるかーっ? いるなら出てこーい!」
世羅竜司は、やる気がなさそうな覇気のない声で呼びかける。
道中もずっと面倒くさそうにしていたことから、物事に対してあまり真剣に向き合わない性格らしい。
それはこの巣穴の主が現れても変わらなかった。
「なんの用で我を起こした? 返答次第では、塵も残さず消してやるぞ」
そう言葉を発しながら洞穴から出てきたのは、4つの頭と2本の尾を持つ、体長50メートルを超える真紅のドラゴンだった。
☆
「お前が最強の古代竜、神怒の四頭竜ってヤツか? 寝ていたところ悪いが、お前を殺しに来た」
世羅竜司は目の前の巨大ドラゴンを恐れず、不敵に宣言する。
この世界のどこかに数頭だけ生存しているという古代竜。
神怒の四頭竜は、その中でも最古にして最強のドラゴンだった。
通常のドラゴンとは違って人語を解する古代竜は、人類よりも高い知能を持つ超越者だ。
強烈なブレスだけでなく、『竜言語魔法』という特殊な超魔法も使うことができる。
人類ではけっして敵わない相手だが、神怒の四頭竜も人類と積極的に関わるようなことはなかった。
人が到達できない場所で、ひっそりと生き続ける『不滅の者』な存在。
遙か昔から伝説だけは語り継がれ、それを頼りに世羅竜司はここまでやって来たのだった。
「まだ生きててくれて助かったぜ。別の古代竜を探すのはちょっと骨が折れそうだったからな」
「我は死なぬ。世界が終わるそのときまで我は生き続ける。だが貴様の命はここで終わる。つまらぬことで我を起こした罪、その身をもって償うがよい」
取るに足らない人間に殺しに来たと言われ、神怒の四頭竜は久しく忘れていた不愉快という感情を思い出す。
とはいうものの、人間程度に何を言われても怒りの感情などは湧いてこない。
神怒の四頭竜にとって、人間など簡単に死んでしまう脆弱な存在なのだから。
「消し炭になって死ね」
どういう声帯をしているのか、神怒の四頭竜は噛み合わせた口をほとんど動かさずに言葉を発した直後、4つの頭のうちの1つが顎門を開けて強烈な火炎ブレスを吐いた。
その轟音は周囲一帯の空気を震わせ、数万度の熱によって金属も岩石も瞬時に気化する。
しかし、その超超高熱の炎を浴びても、世羅竜司はまったく無傷だった。
「ここは山頂近くでちっと寒かったから、体が温まってちょうどいいぜ」
「ぐぬっ……貴様、炎熱遮断の装備でも着けておるのか? ならば仕方ない、我の本気で塵も残さず消してやる」
神怒の四頭竜がそう宣言したあと、4つの口から不可思議な音が漏れ出した。
人間では理解できないその言葉は竜言語であり、神怒の四頭竜は『竜言語魔法』を発動するための詠唱をしていたのだった。
4つの頭が同時詠唱することで使用可能になる四重複合魔法。
「我の最強魔法を喰らうがいい、『極大の消滅波動砲』っ!」
そう言いながら4つの口から同時に発射された光線は、空中で合成されて巨大な光となり、渦を巻きながら世羅竜司に直撃する。
光が通過した地形は削り取られたように消滅し、さらに前方にそびえ立っていた数々の山すら消し飛ばした。
この凄まじい破壊力には、最強の肉体を持つ鬼島豪太朗すら恐らく耐えきれないだろう。
しかし、眩い光が弱まってくると、そこにはまるで無傷の世羅竜司が立っていたのだった。
「ば……馬鹿な、『極大の消滅波動砲』に耐えきれるものなど存在するはずがない」
「この世界の生物ならそうかもな。だが残念ながらオレは違う。相手が悪かったな」
世羅竜司は薄ら笑いを浮かべながらそう言うと、動揺している神怒の四頭竜に素早く近付き、頭部の1つを殴りつける。
すると、硬質な竜鱗に覆われた頭部は軽々破壊されてしまった。
「ぐおおっ、こ、この攻撃力は……!?」
痛みに思わず後ずさりする神怒の四頭竜だが、世羅竜司はすぐさま追いかけて別の頭部を破壊する。
「ぐああああっ!」
神怒の四頭竜の残り2つの頭部が同時に悲鳴を上げる。
神怒の四頭竜はかなりの巨体ではあるが、けっして動きは遅くない。本来なら、この程度の攻撃は充分躱せるはず。
しかし、世羅竜司の攻撃が見えていながら、神怒の四頭竜は何故かそれを避けられなかった。
この相手はヤバイ。自分では勝てない。
まさか、『不滅の者』であるはずの自分が死ぬ!?
神怒の四頭竜の本能は、生まれて初めて本当の恐怖を知る。
もはや逃げるしかないと悟った神怒の四頭竜は急いで空に舞い上がろうとするが、世羅竜司は当然それを許さない。
「わざわざこんなとこまでやって来たんだ。逃がすわけねえだろ!」
世羅竜司は長いチェーンを取り出し、神怒の四頭竜に向けて投げつけた。
そのチェーンが神怒の四頭竜の首にくるくると巻き付いたのを確認すると、世羅竜司はぐいっと引っ張る。
すると、舞い上がりつつあった神怒の四頭竜の巨体が簡単に引きずり落とされてしまう。
おかしい。どう考えてもこの程度の力に負ける自分じゃないと、神怒の四頭竜は困惑した。
というより、何故か力が入らないような感覚。
強靱な自分の体も、紙細工のように頼りなく感じる。
まるで自分は地を這うちっぽけなトカゲで、目の前の男は巨人のよう。
怖い、怖い、怖い。死にたくない。
そんな怯える神怒の四頭竜に世羅竜司は剣を振り上げ、そのまま素早く振り下ろした。
「あばよ」
恐怖で逃げることもできなかった神怒の四頭竜の体が、真っ二つに切断される。
こうして地上最強のドラゴンは小虫のように殺されてしまったのだった。
「さぁて、これで用事は終わったし、帝都に帰るとするか」
世羅竜司は神怒の四頭竜の死体から魔石を回収すると、『帰還石』で仲間のもとに戻った。
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