レプリカント 退廃した世界で君と

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レプリカント After Story

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 冬支度が済み、寝室のセッティングをなんどもやり替えて。ああでもないこうでもないと、銀狼が。何に拘っているのか、人の視点ではまるで理解できない領域で頭を悩ませている。そんな日々すら過ぎ去って。
 今日の夜。始めよう。そう切り出した相手。狼の頭がいやに緊張した顔をして。僕まで、その緊張に釣られ。う、うんって。彼のお気に入りのソファーに座りながら返事していた。そっか。蜜月今日からするんだ。明日しようとか、予定を決めるようにじゃなく。思い立ったように。
 思いつきで言っているわけではないのが、わかっていた。から、衝撃を受ける程ではなく。ずっと、ガルシェはこの日の為に準備していたのだから。僕とえっちな事をする為に。丁寧に、一つずつ。必要な物を外で拾って、買って、獲って。様変わりした寝室を見れば、一目瞭然であろうか。所狭しと、食料が運び込まれ。タオル等、小物も。何日も、同じ部屋で。出なくて良いように。離れなくて、良いように。
「ルルシャ、本当に良いんだな。本当の、本当に、良いんだな」
 ソファーに座った僕に対して。目の前に跪いた男は。最後の確認とばかりに、人の手を取り。こちらの顔色を窺いながら。不安そうな目をさせて。
「俺は、きっとルルシャを傷つける。それは身体だけじゃない。言葉でも、きっと言う。言ってしまう。獣となった俺が、嫌われるのが怖い。だから、もし、もしも不安なら。今からでも止めたって良いんだ」
 僕に嫌われるのを恐れた銀狼が。ここまでしておいて。準備を全て終えた段階で。どうしてそれを聞くのだろうか。こちらを思いやってだけではない。関係が変わるのが怖いのだ。一歩踏み込むのを。今までの僕達と、変わるのが。ガルシェも、それを恐れている。
 それに。理性が全部なくなってしまうわけではない。蜜月と言っても。僕は狼の雌ではないのだから、彼の身体が反応はしない。発情期にならない。人がえっちな事を考えているなって、読み取って。興奮はしても。それは本能の勘違いだ。君は、言う程、獣ではないよって。相手の頬に手を這わし。優しく、ガルシェが僕にするように。語り掛ける。大丈夫だよって。受け止めて見せる。受け止めてあげたかった、彼の獣欲を。性欲を。我慢ばかりさせて。
 伝わったのだろう。不安そうに固まっていた銀の尾が、ぎこちなく揺れているのが確認できた。安心した狼の顔。でもその鼻先が突然、ソファーに座る。人の股座に突っ込んで来て。防ぐ間もなく男の手が、腰に回り。逃げないように固定される。
 服を着ているけれど、生暖かい吐息が。僕の股間に感じられた。ガルシェが、その嗅覚が鋭い。鼻を。自慢のそれを。僕の股間に押し付けて。嗅いでいた。深く、深く。深呼吸しながら。
「ガルシェっ! 君、何してっ!?」
「このまま。大人しくしててくれ。ルルシャ。もう少し、もう少しだから……」
 何がもう少しなのだろう。そんな場所、嗅いで良いものではなかった。嗅がれて、嬉しい場所でも、許可して良い所でもなかった。そんな、好んで嗅ぐような。場所ではなかった。人の股間を。変態の所業だ。僕の夫が、また奇行に走っている。止めなきゃいけない。そう思うのに、ぐりぐりと鼻先が押してきて。服の中にある、萎えている性器を刺激される。黒い鼻が押し上げてくる。ガルシェが、それをしている。そう思うとぴくりと反応して。最近、性的な触り方をしてくる相手に。生殺しに近い状態であったというのも、関係してるのかもしれない。この程度で、勃起しそうであると。自分の身体の状態を察知して、慌てた。ぽかぽかと、狼の頭を叩いても。退いてくれない。止めてくれない。布を貫通して性器に吹き付ける、男の息。
「来た」
 唐突に。銀狼がそう言った。何が来たというの。熱い吐息を吐き出して。毛を逆立てながら。腰を押さえていた手が離れ。このまま、押し倒されるのかなって。行動の始まりに危惧していると。どうしてか、その丸く整えられた獣の爪が生えた手。人ではなく向かう先は自身の胸であって。家の中であったから、ガルシェは。上半身は基本何も着ていない。下は、ちゃんと着てくれているが。裸族の血筋であるから、リラックスできる場所では服を必要以上に着たがらない。僕の股間を嗅ぐ為に身を倒していたのもあった。だというのもあり、男の毛が。後頭部から背にかけて。大きく逆立っているのが良く見え。胸を押さえたまま。苦しそうに、呻いた。どこか呼吸も荒い。
「ウグッ、ウゥ……」
 ガタガタと肩を震わせて。ただ事じゃなかった。心不全であろうかと、ソファーから飛び上がった僕は。どうしよう、どうしようと。頭が空っぽになりながら。相手の肩に触れ、必死に男の名前を呼ぶ。ガルシェ、どうしたの。痛いの、苦しいの。ガルシェ、ガルシェって。必死にその耳に話しかけているのに。フローリングの上に、ぼたぼたと涎を垂らしながら。ただ呻くだけで。返事をしてくれない狼に。僕の焦りだけが募る。
 でもこの異常事態ではあるが、どこか身に覚えがあるそれに。というより、既視感。でもそんな筈がなくて。彼がその状態になりうる要素はお互いにこれまで自衛にと。気をつけていたのに。
「ガルシェ、最近。最後に自慰したの、いつ?」
 こんな状況で聞くようなものではなかった。普通の人ならそうで。でも相手は異種族であったから。これまで忙しそうに。動き回って、冬支度に働く夫の。そういった部分。デリケートな話題であったが。過呼吸のように、息をしようとして。吸うべきタイミングで吐き出して。咽ていた。涎が、僕の太腿にまで飛散する。体温がいつになく高い。元々、人よりもずっと。毛皮があるから高いのだけれど。まるで先日の風邪のように。
「ハッ。ハハ、できた。予想通り、できたぞ。ルルシャ、発情できた。お前相手に、ひゅ、ひュぅ……ウゥ」
 細い息遣いに、とうとう倒れそうになる相手を必死に支えた。重い。こちらの質問に答えてくれない相手だったが。彼が、どうしていたか。僕は理解した。禁欲を、まさか自分から。でもどうしてそんな事。こうなるとわかっていて。こんな、苦しそうにして。
 心臓の鼓動。その脈打つ回数は生まれながらに決まっているという。今の銀狼は、狂ったように。とても短い間隔で、脈打っているのが。もたれかかって来る相手と触れ合って。伝わって来た。その心音。正常ではない。刻み方。こんな無茶を。虎の先生も、そしてガルシェ本人も言っていたじゃないか。過発情は脳内に分泌されるストレスホルモンのせいで、最悪死に至るって。自殺でもする気だったの。こんなに、僕の心を虜にしておいて。縛っておいて、放り出すつもりだったの。
「番が、交尾してくれるって。誘ってくれているのに。発情できないなんて、雄。失格だろう……」
 乾いた笑いで。きっと人間だったなら、大量の汗でも搔いていそうな銀狼。毛皮がどこかしっとりとしていた。排熱が追いつかないのか。いつもはしまわれている舌が、脱力したように口からだらしなく飛び出ていて。ぶらぶら、彼が喋る度に揺れている。座っているのもしんどそうだ。至近距離にある狼の顔から、生気が抜けていく。吐き気など、催してないだろうか。
 歪んだ表情をし、覗き込んで見えた瞳孔がとても小さくなっていた。息苦しそうなのに、それでも喋ろうとするガルシェ。
「狼は。雌の発情臭を嗅いで、発情するから。俺の番は、ルルシャだから。蜜月をするなら、こうでもしないと」
「そんな無茶な。自分の身体をわざと痛めつけるような事、なにしてるのガルシェ」
 本当に、何をしてくれているの。寿命を縮める気なの。そんな、負担をかける事。馬鹿なの。この雄は。どこまで馬鹿で、本気で挑む気なの。僕との、初夜に。普通に、そのままでいいじゃないか。駄目なの、何が駄目だと言うの。僕は彼に自分の身体を傷つけて欲しくはなかった。僕が傷つくなら、それで良かった。それだけなら。こんなふうになるならしたいなんて言わなかったのに。
「ちょっと、思ったよりしんどいけど。でも、嬉しいんだ。お前で、発情できるのが。狼として、雄として。俺は嬉しい。これは俺のエゴだから、ごめんな。事前に言うと、絶対止められると思ったから」
 当たり前だろう。僕がそれを許すとでも。した後で、こんなふうになった。愛する人を見て、何とも思わないとでも。我慢していたのならそのまま夢精でもして。それで気づけたのに。最近の彼は朝起きても。そんな素振りすらなかった。人に気どられないように、隠していたの。巧妙に。時を待っていたの。蜜月の日を遅らせていたのは。物の準備ができるのではなく。自分の身体が、禁欲で。おかしくなっていくのを。溜まる熱で、本能を騙す為に。僕のにおいで。人間なんかのそれで。あの時みたいに。鼻血を出して、突然意識を失って倒れたあの時みたいに。死んじゃうって、あの瞬間。僕は辛くて、今すぐに駆けださないといけないのに。助けを呼びに。それなのに足が言う事を利かなくて。
 それで最後に許可を取ってくれていた相手の。その言葉の真意に繋がった。理性が残った相手が、いくら興奮にとはいえ。その場のノリで僕が傷つくような言動を取るとは思えなくて。こちらの事を思いやる銀狼が。どうしてそこまで気にするのだろうって。でも発情期になるなら別だった。理性を飛ばすなら。本当に彼は、正しく。狼としての蜜月をやり遂げようとしていた。僕相手に。人間に。思いつく手段を全て講じてまで。
「バカだよ。ガルシェ、バカだよそんなの。そこまでしなくても、いいじゃないか」
「……怒ってるところ悪いけど。寝る。意識が飛びそうなんだ。ごめんな、ルルシャ。ごめん」
 がくりと、狼の頭が。僕の肩に落ちるようにして。そのまま僕は、本格的にもたれかかる彼の体重を支えられなくなった。意識のない人は、ある時と比べると体重は変わらない筈なのに。とても重く感じる。だからそのままソファーに背から倒れてしまう。自分よりも大きな身体が覆い被さって。でも意識はどこかへ。あんなに激しく脈打っていた彼の心臓は、それと同時に。だんだんと穏やかに変わっていく。触れ合った僕の胸と、彼の胸。僕の心臓の音に同期するように。ゆっくりと。荒かった呼吸も、落ち着きを見せて。たぶん、意識を失いはしても。暫くすれば、目を覚ますのだろう。前もそうだった。鎮静剤を打たれたガルシェは、ベッドに寝ていて。
 今は、そんな薬品ないのだけれど。眠りながら、僕を抱きしめるように。折り重なった相手に。狼の頭は呻いて、マズルを擦りつけてくる。まるで、僕のにおいこそ。鎮静剤だとでもいうように。彼が元凶になったのは、その発情臭。僕が彼に股間を嗅がれ、意識してしまい。性的な興奮を覚えたからで。僕がそんなにおい発さなければ、そうはならなかった。ガルシェがこうやって苦しんで。死が脳裏に過るぐらい。目の前で胸を押さえ。たとえ本人が望んだ結果だろうと、納得なんてできなかった。だというのに、文句を言い足りない相手は気を失っているのだから。
 身動きが取れなかった。彼の体重のせいで。硬いフローリングの上ではなく、柔らかいソファーの上であったからまだ負担は少ないとはいえ。このまま無理やり転がすようにして相手を押しやれば、ソファーから落ち。意識がない故に受け身も取れず頭でも打ったらと思うと。そうできたとしても。両手は動かなかった。
 常に一緒に居るというのに。気づけなかった。それがとても悔しい。意識を逸らす意味でも、スキンシップが性的な触れ方をしていたのだろうか。それとも、我慢を重ねながら。彼の中で溜まる欲が溢れ出て、そうしていたのか。自然と発していた彼からのシグナルに、気づけない。気づけないまま。顔を横に向けると目を瞑った狼の顔がある。ガルシェが、寝息を立てている。突き出た部分。黒い鼻を観察しているのだが。鼻血は、今回は出ておらず。前回は頭に血が上っており、精神的に不安定なのもあったのも関係があったのだろうか。撫でたい。ぴくぴくと痙攣するように、眉根が動いていたから。撫でつけたい。毛が逆立った後というのもあっただろうか。眺めているとそんな衝動に駆られるけれど。残念ながら僕の腕は倒れ込んで来る彼を受け止める為に使い。ガルシェの身体と自分との隙間に挟まれている。抜けないかなともぞもぞと動いてみるが。駄目そう。無意識だというのに、気絶したくせに覆い被さっている銀狼が人を抱きしめるように動いたのもあっただろうか。抱き枕よろしく。抜け出せない。せめて撫でたいのに。できない。
 自覚するフラストレーション。それは文句であったり。これではトイレにも行けないというのもあっただろうか。目覚めるのを待つしかないと強要されて。今夜すると言っておきながら、起きるのだろうか。前も何時間も経たず目を開けてはいたが。必ずしも同じとは限らない。自分から正常ではない状態になろうとするなんて。季節的には間違っていなくても。誘発のしかたが、とても危険な行為だった。前の僕は。彼の状態を病気の一種だと認識して。原因も関与していたからというのもあって。治療の一種だと、同居人である彼の性処理を手伝った。責任からと、追い出されたらいけないと。気に入られようとしたのもあって。とても打算的だったと思う。その結果、同性の性器を触るだなんて。今さら自分を振り返ると、頭がどうかしていると言えた。それだけ、銀狼だけでなく。僕ですら、精神的に不安定な時期というのもあっただろうか。
 どうにか動く首だけで、すぐ傍にある彼の顔に頬を寄せる。本当に、喋らなければ。身体の方を見なければ。ただの狼なんだなって思った。一年一緒に居ても。不思議な光景だと感じる。そんな相手が、人間の僕に愛情を持って接してくれるなどと。
 冬毛と夏毛。彼の被毛は季節で手触りが変わってしまうけれど。顔の部分に関して言えば。あまり変化は少なかった。唇にある黒い部分。むにむにしてて、そこだけ柔らかく。彼の口周りにある横に長く伸びた髭。先端はチクチクするし、彼の毛質の中で一番硬い。触覚のように、感覚器であるから。僕が頬を擦りつけていると、彼の髭の根本が反応して皮膚がびっくりしていた。見ていると楽しい反応を返してくれる彼の髭や耳が僕は好きだった。三角形のぐりぐり動く耳だって。人間の僕にはなくて。随意筋であるから、実は形は違えど耳を動かせる人も居たりするらしいが。少なくとも僕はできない部類であった。閉じられた瞼の裏。琥珀のように綺麗な彼の瞳が僕は好きだった。それと似た物が首飾りの装飾としてあったとしても。本物には敵わない。世界で一点物の宝石だ。見たいから、早く目を開けてくれないだろうか。名を読んでみても、起きてくれない。二度寝を求めるような唸り声もしない。それでも。夫の顔を眺めているだけで、多少は胸の内にあった不満も刺々しさが柔らかくなっただろうか。
 ガルシェと同じように。目を瞑った。視覚情報をシャットアウトし。頬から伝わる彼の毛皮の感触に集中する。規則正しい呼吸音。急激に心拍が上昇し。それで血圧も変化したのだろう。僕が狼の雌であったなら。発情フェロモンで、彼を正しく導いてあげれたのに。そうなったら僕も正気ではいられないのだろうか。だったら勢いに任せて、身体を繋げていたのだろうか。こうもまわりくどい事態にはならずに。
 何もできないから。目を瞑って。相手の存在を感じているだけ。そのまま何分、何時間が経過したのだろうか。うつらうつらし始めたら、銀狼の手が僕の頬に触れて来て。目を開けば、琥珀色の虹彩が。眼前にあって。目を覚ました狼が、下敷きにした人間を見つめていた。
「大丈夫、ガルシェ。体調は問題なさそう?」
 声を掛けてみたが。返事よりも先ず先に、押し潰している事に気が付いたのか。銀狼はソファーに手をついて身を起こす。ぶるぶると頭を振り、顔を顰めていた。まるで二日酔いの時みたいだ。お酒があまり手に入らないし、いっぺんに飲むと次の楽しみが減るので。あまり飲み過ぎて次の日頭痛に呻いている夫の姿を見る機会というのは、そう多くないのだが。でもそんな感じ。話し掛けると頭に響くだろうか。男の容態が気遣わしいのだが。責付くのはやはり憚れた。
「ちょっと。頭がぼーっとするが、もんだいは、ない。でもじんじんと腰が疼くし。熱い、身体が熱い」
 たどたどしく。ぼんやりと、こちらに今自分が陥っている状態を伝えてくれているのだが。内部の熱を吐き出すようにして、溜息を吐いた銀狼は。上半身はもう裸であるのに。熱い、そう言った後。カチャカチャと、腰に装着されているベルトを弄りだした。どうやら脱ぎたいらしい。のだが、寝転んだまま様子を見ていた僕は。そこで彼の手の上に手を重ね。ベルトを緩め、ジーンズを脱ごうと画策していた狼の行動を抑制した。何も考えていないというのが正しいのだとは思う。彼は発情期になったのだ。それで理性が押しやられ、本能が前に出て来てるに過ぎない。一度遭遇したのもあって、慌てはしなかった。どうして止めるんだって、不思議そうな狼の。どこか幼そうな表情も。言葉遣いとか、幼児退行とは言わないまでも。覚束ない。そんな所まで前と一緒であれば。落ち着いて対処ができそうであった。こうも様子が変わってしまうとなると、やっぱり発情期って病気みたいに感じてしまう。狼の脳内では、普段放出されない物質が大量に飛び交っているのだろうか。
「ガルシェ。蜜月、するんでしょう?」
 言われて思い出したのか。自身の股間を寛げようとしていた男の手は、重ねられていた人の手から逃げるようにして退散し。決まりが悪そうにして、顔を背けていた。あんなに拘りぬいて寝室を整えたのに。リビングのソファーで始めでもしたら台無しである。彼のこれまでの苦労が水の泡だった。仰向けに寝ている僕を跨ぐように、上に乗っかっている男が、人間と言わずソファーから降りる。真っすぐ立ち上がろうとして、一瞬ふらついてもいた。酩酊した状態に似ている。
「寝室で待ってる、から。る、ルルシャも準備があるよな。ゆっくりで良いから。俺も水換えてくる」
 顔を合わせてられなくなったのか。背中を向けてそう口にした男は、早足で廊下の方に駆けていくのだけれど。途中角に小指をぶつけたのか、痛そうに片足を持ち上げてぴょんぴょんと跳ねながらに変わった。姿が見えなくなったら。こんどは廊下の奥からドンッて物音がして。恐らく壁にでもぶつかったのだろうか。意識がはっきりしないなら、無理に走らなくていいのに。それも家の中を。水換えと言っていたけれど、多分寝室の飲み水だとは思う。
 いざ今日するとなって。彼は発情期になり、そして僕はただソファーに置いてきぼりにされて。ルルシャにも準備がある。そんな言葉を残して。そうか。僕もしなきゃいけないのかと、漸く気づいた。恥ずかしいけれど、しなきゃいけないのかと。座り直して。自身のお腹を眺めた。聞き齧った知識であるし、本当にそんな事するのかと。叫びたい気持ちもあったが。しないまま事に及ぶ方がきっといけないのだろう。そもそも使う場所が衛生的によろしくない。今から、彼に使ってもらうのだから。僕を。どこを。あそこを。
 お風呂場に向かう足取りが、とても重く感じる。本当ならもっと以前から、一人で慣らしたりした方が辛くないらしいけれど。自分で触る勇気がなかった。この土壇場にならないと、やる気が起きなかったのもある。服を脱いで、洗濯籠に入れず。一応もう一度着るからそのまま適当に放る。ベッドで結局は脱ぐ羽目になろうとも、他に誰も居ないとしても。全裸のまま彼の元に向かう気はなかった。バスローブとかないし。タオルはあるが、腰に巻いて行くのもどうかと思った。その方が男らしいだろうか。
 水換えをすると言っていたから、既に発電機は可動状態であり。お風呂場にも水が通っている。試しにシャワーヘッドの方ではなく、スパウト部分から水を出し。確認までして。今の自分が鏡を見るまでもなく、とても憂鬱な顔をしているのがわかった。だってそうだからだ。今から、準備するから。勢いよく出る水を操作し止める。キュッって、締めたせいで可愛らしい音がした。本来はホースの中を通って来た液体を、細かい飛沫状にする役割があるシャワーヘッドを別に破損したわけでもないのに外す。露出したホース口。こんどはシャワー側に水が供給されると、僕がホースを上向きに保持しているというのもあって。噴水のようにじょろじょろと溢れて来た。眺めててもしかたがないし。ただ身体が冷えるだけだというのに。とても冬のせいで冷たいそれが。どんよりする僕の気分をよりいっそう悪くする。
 アナルセックスを試みる方は皆これをしているのだろうか。それを今から夫である銀狼と試みようとしてるのだから。僕も先人に倣い、しなきゃいけないと頭ではわかっていても。だって、汚いし。自分の身体とはいえ。排泄器官であるからして、不潔だ。こんな事したくない。甘い気分で、そのまま彼とベッドインしたい。できる事なら。こんな人としての尊厳とか、いろいろを横に置いておかないといけない所業を。しなくていいなら、したくない。正直。映画とか、映える映像を撮影する為に。裏方の涙ぐましい努力に感じられる。これを一緒にされたら怒られそうだが。でも、僕の心境はそこに近い。なんとでもなれって、どこかそんな。やけくそな気分を。意を決して、ホースを握る手に力が入った。
 本当に、できる事なら。二度とごめんだったと、トイレとお風呂場を往復しながら思った。できるなら記憶から消したい。植え付けられた物と、ガルシェとの暮らしとが大半を占めていて。贅沢かもしれないが、消したかった。準備をしながら。虚しかった、とても。人として、大切な何かが失った気さえした。もうお婿に行けない。既に狼の嫁だけど。しくしくと、床で泣きたかった。もっとみっともなくなるからしないけれど。ガルシェにすら、見られたいとは思わなかった。まだ自慰をしてる所を見られた方が、ずっとましだ。
 もろもろを終えた僕は、かなりげっそりした顔をしていると思う。なんだか、もう、疲れた。全て放り出して、寝ても良いだろうか。それをしたらガルシェ、さすがに泣いちゃうだろうか。泣いちゃうし、ずっと根に持つだろうな。いくら僕に甘いといっても。狼とはいえ、どこか懐いた犬っぽいし。それを言うと怒るけど。他人に対してとても警戒心が強いから。その甘える対象は僕だけなのだろうけれど。番だけ。自分達が毎日一緒に寝ている、なんてことない普通の部屋。ベッドと小物とか。窓にサボテンを置いてる程度で、そう物が多くはない。というのに、足の踏み場が辛うじて確保されているとはいえ。床に所狭しと今は物が置かれていて。それは保存食とか、飲み水だとか。替えのタオルといった物だ。寝るだけの部屋であるのに、どこか雰囲気が様変わりして落ち着かない。一番、気が休まる場所であった筈なのに。
 それは、ベッドの縁に腰かけて。僕を待っていた銀狼も同じであるのだろう。扉を開けて入って来た僕と目が合ったと思ったら、すぐ顔を伏せてしまった。少し足を広げて座り、その間に手が組まれて。意味もなく床か、その手をか、見つめていた。ボリュームのある狼の尻尾の先だけが、意味もなくぱたぱたと動いている。声を特に掛けず、というより。掛ける言葉が見つからなくて。無言で彼の隣に腰かけた。ベッドに手をついて。僕は壁や、天井。そして横目にガルシェの様子を窺ってみたり。
 凄く、僕の夫は落ち着きがなく。そわそわしていた。顔だけ、キリリと引き締めているけれど。手遊びしていたり。震える髭だったり。仕草が、そう感じさせた。きっと緊張しているのだろう。それはそうで。一年近く一緒に居るのに。同じベッドで寝ておいて。一応は初夜であるのだから。手淫とか、素股はしたけれど。それもユートピアで暮らしていた時だけ。一度も彼と身体を繋げた事はない。
 緊張しているのは銀狼だけではなかった。こうして、何も喋らない相手に対して。僕も無言のまま、座って。もう数分経過しているのだから。だって、男同士で。異種族で。そんな相手に、今からセックスしますって。何もかも準備を終えて。ベッドに横並びで座り。何を言えば良いのか。僕は知らない。できるのならリードして欲しいものだが。起きたてで、服を脱ごうとしていたあの時ならまだしも。今は理性が少し戻って来てるのか。それとも緊張でそうなのか。言ってしまえば、お互い童貞である。異性とも、同性とも、ちゃんとそういった経験がなかった。
 部屋はカーテンを閉め切り。暗くされ、でも僕でも見えやすいように。蝋燭は灯されていた。だから、ぼんやりとした炎の灯りが。銀を照らしていて。様子を窺いながら、彼のまだ履いたままのジーンズを確認する。勃起はしてないのだろう。直接触らない限り、彼は人間と仕組みが違うのでそうはならない。でも興奮はあるのか。股間が少し盛り上がってるから、鞘からは顔を出していると推測された。ガルシェ、この先を期待して興奮してる。すんっ。鼻息がした。その音が気になって。相手の股間から視線を移せば、狼の顔がこちらを見ていて。しきりに黒い鼻の頭を自身の舌で拭っていた。
 あっ。そう、声には出さなかったが。目線が絡むと、人も、狼も。同時に正面を見て。気づいた時には心臓が少しだけ早く脈打っていた。彼のあそこ、見てるのバレちゃった。ドキドキ、してる。僕。きっとガルシェも。性懲りもなく、ちらりともう一度相手を窺えば。股間の膨らみは少し濡れていた。
 こんな状態で、この先をできるのだろうか。もっとこう、余裕を持って。彼にそうされるものと思っていたけれど。忘れていた。ガルシェは、へたれであった。こんな場面でまで、そんな部分を発揮しなくてもいいだろうに。まるでリードしてくれない夫に、いつまで経っても始まらない初夜に。時間だけ過ぎていく。チク、タク。秒針が刻まれる音が今だけは煩わしい。動きを見せない場を余所に、寝室の時計は仕事を全うしていた。アドトパの商隊から買い付けた電池。運が良かったとは思う。床に置かれた食料もそうで。足りない物は彼らから買った物もあった。缶詰とか、パウチ。都市部から手に入れた物も混ざっていた。これはユートピアからの輸入品。意味もなく物に視線を動かしている僕と隣でなんども、もぞもぞと座り直している銀狼。そしてここには居ない、黒豹と、赤茶狼。彼らと一緒に頑張って手に入れた物だった。缶詰はある程度再現できているが。パウチに関しては、まだまだ技術的に復元できていないらしい。だから、あの時の事を思い出していた。全ての始まりを。僕が目覚め。自分が何者であるか、確信を得て。どうするか、身の振り方を決める要因になった。始まりであり、分岐点。
 こうして、過去に思いを馳せているのは。僕も落ち着かないからで。別の事を考えていないと、羞恥心と焦燥感にどうにかなりそうだから。やるなら早くしてよって、気持ちもあれば。やっぱり諦めてくれないかなって気持ちも少なからずあった。この期に及んでだが。それと、あまり彼の事を意識し過ぎると。僕がえっちな事考えていると知られてしまうから。必死で別の考えに逃げているというのもあった。
 唐突に。逃げている思考を呼び戻すようにして。肩に、誰かが触れる。誰でもない、ここには二人しかいない。ガルシェだ。自然と俯いていた顔を上げ、男の方を見ると。こちらに向き合うようにして。どこか決心をした。雄が、人を見ていた。それで悟った。停滞していた場に、動きがあったのだと。これから。彼の手が、僕もそうしろというように。強制的に向き合う形にされ。少しだけ身体の距離を詰められる。腰に、相手の腰がぶつかるようにして。触れる。高まった体温。
 えっとって。何か、言おうとして。でも余計な台詞を吐くのは面倒臭くなったのか。どこか振り払うような素振りをし。もう片方にも男の手が乗せられる。ごくりと、喉が鳴ったのははたしてどちらか。ガルシェの。狼の頭が少しだけ傾く。この動作はよく知っている。僕とキスする時よくやるそれだ。口の構造上、正面から合わせるとどうしても上唇に彼の鼻がぶつかる。だから顔を傾けて。そっと触れるか、大きく口を開いて。まるで僕の頬を挟み込むようにしてしか、キスができなかった。これで、僕の顔も犬科のそれなら。噛み合うように、そうできたのかなって。未だ彼のマズルが急接近する最中であっても、いらぬ事を考えていた。興奮した銀狼の呼吸音がうるさい。発情した、というのもあるのだろうが。
「ルルシャ、いいよな」
 切羽詰まりながらも。慎重に、恐る恐る。肉食獣の顎が近づいて来る。もう少し、もう少しで触れる。のだけれど、あれこれ考えていた僕は。あっ! て、こんどは声にまで出して。立ち上がっていた。隣には目を見開いて固まっている銀狼。尻尾もその内心を表しているのか、猫が驚いたようにぼふんと膨らんでしまっているし。口先をキスする寸前だったから、どことなく尖っているようにも見えた。動物の口で。
「ガスの元栓締め忘れた!」
 思い出したらじっとしていられず。慌てて部屋から抜け出して廊下を走り、台所にあるボンベの元栓を締めた。これから寝室で一週間過ごすのだ。戸締りはちゃんとしたとはいえ。こういった部分でも、家を暫く空けるに近い対処が必要であった。発情期で正しい判断ができない夫が、もしも頭が冴えないまま。調理でもしようとして火事になったら大変である。良かった、思い出して。家事ばかりしているから。主婦みたいな思考回路が沁みついた自分に、寝室から飛び出て来た後で。しまったと思った。やってしまったと。
 そっと、寝室に繋がる扉から顔だけ出し。中の様子を窺うと。怒り心頭なのか。膨れっ面をした狼が、戻って来た人を睨んでいた。ごめんねって、愛想笑いしながら。また隣に座るけれど。彼はグルルって唸り声をさせながら、俺は怒ってるんだぞって表現の為にか。鼻筋に皴が大量に刻まれる。せっかくの雰囲気が台無しだろうか。別にそれで。叩かれたり。咬まれたり。引っ掻かれたりはしないのだけれど。それでも、ガルシェは怒っていた。
 ごめんねって、謝りつつ。拗ねた時のガルシェを相手するいつものパターンとばかりに。頭を撫でたりしていると、呆れたのか。肩幅の広い男のそれが、がっくりと力が抜けた。
「頼むから。今の俺、あんまり感情の制御ができないから。変な事したり、不用意に傍を離れないでくれ。はずみで襲ったらどうするんだ」
 あーもうって、後頭部を自身の手でがしがしと掻きながら。そういえば、発情期の時って。心細くなって、交尾できる対象が目の届く場所にいないと。本能的に探してしまうって、言っていたかと。以前の状況を思い返しながら。昔、彼が言っていた発情期とは何か。知識として脳内で予習していた。頭が逆上せながらも、別に取り乱したりしないのは、恐らく僕が彼を受け入れる姿勢で居るからだ。これで心までいまさら拒否したら。強姦されたりするのだろうか。前も、そこまで理性を失いながらも。乱暴はされなかったので、大丈夫という。どこか信頼からくる安心感があった。発情した雄を前にして、とても無防備と言えばそうで。でも、その相手は僕の夫であるのだから。危険人物にはならない。それに、無理やり抵抗して抱かれたとしても。それはそれで、彼になら良いかという部分もあった。好きにさせてあげたい。
 甘い雰囲気とか。そういうセンシティブな、アダルティな雰囲気に僕達は身を置けなかった。というより、ほのぼのとして。見聞きしただけの、性という。未知に挑む、冒険家とか。探求心めいたものがなかったかと言われると。否定できない。だからこそ、さっきまで僕の中にあった。憂鬱な気分や。羞恥心がどこかに消えて。友達に話しかけるように。母性を開花した、子供に語るように。上目遣いでごめんねって、狼の頬に自然と触れて。滑らせるように顎下を指で擽ってみたのだが。それで機嫌を直してくれるのだから。僕の夫はとてもちょろいというより、とても優しい、が正しかった。ガルシェは僕を肯定してくれる。許してくれる。離さないでくれる、世界でたった一人のかけがえのないパートナーだ。
 銀狼は格好つけたがるけれど、クールかと言われると。それは違うと言える。黙ってれば、目つきが悪いから。そう見えなくもないが。僕視点で言えば。可愛い。身長は僕より高く、二メートルぐらいあるし。体重も百キロを超えていて。筋肉質で、鍛えられた戦う為の身体つきをしており。とても勇ましい。筋骨隆々な男性だ。僕に触れる肉球だって、硬く。ナイフや銃器を扱う為に。訓練の過程でその柔らかさは損なわれている。爪だって生えてて。ごつごつとした手は、簡単に人を林檎のように握りつぶせそうで。だが。触れ方は見た目に反して、優しく。そっと触れてくる。壊れ物を扱うように。ぽすりとベッドに仰向けに寝かされ。蝋燭が照らす暗がりの中。ガルシェが覆いかぶさるようにして、天井を見えなくする。ギラギラとした、獣の瞳をさせて。辛うじて残っている理性で、今もまさに踏みとどまっているのだろう。本当は人が着ている服を全て乱暴に破り捨てて。そのまま食い漁るようにして、犯したいのかもしれない。セックスするって、交尾するって、名目で。この寝室で二人一緒に居て、そして狼の雄は。異質な順路を辿り、発情期が始まってしまっているのだから。そうしてしまって当然で。
 頬に添うようにある、男の手。親指だけで、さらりと撫でて。反対側の頬に、狼のマズルが擦りつけられる。細められた彼の瞳と、僕のが交わり。逸らさない。逸らせなかった。うっとりと眦が動き。目線を彷徨わせる相手のそれが、まるで好物を目の前にして。どこから食べようか、迷っているかのようにも感じられた。
「これから君に食べられちゃうみたい」
「ああ。皮も、骨も残さず。血の一滴まで。ルルシャは俺のだからな」
「なにそれ」
 がぷり。狼が無防備に晒されている人の喉元を噛んだ。片方欠けてしまったが、それでも鋭く存在を主張する犬科の犬歯。ぐっと押し当てられて。本能的な恐怖を、僕は笑って払いのけた。くふふって、押し込めるように。笑って、それを見た銀狼も。冗談だって、そんな仕草で。肉を裂く牙を剥き出しにしてくつくつと肩を揺らしてみせる。どこか遊びの延長にも近い触れ合い。でもとっても性的であり。込められた意味も間違ってはいなかった。ようは取り方次第だ。
「もっと。こう、ロマンチックに。甘い言葉を囁きながらルルシャとしたかったのに」
 興奮を隠しもせず。鼻息を荒く耳もとに吹きかけながら。彼は言う。軽く浮かせていた太腿に、大男の腰が擦り付けられ。息づいている欲望がそれとなく当たる。ジーンズの生地はしっとりとしていて、濡れて湿ってしまっていた。
 大人びていくけれど、どこか子供っぽい夫は。残念そうにしながらも、まあこれもいいかって。苦笑しながら。努めて落ち着こうとしている僕の感情のにおいを嗅ぐ。実際に、不安もあった。恐れもあった。覆い被さった、自分よりも体格のよい相手に。これから身体を好きにされるのだ。きっと痛い。快楽だけでは済まないだろう。初めてであるのだから。ただただ、無事に。事が終えられたらいいなって。なるべく怪我しないように。その考えは、ガルシェも一緒なのだろう。ゆっくりと物事を運んでいた。あまり驚かせないように、怯えさせないように。それとなく、股間を押し付けたり。唸ったり。甘噛みも、普段するそれよりも力加減は強いけれど。慎重に、慎重に、じっくりと。なんせ時間だけはあるのだから。その為に、用意した品々が周囲を埋めている。二人が想定していたものとは違ったけれど。かなり穏やかに、彼の言う蜜月が、その幕を開けた。僕達らしいっちゃ、らしいと思う。
 服を徐々にたくし上げられ。露出した腹を触る男の手。首筋を探るように触れてくる狼の鼻先で、首飾りが音を鳴らす。弄る手に意識が向かわないように、ガルシェは頬を舐め。大丈夫だと伝えていた。寝巻用の緩い服装とはいえ、寝転んだままでは脱がすにはいささか苦労するだろうか。胸元まで服を脱がされたが、肩関節で引っ掛かる。僕を見つめていた獣の目線は、邪魔だと言いたげに。服を睨んだ。こんどは僕の番。相手の頬を軽く叩き、意識をこちらに誘導する。さもなくば破かれそうな気配を感じたというのもあった。鼻息の荒い狼の顔が、咬みつくようにして。僕の唇を奪う。押し付け。角度を変え、また押し付け。割り開いた唇の隙間に舌を差し入れ。荒々しいその動きに、邪魔しないように顎の力を緩めると性急に。僕よりも長い舌がぬろぬろと唾液を纏いながら押し入って来る。喉奥まで簡単に到達しそうだったから、軽く自身の舌を浮かせ。入り過ぎないように窘めると。不服そうにされた。
 また咽ちゃうよ。深い繋がりを求めているのか、ガルシェのキスは。普段の触れ合う程度ならまだ良い。だがそれが舌を絡めるようなディープなものとなると、話は別で。とても自分かってに動き、乱暴に咥内を荒らしながら食道の方へと。その舌先を伸ばそうとする。深く入りたがるそれは、胃袋まで舐めとりたいかのようで。正直言うと、そうされた場合ただ僕は苦しくて。咽るだけなので。彼のキスは上手いとは思っていない。流れ込んで来る唾液せいで、辛うじて空いている隙間すら埋められ。窒息死しそうだった。興奮した狼の吐息が頬を擽りながら、自身の息継ぎすら二の次に。人の口の中を水を飲むみたいにぴちゃぴちゃ、丸めた舌が戻って、尖らした舌が突き込んで。その合間に服を脱ごうとするのだが。食べられるようなキスをしながらでは、首元までが限界であった。僕の唾液を奪い、自身の唾液を押し込む事に夢中になっている銀狼の胸を押し。中断させる。口の周りをべちゃべちゃに汚した狼は、舌なめずりして。綺麗にしていた。
 酸欠に喘ぐ僕は、自身の重力に従って垂れていく液体を気にする余裕はなく。この隙に上着を脱いでしまう。脱ぐ前に始まってしまった彼との性行為の序章に。これなら羞恥心とか気にせず、最初から裸で部屋に来た方が効率が良かっただろうかと。思わなくもないが。男性器をぶらぶらさせながら、情緒のへったくれもなく。準備できたよって何食わぬ顔して戻るのも嫌だった。雰囲気を壊されるのを残念がる夫と一緒で。僕もそれなりに、初めての彼とのセックスをする。その夜を知らず知らず楽しみにしていたのだろうかと。普段は几帳面に畳む服を乱暴にベッドという枠組みよりもその先に丸めて放り投げながら。自分の感情の動きを俯瞰していた。これで。彼と一緒で。後は着ているのはズボンとパンツだけ。ほんの数秒にも満たぬ時間。離れていた口同士を重ね。また獣の牙がこつりと人の歯に当たり。頬をなぞり。僕の顔を咥えるようにして、舌の根本まで吞まされるように。くぐもった声を食む。
 彼の身体が僕に覆い被さった状態で軽く上下し。股間を、僕の股間に合わせ、重ね。擦りつけていた。ふー、ふっ。グルル。舌を絡めながら、合間にある彼の呼吸音とそれに混ざる獣の唸り声。威嚇ではなく。性的な興奮からくるそれ。僕のもう硬くなってしまっている物に。ふにふにと柔らかくも、芯のある。服越しに彼のがぶつかる。見た目の興奮度合いに限って言えば、銀狼の方がより。血圧を上昇させ、目を血ばらしているのに。性器に関して言えば、勃起していない。人の方がその膨張具合は顕著であり、行動が始まってからそう時間を要しなかった。
 中で擦れて、早々カウパーを分泌し。勃起していないにも関わらず、大量の液体が滲み出てきている彼の膨らみ。その湿り気がどんどん僕に移されていく。じっとりと、僕の下着まで侵食し。こちらのまで濡らそうとする勢い。そんな中で、良かったと。彼と視線を合わせ、口を合わせ。股間を擦りつけ合い。微弱な、甘い痺れのような。生殖器から駆け上って来る性的刺激に。自分自身、勃起している事が。良かったと、ただ安堵が満たしていた。もう怯えていなかった。彼とのセックスに。身体を繋げる事自体には、まだ懸念はあろうとも。こうして相手の脇腹に、背に。指先を毛に埋め、夫の地肌の感触を味わい。硬い肉球が僕の肌に触れ、弄られながらであっても。怯えていない。その事実が、ちゃんと同性同士であれ。興奮できているのが。良かったと、思っていた。
 性的対象を考えた時。僕はただガルシェが好きなだけで。男性の身体どうこうをあまり意識した事がなかった。目覚めてから異種族ばかりに囲まれていたのもあったが。そして、夫である。銀狼もまた、雌の狼を性的対象にしながら生きて来て。いずれ自分もそうなると刷り込まれ。だが一緒に暮らす内に、僕に対してだけ。そういう目線で意識するようになって。レプリカントの間では、性欲を発散し。不必要な子作りを抑制する意味でも、同性間での性欲の発散を推奨されており。異性とそういった接触は、結婚。番ってからというのが常識であった。だというのに、ガルシェは同性同士のそれに嫌悪感があったのか。きっかけはどうあれ、僕とのそういった性的触れ合いがあるまで。同性とすら、未経験であったから。
 初めて経験する性的な刺激に、ただまた欲しいと。安直な気持ちで求められているわけではない。正直な所、最初はそういう部分もあったように思う。僕にされて、またして欲しいって。そんなやましい気持ち。だって僕は同棲して、間借りしている弱い立場で。強制すれば、それができてしまう、してしまえる。彼の方が立場的には上であったから。発情期は終わったのだからと、それを拒絶した時。残念そうにしながらも、理解を示し。それ以降直接手は出そうとしない相手。
 だが今は、対等に。番として、雄と、男。同性同士であっても、性行動をしているのだ。しようとしているのだ。僕も望んだ。彼も望んで。いざ始まった時。僕自身の感情もそうだが。実際にガルシェが、人間の男に本当に興奮できるか。そんな心配も少なからずあった。そんな杞憂。最近の彼の態度から、意味はなかったし。無理やり発情した状態に、自分自身を追いやった相手に。不必要な疑問であっただろうか。
 快感に素直な反応を見せる。そういう部分はとても好ましいと思う、隠そうとしないガルシェの表情に。彼の背後で揺れている尾に。このままではズボンを履いたまま、中で暴発しそうだなって思った。ただ押し付け、擦れ合わせているだけだというのに。上がる熱気に、興奮が増していく狼に。そう思わずにはいられない。
 彼の名誉の為に、早漏ではないとは思うが。それでも比例対象が居らず。僕自身、誰かとの性行動の経験もなく。遅いか、早いかで言えば。良くわからないというのが正直な感想だ。自分と比べて、となると。これも、状況にもよるとしか答えられない。だが、この場合のがっつくような相手に対しては。本番もせず、終わってしまうような危機感があった。
 狼の射精は、一度が長く。それに応じてかなり体力を消耗するのか、前の発情期の時でも。一回射精するとガルシェの興奮は収まっていた。下着の中にこのまま吐き出した場合。お互い、気まずく。夫は情けない顔をして、失敗してしまったと落ち込むだろうか。ロマンチックにしたいと言っていたような気がするが。この僕に対する性急さでは、できるわけもないとも思った。
 もう既に、狼の脳を占めているのは。出したい。出したい。射精したい。そんな考えばかりであるのか。ぎこちなくなった舌の動きと、速度が上がる腰の動き。目を瞑って僕の表情すら見ていない彼の表情から限界を察して。硬い物がぶつかってくる感触から。きっと下着の中はカウパーで大洪水だろうし、勃起した彼の生殖器は。瘤が疼いているのだろう。あと少し、もう少し。もっと強く押し付ければ。僕のを押し潰しそうに、のしかかってくる相手。呆れに近い感覚。でもしょうがないなって、そんな気持ちで。されるがままだった僕は、彼の名を呼ぶ。快楽に夢中になって。一人で自慰に近いそれに没頭している相手に。僕が今回は居るよって。ずっと一人で処理していたが為に、その習慣がついてしまったのであろう。彼の名をだ。
「ガルシェ」
「あっ。うぅ、ルルシャ……」
 薄っすら目を開け。腰を振るのを止めた男。咥内に早々もうただ入れているだけに過ぎない。動いていなかった狼の舌が引き抜かれる。だらんと垂れた彼のと、僕の口から糸が引き。なかなか切れなかった。興奮すると唾液の粘度が増すらしいけれど。本当だろうか。腕をベッドにつき、身を起こした銀狼。それで漸く、長く伸びた炎を反射する銀の糸がぷつりと切れた。
 もっと気持ちいい事が待っているよ。本番、するんでしょう。その為に僕も後ろ、恥ずかしいけれど洗って。彼の為に準備をしたのに。衛生的観念から、ここに突っ込むのはあまり褒められたことではなかったが。同性で、身体を繋げるならここしかなかった。アナルセックスでしか。それをするのが目的で。始めたのに、それをする前に。一人で先にイってしまうのは興覚めだ。せっかく僕も君で興奮しているのに、忘れないで欲しかった。押し付け合っていた股間が離れ、そこから立ち上って来る。雄の臭い。彼のカウパーの臭いだった。水を汲んだコップを、二人のそこに零してしまったかのように。びしょびしょにされて。お漏らししたかのような惨状。だが後もう少しで、そこに白が足されていただろうか。もっとキツイ臭いをする。生臭いそれを。膝立ちでベッドの上で立ち、僕を見下ろす銀狼。その相手の視線が、僕の手に注がれる。ゆっくりと下降し、自分自身のズボンに手を掛けたからだ。
 見下ろされながら、下着と一緒に脱ごうとして。見られているこの状況に、やっぱり恥ずかしい気持ちが脳裏を過ったが。ハッ、ハッ。そう息を吐きだし、舌を廃熱の為に出したまま。しまい忘れたかのような表情で。熱心に、期待の眼差しを贈る相手に。意を決して、脱いでいく。立ち上がった物で一瞬引っ掛かりはしても、軽く浮かせればそう問題もなかった。自分の興奮した証が、脱いだ拍子でぶらぶらと揺れる。膝下まで来ると、後は蹴る要領でベッドの見えない部分に押しやった。見られている。自分の裸を。それも勃起したそれを恥ずかしげもなく晒して。太腿を擦り合わせ。自分の片手でない胸を隠すように。顔を背けたかったが、目線だけは逸らさず。
 そんな僕の抑えきれない恥じらいから出た仕草を見たガルシェは、堪らないとばかりに。喉仏を上下させていた。マズルの先を押さえ、まるで垂れたまましまえない自身の舌を押し込むように。鼻先を手で押さえて。えろい。そんな事を小声でぼやいてもいた。異種族とはいえ。人間という枠組みにおいても、正直貧相と思える自分自身の身体付きを指してどこに。そんな感想を抱けるのか、不思議だが。そう言ってくれてちょっどだけ満足感があった。自信のない、自分の裸体をそう評価されて。鼻を押さえてるのを見たというのもあり、まるで鼻血でも出しそうな夫の姿に顔を綻ばせる。
「脱がないの?」
 ソファーでは自身の衣服を脱ぐのを止めさせたけれど、今僕達はベッドの上であるから。止めるよりも、むしろ促していた。彼にそうしないのと。人に言われて、脱ぎます。脱がさせて頂きますと言うように。狼の頭が縦に激しく振られ。その慌てようは無骨でいて毛むくじゃらな手まで及んだ。ガチャガチャとお互いの呼吸音に突如入り込んだ、金属質なうるさいベルトのフックを外しにかかるそれ。引き千切りそうな手付き。腰のベルト通しから鞭のようにしなりながら抜き取られると。こちらを見ながらガルシェは、乱暴に放り。壁にゴンッてぶつけていた。穴、開いてないと良いのだけれど。
 次はジーンズなのだが。彼のダメージジーンズと言うには些か破け過ぎている生地は、残念ながら欲に駆られた力の制御が利いていない手によって。無残にもビリビリと破ける嫌な音をさせていた。いつかそうなるのだろうなって思っていたけれど。愛用していた彼のズボンは、今日が命日になったらしい。足首まで隠す裾だったのに、半分から分かたれ。まるで半ズボンに変わってしまって。そこで一旦興奮から我に返ったのか。脱いだ自分のズボンを両手に持ち。ポカンと、狼が開口していた。縫って直すとかいうレベルではない。もう破棄する他ないであろうそれに、ちょっとだけ。セックスをしようというこの場において、似つかわしくない悲壮感が漂う。最終的には、それよりも僕を優先してくれたのか。視界外にぽいって銀狼は投げ捨てていたけれど。
 トランクス一枚だけになったら。再び覆いかぶさる相手の動きを察知し、迎え入れる体勢にと。軽く足を開く。その間にガルシェの身体が割り込んで来る。これでは足を閉じる事ができないが。その必要もなかった。熱心に、狼が舌を這わす。首筋から始まり、胸。そして胸の突起を彼の舌が掠めた時、思わず身を震わせる。人の動きをつぶさに見ていた銀狼は行動を中断し。こちらの顔色を窺っていた。ぺろりと、舐められても。ただ擽ったい。やめてよって気持ちで、マズルを押さえれば。ちょっとだけ楽しそうにガルシェは目を細めた。
「人間って、頭とかごく一部しか毛がないから。俺達では普段見えない部分がよく見えて。凄く、エロいよな」
 人の肌に触れ、舐め。考え込むようにして言われた銀狼の言葉に。別に侮辱されたとかそういう意味も、意図もなかったと思うのだが。彼らの目には。というより、夫の視点からすると。そういうふうに、見えていたのかと思うと。僕にとってはそれが普通であっても。とても恥ずかしい事であると言われているようで。我慢していた羞恥心が再熱する。それで馬鹿って頭を叩いても。笑われるだけだと知っていても。発情期のガルシェは、言って良い事も。悪い事も、そういった制限が働かない。ただ思いついた事を、そのまま脊髄反射のように言うだけだ。わかっているが、言われる方が恥ずかしいものだった。
「こことか、ここも。ルルシャのにおいが濃くて。好きだ、俺……」
 二つしかない乳首を親指で転がしたり、舌で舐めたりして遊ぶのに飽きたのか。狼の鼻が耳の裏や、脇に差し込まれ。においを嗅がれる。止めてよって言って、この状況で止めれくれる相手ではなかった。すんすんと脇のにおいを嗅がれ。濃いと言われると、まるで僕の体臭が臭いみたいで。嫌なのに。むしろ好んで嗅ごうとする動物の顔が、逃げようとした人の身体をしっかりと捕まえ。もっと嗅がせろと、濡れた黒い鼻を押し付ける。滲んだ汗を舐めとられ。美味しいとばかりに。口端を持ち上げていた。
「ここも」
 脇ばかり嗅ぐ相手が、突如僕のとある部位を握った。屹立し、握るにはとてもしやすい状態になった。棒状の、男性としての象徴。柔く触れ、親指が亀頭の横を撫で。いつの間にか分泌されていた僕の先走りを絡めとり、全体に馴染ますように塗り広げる。狼のさらさらとした物と違い、人のそれは粘ついていて。唾液に近い。ガルシェは初めて人のそれに触れた時、自分との違いに面白がっていた。
「ルルシャのチンコ。こんなにも硬くなって、俺で興奮してくれてる。嬉しい」
 軽く片手で上下に抜かれ、直接的な刺激に。腰が逃げそうだったが。ただベッドに自分の身体を強く押し付けるだけだった。僕の状態を色濃く示す部位に、嬉しそうにする銀狼。あまり普段、そういった性的な部分に関して。淡泊というか、積極的にかかわろうとしなかった分。こうして僕の身体がそうなっていたりすると、喜びを露わにし。ほら、見てみろよって。自分に怒っている状態であるから、見なくてもわかっているのに。そう促され、彼の手の中にある自身のモノを見て。顔を赤くするしかなかった。狼の手に包まれると、亀頭ぐらいしか露出しておらず。全体像は今は覆い隠されているが。肉球と毛に絡む粘ついた液体が少なくないのを知り。余計に。いくら恥ずかしがっても、頬を舐めるガルシェは。嬉しそうなのが。
「でも、人間のって。不思議な形だよな。亀頭って言うんだよな、この部分」
 人差し指にあった、丸く整えられた爪が。雁首を、その溝をなぞるようにして辿る。いくら破けたりしないとしても、切り裂く為にある部位で。そうされると。気持ちよさではない湧いた感情で、思わず腰を振るさせる。どうやら彼にはない部位に興味津々らしい。僕自身。彼の生殖器の形の違いに、内心面白がったりはしたが。実際に触りながら、どうなっているか実況されるのは。堪らない。被虐心めいたものが刺激され。僕はそこまで、虐められて喜ぶような性質ではないと思い込んでいたけれど。ガルシェから与えられるそれらに。ぞくぞくと、否定したいものが背筋を這う。逃げたい。逃げたくて堪らないのに。彼になら、そうされるのも悪くないと思って。
「あ、また先っぽからルルシャのえっちな液体溢れて来た」
 雁首をなぞり、裏筋を擽り。尿道口から少し溢れたものを目敏く見つけた狼は。そのまま、人差し指にある肉球で蓋をするように塞ぐと。軽く持ち上げ、くっついてくる粘ついた液体で遊ぶ。以前の発情期は、もっと理性が飛んで。犯そうとする気配があったのに。今はどうしてこうも、どこか落ち着いてる部分が残っているのだろうか。交尾してくれる雌が目の前に居て、無抵抗だからこそだろうか。その役割をしようとする、僕が、居るからだろうか。好奇心が今だけ先行して、獣の興奮を上回っているだけかもしれなかったが。人のちんちんを弄ぶ銀狼の手に翻弄されていた。この程度の刺激で射精したりはしないが。それでも、腰の奥に溜まる熱。もっと強く握って、激しく抜いて欲しい気持ちが湧いてくる前に。僕のを包んでいた狼の手が離れていく。それで、少しだけ声を漏らし。彼の頭頂部にある、真っすぐ立った耳がぴくりと反応したから。思わず顔を逸らした。僕一応男であるから、ここまでされて。射精したくないとは言えなかったから。同じ性別であるガルシェは、言いはしないが手に取るようにわかっているのだろう。実際に敏感な部位を手中に納めていたのだから。人の反応から簡単にわかってしまえたとも言える。
 こちらの反応を楽しんだら満足したのか。また膝立ちになると。最後に残っていたトランクス。薄い青と濃い青で彩られた縞模様という、ごく普通のそれに手を掛ける。後ろの尻尾穴を留めるボタンを外すと、するりとゴムが緩んでいる為に簡単に膝まで落ちてしまう。すると、むわっと立ち上って来る強烈な雄の臭い。カウパー程度では済まない。ズボンの中に長く押し込められてやっと解放された性器から漂ってくる、蒸れに蒸れた。それが鼻腔を刺激する。きっと僕よりも鼻の良いガルシェは、もっと自分のそこから香るにおいに気づいていただろう。べろりとまた、舌なめずりして。片足を先にトランクスから脱ぎ去り、もう片方の足首にぶら下がったままとなったトランクスまでも振り払うと。四つん這いで距離を詰めてくる。ぶらぶら揺れる、狼の生殖器。勃起していた筈なのに。僕の身体を触る事に夢中だった為か。暫く刺激を与えられずいじけてしまった彼のは、先だけを残し。毛皮の鞘にその身を隠してしまっていた。また半立ちになってしまった様子の彼のと。勃起し、はしたなく先走りを零す人のがすぐ近くにあれば。僕ばかり、やはり興奮しているようでいたたまれない。
「その。僕もガルシェの触ってみてもいい?」
 正直、言うか迷った。このまま、先に進んでも良かったのだが。久しぶりに、こうして性的に触れ合い。無防備に晒し合った性器を前にし。触りたい気持ちがあったから。お伺いを立てていた。ずっと楽しそうに、欲を孕んだ瞳をさせていた銀狼が。僕の台詞に一瞬驚いた顔をしつつも。いいぜって、そう言いながら。少しだけベッドの上で後退すると、座り。後ろ手に身体を支えながら、大きく足を伸ばしたまま広げてみせた。続いて、ずっと身を横たえたままだった僕が身を起こし。正座するようにしながら、手を使いちょっとだけ身を寄せる。開いた彼の太い太腿の間に座るように。無防備に晒された、人外の性器。筒状に毛皮で包まれた性器と、そこから顔だけ出している。尖った赤黒い部位。そして二つだらりとぶら下がっている。毛皮で包まれているのに、重そうな印象を与える睾丸。
 前は、発情期の欲を発散させる為に。僕が手で触れ、射精に導いたから。それで、また触ってみたい欲求に駆られ。彼に散々自分のを好きにされたのもあって。お返しに、とはまた違うが。僕もしてみたくなったのだった。手を持ち上げ、指先がもう少しで触れそう。そこまで来て、ちらりとガルシェの顔を見た。すると、安心しきった。心を許している相手だからこそなのか。穏やかな表情で、僕を見ていた。痛くないように、優しく触れる。まず感じたのは熱さだった。鞘の部分。ふにふにと、揉むと変形し。でも一定以上は曲がらない。それは中に陰茎骨と呼ばれる、骨が支えているからだ。だから彼のは勃起していなくても、折れ曲がらない。芯はあるが、柔らかい。不思議な感触だ。少しだけ顔を近づけ、尖った先を晒す。尿道口がある場所に鼻を寄せると。濃い雄の臭いと、少しだけ漂うアンモニア臭に怯んだ。そういえば、彼は今日身を清めていなかった。だからこそ、蒸れた個所は。強く臭いを発し。今日分泌された物を雄弁に語っていた。
 鞘の上から彼のを刺激しながら、そのまま手を滑らすように下に下にと動かすと。熱い箇所から、途端に少しだけひんやりとした部位に辿り着く。ガルシェの陰嚢だ。毛先が短く、柔らかいから。ふんわりとした感触がして。その後に軽く持ち上げるように包むと、ずっしりとした手のひらに伝わる重量感。この中に、雄の狼として。精子が大量に詰め込まれていると、知識としては知っていても。実際に触ると、恐ろしいような。大事な器官であり、急所でもあるから。触られるのを生物として、嫌がったりするだろうに。ペニスではなく、陰嚢を触ろうとも。穏やかな表情をガルシェは崩さなかった。中にある二つあるコリコリとした感触が、実際に卵みたいな形をした物体が二つ入っているのを伝えていて。卵と比喩したが。それよりも一回り大きく、ジャガイモのように感じた。禁欲を重ね、人の発情臭で強制的に発情した銀狼であるから。普段よりもきっと、中身が詰まっているのか。一年前に触れた時よりも重く感じられた。そして、現在進行形で。新たに精子を作ってるのも。また事実であり。この中身を、今日。僕に注ぐのだろう。そして注ぎたいのだろう。
 気づいてしまった。僕が彼の玉を好奇心に触り、物思いに耽っている間。獣の目線が、人の腹を熱心に注視しているのにだ。ありもしない、子宮を想像しているのか。狼の口から溜息のようにして零れた吐息が妙に色っぽい。禁欲し、普段よりも濃いものを。まさか、我慢してたのは。それも目的だったのだろうか。より濃く、多く。
 半立ちである彼の先から、ぴゅるりと。液体が迸って。銀毛があっても割れているのがわかる腹筋の上に滴った。睾丸を揉まれながら、何を想像しているのか。銀狼が欲情したのを隠しもせず、期待に。胸を躍らせていた。
 初めてのちゃんとした性行為であるから。僕も、ガルシェも。お互いの身体に興味津々であり。稚拙で、ちゃんとした大人からすると。とても幼稚な戯れに見えてしまうかもしれないけれど。こうして相手の性器の形と大きさ。手触りを確かめているだけだというのに。昂る感情が確かにあった。
 当然、人になすがままにさせていた。狼の方もであって。突如身を起こし、僕の肩を掴むと。最初と同じ姿勢を取らせるように。仰向けに押し倒して来た。
「ごめん。悪いけど、我慢の限界なんだ、ルルシャ。俺のチンコが中に入りたいってずっとジンジンして、頭おかしくなりそう」
 挿れたい。どこに。僕のあそこに。そうガルシェが乞うていた。膝裏に手を差し入れ、大きく開脚させてくると。膝をベッドに擦りながら腰を寄せてくる。お尻に当たる尖った、熱い感触にびくりと反応した。何がなんて、さっきまで触っていたから。カクカクと、太い腰を軽く振り。突っついて来る。探るように、入る場所を。ペニスの先だけで感じて。
 でも今まさに、自身の性器を挿れようとしてくる相手に。僕は慌てた。いくら事前に洗う過程で多少なりとも慣らしたとはいえ。経験のない不慣れな場所であって。このまま慣らさずに交尾しようとする男にだ。濡らしもしてくれないだなんて。
「まって、まってまって! ガルシェ!」
 大きく手を振りながら、また行動の中止を願う。かなり状況的にも、そして相手の事を考えると、興を削がれかねない僕の行動であったし、それで狼の顔が不可解だとばかりに。顔を顰めようと。それをしないとはならなかった。痛い、絶対痛いよそのままじゃ。全て彼に任せていたら大丈夫という思いは、一瞬でそれは間違っていたと思わされた。ぴとりと遂に肛門に当たる彼のまで、不満そうだ。
 どうして止めるんだと、事情をまるでわかっていない相手に。必死に、かなりみっともなく。足を開かされ、無防備に肛門を曝け出され。そして性器を押し当てられた状態で、本当に必死に説明していた。慣らしが必要な事を。そうされると思い込んでいたからこそ。身を任していたから。危うく準備もなく突っ込まれる所で、冷や汗が伝う。
「ああ、そうか。ルルシャは、雌じゃないから。俺達だと、かってに濡れるから。そうか、そうだった……」
 僕のこの僅かな間に萎えかけた情けないモノと、怯えにかきゅっと縮こまる。入口ではなく出口でしかない。排泄器を見てか。ガルシェは、今まで忘れていたと。番だからと、よく雌扱いする僕の性別が男性であったと。その繁殖しか考えてなさそうな頭であっても漸く理解してくれた。
 彼らレプリカントだと、交尾をする時はお互いに発情期であり。それは当然、雄だけではなく雌側も準備が整っているわけで。生殖器は愛撫もせず、フェロモンを嗅いで濡れるのだろう。だからガルシェも、レプリカントの雄らしく。そのまま行動に及ぼうとして。どちらかというと、先程の前戯みたいなものは。僕に合わしてやってくれていたのもあったのか。本来なら、脱いだら即合体なんて勢いで。激しく交じり合う生態。発情期で、知能が下がった雄と雌が。どうなるかなんて、どうするかなんて、想像に難くない。でも、興奮はしても。僕は人で、発情期なんてものにはならない。なれなかったから。どこか理性的な部分がいつだって邪魔をしてしまう。多少なりとも気を遣いながらも。最終的には本能に身を任せて、人を抱こうとする狼とは違うのだった。
「慣らす、慣らさなきゃ、交尾できない。ルルシャに、種付けできない。グルル、慣らさ、ないと」
 困ったとばかりに、銀狼が。抑えきれない獣欲にか唸りながら、突き込む手前で停止していた腰を離し。抱えるようにしてた膝から片手を離すと、僕の足は片方だけベッドに落ちる。それでも残ったもう片方を彼の手が保持しているせいで。未だ、無防備に普通は見えない肛門を晒されたままで。ひんやりとした空気をそこに感じた。一瞥するように、自身の手を見て。丸く整えられているが、粘膜を傷つけそうな爪を気にしてか。獣の目が迷う素振りを見せる。でも性欲の方が勝ったのか、早く解さないとって。そんな感じで、僕の指より太い。ガルシェの指が一本、肛門に触れ。皴を軽く伸ばすように、押して来る。
 自分のそこを、他人がいざ本当に触れるとなると。羞恥心よりもまず、ただ汚いよそんな場所。そのような感情があった。だってこれまで、ただの排泄器官でしかなかったのに。いざガルシェに使って貰い。満足させられるかの前に。抵抗感が残っていて。思わず口に出ていた。自分の場所であっても、汚いと。触れて欲しくないとうのが。
 うるさいとばかりに、狼が睨んで来て。余計な事を言ってしまったと、口に出した後で。しまったと後悔したが。行動を止め、いらぬ事を一々口に出し。鬱陶しいと感じ始めただろうか。僕に合わせるのもさすがに限界に来たのか。狼の眉間がかなり寄ってしまっていた。一応、この行動の発端は僕から誘ったのに。あんまりな態度の数々であっただろうか。
「慣らす。汚い。慣らす、洗わないと。洗う……?」
 狼の頭が俯いて、ぶつぶつと何かを呟いていて。恐ろしかった。先程まで嬉しそうに揺れていたのに、不満そうにベッドを叩く尻尾。目が据わっており、怒ってるのかと思わせる彼の表情。名を呼ぶが、無視される。持ち上げられたままの片足と、中に入ってはいないが、肛門を解そうと触れた状態である彼の肉球の存在が感じられ。とても滑稽な格好のまま固まり時間だけが過ぎていく。
 大事な初夜だというのに、言ってしまえば小さな積み重ねといえど。失敗続きであったから。せっかくぎこちなくも、穏やかに始まったのに。もしかしないまでも取りやめとかが脳裏を過った。僕の態度に呆れ、落胆した銀狼が。もういいって、そう突き放すのものと。それはあってはいけない。僕を使って貰わないと。使って、彼が気持ちよくなれないと。意味がなかった。
 最後にずっと持ったままだった、もう片方の手までも離れると。完全に僕の下半身はベッドに沈み。反動で軽くスプリングで揺れる。沈黙を貫くガルシェが、ただ見下ろしくるだけなのが。不安にさせた。このまま、どうするべきなのだろうと考え。誘い文句の一つも出てこなかった。この状況でまだ。相手を悩殺できるような、言葉を持ち合わせていない。
 脇腹に彼の手が添わされ、そのまましっかりと持つと。僕の身体は簡単に浮き上がる。人間一人、軽々と持ち上げる事ができる。彼の力が入った腕。筋肉がボコボコと膨れ、硬くなり。だというのに涼しげな表情のガルシェは、全く苦ではないのであろう。普段から、僕を抱っこするのを逆に好むぐらいだったから。持ち上げて何をするのかなと思えば。そのまま抱きかかえるようにして。僕の貧相な胸と、逞しい夫の胸がぴったりとくっつき。腰を支えられているが、落ちそうな気がして。自然と太い首に自分の腕を回していた。狼の鼻先が、僕の鼻先に挨拶するように当てられ。それと同時に、熱いモノの存在が。お尻に感じた。くにくにと、尖った部分が。僕のアナルに当たる。
「えっと、ガルシェ?」
 行動というより、この体勢の意図を汲めなくて。動揺に、彼の目を見ながら。名を呼んで。何かを閃いたかのように。銀狼が任せろとばかりに、鼻息を荒くしていた。何をする気なの。そんな疑問は、突如始まった揺さぶり。僕を抱え、膝立ちになったままガルシェが腰を振ったからだ。視界が揺れる。ずり落ちないのは、しっかりと銀狼が人を抱きかかえてるからで。急き立てる、狼の生殖器が。腰を振る度に、その尖りをお尻に。蟻の門渡りに、そして目的の肛門にと。滅茶苦茶に当たる場所を変えながら。ぐにゃりと柔らかい尖った部分を曲げながら。強く押し当てられる。肛門を捉えた弾みで、その先が僅かに没頭するものだから。一気に押し入られそうで、暴れようとするが。それよりも、彼の腰を振る力強さと、荒さの方が勝った。
「洗わないとな。ルルシャ、俺ので。俺に、任せてくれ」
 興奮に息を荒らげたまま、任せろと。夫は言う。僕のお尻を突き上げながら。まるで入りたそうにしながらも。挿入まではせず、そうしそうになっても離れていく。そこで耳に、くちゃくちゃと粘液を噛むような。湿った音がしだしたのに気づいた。どんどん、僕のお尻が濡れていた。それは勿論、蟻の門渡りも。そして乾いた肛門もで。どんどん、彼がペニスを押し付ける度に。濡らされて、湿らされていく。犬科の第一段階目の射精。ガルシェのカウパーだった。勃起する過程で出す、円滑油と。雌の中を洗う意図があると、説明してくれていたものだ。
 それが、人を抱え。ベッドの上で彼は膝立ちとはいえ。向かい合うまま、駅弁と言われる体位で。腰を振られていたのもあって。大量に吹きかけられる彼の体液に。卑猥なウォシュレットとばかりに、僕の肛門を濡らしながら。洗っていた。ぷしゃぷしゃと、断続的に人間の射精と遜色ない勢いで吹き出す熱い液体。精子を含んでいない大量の液体。
 どうやら、汚いと口にした僕のと。自分で言った洗わないとで、連想された行動らしく。事実、目的には添っていた。だが、される側である僕はむしろ。汚されている気持ちで。だって、ガルシェの。ペニスから出る、卑猥な液体で。これは交尾する時に彼が出す、興奮の証で。ぬちゃぬちゃと、えっちな音をさせながら。僕の肛門を捉えた彼のモノが、濡れ具合が十分だと判断されたのか本格的に没頭しだす。本来は排泄するだけの場所が、男の。人外の性器を咥えこむのを強要されて。自重と、そして支えているのは彼の腕力であったから。これ以上刺さらないように、必死で彼の首に捕まっているが。匙加減は全て、ガルシェの思い通りだった。腰を突き上げれば、その分潜り込んでくる。
 実際に、入ってくる面積はとても少なかったのかもしれない。浅く、抜き差ししながら。僕の様子を確かめながら、痛がったら。それ以上進まず。ただ慣らす意味合いの方が強く。だが、初めて他人が入って来るその感触に。驚きと衝撃の方が強く。微々たるものであっても、大袈裟なぐらい動揺に。自然と首に絡めている僕の腕に力が入る。それで、ガルシェが止めてはくれはしなくても。良心が痛むのか。狼が顔を顰めさせて。辛いのは僕だけとばかりに頭を嫌々と振った。
「あ、気持ちいい。ルルシャの中。これがルルシャの中なんだ」
 耳元で呟く、男の感じ入った声音。深く、徐々に深く。ペニスを押し込みながら。中の感触を確かめるように、感想をそのまま口にしていて。こちらを気遣う様子が取り払われていく前兆に、今にも根本まで突き込まれそうで。正直怖かった。それと、直接的な刺激のせいか。ガルシェのペニスは浅く出し入れされながらも。その太さを増していて。なんとか慣れつつある僕のアナルを、慣れる前に太くなる性器のせいで。虐めてくるのだった。先走りを中に塗り付けながら、勃起しつつある狼の生殖器。腰の動く幅は同じでも、太く、そして長く伸びていく分。入って行く深度は、銀狼の気づかぬ内に。こちらに負担を強いた。最初、ほんの先だけを出し入れしているつもりだったのだろう。だが今では、ガチガチに勃起し。血管が蔦のように浮き上がり這ったそれらで。全体的につるりとした表面をさせながら、細かい部分でぼこぼこした異形の性器は。半分までその身を埋め込んでいた。ぼたぼたと、注いだ分の先走りが動く度に茎を伝い。陰嚢を濡らしながら結合部の真下、ベッドを汚す。
 唐突に引き抜かれたガルシェの性器。ぬぽって音がしそうで。異物感に喘いでいた僕は、纏まらない思考をさせながらも。またベッドに寝かされる事になった。すぐに覆いかぶさって、もう一度挿入したそうに。こちらの様子に今気づいたとばかりに、申し訳なさそうに耳を倒す銀狼。気を遣って動けていたのは最初だけ。途中から欲のまま、動いていたと。反省しているのか。ぶらぶらと勃起させたペニスを揺らしながら。先走りなのか、腸液なのか。良くわからないものでぬらぬらとテカるものから、ぽたぽたと垂れる雫で僕のお腹や。萎えたままの人の性器を汚す。
「ご、ごめんルルシャ。俺、気持ちよくて。つい夢中になって、その」
 謝っていた。謝りながらも、でもガルシェは続きを所望していた。だって、狼の顔は確かに申し訳なさそうにしながらも。既に人の腰を持ち上げ、勃起して準備万端の性器を。ぱくぱくと動いてる人のアナルに触れさせていたから。それが表面上であって。彼のなけなしの理性であっても。殆ど、中身を占めるのは自己中心的なものであった。性行動の続きをと。本能に吞まれかけた獣のそれで。でも多少強引であったが。解すという意味では、成功と言えるのだろうか。痛みは少ないながらも残っていたが。彼の性器は、勃起していなければだが。僕が勃起したものと比べると細い。だからこそ、陰茎骨の補助もあり。挿入に際し効率が良いのだろうが。濡れている状態なら、相手の雌も痛くならないように。すぐに性行為に移れる、彼らの動物的な身体の仕組みだった。今はそれに助けられ。でもすぐに中で勃起し、大きさをどんどん変えるモノに。慣れる暇を与えてくれない相手の性器の変貌する速度に、ついて行けず辛い状況なのだが。途中で抜かれたのも、完全に勃起して。大きいそれで、僕が痛がるのを懸念してだろう。事実、欲のまま先を押し付け。切っ先をアナルにはむはむと噛ませながらも、それ以上押し入ってはこなかった。
 乱れた息を整えながら。相手の様子を窺えば。涎を垂らしながら、耐える姿はどこか。ご飯を前にした。雰囲気がまるで懸命に待てをする犬に近いものに感じた。逃がさないと掴んだ力強い手が、滾った漲るペニスが。少し違うとも言えたが。相手は狼の顔だが、それに近いものに僕の中では連想されて。ガルシェ達、狼の生殖の仕方を思い返しながら。そういえばと。
 いつだって誘うのは雌からで、雄はそれに答える立場であると。発情期も、先に雌から、そのにおいに当てられて。雄もそうなるのだと。求愛はしても、応えるか、拒否するかは。相手を選ぶ権利は雌の方であると。そんな話を今思い出していた。普段からガルシェは、僕を大事にしてくれる。暴走するきらいがあり。さっきも、本能に流されそうになってはいたが。熱い息をしきりに吐き出しながら。僕のお腹を睨むように。獲物を前にした、野生の狼みたいに。歯茎を剥き出しにして、威嚇のように唸りながらも。待っていた、何かを。何を。僕が許可を出すのをだ。
 番だからこそというのもあったのかもしれない。本能に支配されて、最終的には強姦事件まで起こす過去があった彼らであっても。その瀬戸際で止まっているのだった。自己本位に、雄として。雌に見立てた人を扱いながらも。真にそうなりきれない。ならない。そこに、愛を感じた。彼の愛を。大事にしたい、乱暴にしたくない。でもしたい。犯したい、無茶苦茶にしたいという、本能も。そんな彼の中にある葛藤が瞳の奥に垣間見えた気がした。
「ルルシャ、いって。ルルシャ、すき。ルルシャ、ルルシャ。犯したい。ルルシャ、俺」
 舌ったらずにも、僕の名前を呼びながら。じわじわと、彼のが入りだす。腰が、今にも振り立てられそうで。動物らしく、交尾しようとしていて。人間らしく、僕の心を優先していた。このまま何も言わなくても、そして言ったとしても。もう結末は変わらなかったと思う。だって彼は発情期なのだから。欲に駆られ、本能のまま。無防備に裸を晒している相手に、我慢なんてできないだろう。誰に咎められるいわれはない。そうされたとて、僕も彼を責めはしない。僕から誘い、こうなったのだから。でも行動が終わり、理性が戻った時。一番傷つくのは、犯された僕よりも、きっと犯した彼の方だった。許可を貰わず、同意を得ず。そうしたら。意味が変わってしまう。だから言わないといけなかった。そうしないといけない。
「いいよ、ガルシェ。僕の事、好きにして、いいよ?」
 好きなだけ、犯してくれてよかった。そうしてくれて。君はずっと我慢していたのだから、だからもう。我慢せず、その獣欲を解き放ってくれて。人間であるが、僕相手にぶつけてくれて良かったのだ。あの時みたいに口輪もせず。ただありのままの君を、狼である君を。人を食い散らかしてくれて、良いのだと。伝えたかった。同意を得た銀狼が、どうするか。ただとても簡潔で、わかりやすい動きだった。前にと、腰を突き出す。それだけだった。それは当然、勃起して。長く太く成長した、棒状の。まさに肉棒と化した、彼のが真っすぐに僕に突き進む事を意味していて。少しだけ緩んだ僕の肛門は。阻害するには、締め付けが足りず。抵抗にもならぬ動きだけをさせ。ただ切り裂かれるような痛みと。どちゅんと、深く、深く入って来る相手の衝撃が。お腹に生じて。
「お”っ」
 耐えようとした。心構えはあった。だというのに、肺から押し出されるようにして出た。僕の声はなんとも汚い、喘ぎとも言えないものであったろうか。そこからじんじんと伝わる、鈍痛。まだ、全て入ったわけではなかった。別に見たわけではない。僕のお尻に、彼の腰が密着していないからだ。そして、根元にある筈の亀頭球と呼ばれる瘤状の部位も。アナルには触れていない。肛門から腸内へと侵入した不届き者は、壁にぶつかったのか。その進行を妨げられていた。ぬるりと、引き抜かれ。そして、先が抜けかかる前に。また勢いよく、抜けていく時の何倍もの速度で。突き込まれた。衝撃が腹を襲う。それも、こんどは連続で。
「ルルシャ!」
 大声で、誰かが叫んだ。その者が、僕を抱きしめて。正常位で、交わりを深くしようと。激しく腰を振り立て。自身の性器を抜き差しする。体格差のある相手に、気遣いすら忘れて。本能のままに腰を振っていた。ガルシェが、僕相手に。そのやり方は、とても褒められたものではなかった。抽挿に、失敗し。なんどか勢い余って抜けてしまう場面もあった。そうしながら、もう一度挿入して、突き込み。どちゅ、どちゅっ。激しく、中を荒らしながら。また抜けて、焦れた狼が唸り。空振りしながら、お尻の側面を突いたりして。苛立たしげに乱暴に再び挿入する。キスが下手なガルシェは、交尾も下手くそだった。それはそうだ、経験がないのだから。初めて、交尾しているのだ。雄として、今。立派に成長している真っ最中だった。僕の身体を使い、雄として。雌を犯している。それでも、刻まれた本能がそうさせるのか。だんだんとその腰使いが慣れて来たのか。抜けてしまう場面は少なくなり。ペニスの抜き差しが、稚拙なものから滑らかになりつつある。
 そうなってくると、逆に僕の方が堪らず。喘ぐ。それは快感によるものではなかった。抜けて休憩が挟まっている間は良かった。でも、抜けずなんども殴打するように。狼の生殖器が中を突き上げてくるのだから。痛みに喘いでいた。何よりも、圧迫感が凄かった。他人に、自分の内臓を荒らされているというのもあって。本来、受け入れる場所ではないのだから。簡単に慣れるなんて、受け入れて。ただ快楽だけを享受するなんて、幻想でしかなく。生理的に浮かんだ涙に、目尻を濡らしながら。熱心に腰を振るだけになった、狼の表情を見上げていた。僕を抱き込んで、大事そうに。離すまいとしながらも、乱暴に、酷く。扱う。性処理のように使う。暴虐非道な所業にだ。セックスなんて甘いものじゃなかった。本当に、ただ繁殖が目的の交尾だった。動物の顔をしていて。全身を毛皮で覆われて、性器も。人とはまるで違う形をしている、異種族を相手に。それを求めるのは酷と言うものかもしれなかったが。
 始まってしまって、もう止まらない彼の動きに。ただ翻弄されながら。受け入れるしかないまま。お腹の中に彼を感じる。本当に入ってしまっていた。抜けていく時、浮き出た血管が腸壁に引っ掛かるのか。それでもズロロロと、粘液を纏い。そして次の瞬間には、前立腺を叩くように通過しながら。奥を目指し、尖った性器がずんずん突き立てられて。
「凄い、ルルシャの中。凄い。俺のチンコ、気持ちよくなってる。腰、止まらないっ」
 どちゅどちゅ、どつッ、ごちゅ。激しく、内部から伝わって来る音。行き来する人外の性器を、思わず締め付けて。それで勢いを削ぐどころか、ただ相手を気持ちよくするだけであっただろうか。より、彼の形を鮮明に感じ。内部の音に、結合部からは濡れに濡れたぱちゅぱちゅと恥ずかしい抽挿の音も混ざり。いくら狼の腰が激しく動き、粘液が白く泡立ち、乾こうとしようも。大量に分泌された先走りにより、乾く暇がなかった。円滑油としての機能をしっかり果たしながら。もっと深く、潜り込んでくるガルシェのモノ。曲がりくねった腸の形が、彼の突き込み一つで。徐々に形を変えている気さえした。僕のお腹の中。見えないけれど、彼の形に。彼のペニスに合うように。力尽くで、そうされていた。
「中、狭い。けど、それが気持ちいいっ、きっと形変わっちゃう。ルルシャの中俺のチンコで、形変わっちゃうけど、いい、よな?」
 好きにして良いと言ってしまった手前、僕に拒否権なんてなかった。所有権を放棄した自分の内臓が相手にどうされようと。事実、最初からずっと尖ったペニスで殴られ続けている。弁、行き止まりだと思っていた場所をこじ開けて。さらに深く、彼の性器が押し入って来る。割り拓いていく。僕のお腹の中、内臓が、本当にどうなってしまうのだろうか。そんな心配が過ったけれど。それも襲う痛みと、そんな中にある僅かばかりの快感を拾い。それに縋った。ガルシェは僕の中を突き上げながら、狭いと言うが。彼の性器が大きいのを忘れてやしないだろうか。太く、長いモノが抜かれていく時。埋めていた分、切ない程に浮き上がる喪失感と、排泄する時に似た快感が。そして上書きするように、また入って来る。隙間を、狭まる事を許さないとばかりに。ふてぶてしく存在する、彼のグロテスクに感じる赤黒いペニスが。みっちりと埋めて押し広げ。圧迫感が喪失感を忘れさせそれ以上に存在を主張する。犯されている過程で。僕は勃起していなかった。それは感じる痛みによるものか。迷うように、そうなれなかった。だというのに、半立ちのまま。ゆるく身をもたげたまま、中途半端な僕のは。ただだらだらと、彼の突き込みに合わせ。先から蜜を零す状態。おかしい、異常を訴えていた。僕のそこが、本来触れられる事のない。前立腺を乱暴に弄られながら。腸を擦られながら。異常事態に、震えていた。背筋をびりびりと、得体の知れない。良くわからないものがずっと駆け巡る。咄嗟に掴んだ男の胸毛。銀の毛を毟るように。その程度の僅かな痛みで、ガルシェが気にもなりはしないとばかりに。また、ぐっと腰を押し付けてくる。組み付いた相手に遠慮なんてなかった。
 ただ闇雲に、腰を振っているようであったその動きが。だんだん違って来ているのに気づいた。深く、入りだした。番の中の感触に、気を良くした雄は。従順に柔らかく。夫を迎え入れる、僕の粘膜にか。抵抗もできないと言えた。締め付けても、ただ相手を気持ちよくするだけで。力むと痛むだけであったから、できる限り。力を抜こうと、僕は努めていたというのもあった。
 腰を左右に揺さぶりだしたガルシェ。前後運動、いわゆるピストンとは違い。中に入った彼のが、当たる場所を変えながら。尖った先で、探るように。ぐにぐにと、まるで意思を持ったように中で暴れる。人の腸壁を真っすぐにして、まだ飽き足らないのか。暴虐は続く。
「ルルシャ、どこだ。ルルシャの子宮。子宮、どこだ。そこに注がないと、俺っ。俺の金玉の中、疼いてる。ルルシャの子宮に早く入りたいって、中で蠢いてるのがわかる」
「やっ、探さないで!」
 焦点の合わぬ、獣の目をさせながら。欲のまま、相手が吐き出す言葉に理解が及ばない。聞こえてくる、男の声に。何を言っているんだと。頭が働かない。だって、僕は今犯している人と同じ性別であり。子宮なんてない。あるはずがなかった。だというのに、あると信じて何かに取り憑かれたかのように、執拗に探すのをやめない銀狼。ぐりぐりと腰を押し付け、揺すり、差し込んだペニスを起点に大きな尻を回すようにしながら。手探りのようであっても、やっているのは性器から感じ取る情報だけで。中の感触をじっくり確かめて。そうやって、ついに探り当てた窄まり。僕のお腹の中に、まだあった行き止まり。伸びきった腸に、更に先があると。相手にも伝え、そして僕自身にも。それが何かわからなくて。獲物を発見した狼が、狡猾に嘲笑うようにして。ガルシェが、普段あまりしない笑い方。どこか彼のお父さんがするような、人を揶揄う時にするものに似ていた。
「あった、子宮口。俺の、夫の精子が欲しいって。強い雄の種が欲しいって、ルルシャの方から迎えに来てくれたんだなっ。先っぽにコリコリしたの当たってる」
 嬉しそうに、尾を振りながら。ガルシェがどこか浮かれながら言う。理性のない、言葉だった。ただ交尾をして、種を残そうとする。その言い方は、気持ち悪いぐらい情欲に染まった雄のそれだった。尾を強く振る度に、その振動が。切っ先に伝わり、窄まりに嵌り込むように存在している。ガルシェのペニスごと揺らす。そんなわけない。違う。子宮なんてないのに。あまりに深く入り込んで来る恐ろしい生殖器の感触に、思わず自分のお腹に触れ。そしていまさら気づいた。お風呂場で、入れていない状態で。ガルシェは勃起した生殖器を人に押し付け、お腹の上に乗せ。こう言っていたではないか、臍超えそうだぞって。その現実が今、目の前にあった。触れた場所が、奇妙にも内側から盛り上がっていた。僕のお腹が。鍛えていないのだから、腹筋ではない。彼のように凸凹してはいない、シックスパックなんて夢のまた夢だ。だが、その奇妙な膨らみは。非現実的であって。ガルシェが少し、腰を引くと。お腹の膨らみが消え、僕の手のひらに伝わっていた感触も消失する。だが、また腰を寄せ。押し付けてくると、内部を突き進んだ性器の形がお腹に浮き上がり、臍の辺りが一番内部から押され。盛り上がった。胎内に何かが居た。別の生き物のように。手にひらを、お腹の薄い皮越しに突き上げてくる。何かが。こんなところまで、入っていた。誰のが。狼の生殖器が、種を。人に自身の子を産まそうと。孕まそうと、際限なくどこまでも奥へ。これ、ガルシェの。ペニスだ。あまりに深々と、恐怖心を焚きつけるには十分過ぎる光景。人を串刺しに。命を断とうとするかのように、刺さっていた。
「こ、こんな。本当に孕んじゃう……」
 あまりの衝撃的な光景に、感触に。そんなふうになるわけも、生物学的に。僕達は同性であり、子供を身籠る要素なんて。欠片も存在していなかった、するわけもなかった。でも、そう思わずにはいられないぐらい。自分の胎内を荒しに荒した、生き物の存在。他人の、性器が。ここまで入ってると、本当にいまさら、実感したのだ。
 僕の言葉を聞き届けた狼は、毛を逆立てながら。中に入れた性器をより、滾らせた。ビキビキと、さらに硬く。いっそ破裂しそうなぐらい。勃起した。なんでそうなるのか胎内の様子に、わからなかった。自分で吐いた言葉も、無意識だった。一度抜いて欲しいとすら思った。入っちゃいけない場所まで、彼の長い性器が届いてしまっている。届いている。大事な場所を、本当に好きかってされている。苦しいぐらい僕を抱きかかえたまま。より深く、より先へ。より奥深くを目指すように。腰を叩きつけてくる相手。止まっていた腰が再開したら。また迫りくる圧迫感に、思考が乱されて。どうして、ガルシェがより興奮したのか。どうして、彼の性器が勢いを増してより硬くなったのか。焼ける鉄の棒でも、お尻から入れられているように感じて。見上げた逞しい男がいつの間にか纏う、蒸気のようなものがあった。冷え切った真冬の室内に対して。どこまでも上昇し続ける僕達の熱気。どうして、こんなにも。手や、足からの肉球から大量に彼も汗を分泌しているのか。ガルシェの体臭が獣臭いだけではなく、今だけは汗臭くも感じた。きっと今の彼は雌を魅了する、雄のフェロモンを全身からまき散らしている。繁殖欲求を、全開にして。
「ルルシャ、好きだ。愛してる、愛してるから。もっと俺を受け入れて、俺を求めてくれッ!」
 急いて、急いて、理性をなくした獣の動き。心からの叫び。落ち着いて考えれば、簡単にわかるものだった。今の彼は、僕をそうしようと。孕まそうとして、交尾しているのだから。当然だったのだ。最初から目的は変わっていない、何も。言っていたではないか。彼らの蜜月とは、それが目的で。子作りの為の期間だ。だからガルシェもそうで、いくら男相手とはいえ。知能の下がった思考で、ただ望むのは。僕に子供を産ませたい、ただ、ただただそれだけだった。子孫を増やしたい、生物としての。自分の遺伝子を残したいという、衝動。好きだ、愛だと、包んではいても。実質その中身は、ただの機械的な。本能。DNAに刻まれた、原初の行動。性欲にだけ囚われた、雄の衝動だった。
 ガルシェは言った。きっと最中に、僕を傷つける事を言うって。僕が何を気にしているか、知っている雄は。何を言えば、負い目に感じている部分を刺激するか。正しく理解していた。雌を屈服し、自身の快楽だけを優先し。ただ射精する、そこを目指すだけの動きをする。相手に。身体を揺さぶられながら、ドーパミンなのか。僕までぼんやりしてきた頭に。痛みが薄れて、相手の大きすぎる存在を、胎内からも。外からも感じながら。種付けされる瞬間を待っていた。
 彼が動けば、痙攣し、強張る身体。ずるりと引き抜かれ、入って来る大きなペニスの形を。肛門にぶつかる、大きくなりだした亀頭球の存在を。全身を毛皮を纏った者に包まれながら。ただ待っていた。奥深くを抉る彼の肉棒の勢いに、気圧されながら。
 でも段々と、勢いを失くしながら。往復していた胎内の動きが、止まる。どうしたんだろうと、耐える為に瞑っていた目を開けると。ガルシェは、戸惑いにか。唸り、抜きたくない筈なのに。ゆっくりと、自身のまだ欲望を吐き出してないままであるというのに。抵抗しない相手からペニスを抜き去った。解す意味もない。既に解れて、突かれ続けて。変形した僕の胎内は。きっと彼の形を模ったかのように。内部を歪ませているだろう。自分で抜いておいて、どうしてか僕が威嚇にと唸られる。理不尽だ。
「ルルシャ、交尾。交尾の姿勢。やっぱり、俺。そっち、そっちの方がいい」
 腰を軽くぺちぺちと肉球で叩かれ、しきりにガルシェが。姿勢を変えたがっていた。正常位でこのまま、最後まですると思っていたけれど。どうやら、ご不満らしい。ウーウー、早くしろとばかりに唸りながら。股間をいきり立たせて待ってくれている相手に。ベッドに手をついて、力が上手く入らないながらも。身を起こす。彼が何を求めているかはわかっていた。素股を初めてした時、お尻を僕が自ら向けて。それを見て呟いた狼の台詞と、今言っているものは似ていたから。動物が普段、どういう姿勢で交尾するのか。知っていたというもあった。ただ、ここまで来てそれを求められるのもどうなのだと思いながらも。僕自身、彼の思い通りにしてあげたいから。ただ犯されているだけだというのに、それで早々体力を削られて。あまり言う事が利かない身体を叱咤しながら。ベッドの上で、四つん這いになり。お尻を彼に向ける。バックスタイル。背後に感じる、男の気配。身を寄せ、抵抗なく再び入り込んでくる。男性器。腰というより、お腹を抱き込むようにして。覆い被さって来る相手。体重がそれなりにかかり、重かったが、必死で支えた。ゆるゆると、抜き差しを再開し。一度外に出た遅れを取り戻すように。またガツガツと腰を振るガルシェ。交わる体勢を変えたからか。当たる箇所も、当たり方も変わって。前立腺により当たり、先程よりもさらに深く潜り込んでくる相手に。ぞわぞわと背筋を這う、生理的な恐怖。突き破れそうな腹。そこを覆うように、男の腕があって。抱きしめているというより、交尾する雌を逃がさないようにしていると言った方が正しかった。ハッ、ハッと首筋に吹きかけられる吐息と。相手が見えないというのもあって、なんだか本当に人ではなく獣に犯されているように錯覚する。
「ルルシャ、俺達。一つだ。今、種。注いでやるから」
 辛うじて、聞こえてくる男の唸り声混じりのそれが。そうではないと伝えていたが。ただ、あまり支えてられるのも長くは持たなかった。手から力が抜けると、顔がベッドのシーツに沈み。くぐもった喘ぎが布の奥に吸われる。息苦しくて、顔を横にすれば。依然と揺さぶられるのもあって、頬がシーツに擦り付けられる。それ以上に、中を擦る存在にばかり意識を持っていかれるのだが。
 ズンッ、ズンッ、ズンッ! 窄まりを叩いて来る、亀頭のない尖った性器が。押し入ろうとしてくる。子宮口とガルシェは言った、そこを。きっと、知識だけあるS字結腸と呼ばれる場所に入ろうとしていた。男同士でどうするのか勉強はしたが。それで、準備にどうすれば良いのかも知ったのだが。実際に中を暴かれながら、狼の雄の証でぐちゃぐちゃにされて。平常心ではいられなかった。悲鳴のように、喘ぎ。それを聞いた背後の生き物は、グルグルと唸り声で応え。舌を這わす。背筋に浮かんだ、玉のようになった汗を味わい。肩に、首筋に歯形を残す。見えない分、獣らしい仕草をされると。やはり、今身体を繋げているのは夫ではなく。獣ではないかと、不安になる。させられる。野犬でも入って来て、いつの間にかそいつと交尾しているかのように。野犬にしては、背後からのしかかる存在はとても巨体で。野生の熊のようだったが。そんな相手が、僕の中に入り。ペニスを暴れさせているのだ。大きく腰を引いて、突きだす。ただそれだけの行為を繰り返し、なんどもなんども。お腹の奥を重く突き上げ広げてくる。生じる摩擦で、お互いに質も量も違う快感を刻みながら。
 髪を振り乱し、身体を揺さぶられ。崩れ落ちる事を許されないとばかりに。腰を持たれ。ただ肛門を虐待される、僕は。情けなくも喘ぐしかできなくて。締め付けると、気持ちよさそうに背後で唸る雄の気配。ぐっと、皴がなくなり伸びきった肉輪に。熱い塊が触れる。触れて、狼の亀頭球が、入りたがっていた。太い、とても太い。そんなもの入れられたら裂けてしまうと思っても。そんな人の心情など度外視な、雄は。ただ事務的に股間を押し付け。入れようと、次の工程に移っていた。キスして欲しかった。気を紛らわせて欲しかった。下手なりにでも、気持ちが伝わって来る彼のキスが僕は好きだったから。一生懸命なそれが。好きだったから。でもそれすら、人に合わせていたというかのように。今は愛情深く、甘噛みを。首筋に、狼の牙が突き立って。赤い点を多く刻んでいた。ガルシェが膝立ちから、足をベッドにちゃんと付け、立ち上がる途中の中途半端な姿勢。腰だけを下げた不格好なそれで。へこへこと腰を振るう。抱きかかえた人の腹と腰に向かい。一歩、前に進む。僕の足を踏みそうになりながら。足踏みして、また一歩前に。なんども殴打され、突如。叩かれ続けた奥がまるで力を失ったかのように。最後の弁が突き崩され、壊され、貫かれ。突貫してくる性器を留められず、迎え入れてしまう。ひんやりとした、冷感が襲い。遅れてじんわりとした蕩けるような快感が広がる。穿たれていた奥が、痙攣し。ぎゅうぎゅうと、中に入っている彼の性器を締め付けて。尖った先に吸い付いて。僕の視界が、霞む。止められなかった。自分の身体の震えを。止められなかった、彼のを食い千切るような締め付けを。
「搾られるっ! しめつけ、すごい。俺のチンコ、とけそうだ」
 感じ入った息が首筋にして。この時ばかりは動きを止めた雄が、堪らないとばかりに。腰を震わせて、自身のペニスから感じる。自らの手で雌に堕とした相手の感触を味わっているようだった。何だこれは、知らない。こんな反応知らない。僕のからは精液は出ていなかった。ただだらだらと、垂れるようにして先走りがベッドに落ちているだけだった。呼吸すら忘れて、ガクガクと身体が痙攣して。この反応はいけないとわかっていても。ただ相手の性器を締め付け。自分の肛門が、腸が、お腹が破壊されているようで。わけがわからなかった。
 長く、刺激を受けていた僕のそこが。ついに屈したかのように。完全に、覆いかぶさっている雄に支配されたかのように。反応していて。自分の身体なのに、自分のじゃないみたいで。沈むような、意識の中。落ち着いてくると。また腰を振られる。よくやったと、まるでご褒美のように。褒めるように、ペニスで中を撫でられて。過ぎ去った快感をまた与えられて。混乱した。
「ルルシャの中。早く子種が欲しいって、吸いついてくる。俺、こんなされたら、もう。たまらないっ……」
 僕の身体の変化を、ペニスを突き込んだガルシェはそこから感じ取っているのか。グネグネとうねり煽動する内部を、悠然とそんな動きなどないものとして。耕して来る。獣のようだった腰振りが、今だけはゆったりと。腸壁を掻き分けて来る相手の性器のせいで。くっぽ、くっぽ。揺さぶられ、短いストロークで腰を振られると腹の中で音がする。彼が言うように、狼のペニスの先に。僕の中が吸い付くようにして、先走りを啜っているのだろうか。戸惑いが生じた。彼だけが気持ちよくなればいいのに、まさか僕の中で何が起きているのか。でもこれは、男としてはおかしかった。普通ではなかった。彼から与えられるそれが、受け取っていいのか。迷った。迷いはしても、抜いてくれないし。動き続ける相手のそれで。内部を縦横無尽に動き回る狼の生殖器に、受け取らないという。拒否権などやはりなく。ただ快感と形容できない異物を与えられるがまま、享受するしかなかったのだが。またじわじわと大きくなる刺激に、怖がりながらも。満たされ、身体を震わせた。次は、ガルシェも動きを止めたりせず。突く、突いて、また突いて。僕を壊して、自分の物としようとしていた。雄として、雌を虜にする。本能的な動きだったが。しっかりとされる側は効果が出ていた。結合部に、腰が振られる度。彼のたっぷりと精子を蓄えた陰嚢がワンテンポ遅れてぶつかってくる。タンッ。タンッ。そうやって結合部から垂れて来た液体を叩き、飛沫を飛ばしながら。痛くないのか心配になる程に。急所である箇所を打ち付けていた。まるで、中にある寝惚けた精子を。仕事の時間だぞと叩き起こすかのように。僕の陰嚢にまでぶつかってくる。ダメにされそうだった。このままガルシェの強い雄の種を貯蔵した場所で、僕の人の種が存在する。貯蔵庫を、壊されそうで。叩いて来る勢いで、僕のが揺れて。じんわりとむずがゆい痛気持ちいいという、感触が駆け上って来る。実際に、僕の男としての生殖機能は。ガルシェと一緒になる上で。不必要であり。こうして前立腺を壊す勢いでペニスでぶっ叩かれ、擦られながら。睾丸を大きな毛玉で転がされている内に。たとえ生殖能力を失おうと、構わなかった。銀狼自身。自分以外が子孫を残す事を本能的に嫌いそうだった。銀狼の群れにおいて、一番は銀狼であり、雄として位が最も高いのは。また銀狼自身だ。狼の群れにおいて、一番位の高い雄と。雌の中で一番位の高い者だけが、唯一子作りを許されていた。
 そして、僕らの関係において。一番位が高い雄は勿論ガルシェであって。僕ではない。そして、そんな雄に今寝床で組み伏せられ。性器を突き立てられているのだから。位の高い雌は、自ずと僕ということになる。女の子扱いされて、雌扱いされて。男として嬉しいわけではなかった。そこではなく、ただ彼のその動物的欲求を満たせるのは。僕だけという、特別感が。嬉しかった。自分でもできる事があるんだって。征服欲を満たしているのだろう、背後の盛りのついた雄の狼がさせる息遣いを聴きながら。僕もまた、そんな雄に征服されていく。満たされていく事に。仄暗い感情を揺さぶられ。背徳感が刺激された。
 僕とガルシェ、交尾してる。首が痛くなろうと、振り返って見えた野獣の形相。狼の恐ろしい顔。こんな顔する相手が普段、言葉を喋り。僕に笑いかける相手であるが。今だけは、ただ性交のみに、考えがシフトしており。僕のお腹に種を植え付けるのを最大限、全身全霊で。やり遂げるべき行動と定めていた。咬みついて来る狼の牙が愛おしい。愛情を伝えようとする、甘噛み。言葉を使わず、ただ本能に任せて。僕にそうする彼の姿が、ただの獣に堕ちた。発情期の雄が。愛おしかった。妊娠させようと、一生懸命。男である僕相手に、異種族の尻に腰を押し付けている狼がだ。
「グルルル、フッ、フゥ……」
 亀頭球が本格的に、入ろうとしていた。肛門の縁が見えなくなるまできっと没頭していることだろう。瘤状の部位が、容赦なく入ろうとしていた。押し付けては離れ、また押し付ける度に。ミチミチと拡張してくる。限界だと思ったアナルは、人外の性器から与えられる暴力に晒され。限界以上に広がり。裂けそうで怖くて、裂けそうで、痛くて。恐ろしいのに、逃げなかった。逃げられなかった。腰が前へ動こうとしても、彼の手によって。凶器が生えている股間に引き寄せられ。腰を擦り付けられる。太かった。彼のボコボコとした、歪に膨らんだ瘤は、とても太かった。こんなものを、同族である雌の狼は入れられてさぞ辛いだろうに。発情期で、痛みもあまり感じない逆上せあがった頭じゃないと。平常時に受け入れるなど、無理難題だった。それでも、発情期であってなお。雌は亀頭球を入れられて痛がる場合もあるなんて、ガルシェは語る。それを、狼の雌でも。生殖器でもない。ただの排泄器でしかない人間のそこに、腸内に押し込もうと躍起になっているのだから。
 僕なんか相手に押し込んで来る狼の容赦のない動き。ミチミチ、メリ、メリメリッ。裂ける、裂ける、痛い。痛いよガルシェ。心の中で弱音を吐きながらも、深呼吸して。その与えられる苦痛に耐えていた。きっと泣け叫んだら、止めてくれる。この優しい狼は、理性を飛ばしながらも。いつだって踏みとどまってくれると知っているから。だってゆっくりと押し込んで来るから。その動きから、優しさを感じて。だというのに、この拷問じみた過程はとても長く続いてしまっていた。より、人に苦痛を与えていると。銀狼は気づいていない。優しく、優しく押し込もうとしてくれていた。丁寧に、ちょっとずつ。かなり太い部分を、裂けないように。気遣いながら。理性を飛ばしながら。そうして、気づかない。涙も涎も、鼻水かもわからないぐらい。顔をぐしゃぐしゃにして、ベッドシーツで拭いながら。耐えている僕にガルシェは気づかなかった。正常位なら気づいたかもしれない。それか、僕が声に出していたら。泣き叫んでいたら。そうしてくれていたかもしれない。壊れそうで、実際に自分のそこが二度と元に戻らない。壊れると思いながらも。相手に全てを委ねていた。捧げたい。自分自身を、やり遂げたい。狼の交尾を。そうしたい。意地にも似た、僕のそんな感情が支えになっていた。
 もうすぐ、もう少し。もうちょっとだけ、我慢すれば。大丈夫、僕を無茶苦茶にしているのは愛する人で。ガルシェだから。ケダモノではない、獣の顔をしているけれど。だから落ち着いて、受け入れないと。少しでも力を抜いて、受け入れて上げないと。彼の、そこを。裂けそうになりながらも徐々に広がりつつある結合部の感触に、歯を食いしばりながら。銀狼はより体重をかけて、それで僕が押し潰されそうになりながら。ベッドに埋もれてしまえとばかりに、背を銀狼の胸が押して来る。ペニスに体重をかけていた。もっと押し込む為にだ。
 蓄積された快感がそのまま、彼のペニスだけではなく。亀頭球を膨らませ、入り辛くさせていても。ごつ。数ミリ後退して、また押し込んで。ごつ。肉輪が広がる。初めての夜だというのに、手心なんてなかった。妥協なんてなかった。彼にとっての交尾に、仕上げに瘤を入れないなんて。そんな常識が存在しなかった。だからそうしてるだけだ。導かれるまま、そうしろと誰かに言われているかのように。僕に対してマニュアル通りに。ミチミチッ。音がする、広げられて。耐久限界を訴える。僕のそこが。裂ける、裂ける、裂ける。
 その分、彼の敏感な瘤を締め付けてしまっているのだろう。ガルシェもまた、自身の歯茎を剥き出しにして。歯が砕けそうな程に食いしばりながら。恥ずかしがって、耳の裏を赤くするみたいに。上気していた。もしかしたら、亀頭球を痛い程に締め付けられているのかもしれなかった。異物をこれ以上入られまいと、僕の意思に反して抵抗を続けるアナルに。メリ、メリッ。彼が腰を押し付けた分だけ。結合部で身体の内から鼓膜に伝わる音がする。グググッ、グッ。押し込まれていく亀頭球が。飲み込まれていく。入って行く。でも、一定の太さを越えた時。僕達の距離はそれまでのかかった時間が嘘のように。消失した。
 ギュポッ!
「アァ”!?」
「ウグッ!!」
 吐き出すように、我慢していた悲鳴が漏れた。そして背後で息を詰める男の気配。キーンって、耳鳴りがする。息が苦しい。内部に異様な存在感があった。大きい。デカい。ビクビクと震えてる、ガルシェのペニス。その根本に、あまりに大きすぎる存在が突如出現した。心臓がもう一つあるみたいに僕の中で鼓動する。彼の心臓が血液を送るのに合わせ。密着していた。僕のお尻と、ガルシェの下腹部が。あれだけ広げられたのに、今や僕のアナルは小さく窄んで。どうなったのか不安であったから、後ろ手に彼の股間に指を這わす。自分のそこが、裂けてやしないか。手を包む熱気。蒸れた湿度。そして指先に当たる。思ったより細い管。細かった、ペニスが太く長く。それだけで僕のより大きいのに。その根本にある瘤はもっと膨らんでいて。だというのに、瘤で隠れて見えなかった。今唯一露出している部位は、途端に一番細く。触れている僕の指一本とそう変わらないぐらい細い。異形の生殖器の形を実感していた。
 受け入れたのだ。あんなに太かったガルシェのを。亀頭球を、僕の身体は。無理やりに押し込まれて、それで。内側から盛り上がっていた。何かに押し出されるようにして、アナルが膨らんで。その受け入れている内側の質量を伝えていた。ゆっくりと、ジンジンと。ヒリヒリと、痛みを訴えだす結合部。遅れてやって来たそれに。広げられたけれど、幸い切れてはいない。裂けなくて、良かったと安堵していた。ただ、亀頭球を受けいれた分。彼のペニスがさらに奥に嵌り込んで。内臓を突き上げているせいで、薄っすらと吐き気もあった。胃が腸越しに突かれているのだろうか。そこまでではないとしても。むくっ。ただそれで、終わりではなかった。内部で起こる変化。お尻の中で入れられた亀頭球がむくむくと膨らんでいた。風船のように、さらに。入れる時以上に、二度と抜けないようにだ。雌が暴れようと途中で交尾を中断させないように。まだ、大きくなるそれに。発狂しそうだった。必死で身を捩ろうとするが、覆いかぶさった巨体がそれを許しはしなかった。叱られるように、首筋に牙が当てられる。動くな。そう言外に、ガルシェは言っているのだ。
 ゴリュ。前立腺を圧迫し、押しつぶしにかかる亀頭球。狂ったように僕のは尿道から糸を垂らし。壊れた蛇口のようだった。そして、ここからが地獄の始まりだった。銀狼が揺するように。入れてしまった瘤のせいで、満足に腰を振れないのだろう。抜き差しできない分、ゆさゆさと身体を擦りつけるように揺らすしかなくて。だが、とても小さな動きであっても。中で起きる刺激は絶大だった。ゴリュ、ゴリュリュ。摺り潰されていた、僕の前立腺が。まるですり鉢で硬い殻を砕き、粉末状にするかのように。丁寧に、とても丁寧に、ガルシェは自身のペニスについている瘤で。人の器官を潰しにかかった。鈍痛が絶え間なく襲う。ツンとするような、痛みとも、快感ともつかないものが。自分の尿道を貫くように。性器の根本から先にかけて、駆け抜けていく。入れられてそれで終わりだと思った、射精するものと。でもまだだった、彼はまだ。瘤を最大まで膨らませながら。まだ。どうして。眼球を動かし、首を捻り。自分を噛んで押えつける狼の顔。悩ましげに、苦しそうに耐えている。雄の表情。射精したいくせに、それを望みながら。耐えていた、絶頂に向かい腰を振りながら。その寸前で動きを止めて。ビクッ、ビククッ、不規則にペニスを中で痙攣させて。寸止めを続けていた。
 噛んだままであるから。僕の首に狼の唾液が伝う。どうしてそれをするのか考え。禁欲を続けてなお、まだ彼は自身の精を濃くしようとしていた。最大まで溜め込まれた熱を、さらに、限界を超えて。あれだけ僕にビタビタ打ち付けいた陰嚢は、その詰め込まれた質量をみっちり締め付けるように。彼の根本に寄り添い、揺れる余地を残しておらず。今か今かと、待っていた。目に見えて、射精間近である身体の状態。瘤まで膨らまして。昂る熱が迫ると、じっとして。少しだけ波が引くのを待つと、また揺する。この僕の前立腺を摺り潰して、壊す動きは。彼の精液を濃くし、練り上げる過程でもあった。濃く、濃く、もっと濃くなるように。何億という精子を放出する為に。人と違い、白濁していない真っ白でいてさらりとした液体を。
 でもそんな足掻きも、痙攣のように締め付ける腸壁に揉まれ続け限界であったのだろう。いつまで続くのかと思われた拷問は突如終わりを告げ。奥底に密着している、彼のペニスの先から。ぶしゃりと、熱い液体が吐きつけられたのが。見えなくてもはっきりと僕にはわかった。
「グッ。ふぅ、うっ。フッ、フッ、フゥ……」
 彼が射精する時、あれだけ最中は唸り声を上げながら正直うるさかったのに。とても静かに、ただ息を零していた。獣の吐息を吐きかけながら。彼の陰嚢から細い管を通り、前立腺が脈動し、ペニスの中を駆け抜け。一直線に送り出されてくる。体温が僕よりも高い、ガルシェの体液。カッと火を灯されたように。お腹が熱かった。急上昇する体温、密着してくる人の身体を包む銀の毛が僕の汗を吸い取りながら。
 びゅう、びゅう、びゅるっ、びゅう! ペニスを膨らませ、脈動させ、跳ねながら。尿道口から勢いよく液体が迸る。夥しい、牛乳のような色合いのそれが。大量の狼の精子を含んで。ガルシェの子供を作る為の材料が。僕の中に溢れてくる。溢れて、溢れてなお、注がれる。満たして、焼いて、焼き尽くしていく。体温が違うからこそ、お腹の中に存在する精液が。どこにあって、どうやって流動しているか。根元から先にかけて、尿道を膨らませ飛び出てくるか。僕を抱き込んだ雄の射精に感じ入っていた。出していた。孕まそうと。植え付けていた。
「フーッ、フゥー、フゥー!」
 絶頂を噛み締める、中出しに歓喜した雄の狼がさせる鼻息がずっと鼓膜を震わせる。そんな溢れ出す快感に耐える為か、噛まれた首に力が入りより牙を食いこませて。熱心に、ガルシェは射精を続けていた。もう亀頭球も押し込んで、奥の奥まで先を突き付けて、それでもなお。腰をぐりぐりと押し付け。それ以上進みもしないのに、身体を突き動かすのは本能だけで。腰を前に、前に、僕の骨盤が砕けそうになりながら。そして睾丸を震わせ、中身を吸い上げ、また射精するのだった。脈動する狼のペニスは、いっさいの容赦なく。種付けを強行しており。根元にある瘤はしかと栓をし、逆流する液体を漏らすまいとしていた。
 びゅっ、びゅっ、びゅるる!
 熱い、熱いのが溢れて。膨れて。僕のお腹に溜まる。溜まっていく。いっそ重さすら感じ始めていた。だというのに結合部からは一滴も零れない。握り拳程に肥大した亀頭球がその使命を全うしているからだ。雌との交尾を中断されないように。注いだ種を漏らさないように。受精率を高める仕組みが、狼のそれが。人間相手にされていて。苦しみに呻いた。呻いたからと、どくどくと注がれる液体が絶える事はないのだが。
 どくっ、どくっ、どくっ、どくんっ。
 規則正しく、雄液を送りつけてくる。押し込んで来る。押し付けてくる。もう満腹ですと嫌がろうとも、ガルシェは射精する。人ならとうに終わっている。男としての絶頂を長く、とても長く続けながら。ペニスを震わせ。まるでサウナにでも入ってるかのように、毛皮の蒸し風呂という場所に囚われ。僕は茹で上がりそうであった。頭がくらくらとし。汗が引かない。蝕まれる。圧迫を続ける亀頭球に苛まれる。
 気持ちよさそうに、銀狼が腰を震わせて。全身の筋肉を力ませ。腹筋が硬くなり、射精の威力を上げようとしているのか。わなわなと、微振動していた。繰り返される狼の射精。というより、その量から吐精に近いように感じた。瘤で蓋をされ、注がれ続ける精子達は。出口を求めて。液体は僅かな隙間だろうと流動していく。腹が空腹ではないのに、ぐぎゅ、ぎゅるると奇妙に音が鳴る。注げば注いだ分。先に出したものを奥に押しやっていた。本来なら蓋をして、膣をいっぱいに精液で満たしたら。後から送られる追加の射精で、子宮口から子宮の中に。流れ込むのだろう。その現象が疑似的に僕の中で起こっていて。肛門から漏れないのだから、行く場所はS字よりもさらなる奥しかなかった。卵子を求めて。結びつきもしないのに、男である僕の中を元気に泳いでいるのだろう。ガルシェの、狼の精子。登って来る熱。びゅーびゅーと彼が射精をすれば、人のお腹がごきゅごきゅと際限なく、貪欲に飲み干して。満腹感すら訴えていた。胎内を満たされてなお、さらに吐き出される。夫の精液を。強い雄の種を。雌の狼になりきった僕が、幸福感を覚えるのは当然の成り行きだった。こんなにも注いで貰えて、嬉しいと。赤ちゃん、いっぱい産みたい。この人の。きっと可愛らしい子狼を。僕が。その為に今子作りしていて、お腹の中に出してくれているのだから。意識が薄れた分、思考を放棄したからか。ただそんな妄想に取りつかれていた。背後の孕ませようと野生に立ち返った雄に影響されたとも言える。お腹を満たす液体のせいで、普段は意識しない自分の大腸の形を感じる。下っ腹から、左側。そして徐々に迫る。どこまでも、どこまでも、僕の中を汚しながら。雄臭い、饐えた臭いがする精液で腸壁全てに塗装されつつあった。
 注ぐ相手から。抱きしめられているからこそ、そんな相手から逃げられなくて。抱きしめられてるからこそ、発狂していっそ狂うのを抑えられていた。人が、人たらしめる。尊厳を粉砕し、獣の交わりの中で。凌辱され続けながらも。狂わないでいられたのは。異種との交配であっても、繋ぎ留めているのは。物理的な、亀頭球によるロッキング状態ではなく。お互いを想い合う気持ちだった。触れたい、触れたいのに。この背後から犯されている状況ではそれができなくて。もどかしくて。触れる場所を求めて、手を彷徨わせると。やはり種付け中の雄狼に大人しくしろと喉奥から唸られた。
 どくり、どくっ、とくり、とくり。いっそ膨れ上がる僕のお腹が。常軌を逸したその風体であっても、安心感すら与えていた。主張をやめない亀頭球のせいで、勿論痛いし。重く、腹を揺らせばちゃぷちゃぷと鳴りだしたせいで。注がれている液体の量がわかるというもの。身体は酷く暑苦しいのに。脳は危険な状態であると冷や汗を誘発し続けていて。脈動するペニスはいくら待っても大人しくしてくれない。受精するだけなら、もう過剰とも言える中出しを受け。蓋のせいで内側からの圧が上昇する。でも少しでも動けば、自分の前立腺は人質のように押しつぶされたままであり。ちょっとの動きで、多大な衝撃が伴う。極力動かないように、そうしようとしているのに、銀狼はまたごりごりと腰を擦り付け。念入りに、念入りに、まだまだと言いたげに。ほんの少しでも多く、奥に射精したがった。
 ずっと首を咥えられていたけれど、その顎の力が緩んだなって、そう感じたら。ぺろり、ぺろり。狼の舌が労わるように真新しい歯形をなぞる。
「これが、中出しなんだな。自分でするより、ずっと。すごくきもちいい……射精、止まんない。いつもより、たくさん出てる」
 とても久しぶりに聞いたかのように感じるガルシェの声。相手の中に射精するという行動に、感激したとばかりに。その声音には嬉しさと、雄として何かをやり遂げた。達成感めいたものが含まれていた。背中に狼の額やマズルが擦りつけられ、においを移される。もう外だけではなく、中にまで。ガルシェの濃い臭いを付けられているのに。マーキングをされていた。
 彼の言うように、勢いが少し弱まったようでも。びゅ、びゅ、そうやってペニスは休まず吐き出しているのだった。上体を起こしたのか。離れていく体温。視界に、ベッドに彼の手が映っていた。がっちり繋がりあっている結合部は、亀頭球のせいで多少動いた程度では。全く抜けたりしないし、それでお互いに痛みさえ与えるだろう。無理に引き抜けば、僕のアナルはズタズタになるだろうし。彼のペニスも怪我しかねない。人間と狼型レプリカントという全く別の存在が同一まで、境目を失くしてしまったかのようで。でもはっきりと、彼のが入ってると境界線が薄まりながらも。挿入された僕は感じ取っていて。だからこそ、射精し続けている動きも知覚しているのだった。人間なら既に空撃ちしていそうだったが。相手は人ではない。それに自分よりも体格が上回るのだから。出す量も比例して多くなろうというもの。
 ただ、身を起こしたガルシェは。それで動きを止めず、もぞもぞと何かをしようとしていた。ぼんやりとしていた僕はあまり反応できず。何をしたがっているか、わからず。動かれると瘤で痛いのに。辛うじて見えた相手は、どうしてか僕を見ていなかった。というより、逆方向を見ていて。大きく、片足を上げていた。足の裏の肉球まで確認して。繋がったペニスを起点に、銀狼が人の尻を跨ぐように。ぐりゅっ!
 声にならなかった。それは慣れつつあったのに、また強烈な痛みが僕を襲ったからだ。胎内で、狼のペニスが回転した。百八十度ぐるりと、それは押えつけていた前立腺の真上で。綺麗な丸い形をしているわけではない、むしろゴツゴツとした歪な形をしている亀頭球も回転する事を意味していて。ぐちりっ。とうとう本当に潰れたように感じた。男性としての大事な器官である。陰嚢や陰茎と同じぐらい、生殖において必要不可欠な。精子を送り出す為の器官が。肩が震え、声が掠れ。意識が一瞬飛んだ。何をされたのか。前後不覚になりながらも。ガルシェは、僕にお尻を向けていた。お尻同士をくっつけて、不思議な格好になって。それで背筋を逸らし。溜息のように、気持ちよさそうに息を吐き出していた。僕がどうなってるかなんて。どうでもいいとばかりに。背を向けて。
 彼の身体に対して、真下を向くように。人間が勃起した状態で、無理に押し下げ同じように真下に性器を向けようとすると、痛みを感じそうなのに。あの触れた細い部分、亀頭球よりも身体の内側。陰茎骨のない部分だからこそ、柔軟に曲がるのか。むしろこの為に、進化の過程でその柔軟性を失わずにいたのか。本物の野生。四足の狼がするように。ガルシェは僕に交尾結合をしていた。振り返った僕の視界には自分のお尻と、彼の大きなお尻。そしてその上でふりふりと優雅に振られる尾。尻尾がない人の尾骨の上には、銀狼の陰嚢がむにゅってだらしなく鎮座していた。まるで台置きのように。姿勢から考えると、自然とそうなったのであろうが。とても見えやすかった。その奥、彼のピンク色の窄まりまでも。尻尾が揺れているからこそ、秘匿されるべき箇所がよく見えた。
「ルルシャ、孕んで。俺ので、孕んでっ。すき、すきだから。孕んで」
 狼が唄う。生命の歌を。雄が、最大限の愛情でもって。雌に贈られる。賛歌。全身で受け入れてくれてありがとうとアピールし。中出しさせてくれてありがとうと背筋の毛を喜びに逆立て。これから子育て一緒に頑張ろうね。そんな決意を滲ませながら。ガルシェが、せつなそうに顎を逸らし虚空を見つめていた。そして僕は、そんな相手が熱心に注ぐ器官にばかり、意識を持っていかれていて。
 びゅる、びゅる。びゅぅ、びゅっ!
 誰も穢した事のない、銀狼の肛門がきゅっと更に窄まると。力が漲る会陰部。彼の大きな陰嚢がまるで内側に引き込まれそうな勢いで縮み。そんな状態を視認したら、お腹の中でペニスから熱い液体が噴射された。肛門が緩むと、同じく陰嚢もふわりと緊張が解けたように袋としての緩みを取り戻す。でもすぐに、きゅっと同じ状態を繰り返し。ポンプのように彼のそこは動き、僕に今まさに。子宮に陰茎の先を押し付けていると思い込んでいる雄は、全身の筋肉を強張らせながら。そして現在進行形で新たに作った精子まで汲みあげて。どくり、どくり、そうやって送り出していた。油送してるとも言えた。まだまだ出すぞって、狼の生殖器が動き続けている。
 孕みもしない、男で、人間である僕に。狼でも、雌でもないのに。全ての余力を残さず。その生命としての力強さすら感じる。営みに興じて。抱き込まれてないから、お腹の熱さがより感じる。さっきまで、外からも包んでくれていたのに。彼はそうしてくれたのに。突如、僕は放り出されて。ただ機械的に繁殖だけの為に、出されているようで。寂しさを感じた。繋がってるのは性器だけで。お尻にふさふさと毛が、彼の体温が辛うじて感じられたが。それだけだ。繋がりが薄れた分、唯一繋がった場所に意識を傾け。集中するしかなかった。彼の形を、熱を、脈動を。離さないで。僕を、この状況で独りにしないで。番と繋がれた喜びで浮かれ、それを表現する狼の尾がいっそ恨めしかった。どうしようもない寂しさに駆られているのに。夫は一人、性交を楽しんでいるのだから。正しい、生き物としてきっと正しい。彼らの、狼としての作法としては、正しいのだろう。でも僕は人間だ。狼にいくらなりきろうとしても、人間でしかなくて。彼との違い、それを突き付けらえたように感じた。その寂しさを紛らわせるように、ベッドのシーツを掴んで皴を大きくし。また吐き出された精液に、か細く喘いだ。孕ます熱意だけは、凄かった。異種族のその本気が凄かった。凄いけれど、一番求めている事をしてくれない。しょうがないなって、わりきれない。弱った身体に。弱音にも似た。縋りたい気持ち。抱きしめてよ、馬鹿。そんな不満すら呑み込んで。
 腰をびくびく震わせて、種付けする銀狼。きっと、彼の生涯で初めての交尾であり。初めての中出しで、途方もない性感に脳を焼かれているのだろう。人より長く続く射精なのだから、その大きさは計り知れない。僕では生涯味わえない。人のなんて、比べてしまうと本当に一瞬だ。そんな刹那的な絶頂にのめり込む人だっているのだが。僕がもしも体験したら、脳細胞を破壊されて壊れてしまうだろうか。その壊れた蓄音機よろしく。僕の名と、孕んで。と繰り返し、後は聞き取れない何かを呟く夫の声が寝室に木魂する。
 何となく、透明な蜜を零すばかりであった。自分の性器に触れた。ふにゃふにゃと柔らかく、あれからもう勃起しないまま。一度の絶頂もしなかったそこを。触れると、予想以上に手のひらを濡らし。べとべとした粘液に濡れていて。射精したのかと勘ぐるぐらいには。その下のシーツも色を濃くしていた。散々潰され捏ねられた前立腺が。普通に自慰した時、射精できるのかは定かではないが。潰され過ぎて、もう感覚が曖昧だった。鈍痛はあるが。そんなもの。ペニスで奥を押し上げられている場所だってそうで。というより、ぽっこりとお腹が張っていて苦しい。孕め孕めと、そうされて。本当に自分のそこに。子狼が宿ったかのように。どくんどくんと拍動していて。だがその小さな心臓は、狼の性器だ。密閉空間で自身が吐き出した獣欲という白い海の中に揺蕩う、肉棒だ。羊水でもない。受け止めた個所は膣でも、子宮でもなく。腸という栄養を吸収する器官だ。なら、今彼が吐き出している精子もまた。やがて僕の血肉になってしまうのだろうか。そんなどうでも良い事を考えるぐらいには、彼の射精は悠長であり。いつまでも終わらないから冗長であった。
「喉、かわいた……」
 無心で、浅くなる呼吸であっても。酸素を取り込もうと息を整えていた僕は。そこで聞き捨てならない台詞が聞こえて来て驚愕した。この期に及んで背後で銀狼が動く気配がまたしたというのもあった。それも、前へ。幼子がはいはいするようにだ。お尻同士をくっつけ、別々の方向を向いている人は。ならどうなるか。驚きに飛びあがった。ただ犯されているだけで体力を失いぐったりとしていた自分のどこに、まだこんな力があったのかというぐらいには。勢いよく手をついて身を起こした。必死で、背後に居る銀狼を呼び止め。届きそうで届かない相手の尻を叩こうと。無防備に揺れている尾を掴もうとし、健闘虚しく宙を掴む。固定されていた亀頭球により、僕の内臓が引き抜かれそうな感触がした。中身だけ、何かの食べ物みたいに。やだやだ、やめてとシーツを掴んでも。後ろに引っ張られる。襲うどうしようもない痛みで、枯れたと思っていた涙がまた溢れてくる。ベッドの上で交尾結合したまま、ガルシェが移動しだしたから。僕は必死になってついていくしかなかった。何かに許しを乞うように、首を垂れ。後ろにはいはいするしかなかった。そうして、目的の物が取れたのか。ペニスを突っ込んだまま、進むのをやめた狼の方から。ぴちゃぴちゃと、水の音がして。涙目で、何をしているのか窺えば。コップにマズルを突っ込み、中に注いだであろう水を犬飲みをしていた。しきりに舌を出し入れし、お行儀悪くも。狼だから犬飲みと表現していいのか迷ったが。きっと、僕の中にかなりの量を出しているのだから。体内の水分は当然、出しただけ失われたのだろう。もしかしたら、ずっと行動を続けていたら。僕よりも先に、ガルシェの方が脱水症状で倒れるのかもしれない。だからか、この蜜月をする為に飾られた愛の巣は。食べ物だけでなく、飲み水もしっかりと用意されており。ベッドの中から取れるように、予行演習までして。飲み水が取りやすいように位置を調整していた。誤算は、犯すさいに思ったよりベッドの中央から動いてしまい。乱れた二人は、いつの間にか水で満たされた容器から離れてしまったのだろう。ベッドのサイドテーブルから。でも今、そうしないで欲しかった。交尾中で碌に動けないのに。だが相手は発情期であり、知性が乏しくなっており。それも射精中である。そう、彼は今水を飲んでいるが。僕の中にもきっちり、射精を続けている。
「ガルシェのばか……」
「ん、ルルシャも飲むか?」
 先程は吞み込んだが、思わず出た悪態に。何を勘違いしたのか、とろんと蕩けたような顔をした狼は。体勢的にやり辛いだろうに、こちらに器を差し出して来る。自分が口ではなく舌を付けたそれをだ。交尾に夢中な雄は、本当にこっちの気も知らないで。ただ問われたから。一応自分の状態を加味し、僕もそれなりに水分が失われていたと感じたが。それでも飲む気分にはなれなかったから。いらないと、ただそう言いながらぶっきらぼうに手を振っていた。そんな僕の態度に、不思議そうに首を傾げて。特に追及するわけでもなく、また舌でぴちゃぴちゃ残りを飲みだす夫。普段なら人間のように、口を付けて普通に飲むのに。そりゃ、酔った時とか彼はたまにするけれど。して、僕に見られているのがわかると。恥ずかしそうにするのに。理性と一緒に羞恥心もどっかいった相手が、それを気にする筈もなく。だからこそ、発情期の彼は。考えなしに思いついた事をなんでもかんでも言うのだが。ただ酒に酔った時と違い、記憶にはしっかり残ってるので。後で思い返しては自己嫌悪するのだが。水分補給して、満足したのか。後はただ、ガルシェも身を伏せて。お互いお尻をくっつけているだけの姿勢で。二人共ベッドに寝転んで時間だけが流れた。瘤が縮むまで続くから。長丁場になるのだから、少しでも楽な姿勢を求めた。
 時計で時刻を確認しても、苦痛に感じていた分。思ったよりは時間が過ぎておらず。腰を振っていた時間をだいたいだが除外すると。射精しだして二十分とかそこらだった。まだ、半分かそれ以上彼と繋がっていなければいけなかった。長い時は、彼の興奮度合いに比例して一定ではないが。射精は一時間ぐらいは続く。それは以前の発情期でも、この家に住みだしてからも。姿を消す時間から。だいたい把握していた。そんな事よりも、僕の中にふと湧いた疑問は。ペニスと亀頭球により広げられた中が、二度と戻るのかが心配な。そんな気持ちだけが過ぎていく。この歳で垂れ流しとか、嫌なのだけれど。紙おむつとかないし。昔の人は着古した衣服や布を切り刻んで使用していたらしいが。日常生活に支障をきたすぐらいに。この一度の性交は、僕の身体に変化をもたらしそうだった。僕がそうなりそうで危惧したが。実際の所、レプリカントの幼児も。そうやって布を巻いていたのだろうか。ガルシェも幼い時は、そうしていたのかな。今は幼さとはかけ離れ、一頭の成狼として。生殖行為をしているわけだけど。大人しくなった銀狼のお陰で、やっと僕も人心地付けた。射精を続ける狼よりも先に、冷静になった分。先程の自分の思考を恥じた。孕みたいなんて。赤ちゃんとか、変な事を妄想していた気がする。膨らんだお腹を触ってみても。ただ中に詰まっているのは、異種族の精液だ。自分だけ射精できておらず、試しに性器をそれとなく触ってみたが。中の異物感と、潰されたままの前立腺のせいか。集中できず、お尻にばかり意識がいって。軽く抜いてみても前の刺激に集中できなかった。これで、初めてのアナルセックスで。快感だけを感じ、絶頂に達するぐらい僕にそういった才能があれば。良かったのだが。いや、良くはないが。こうなってしまって。狼の顔をした夫と交尾するこの状況においては、そうなっていたら良かっただけだ。僕は淫乱じゃない。でも山場は過ぎた。最初はどうなるかと思ったし、この後もまだまだ不安要素はあれど。一回目はできたと言っていいだろうか。自分の腕を枕に頭を預け、うつ伏せに身を伏せている。そんな狼の様子を見れば。ハッ、ハッ、ハッ。そうやって荒く息を吐き出し。舌を出して排熱に忙しそうだが。目元はどこか穏やかだった。彼もまた、絶頂から降りて来て。余韻に浸っている頃合いか。だとしたら、今僕に出されている液は。第三の射精。精子に活力を与え、先に出した精液を奥に押し出す役割の。大量の前立腺液か。手淫したり、彼に教えて貰ったりで、得た知識だが。身をもって体験する事になるとは、あの時の僕が知ったらどう思うだろうか。
 息を吸う。そうしようとして、ちょっとだけ咽た。肺すら圧迫している気さえした。お腹が異常に熱い。膨れたそこが潰れて苦しむから、横たえた身体はガルシェのようにうつ伏せにはなれなかった。抜けない亀頭球のせいで動き辛いが、姿勢をちょっとずつ変え。どうにか今は、上半身だけでも横向きになっていた。膝を立て、お尻を突き出す格好を強制されたままであるから。ねじれる身体は、それ以上姿勢を変えれないとも言える。ゆっくり、ゆっくりと。中出しされ続ける余韻に浸っていると。微睡みながらも、凶悪な存在感を放つ生殖器で寝られないから。目を瞑っているだけで。暫くじっとしていた。ふと、満たした精液の中で彼のペニスが動きを止めているのに気づいた。あれだけ、びゅくびゅく吐き出していたのに。試しに締め付けてみても。ただ繋がった持ち主がぶるりと身を震わせるだけだった。のっそり起き上がったガルシェ。こちらに振り返り、気遣わしげに。クゥンと鳴いた。
「ルルシャ、大丈夫か。今、抜くからな」
 そんな声がしたと思ったら、返事をする前に。お尻が、受け入れている肛門が。ぐっと引っ張られた。ガルシェが腰を前に、こんどは僕から離れる為にだが。進もうとして。萎え始めたとはいえ、まだ太い亀頭球はそれに難色を示した。抜くのを名残惜しいと感じている銀狼の本音が出ているとも感じられる。軽く引いてみて、振り返り僕が痛みで顔を顰めているのを確認して。慌てて動きを止め。でもまた引っ張るを繰り返していた。もしかしたら、射精を終えて。包まれ、ねっとりと絡みつく腸壁に擽ったいのかもしれない。引っ張れば引っ張る程に、肛門は伸び。少しずつその全貌を露わにしていっているのだろう。ぷしっ、潮を吹くように。結合部から堰き止められていたものが、隙間から内圧のせいで噴き出して。銀狼の尻をしとどに濡らす。ちょっと待って。そう言おうとしたが。片方の足裏を僕の太腿に押し当て、力を籠めたガルシェの方が早く。キュポッ! まるで空気が抜けるような。そんな人体から本来はする音ではないものが、寝室に大きく響いた。ずろり。あれだけ固定され、抜けなかった大きな物が抜けていく。だらりと脱力するように、彼の股間にぶらんと重力に従い垂れ下がり。そのペニスの先をベッドに向けて。緩み切って、全く力が入らない、感覚すら失われた。肛門に力を入れようとした。したのに、言う事が利かなくて。ただくぱくぱと開閉するだけで終わり、中の物を。散々注がれた狼の精液を。抜けて行ったペニスを追いかけるように、濡らし。そしてびちゃびちゃと、小さな滝のように。吹き出した。途方もない排泄感が続く。解放感もあったが、それ以上に羞恥心の方が感じるものでいえば割合として大きかった。だって、合間に放屁のように。彼のを漏らしながら、ぶぽっ、ぶぴぴ。そんな汚らわしい音を響かせて。相手に聞かせてしまい。恥ずかしくて自分がどうにかなりそうなのに、溢れ出すものは止まってくれないのだから。手で押さえようにも、指の隙間から零れ。かなり奥の方に出されたのはそのままだが、浅い部分に残留していた分でもかなりの量だった。足元に小さな水溜まりができていく。胎内に入っていたからか、それをしたガルシェのペニスは。ほかほかと湯気まで立てて。ハァハァと、二人の白い息が空気を温めていた。
 後から後から噴き出す液体に、粗相をする自分に気を取られていたが。振り返って、ずっとこちらを見ていた銀狼と目が合った。唖然と、自分がしておいて、人のそこを。あられもない部分を見られていた、こんな醜態。脱糞でもしたぐらいに感じて。出しているのは水っぽい彼の子種だが。肛門であったから。感触としてはそう変わらなというのもあって。
「ガルシェ、見ないでぇ……」
 弱々しくそう言い、泣いていたら。ベッドの上で向きを変え、僕に無言で近づいて来るガルシェ。僕の排泄に震える腰を捕まえ。しげしげと、捲れあがった肛門を。生殖器として酷使された、肉穴を見ていた。本来の用途を忘れ、ぽっかり開き。中身を晒すそこをだ。そして、マズルを近づけると。何を思ったか。いっそとち狂ったのかと思う行動に出た。ぴちゃり。ぴちゃり。丁寧に、溢れる液体を舐め取っていた。目を細め、熱心にそうする姿は。蝋燭に照らされ、妖艶であり。神秘的であり。狂気だった。交尾を終えた雌を労わる、雄の感情が乗せられた。舌使いは、舐めとっても中から湧き出て来る液体がまた濡らそうとも。そしてそれすら舐め、啜り。腫れあがった肉輪に優しく触れ、くじる。ちゅ、ちゅぱ、じゅるるっ。舐め、啜る音が。お疲れ様と、そんな声が聞こえて来そうだった。それぐらい、狼の表情は。慈しみに満ちていた。
「ルルシャ。閉められるか。これじゃ、注いだのが全部こぼれてしまう」
 舐めるのを止め、わし掴んだお尻よりその先。僕の顔を覗き込んで、種付けを終えた雄はそんな事をのたまう。相手の取る行動に畏怖すら抱いていた僕は、言われるがまま。思考を放棄して、ただ従おうとして。もう一度、お尻に力を入れようとしたが。人の肛門の動きを見ているガルシェの表情から、どうやら上手くできてはいないらしい。閉じないそこから、冬の冷えた空気が流入する。今まで男に抱かれ暑いと感じていた僕を襲う。お尻の中が寒いと体験するなんて。
 そして、周囲を満たす。噎せ返る異臭。僕のお腹に入っていたガルシェの精液が大量に外へと出たせいで。きっと凄い悪臭にこの部屋は満たされていることだろう。それは、彼の股間にある。湯気を纏う一仕事終えた雄棒もなのだが。自身の先走りと精液と人の腸液を纏い、ぬらぬらと輝き。多少萎えていながらも、存在感は減りもしない。あんな太く長いものが、自分の中に入っていたと思うと信じられなかった。だからこそ、長時間挿入されて酷使されていた肛門が閉じられないのだが。
「そうか。狼の雌は、こうして舐めてやると。子種を注がれてチンコを抜かれた後でも、漏れないようにかってに閉じるようになっているらしいんだが」
 残念そうに。耳を倒して、ガルシェは僕のそこを見つめる。彼との交尾を、子作りを。やり遂げたと思っていたのに、どうやら最後の最後で。僕はへまをやらかしたらしい。どう頑張っても、魚がそうするように。パクパクとするだけで、元に戻らない肉輪は。初めての、それも長いアナルセックスにどうしようもなくなっていて。恥じた。これぐらいなら、僕でもできると思ったのに。彼の表情が、落胆したと物語っていたから。できると思ったのに、できたと思ったのに。ガルシェをがっかりさせたくなかった。ちゃんと僕の身体を使って気持ちよくなって、本能を満足させてあげたかったのに。これでは。亀頭球が抜けた後で、雌の狼は入口を閉じるのかもしれないが。僕は人間であるから。それができないで。だからこそ、恥じた。この程度もできないのかと。言われているようで。夫に失望されたと感じて。
「大丈夫だ。ルルシャ、お前にできない事は全部俺がやる。俺達は二人で一つだ」
 慰めのようであって、事実そうなのだろう。優しい声音で、ガルシェが声を掛けて来て。そして、自身のペニスを片手で握り。向きを調整すると、身を寄せた。ぬちゅ。最初と違い、注がれた精液のせいもあってか。僕のそこは、再び入ってこようとする彼の肉棒を。なんの抵抗もせず、むしろ優しく迎え入れ。しっとりと包む。覆い被さって来る。人を嘲笑うのでもなく、口角を上げた狼が。寄り添うように。お腹の中を突き進み、難なく閉じようとしたS字も越え。その身を埋めると。肛門にまた彼の亀頭球が当たった。軽く腰を振ると、それが入りかけ。抜け。入り、抜け。くぽっ、くぽっ、くちゅ。そんな卑猥な音を奏でる。膨張時と違い萎えた瘤は、僕にそこまでの痛みを与えなかった。やがて密着する下腹部。僕がそうできないからと、銀狼はまた。それで蓋をしようというのか。戦い終えて、擦り。血管を透かせた、元々赤黒いそれを。さらに充血させ。人の胎内でむくりと、鎌首をもたげる。あっ、あっ。彼が腰を使えば、僕の喉から声が零れた。頬に狼のマズルが寄り添い、すりすりと擦りつけてくる。どこかこのような、淫乱な行動を下半身でおこないながら。上半身は、人間に甘えるように。あれだけ求めたものだった。逞しい腕が、僕の胸にあり。抱き寄せられる。
「ルルシャが、ちゃんと受精できるように。サポートする。零れた分だけ、注ぐ。その為に、俺のこれはあるんだ」
 中でまた主張しだした亀頭球でごりごりと擦りながら。耳元でガルシェは、囁くように言う。一度射精したからか、幾分か理性が戻りつつも。でも、その繁殖欲求が消え去る事はないとばかりに。頬を、先程僕の肛門を舐めていた舌で。顎先から目元まで、べろりと強く舐めてくる。お互いにベッドに横になり、背後から貫いて来るこの姿勢は。楽ではあった。あったのだが、人の体力で二回戦ができるかと言われると。また別で。大きく、激しいストロークで腰を打ち付けいるわけではなく。ただ軽く、ゆったりとした動きだったが。たまに瘤を抜かれ、また押し込む動作が混じり。膨らんでいないとはいえ、質量の問題から。僕にはかなりの刺激となっていた。それは、一番敏感な部位を出し入れしているガルシェも同じであったのだろう。最初と同じか、それ以上に勃起し。次の射精を準備しだしたその熱い肉棒は。優しいなれど、しっかり腸壁を擦りあげ、奥を突く。このままだと、亀頭球が膨らみ。また結合するのは時間の問題だった。
「ガルシェ、待って。もうむり、むりだから。せめて、休ませて」
「気持ちいいな、ルルシャ。俺、ずっと。このままルルシャの中に居たいぐらいだ。瘤を好きな人に包んでもらえるって、こんなにも心が満たされるんだな」
 聞いていなかった。注ぎ、膨れたままの腹を。背後から大きな手が撫でてくる。よしよしと、しっかりルルシャの卵子に受精するんだぞと。中にある精子を鼓舞するように。ガルシェが、撫で擦っていた。雄が子供を望んで、ただそうするように。注いだ相手である僕にしていて。深い意味はないのだろう。聞く耳を放棄し、目を瞑った狼は。ただ番相手に、身体を擦りつけ、腰を揺すり立ててくる。中のペニスが、ぬっちぬっちと。動き、荒して来る。この段階において。身体の限界を感じながらも。どうしてか、湯に浸かったかのような心地であった。彼の肉棒で中を擦りあげられる度に、じんわりと広がる何かが。快感だと感じ始めていた。彼のが抜き差しされたらされただけ、結合部から少量ずつ精液が逆流しているのだろう。湿り気が絶えない結合部、腰がぶつかるとパツパツ音がする。毛皮で僕のお尻を叩いても、そんなふうには鳴らない。性欲の強さもさることながら、体力の違いにも。恐れおののいた。彼は普段から身体を鍛えた、兵士としてその身を筋肉でも武装しているのだから。碌に鍛えていない僕の体力と比例するのもおこがましいとしても。交尾に付き合わされるのは、その人間なのだから。
 緩やかに、穏やかに続けられる営み。動き自体は単調で、たまに変化にか。奥をなんども軽くノックするようにされたりしながら。確実に僕のなけなしの意識を削いでいく。抵抗という抵抗は初めからできなくて。したとして、膂力の違い過ぎる相手に。意味があったかと言われると、なかっただろうが。発情期の雄は、この程度では止まらない。精力を漲らして。勃起した雄の象徴を差し込んで来る。そうしながら、腹を撫でていた筈の銀狼の手が。僕の萎えたままの性器に触れた。彼のに対して、なんとも情けなく。同じ男として、隠したくなるそこをだ。
「……ルルシャを満足させられてなかったんだな。俺、交尾、下手だったかな。ごめん。これじゃ、きちんと排卵できないよな。まだイってないんだろ。ルルシャの精液のにおいしないし」
 やわやわと性器を、肉球に包まれ。揉まれながら。ガルシェは、僕が一度もイけていないのを気にしていたのだろう。ただ、だからと触って欲しくはなかった。体力が尽きかけているのもあり。それに、いまさら射精したい欲求すら無くなっていたからだ。お腹に出された段階で。彼に僕を使って気持ちよくなってもらって、それで。ある意味心が満たされていたから。満足感があった。一生懸命僕に腰を振り、射精する姿に。たとえ自分は絶頂を味わえなくても。彼が満足したのなら、それでよかったのに。そういえば、以前の発情期の時。ガルシェはどうしてか、僕にも射精させたがった。一緒にイこうと。強要する素振りがあった。自分だけ性欲を発散するのが嫌だったのかもしれないが。
「本当かどうか知らないけど、雌も気持ちよくさせると。子供をいっぱい孕んでくれるらしい。猫科のやつらはチンコについてるトゲを使って、痛みで排卵を促すっていうけど。俺、狼だし。もっと頑張るから。教えてくれルルシャ、人間はどうしたらいい? どうすれば排卵してくれるんだ?」
 だからと、別に触って欲しくなかった。やわやわと揉まれ。挿入されているのに、お尻からの異物感が薄れたのも関係しているのか。前の刺激をちゃんと受け取れつつある僕のは、考えとは正反対に。生理的反応と言ってしまえばそうだが。直接与えられるそれに、海綿体を血が満たし。硬くなるのを感じていた。その変化は手で握っているガルシェにもよく伝わっているだろう。顔の横で、小さく笑う気配がした。
「いっぱい、孕んで。いっぱい俺の子を産んでくれ。人間は年中発情期だから、たくさん俺の子を一度に産んだら。すぐに次を仕込んでやるから。一年で二十人は無理でも。群れを増やして。人間は一度に孕むの、一人だけだっけ。わからない。わからないけど、ルルシャが、俺が死んだ後も寂しくならないようにしたい、してやりたいんだ。漁村の連中より、あっという間に俺達の群れの方がでかくなっちゃうな。ああでも、そんなに俺も季節関係なく一年の内になんども発情期になってたら。早死にしちゃうかな……それは困る」
 ありもしない夢を語っていた。人を犯しながら。ガルシェが、夢見る家族を。僕との未来を。涙が溢れそうだった。痛みにではない。枯れそうな程に、交尾の最中。苦痛で浮かんだそれらとは決して違う。違っていた。彼が僕に語る夢のなんと甘く、甘美でいて。惨い夢物語だろうか。いくら頑張って、注いでも。種付けしても、僕のお腹は。ただ受け止めるだけで、根付かないのに。人より短命なのを、気にかけてくれていたんだと。明日や来週の事は考えても、数年先の事をこの男が考えているなんて思わなかった。今だけ幸せならそれでいいって、楽観視して。僕を好きになって、愛して、心に傷跡を残して。この世を去っていくものと思っていたのに。今まで僕と暮らす上で、一言もそんなふうに。言わなかったのに。この時、夫のずっと隠していた本音が聞けた気がした。発情期で、言って良い事も、悪い事も、区別できず。吐き出してしまう、浮かんだ言葉をそのまま伝えてしまうから。だからこそ、彼の優しさが、僕を最大限傷つける。男でしかなかった僕を。そうなってしまった。僕を傷つけると言った。彼の言葉通りに。なって、なったのに。そう言ってくれる相手に、嬉しさとも。悔しさとも、よくわからない感情が僕の中に溢れて。溢れてしまって。あまりに不器用で、雄として、狼としてしか。人を愛せない、僕を愛せないこの人の事を想うと。ごめんねと、呟きそうになって。口を噤む。それすら、できなくて。
 言ったら。彼を悲しませるとわかっていたから。謝られるのを望んではいまい。色欲に狂ってしまいたかった、彼のように。情事の最中に、いろいろ考えてしまう自分が鬱陶しいとも思った。気持ちよくなって、快楽に溺れ、馬鹿になって。彼のように馬鹿になって、しまえば。楽になれたのだろうか。
 黙り込んでしまった僕の様子に、不安になったのか。狼が甘えながら目尻を、舌で拭う。見つけた番が溢れそうになった雫を。溢れる前に舐め取る。すり寄って来る狼の頬に、僕も顔を擦り付け。手を這わせ、より密着して欲しいと。促す。どうされたって、どう言われたって。彼の言葉は、全てにおいて。僕の事を想ってのそれだった。愛情深い狼のそれだった。人の常識を押しのけて。今だけは寂しくなかった。彼が居るから。寂しくなりようがなかった。魂に爪痕を残しながら、血を流し、その傷口を愛おしいと。治療すらせず、僕は。
「さっきみたいに、お尻合わせじゃなく。このまま抱いていて」
 嫌だった。彼らはそれが普通なのかもしれないけれど。やはり、僕は抱きしめて欲しかった。ガルシェは、射精する時。瘤の刺激がないと、何かしらで包まれてないと切なくなると言っていたけれど。僕だって、君に抱いてもらっていないと。切ないんだよと試しに伝えてみた。一度射精して、落ち着いているというのもあったから。こうして会話が成り立つ。発情期といっても波があるから。彼の知能の損失具合は一定ではない。本当にケダモノのように変わり果ててしまう時もあれば、今しているように。言葉を紡いでくれる。
「わかった。でも、また理性飛んだらするかもしれない。その時は、ごめん……」
 善処してくれるのなら、そう言ってくれるだけで。嬉しかった。たとえ、最終的にまた動物のように。交尾結合を強要されたとしても。お願いを聞いてくれるだけで、人らしい状態が戻ったガルシェと。こうして会話してるだけで、嬉しいというのもあった。この過程があるからこそ、最終的に彼が言うようにまた理性を失くし。そうなったとしても、しょうがないなと、思える材料になるのだから。
 いいよって、伝えたくて。彼のマズルに首を振りながら、軽い口付けを僕から贈る。ふさふさとした獣の毛に、唇を押し当てると。擽ったいし、下手したら口の中に毛が混入する。布団を叩く音が、彼のお尻の方からしていて。僕のお腹の中を軽く突きながら、狼がお返しにと。口を舐めて来る。一瞬、さっき僕のアナルを舐めたと思ったが。いまさらかと、衛生的によろしくない事を散々彼としているのだから。薄目を開け、彼のこちらを求める表情を盗み見ながら。僕も、随分と堕ちたものだと思った。前なら、きっと嫌悪してそうだった。
「ガルシェって、キス。好きだよね」
「人間では、愛情表現の一つだから。後、ルルシャ。俺が顔舐めるよりは嫌がらないし」
 言葉の節々に、やはり。この行動も僕に。人間に合わせてくれていただんと悟った。ずっと、彼の愛情表現は。舐めたり、身体を擦りつけたり。甘噛みといったものだった。それは、ユートピアで暮らしていた頃からそうだった。キスの回数が多くなったのは、番った後だ。
「レプリカントの人は、あまりしないの?」
「いや、する奴はする。ただ、牙が邪魔でやり辛いし。嫌がる奴もいるってだけだ」
 そう。キスの合間に交わされる会話を楽しみながら、やんわりと入り込んで来る狼の舌を。僕も人の短い舌で迎えた。あまり気を許し過ぎると、途端に喉奥に入ろうとするので。この男の舌使いは、下手の極みなのだが。主導権を与えなければ、意外と楽しめた。もっと奥に入りたがる彼の、伸ばそうとする動きを嗜め。逆に僕の方から精一杯、狼の口の中に舌を伸ばす。咬み千切られそうな、鋭い牙が立ち並ぶそこに。犬歯をなぞり、その大きさを感じながら。横にズレ、小さいのを一つ、二つと数え。もう一つの犬歯に辿り着くと、欠けてしまっていた。
 喉奥を舐められないのが不満なのか、下半身の方。腸の中を埋める、彼の性器がぬちっぬちっ。そう奥を押し、捏ねてくる。上で入れない分を、下で補填するかのように。亀頭球が前立腺までも捏ね、摺り潰すが。まだ最大まで膨らんでいないから、負担は少なかった。結合部の密着をより強くし、まるで彼の陰嚢まで中に入れてしまおうとする動きだった。
 ガルシェが、辛抱できないとばかりに。頬に手を添え、より後ろに振り向かせると。僕の頬を咥え、無理やりに咥内に舌を押し込む。唾液を送り、目で訴えかけてくる。飲んでと。先程水分補給しなかった番を気遣い、雄は自分のを分け与えようとしていた。喉の渇きを自覚しながらも、犬飲みする姿に。そんな気分ではないと拒否ったのに、もう口の中に流れ込んで来る相手の唾液に戸惑い。そして悩んだ時間に比例して、口の中に粘ついた物が溜まる。早く飲み干さないと、口の端から零れるぐらいに。窒息してしまいそうでしかたなく。そう言い訳を重ねながら。喉を鳴らし飲み干すと。舌が引き抜かれ。止めていた呼吸を再開させた。狼って。子に、食べた物を親は吐き戻して与えたりするらしいけれど。ガルシェのこの行動も、その名残なのだろうか。寝室にある食料の事を思い出し、彼の口で噛み砕いたそれを。口移しされる予感がした。流石に胃に一度収めた物を、与えたりされたら嫌だが。もし、もしもだが。してきたら頬引っぱたいてしまいそうだ。自分で食べるぐらいの体力は残しておきたいのに。残念ながら一回の彼との交尾で、このありさまだった。身を起こすのも億劫に感じるぐらいには。疲れていた。そして、それはまだ終わっていない。夫はまだ、続きを、僕の身体を求めていた。一度の種付けじゃ不安なのか、確実に相手を孕ませる為に本能がそうさせるのか。もうこんなに、お腹の中は。彼の精子で溢れているというのに。
「ルルシャの中、とろとろになって。さっきよりもきもちいい、俺の形になってる」
 トン、トン、トン。尖ってはいても一番奥を優しく叩く、ガルシェのペニス。まるで、精液で膨れた子宮に。もう少し注いで良いかと、お伺いを立てるかのような。そんな動き。広げられた僕の中は、彼が言うように。肉棒を締め付けはしても、最初程ではない。中が自分でもかなり緩く、ぬるぬるしているのがわかった。腰を引き、抜けて、お尻に毛皮が触れ、戻って来る時の。腸壁とペニスが起こす摩擦もかなり減っていた。気持ちいい、気持ちいいと、素直に伝えてくる銀狼に。僕もまた、痛みが消えた分。ゾクゾクとした、甘い痺れに似たものが身体の中を。彼の動きに合わせ広がるのを感じていて。お尻に入ってるモノに負けじと硬くなっている人のが、無骨な狼の手の中で先走りを垂らし。クチュクチュと音を立てながら抜くのを手助けしていた。ガルシェにより前と後ろから与えられるそれらに。身を任せると、忘れていた射精欲。どろりとしたものが前立腺の付近に溜まりだし、だが狼の瘤が。押しつぶして来るから、四散し。高まる射精感が、消えては、復活する。どこか、もどかしい刺激だった。イけそうで、イけない。そのもどかしさに足を擦り合わせ、中の物を締め付けると。彼の形と、そしてより瘤が前立腺に押し付けられ。ハァ……、そう息を吐いた。
 肉球や、爪が。時折雁首にわざと引っ掛けられながら。強い刺激を与えられる。裏筋を圧迫され、尿道の中を根本から押し出すように。彼の手が握力を強め、絞る。僕も、ガルシェも、お互いの性器を抜き合った事は何回かあったからか。これに関しては、銀狼は上手に。徐々に。ペースを文字通り握りつつ、高めてくる。首筋を嗅ぎ、発情臭から。僕が今快楽の中、どこを彷徨っているのかを把握されていそうであった。行動の最中、狼の体臭が強まったと感じたけれど。ガルシェもまた、人の体臭を。その強弱を嗅ぎ分けて感じて取っているのかもしれなかった。口付けを求めれば与えられ。腰を震わせれば、もう少し強めに性器を擦られ。中の雄棒が、甘く腸壁までも擦る。先程の獣のような交尾から一転。僕が想像しうる、人のセックスに近いものだった。お互いを感じ、じっくりと愛を確かめ合うような。五感全てを相手で満たすような。片手で人の性器を弄び、もう片方の手は膨れたまま戻らないお腹を撫でたり。ない胸を揉んだりして。さっきはされるがままで。何もできなかったけれど、こんどは僕もと。激しく犯されなければ、余裕が生まれ。キスされれば、舌を絡め。刺激を与えられると、彼のに比べると頼りない性器を跳ねさせ。中の雄を意識して締め付けた。背にある毛皮の塊が、より密着し。寝バックと呼ばれる体位で、交わり。だんだんと、この感触が、終わるのが惜しいと感じつつも。区切りとして、どうしても性的絶頂に向かって突き進み続けていた。どんな事にも終わりなどない。やがて辿り着く場所を、求め。でも、ほんのひと時でも長引かせようと。僕も、ガルシェも。心を重ねながら。決して急いたりせず。あくまでも一定の速度で。目つきの悪い狼は、これでもかと惚け。愛おしいと、瞳で訴えてくる。体重を掛けられ、押しつぶされそうな体位じゃないから。二人共横向きに、ベッドに寝転び。ただ背後からガルシェは、僕の中に挿入している。さわさわと胸を撫でる、肉球。揉み応えなんてないだろうに。
 亀頭球に意識をどうしても向けられ、あとちょっと。あともう少しで。そんな気持ちで、彼の手に自分から性器を押し付けて。射精したいと、意思表示しながら。自分からもその先に向かう。そうやって自分から浅ましく性的絶頂を求める羞恥は無論あったが。閉じない肛門から、注がれた精液をまるで射精のように吹き出し。ベッドを汚す姿を見られた後だったから。もう夫の前で、恥ずかしがって自分を抑えるのを止めた。頬を赤くさせ、そうする様を見ないでと。顔を背けたりしたら。耳朶を食まれた。つい、顔と肩でマズルを押えつけるようにして。びくりと肩が跳ねたが。その程度で狼は一度食らいついた獲物を解放しないのは、わかりきっていた。コリコリと軟骨をしゃぶられる。んっ、自分からそんな甘ったるい高い声が出たのが驚きで。それを聞いて、気を良くしたガルシェが。耳が弱いんだなと、さらに舐めしゃぶるのだから。上下する彼の手の中で、僕のが。びくびくと震え、射精の前兆にか。睾丸を引き寄せ、皴を多くする。このままだと、肉球を汚してしまうが。そんな事気にするような人ではなかったし。もうすぐ絶頂すると悟ったのか。緩やかった動きが、突如加速する。軽く瘤で中をごりごりと刺激しながら。均等だった前と後ろの刺激が、一瞬にして覆り。前にだけ、意識が持っていかれる。痺れる、脳髄。この時ばかりは、考えるという事すらできず。じわじわと膨れ、上って来る。自分の中の動きを知覚し。自然と溢れていた自分の唾を嚥下した。
 あれだけ、前立腺に暴行を受け。正しく射精できるのか。今も瘤に捏ねられながら。そんな不安も、大きくなっていく快感に押し流されていく。息を荒げていく中、後ろから僕の亀頭を手を動かし。包皮で包んでは、また剥いて。間に挟まれた先走りは、音を鳴らし。そんな様子を食い入るようにして、番がイく瞬間を見逃さないようにしている。狼が、肩に顎を乗せていて。
「イク、イキそう。ガルシェ」
 言葉でもどうなるか、どうなりそうか。夫に伝え。わかっている。そのままと、背を押すように。抜き、握る力を変え。キツく、痛みを感じるぐらい握られ。その分亀頭を荒く擦られ、雁を硬い肉球が引っ掛かりながら圧迫したと思った瞬間。大きくなりつつあった熱が、ちんちんの根本が爆発するように。前立腺がぐぐぐと収縮し、中に溜め込んだエネルギーを圧縮しだした。その時間は一秒か、二秒にも満たない。ごく短いもので。僕が背を仰け反らせ、銀狼に後頭部をぶつけたら。尿道を焦がしながら、尿道口からついに迸らせた。長時間の性交の末、やっと射精できたというのもあったのか。間延びしていく意識、視界が狭まり。息を深くしながら。心臓が跳ね、思わず僕のを握った男の手首を掴み。股間に押し付ける。射精している間、抜かれると擽ったいというのもあったし強すぎる刺激に腰が引けて。我慢に我慢を重ねた結果。自分でも驚く程飛ばし、ぱたぱたと。シーツの上に恥ずかしい斑点を残す。
 びゅっ、びゅー! びゅーっ! びゅるっ、びゅる、びゅ……。
 第一射よりも、第二射の方がより遠くに飛んで。びゅるびゅると、他人の手の中で精液を吐き出し。最終的にはとろりと、亀頭を白濁で濡らし。ガルシェの肉球といわず、手の甲まで伝う。揉むように、僕の性器を刺激し。気持ちよく射精できるようにしながら。背後から人を抱きしめる男の身体が強張った。
「ッ、ぐっ!」
 ぎゅむぎゅむと、キツく。括約筋が収縮し、射精しながら中にあるものを締め上げ。狼の亀頭球を揉みこんだ僕のアナルは。油断していたガルシェを一気に追い詰め。高みへと引き上げた。びくっ、びくくと。余韻に浸りかけ不規則にちんちん全体と前立腺を痙攣させながら。呼吸を整え。脳が麻痺していたところにびしゃりと、思考を白く染め上げてくる。搾り上げられたペニスはたまらず、ザーメンを排泄し。どくりどくりとまた侵食を開始した。それと同時に、膨張する亀頭球。痙攣しつつ、疲れ切ったシコリを圧迫し。堪らず僕は、無理やりに尿道に残っていたものから。精嚢にあったものまで、強制的に押し出される形となる。たらたらと、精液らしき残滓を零した。気持ちよさを越え、寧ろ苦痛であった。動物が電気的刺激で、人為的に精子を採取されるみたいに。僕は狼の瘤で、種を出させられていた。再び強く押しつぶされた場所がジンジンと痛む。
 びゅくびゅく中にまた溢れてくる狼の精液。数十分前に注いだ精子を、もう古い物と断じ。こっちの方が新しく、活きが良い精子だとばかりに。また瘤で蓋をされ。二回目だというのに、今僕が出したものよりもずっと多い量を。ガルシェは送り込んで来る。乾いた笑い声が聞こえ。そして、こんな筈じゃなかったと。そんなふうに。片耳を倒した銀狼。
「ルルシャがイった時、凄く中がうねって俺のを締めつけて。こんなふうになるんだな。耐えられずつい俺も出してしまったけど、一緒にイクって、良いな」
 また新たに注がれ、漏れないのだから膨れるのを強要される人のお腹を覗き込みながら。ガルシェは先程まで僕のを握っていた手を、自然な動作で自身の口元に寄せる。そうされると、僕の顔の近くにもあるという意味で。自分で吐き出した。栗の花に似た、けど生物が出したものだから。似ているが全然違う、許容しがたいとても生臭い。どろりとした液体が、毛と肉球に絡みついていて。ぷるりと震えていた。意図せず焦らされたからか人として、濃い部類になるであろう。自分のから目線を逸らそうとしたが。なんの躊躇もなく、狼は舌を伸ばし。番が吐き出した物を舐め取り、牙で噛み。咀嚼し、ゴクリと飲み干していた。
「ルルシャの唾液も、汗も、精液も。全部美味しい。精液、ネバネバしてて、やっぱり不思議だけど。好きだ、俺。この味」
 ぺちゃぺちゃと、指についたものを綺麗に舐めとると。シーツに飛んで染み込まず、形を保っているものまで。指で掬い、舐め取り。味の感想を言う銀狼。さぞ美味であるとばかりに、僕の性器から出した液体を。恍惚の表情をさせながら味わうのだから。人差し指と親指の間につまんだ白濁を、ニチャニチャと引き延ばしたり、潰したりして。やはり、彼の精液はさらさらとして水っぽいからか。僕のがどうしてそうなのか珍しいらしい。一年ぶりにだからかもしれない。あの時も、そうだった。銀狼が一度に出す射精量と比べてしまうと、かなり少なく感じるのか。前はもっと出なのかと。射精したての性器を弄られたりもしたが。これが人間では普通だとわかっているからか。舐め取って綺麗にした後、ただ苦しくない程度にお腹に腕を回し。抱き寄せて、注ぐ事に集中しだしたガルシェは。僕が先に言っていた通りに、身体を離したりして。お尻を突き合わす体勢にしようとはしなかった。
 またトクリ、トクリ。脈動し、先から熱い物を吐きつける彼のペニスを胎内に感じながら。射精を終え、萎えてしまった自分の状態を確認し。ぎゅるると、お腹から異音がするのに耐えていた。膨らんだ亀頭球に潰されたシコリが、また鈍痛を訴えてくるのもあって。それでも感じられる睡魔。酷使された肉体が、限界だと訴えていた。彼との交尾中に、僕だけ寝落ちするのは憚られたが。元々なかった体力に、休憩を満足に与えられず二回戦に突入して。その眠気に、抗う余力もなく。うとうとしだした。
「眠いのか? ルルシャ。眠いのなら、寝ていいぞ。人間には、俺の交尾は長いよな。俺も、このまま、ルルシャに挿れたまま寝たい。いいか?」
 良いも、悪いも。君の根本にある瘤のせいで抜けないじゃないかと、そんな軽口を叩く力もない。散々喘がされた喉は、少々掠れている気さえした。腕の片方、僕の頭の下に差し入れ。腕枕をしてくれる。もう片方は、お腹をまた撫でて。そして、ふぅって。背後から狼が気持ちよさと、僕の微睡に追従するように。鼻先を後頭部に擦りつけていた。本当に、このまま眠る気らしい。せめて、後処理をして眠りたかったが。彼の射精が終わるまで、待ってられない。瞼が、重かった。とても重かった。
「おやすみ、ルルシャ。頑張ったな。俺と交尾してくれて、受け入れてくれて、ありがとう……続きはまた明日な」
 どこまでも甘く、囁く夫の声が。まるで子守歌のように聞こえて。ガルシェ、満足してくれたのかな。本能が満たされたのかな。そんな質問をしたかったけれど。反応すら返せなくて。なんとか掴んでいた意識を手放してしまう。閉じた瞼の裏、真っ暗になった視界で。ただ彼の温もりを感じながら。深く、深く繋がった状態で。胎内に射精を受けながら、落ちていく。
 意識が途絶えたと感じたのは。体感では一瞬であったが。落ちた分、深海から急速に浮上していくように。あれだけ重かった瞼を開けると。窓を全てカーテンで遮っていてもなお、隙間から光が差し込んでいて。時間が随分経過し、朝なのだと。伝えていた。昨日灯していた蝋燭は完全に燃え尽き。ただ燭台だけが鎮座していて。起き上がろうとして、絡みつく男の腕に気づいた。すうすうと、聞こえてくる寝息もだ。
 意識が途絶える前と、体勢は変わっておらず。背後からガルシェは僕を抱きしめていた。そして、お尻に密着する彼の腰。中に入ったままの、肉棒もまた。そのままだった。本当に入れたまま寝たのかと、夫のした事に。頭が痛いと、額を押さえそうになったが。それよりもずっと、お腹が痛かった。調子が悪かった。それはそうだ、抜かないまま寝たという事はだ。中出しされた狼の子種もまた、そのままであるという事だ。それも二回分。膨れた腹が、ズキズキと内部から痛みを訴える。彼の精子が腸壁を食い破り、その魔の手を広げているかのようでいて。実際の所、ただ腹を下したと言った方が正しかった。キュウキュウ腸が収縮し、中の物を。押し出そうと蠢動し。朝立ちにか、勃起したままの狼の性器を締め付けて。寝入ったままの夫は。番がどういった状況にあるか知らない。だって人の気も知らないで、呑気に寝ているのだから。重い腕を押しのけ、どうにか。抜こうとする。瘤は膨れてないから抜ける筈で、だが癒着したかのように。結合部は離れない。一部、粘液が乾いたのか。パリパリとして。チクチクと棘上になった彼の股間の毛がお尻を刺して来る。後処理せず寝たのだから、お互いのありとあらゆる液で濡れ、乾き。酷い有様であろう銀狼の被毛。僕も、肌の上を白く乾いた粘液の痕が至るところにあった。狼が舐めた際に付着した唾液だったり、自分の精液だったり。もうどちらか判断がつかないのが大半だ。においは、正直。もう性臭がずっと満たしている寝室において、気にするのも馬鹿らしい。シーツなんて、言わずもがな。というより、ガルシェが腰を振る時踏ん張って。足の爪で裂いたのか。びりびりに破れている箇所もあった。もう、二度と使えない。蜜月を終えたら捨てないといけなかった。
 深呼吸し、腰を前に進めるが。彼のペニスは。最初からそこにあったかのように、綺麗に収まっており。なかなか抜けない。トイレ、行きたいのに。抜けないのだ。漏らす心配は、塞いでくれているので。ないのだが。それで良いとはならない。腹痛に呻くしかない。目覚めてから、どんどん痛みが酷くなっていた。それはそうだ。生殖器の代わりに、アナルセックスをしたけれど。彼を受け入れた穴は、本来は排泄の為の器官だ。だからその結果、異常をきたすのは当然で。必然だった。
「んんっ、痛っい……」
 顔を顰め、お尻を擦る。なんども抜こうと、腰を揺らしているからか。結合部から僅かに漏れた彼に注がれた精液が、乾いて癒着した部分を溶かしつつあるのか。ペニスを軽く抜き差しできる所まで来た。ただそうなると、次の問題に直面する事になって。広げられた僕のそこは、そんな刺激を。快感と感じ、鼻にかかった息が自然と零れた。
 上手くいかないまま、ただ腰を揺らし。抜けないからと、頑張った分だけ。朝立ちで硬く勃起している夫のペニスで、まるで自慰に耽っているかのようで。自分の今の姿を客観視して、眩暈がしそうだった。だんだんと自分の亀頭を濡らしているのも、目を背けたかった。
 襲い来るものから意識を逸らし、ただ抜く事に集中する。内側から肛門を盛り上げている、亀頭球を排泄しようと。息みながら、腰を前に。彼の股間から離れようと。ピリピリと、忘れていた。裂かれるような鋭い痛みが走った。馴染んだ後で、また限界以上に広げられる肛門が。持ち主に限界を訴え。裂かれる恐怖を、歯を食いしばり。耐え。ベッドの上で悶え、這い。メリメリと、昨日も聴いた。胎内から伝わる音をさせて。きゅぽっ。瘤が抜ける。ずるずると、茎の部分も続いて抜いていく。後ろを振り返り、だらりと彼の股間でシーツに身を横たえた。僕を散々嬲ってくれたガルシェの性器を見て。むわむわと、ツンとする雄臭い。臭気と共に、湯気を立てているモノ。持ち主は未だ夢の中。普段であれば、寝床から僕が出ようとすると。急いで覚醒し、手首を掴んで来るのに。どうやら夫もそれなりに疲労したのか。この時ばかりは、深い眠りから戻らなかった。その代わり、膨張したままの彼の肉棒は。不満たらたらとばかりに、粘液に濡れ。びくびくと痙攣していたが。もしかしたら、あのまま続けていたら射精して。瘤が膨らみ、抜けなかったかもしれない。
 なんだか。その自身の股間からも、本能からも今だけは解放された。寝坊助の顔が懐かしい。穏やかに眠りこけ、性器を勃起させているのは、憎たらしくもあったが。文句は、起きてから言ってやろうと。震える足と、痛む腰というより骨盤。少々ガニ股になりながら、不格好に立ち上がる。足が、閉じられなかった。ずっと太いモノがお尻を埋めていたせいか。こんな交尾を続けていたら、垂れ流し以前に。僕は二度と歩けなくなるのではないかと、そんな最悪を想像してしまっていた。骨盤が本当に変形しそうだ。抜いたのに、まだ彼のがそこにあるかのような違和感も残っていて。
 よたよたと、お尻を押さえながら。扉を開け、廊下に出る。裸だが、服を着る余裕も。汚れた肉体を隠す気力もなかった。内腿を伝う精液は既に床までも汚していて。お腹は、本当に孕んでしまったかのように。下っ腹が重い。重心がいつもよりも前にあったから、より歩き辛い。一歩、踏み出す度に。ちゃぷんとお腹の中で音がして、ぽたぽたと。床を汚す。ガルシェに、掃除させようと固い決意を胸に。家の中を移動するだけで、かなり時間を浪費しながら。辿り着いたトイレに入り。そして倒れ込むようにして洋式便器に座った。そうすると、びちゃびちゃと出るわ出るわ。水っぽい、狼の精液が。後から後から。彼の陰嚢で作られた精子を大量に含んだ、液体が。ゆっくりと、膨らんだ腹が縮む。痛みはまだ引かないが。それでも解放感に声を漏らしていた。魂が抜けたように、口をあけたまま。トイレの天井を見つめ。何も考える事もできず、ただ。ガルシェが熱心に、一生懸命、注いでくれたものを排泄していた。申し訳なさも多少感じたが、留めておくには。無理があった。寝ていたから。かなり長い時間、お腹の中をずっと彼の精子は泳いでいたのだろう。結局、卵子なんて見つけられず。課せられた役目を達成できず、排水口に流される運命なのだが。幾ばくかは、腸から吸収してしまっているだろうか。僕の体臭、ガルシェの精液臭くなったりしない。よね?
 ちょっと途切れたと思ったら、少ししたらまた出てくる白い液体。かなり奥に出されたものは、なかなか出てこない。お腹を擦り、痛みが消えていくと。やっと安堵に、息を吐き出し。もう暫くは、トイレから出られないなって。そんな事を思っていると。ぎぃ。床が軋む音がした。カチ、カチ。硬い物が、床に当たるのも耳で捉え。足音だった。それが、だんだんとこちらに近づいて来ていた。
 ぎぃ、ぎぃ。扉を隔てて、誰かが目の前に止まったのが気配でわかった。そして、ドアノブが独りでに動き。ガチャガチャと、騒音を立てる。無意識だったが、どうやらトイレに入る際に。僕は鍵をちゃんと閉めていたようで。それで一定以上。それより先、ドアノブは回る事を拒否していた。
「……ガルシェ?」
 扉に向かって、声を掛けていた。この家の中、今居るであろう存在が。誰かなんて決まっていて。ただ、耳を澄ませても。返事はなく。ガリガリと、扉を引っ掻くような音がした。どうして、返事してくれないのだろうか。何も言わず、起こさずベッドから出て来たから。探したのだろうか。そんな疑問は、またロックされたドアノブがガチャガチャと。凝りもせず外から動かされ。でもそれで終わらず、ミシミシと。どこか嫌な音をさせていた。それは鍵の悲鳴のようにも感じられて。それでとどまらず。耐久限界を迎えたのかついには。
 扉ではなく、壁の方が一部破壊され。そして、そのままゆっくりと。開かない筈の扉が、開いていく。ゴトリと、こちら側にあったドアノブの一部が床に落ち。想像通り、開いた扉の先には。ガルシェが居た。引っこ抜けたもう片方、対となるもう一つのドアノブを握り、鼻筋に皴を刻み。怒りを露わにした狼の顔が。邪魔をしていたノブを睨んでおり、そんな銀狼の姿を唖然と見ていたが、自分がどういう状況であったか思い出すと。サっと軽く開いていた股を閉じ、股間を手で隠した。少し前屈みの状態で、何も言わぬ獣に。もう一度、その名を呼んで。目が合う。スンスン、狼の鼻が鳴る。自身の精の臭いを嗅ぎ取ったのか。眉根をさらに寄せていた。
「あ、起きたら。ルルシャ、居ない、から……探して。そしたら、トイレの中からにおいがして。でも開かなくて。今開いたけど。そしたらルルシャ、俺の精子搔き出してて」
 グルル。自分が起きてから思った事を、感情を伝えようとし。途中で、不快に感じたのか。唸り、随分と平たくなったお腹を睨まれた。どうやら、せっかく種を付けた雌が。自分が寝ている隙に、その子種を搔き出していたからか。それを知った雄は。ガルシェにしては珍しくかなりご立腹らしい。毛を逆立て、溢れ出る怒りをどうにか堪えているようだった。たどたどしい、その口調から。寝る間際と比べ。発情期の狼は、かなり理性を欠いていた。どうしてそんな事をするんだと。咬みつかれそうな、威嚇顔に。と、言われても。そんなふうに、内心ただ僕は困っていた。
 ここまで、僕に対して露骨に威嚇するのは。珍しくはあっても、信頼から。傷つけられはしないと思っていたから。そう悠長に身構えていたというのもある。対応を間違えれば、どこか危うい相手の様子に。危機感はそれなりにはあったが。
「ガルシェ。僕は男だから、中に出されたのは。ちゃんと外に出さないと。お腹、痛くなるから」
 だから、しかたないんだと。子供に言い聞かせるように、わかりやすい言葉を選びながら。狼に語り聞かせていた。そうすると、ノブを放り投げ。がしがしと両手で自身の頭を掻き毟り。頭を振るい、悩ましげに。血走った眼を向けてくる銀狼。抜けた毛が空中を舞って、場違いにも煌めいていた。
「でも、ルルシャは男だけど。俺の番で、俺と交尾してくれて。だってそれは、俺の子を産みたいって事で、うぅ……」
 状況から、本能が僕を雌だと錯覚し。苛まれ。だが理性ではきちんとわかった上で、僕達は番になったから。性別の隔たりを弁えてはいるのだろう。ただ、本人でもどうしようもない。衝動が、彼をおかしくさせていた。僕の目の前で、膝を付き。頭を抱えた夫は、発情した、知能の下がった頭脳で。懸命に考えていた。理解しようとして、した行動との矛盾に呻いていた。そうしながら、彼の股間。毛皮状の鞘からは、赤黒い突起が顔を出したままであり。こんな状況でも交尾したいと、そこは示していた。あれだけ昨日吐き出したのに、もう再充填を完了したとばかりに。重そうにぶらさがる毛玉が二つ太い太腿の間で揺れていて。呻き、歯を食いしばり。涎を垂らす夫の姿に。これが蜜月二日目なんだと、溜息が出そうだった。こうまで変わってしまうその症状は、やっぱり病気みたいだった。トイレという狭い場所で、このケダモノからは逃げられないし。そして、同意の上で。僕は彼と共に居るので。逃げもしなかった。手を伸ばして来る、獣の爪に。さしたる抵抗もせず。身体を持ち上げられて。抱えられ、ゆっくりと僕の腰が彼の股間に向かうから。その時を覚悟し、狼の首に腕を回す。ぬちゅり。押し当てられた尖った生殖器がさしたる抵抗もなく、じわじわと入りだす。下げられた腰の分だけ、没頭し。朝立ちが治まり、萎えてはいても。陰茎骨のせいで折れ曲がる事なく。ぬぷぬぷとぬかるみに沈む。そして対面座位で。ゆさゆさと腰を振り始め中でカウパーを塗りつけながら、ガルシェのが刺激を受けてムクムクといきり立ち。勃起していく様子を、詳細に胎内で感じながら。喘いだ。わざとらしくもあったが。わざと声に出したというのもあった。朝早くから、もう始まった彼との交尾に。さも、歓迎しているかのように振る舞いながら。だってこうしないと、きっと彼は狂い。僕を強姦するだろうから。注いだ精をかってに搔き出す、躾けのなってない雌を。その凶暴な獣欲でわからせようと。だからこそ、甘い声を上げ。彼の腰に足を絡めた。入れられた肉棒が長く太く成長して、パチュパチュと結合部から激しくなりつつある。ピストンの音。ストロークが大きく。それだけ勢いをつけて、奥深くに突き刺し。行き止まりを叩いて来る。
「ハッ、ハッ、ルルシャ。好き。ルルシャ、わかってる。けどごめん。こんな俺を嫌わないで、すき。囁くんだ。交尾して、孕ませろって。あいしてるからっ。許して」
 搔き抱いて来る男のきつい抱擁。背に爪が縦線の朱い跡を何本も残しながら。深々と、自重でより奥に当たり抉る勢いを。締め付け、心から受けいれ。微笑んだ。ケダモノになってしまう、男を。ガルシェを、僕の夫を受け止めていた。咬みつくようにキスされて。ズンズンと腰を振り立てられ。中を乱暴に擦られる。力強い突き込み。雄らしく、野生的なやり方をする相手に。僕という人間はこんなにも、逞しい雄相手に完全降伏にと最初から身を任せているというのに。嫌わないでと言いながら、無理やり組み付き腰を振る。彼の言動は弱気だったが、俺様気質な性器は正反対の性格をしていて。蠢く雄膣と化した場所でやんわりと絡み、なだめながら。見下ろす男の顎に額を甘えるように擦り付け、艶かしく腰を動かす巨漢の後ろで足先同士を擦り合わせる。すると、ふさふさとした尾が足裏を擽って来て。雄に懐く雌の姿に、安心したのか。狼が気遣わしげに顔をべろべろと舐め。僕を抱えたまま軽々と立ち上がった。
 どうやら繋がったまま巣に戻ろうというのか。寝ている間に逃げ出したに等しい人間を大事に抱き、背中とお尻をしっかり支え、のしのしとガルシェは歩きだした。一歩彼が踏み出す度に、振動が結合部に集中する。抜き差しする勢いはこの時ばかりは鳴りを潜めたが、ズンッ、ズンッ。そうやって奥底を叩いて来る刺激は抱えられただけという、見た目以上の振動となって。こなれた肉輪は彼の亀頭球すらくぷくぷと頬張りながら。途端、狼が片目を瞑り唸った。敏感な場所を相手に挿入した事で、彼の足が千鳥足のようにもたつく。が、寝室まで後もう少し。抜けてからといもの、僕の中にあった喪失感。なにか埋める物を欲するようなそれが、彼ので満たされる。あまりにも馴染むように、ペニスで広げられた僕の胎内。
 中途半端に開いた扉を蹴とばし、通れるように道を確保し。足元にある食料をつま先立ちになりながら避け。ベッドまで目と鼻の先。この道中、僕は中を浅く突かれ、最奥を叩かれながら彼の首に顔を押し付け。声を毛皮の中に忍ばせながら耐えていた。でもそれは瘤がある根元まで、しっかりと生殖器を番の中に入れながら歩いていた銀狼も条件は同じで。絡みついていた足。どっしりした頼り甲斐のある腰がぶるりと震えたのを感じた時。ぶしゃりと、胎内を叩くようにして。勢いよく熱液が吐き出され。それは一回ではなく。どくっ、どくっ、どくっ。大きく脈打つ熱杭が硬くしなりながら、そのせいで細くなった尿道を塊が無理やり広げ送り出すように。びゅるりと、焼いて来る。搔き出し、冷えた腹の中に再び熱が灯る。
 僕を抱きしめたままベッドにうつ伏せで倒れたガルシェ。挟み込んで、彼の肉体とベッドとでぺしゃんこにされる前に。辛うじて突っ張ってくれた腕が、僕を潰さずには済んだ。だが、足は膝立ちでフローリングの上をカリカリと爪で引っ掻いており。腰だけはぐりぐりと、乗っかって来る。そうすると僕の足は宙を彷徨い、足先を丸め。狼の熱を注入されるがまま、感じ入ったように痙攣する。巨体に覆われ、視界いっぱいに銀狼の毛皮があって。巨漢の背に辛うじて人の腕と足だけが見えているだけだろうか。距離が足らないと、遅れて銀狼の足がベッドに乗り。膝を擦らせながら、背を丸める。もっと種付け相手を肉の檻で閉じ込めてやろうという、そんな気概で。屈曲位の姿勢、彼と深く繋がり固定されたお尻が上を向く。折りたたまれる身体に、自分の背骨が少し軋んだ。耳元には無論、種付けに夢中な雄の吐息。呼吸をしようとすると、全てが彼のにおいで構成されていた。口を開けば銀の胸毛が入り込み、慌てて閉じれば歯で噛む事になった。
 孕め。孕め。孕め。そんな声が聞こえて来そうな、彼の肉の牢獄。熱い肉棒に串刺しにされ、その中を通って来る。僕の胎内から焼いて、炙って、焦がそうとする。サラサラしてるけれど、魂に纏わりつく雄汁。どぷりっ、どぷりっ。そんな人間相手に子狼を腹の中に与えようとする、身勝手な渡精。無理やりな命の譲渡。激しい心音が発達した胸筋の奥から伝わる。身を捩り、顔を上に向け。重く圧し掛かられながら、埋め尽くす毛皮から顔を出し。ぷはっ。新鮮な空気を求めた。雄の臭いに窒息しそうだった。人にはわからない筈なのに。射精する時のガルシェは、雄のフェロモンを大量に放出して。一度息を吸い込むと、かなり湿度の高い場所で息をした時と同じように。肺や喉に、絡むような不快感があった。
 フーッ、フーッ。鼻息が荒い黒い鼻が、首に当たる。湿ったそれは冷たくはなく、かなり熱い。興奮に体温が上がった獣は。熱しに熱した、自分の身体の中で沸騰させた滾りを。勢いよく注ぎ、塗り付け。奥に流し込みながら。それでも溢れないよう瘤で蓋をし。しつこいと感じるぐらいに射精してくる。もう十分だ、受精したからと言おうが。うじゃうじゃと一気に押し寄せる精子の大群に、幸運な一匹と巡り会った卵子が。もう他の精子を入れないように防御能力を発揮する前に。取り囲まれ過ぎて多受精し、正常に細胞分裂が開始される前に壊されそうな勢いで種付けされる。大きな毛玉を僕のお尻のすぐ傍で震わせながら。一個が駄目ならもう一つを。それもだめなら次を。多卵性故に。全ての卵子を蹂躙し尽くそうという。圧倒的な量の精虫達に食い荒らされて、結局何も残らないような。膨れる腹。折りたたまれた体勢では、膨らむ度。僕にはかなりの圧迫感があった。膨れ上がるのに、自分と、彼の身体が邪魔で。潰されるのだ。
「くっ、苦しいよ。ガルシェ」
「きもちいい、中出しやっぱりきもちいい。そうだろ、ルルシャ。射精すッ、もっと射精すからッ。グルッ……」
 孕ます事しか頭にない雄は、相手のお腹が既に満ちていたとしても関係なかった。多ければ多い程良いとばかりに、妊娠確率なんて百パーセントを大きく上回り。数字上の意味はもはやないだろうか。そもそも、彼ら犬科の生殖方法に限って言えば。瘤で蓋をし注ぐ性質上、膣だけでなく子宮にまで精液が流れ込むのだから。一回交尾しただけで孕む場合が大半だった。レプリカントとして人に近づいた姿になった今でも。発情期という要素を残した身体は、繁殖力を衰えさせる事などなかった。でなければ、囲える人口に限度があるというのに。際限なく増えすぎた住民は飢え。その果てに食人事件など起きよう筈もない。繁殖に対する姿勢と、そしてこうも本能だけで行動されると。その説得力も頷ける。相手がいない状態で発情などしようものなら、雄は。自分の種を残そうと暴走するだろう。自分でするわけでもなく。人の手や太腿に擦りつけるわけでもない。肉に包まれて、奥に突きつけて。相手を抱き込んだ状態で注ぐ行動に、病みつきになってしまった。ガルシェに。中出しに夢中な相手に、何を言っても無駄だった。落ち着いたのは、彼の瘤が萎み。ぐったりした僕から名残惜しそうに、ペニスを抜いた後だった。射精して理性がまた戻って来たのか。自分が交尾中に言い放った言葉と。そして強引にした行動とを反省しているのか。汚した場所を舐めながら、耳を倒し。許しを乞う夫。反応してあげたかったが。昨日から起きて、すぐ。こんな激しい交わりをした後では。体力が回復しきらない内というのもあって。ただ天井を眺め。何も言えないとしても、それでも彼の頭を撫でたかったが、腕すら持ち上がらないのだから。こぷこぷと溢れる、お尻の惨状はいまさら考えたくもなかった。また、お腹が目に見えて少し膨れ。重い。
「もう、こんな時間か。ルルシャ。お腹空いてないか? 喉、乾いてないか? 俺、その」
 顔を覗き込んで、欲しい物はないかと。なんども訪ねて来る相手に、目線だけで食べる気力もないと訴える。僕の憔悴した顔を見てか、余計しょんぼりさせてしまった。尻尾なんてだらんと垂れ下がり、僕に注ぎ。溢れ、水溜まりになってる部分に毛先が浸かってしまっている。それでも、ぐうぐう鳴るお腹。ガルシェが恥ずかしそうに、自分のお腹を擦り。こちらになんども視線をくれながらも。ベッドから降り、箱をがさごそと漁りだす。蜜月の為に、この部屋には食料が大量にあるのだから。わざわざキッチンに取りに行く必要もなかった。だから、やがて咀嚼する音がしだして。夫が、先に食事を取り出したんだなって。やっと動いた手で、膨れたお腹を擦りながら思った。詰め込まれた貴方の物で、変に満腹です。きっと栄養的な意味では、身体は空腹なのだろうが。再び戻って来て、覗き込んで来る狼の顔。口元をケチャップか何かで汚していて。手には缶詰。拭きなよって文句は、掠れた息に変換されただけだった。
 その少し開いた口に、狼のマズルが被さり。ぺろぺろと舌が入って来たと思えば、小さな塊を僕の舌に置き。抜け出ていく。舌なめずりして、口元のケチャップを器用に拭う相手。塊を転がし、歯に挟めば。ほろりと崩れた。ミートボールか何かだろうか。一度彼の口を経由したからか、きっと本来はかなり濃い味付けだろうに。薄味になっていて。でも、今の僕にはかなり濃く感じるぐらいには。飢えていた。そこで、空腹を自覚する。ああ、お腹。空いてたんだ僕。それもそうか、昨日の朝から何も食べていない。後ろから、子種はたらふく飲んだが。それだけだ。
「ルルシャ、まだ食べられそうか? もう少し噛んで柔らかくしようか?」
 さらに小さく崩れたものを時間を掛けて胃に納めると。それだけで少し満足げな息が出た。そんな様子を見た銀狼は垂れ下がっていた尾を直立させると。やがてぶおんぶおんと音をさせながら振り。目を輝かせた。返事なんてしていないのに、次のを口移ししようと準備し始める。もごもごこちらを見つめながら顎を動かし。そして、また唇を重ねられる。ついでとばかりに、軽く舌を絡め。僕の唾液を啜りながら。彼の股間が、にょっきり赤い突起を露出させているのは見ない事にした。もう復活したらしい。精豪過ぎやしないだろうか。発情期だからか。そう一人納得し、口の中のものを吐き出すわけにもいかず。寝転んだままで行儀が悪いなって思いつつも。二口目を呑み込んだ。
「大丈夫だぞルルシャ。世話は全部俺がするから。食事も、排泄も全部だ。今は身体を休めて、そしたらまた交尾しような。次は、もう少し負担かけないようにできる。と、思うから。たぶん」
 まだするのと、顔を顰めそうになったが。そういえば蜜月は二日目であった。それもまだ九時ぐらいである。今日ですらまだ始まったばかりであるし。彼の発情期は少なくとも一週間は続く。これ、本当に僕。身体が持つのだろうか。ベッドの上で狼に過剰に愛されて死ぬなんて、笑い話にもならない。
「ルルシャのにおい、昨日より濃い。それと俺のも。とてもえっちなにおいだ。俺の事好きって、においが言ってる。こんなの嗅いでたら、麻薬やってる奴らみたいになりそう」
 すんすん、すんすん。黒い鼻がしきりに僕の身体のあっちこっちを嗅いで。鼻腔を満たすそれで、うっとりした顔をする銀狼。そりゃ、貴方と散々乱れた後そのままお風呂も入らずに寝てしまったのだから。かなり、自分が臭くなっているのはわかる。わかっているから、言わないで欲しかった。ガルシェのいろんな臭いが、むわって。自分から香る。そういえば、排泄も世話されるらしいけれど。小さい子みたいに、トイレに連れていかれ。させられるのだろうか。彼に見られた状態で。嫌だなって思った。思っても、驚く程身体が動かないのだが。
 食べ物を口移しする時、ガルシェはとても嬉しそうに。目を蕩かせるから。たぶん狼の求愛行動の一つなのだろ。子供だけにするのかなって思っていたが。やはり、番にもするらしい。悔しい事に、顎を動かすのも億劫なので。小さく噛み砕かれたそれらは食べやすくはあった。一度胃に入れた物を吐き出されたわけではないし。干し肉等も豪快にぶちぶちと咬み千切る銀狼。今の僕には無理で、かなり噛んで柔らかくしてもらい。それをそっと口に入れてもらう。
 一回まだ少し硬いと感じる干し肉を口の中から掠め取ると、もう一度噛み砕いて。より柔らかくなったら、口の中に戻されたり。二人の境界線が、どこかにいってしまっていた。ガルシェは、二人で一つの生き物のように言っていたけれど。
「んん、ガル、シェっ」
「ンっ、ふッ。ハッ、ルルシャっ」
 ただ口移しでは済まないのがちょっとたちが悪いと言えた。毎回、ディープキスみたいに。お互いの舌を縺れ合わせ、人の歯に狼の牙を当てられるのだ。これも、それなりに体力を削られるのだが。どうにか食べさせようと。甲斐甲斐しく世話をしようとする雄にはあまり伝わっていなかった。パウチを破くように開けると、中に入っているお粥みたいな物を注がれ。舌で掻き混ぜられる。くちゅくちゅ自分の咥内から音がして、身体が性的に反応してしまいそうだった。ガルシェのは、最初からしっかり反応していたが。
 この行動も分析すると。母体を衰弱させないよう、自分の強い子を産んでもらう為の。そういう意味が含まれた行動なのだろうか。本当に、世話をすると意気込んだ夫は。甲斐甲斐しかった。僕が風邪を引いたら看病したいと言っていたし。先に引いたのは、ガルシェであったが。水も口移しだ。多少唇の端から零れたら、布の代わりに狼が舐めて清めてくれる。慣れてくると、背に布を挟んで。少しだけ上半身を起こしてくれたから。胃が食べた物で苦しくならずに済んだ。老人相手に介護されているみたいだとも感じたが。そうやって狼の施しを受けながら。やがて、彼の方が先に我慢できなくなったから。銀狼のを。手で抜きながら、次の食べ物を与えられたりしながら。午前中は過ごした。久しぶりに手淫し、そうして。僕の太腿や膨らんだ腹の上に射精する夫の姿を、リラックスした姿勢で見ながら。しっかり瘤を握ってあげて。最後まで出せるように補助しながら。その間、唸りながら肩を甘噛みされたりしたが。突っ込まれない分身体の負担はマシであった。中に挿入して、出したいって。そんな欲が見え隠れしていても。本当に僕がしんどそうにしていたからか、手淫で我慢してくれる。発情期で。本能的な部分が強く発言している夫。一度中の感触を知ったからか、前の発情期の時より。かなり必死で自分の獣欲を抑えているのか。僕を掴もうとした手は、寸前でシーツを掴み。ビリビリと破いていた。僕の横に寄り添うようにして寝転がる。瘤を握られ。揉むように緩く刺激を与えて上げると、男らしいけれど。感じ入った声を漏らしながら、射精を続けるガルシェ。勢いよく飛び出て来て、空中を舞い。やがて僕の身体の上にぼたぼたと落下してくる熱い液体。それを見て、多少は満足感を得られているらしい。人の肌の上に落ちた生臭く、白いものを指先で塗り広げて。馴染ませてもいた。肩に顎を乗せ、首筋のにおいを嗅いだり。もっと触ってと、腰を擦り寄せて甘えてくる銀狼。これが終われば。水分補給させないとなって、吐き出す精液の量を見ながら思った。
 そうやって触れ合う内に、一つわかった事がある。発情期のガルシェは、こちらが求めるような仕草を取ると。その獣性が幾分か和らぐ。逆に僕が拒絶したり、あまり好ましくない反応を見せると。より、身体を密着させ。自分という存在を刻もうとする。彼からすると、年中発情期だが。頭はそうではない人というのは。随分と変に映るらしい。本来は発情期の雄と雌が絡み合うのだから。僕がそういうふうに、振る舞えば。完全にとはいかないまでも、理性が戻るようであった。心が繋がっていないという不安がそうさせるのか、性急さがそこに現れていた。
「ルルシャ、無理しなくていいんだぞ。雄が動くのが、普通で、うっ」
「ふ、うっ。だい、じょうぶ。ガルシェはじっとしてて……」
 仰向けになった夫の上に跨り、手で刺激し。勃起したモノを自身で後ろに宛がうと、腰を徐々に下ろしていた。あわあわと、面白いぐらい慌てながら。興奮し過ぎないように、自身のマズルを両手で掴んでこちらを凝視する銀狼。彼の逞しい腹筋の上に手をついて、支えとし。笑うように足が震えるが。自分のペースで太い杭を受けいれていく。ずぷぷ。気を抜いて、手と足から力が抜けたら。たちまちその凶暴な夫の性器は僕を奥深く貫くだろう。じっとしていて欲しいのはいろいろな意味を含んでいた。まず、彼に任せると本能のままに腰を振るい。奥を目指して乱暴に突かれるので、アナルセックスにまだ慣れない僕では痛いというのがあった。それと、自分の気持ちが良い場所というのは。思ったよりも浅い位置。前立腺であり、そこを刺激するように腰を動かすと。それなりに慣れないながらも快感を感じられた。徐々に深く受け入れながらも、瘤のすぐ上で止まり。ゆっくりと半ばまで抜いていく。騎乗位と言われる、主導権を受け入れる側が一時的に持つこの体位は。僕にとってそういった意味で言えば楽であった。押し潰されるように、巨体に覆い被されたりといった事もなく。自分の匙加減で調整できるから。考えもなく腰を落とせば自重で、全ての体重が今胎内にある彼のペニスの先端に掛かる事を除けば、だが。
 鼻にかかった息を零しながら。夫の上で淫らに腰をゆっくりと振るうという、娼婦のような自分の姿。その部分を我慢すれば。もしかしたら、ガルシェにとって刺激は物足りないのかもしれなかったが。自ら彼の雌として求めている構図を簡単に作れた。だからこそ思うがままペニスを抜き差ししたいという欲求を我慢し、腰も自らの太腿で挟んだ尻尾も、中にあるペニスもぶるぶると震わせながら。僕の痴態から目が離せないのだろう。
「ルルシャから、俺のチンコを求めてくれてる。なんだこれ、すごい」
 酩酊したように、瞳を蕩けさせ。感極まったように雄が何か言っていた。僕が中にあるモノを、お尻に力を入れ締め付けると。如実に、繋がった狼はぶるりと身体を震わせ。気持ちよさげに涎を垂らす。手でする時もそうだが、僕が与える刺激に。とても素直に気持ちよさを表現する彼の身体は、与える側からすると気分の良いものだった。自分よりも体躯の上回る相手が、力も、大きさも下回る相手に。好きにさせている。身を預けてくれている。好きにさせてくれる。いつでも自分かってに突き上げられるのを耐え、今までにないシチュエーションを楽しんでるというものあるのかもしれないが。こういった隠し事が一切ない、性行為中のガルシェは。見ていて飽きない。だって、僕の身体で気持ちよくなってくれているって。わかるから。上手くできているかなって、不安にならずに済んだ。絶頂の証に、精液を吐き出す男の身体だからというのもあるかもしれない。なら、彼の視点からすると。後ろの穴で受け入れてるだけでは、上手く勃起できず。射精なんて程遠い自分は。どう見えているのかなって。自分にとって大きいと感じるペニスで中を押し広げられながら、深くなり過ぎないように注意して。時折奥に先を当てたりしつつ。自分のペースだからこそ、考える余裕がある僕は。そう客観視しながら、相手の気持ちを読み取ろうとしていた。身体の相性で言えば、悪くはないのであろう。初めてで受け入れている場所は、亀頭球を押し込まれようとも切れていないし。ただ、僕がイけないだけだ。身体の中も、心も、彼によって満たされているというのに。伝える術が、ガルシェのように乏しかった。だからこうして、恥を捨てて。男の上で腰を振っているのだが。注がれ、残留する子種のせいでぽっこり膨れた腹が重く。腰を振るのはそれなりに労力を要した。
「ガルシェ、気持ちいい?」
 平常時なら恥ずかしがって聞くなって怒られそうな質問だったが。ぶんぶんと狼の頭は上下してくれて。息を荒げていた。姿勢を安定させお腹の上に手をついていた片方を、そっと毛並みに逆らいつつ這わす。やがて辿りついた、そこだけ。銀狼の左胸だけ、一部毛が生えていない火傷の痕。図形を描いた、意味のあるそれ。烙印と呼ばれる、不名誉な証。触った所でもう痛がったりしない場所ではあったが。唯一不自然に地肌を晒しているからか、触れると。そこだけぴくりと胸が動いた。
「ルルシャ、どうした?」
 性行動中に、そこに触れられて困惑したのか。ガルシェが眉を八の字にして、触れた場所と僕の顔を交互に見ていた。気持ちよさの真っ只中に居たのにというのもあったかもしれない。もう刺激をくれないのかと、結合部に続きを所望するように瘤がぐりぐりと押し当てられる。ベッドから腰を浮かし、熱心に催促していた。別に、そのままスプリングを利用し。ガンガン突けばそれでいいのに、そこは頭にないのか。僕の表情を窺っていた。つい、この姿勢だからこそ目に入ったというのもあった。その部分が。僕達を縛り付ける、負の要素を。僕が、縛り付けている。彼に被せた罪を。
 欲を抱えながらも、狼の瞳に理性が戻る。瞬きをして、しっかりと思考し始めたのか。自分のマズルを掴んでいた手を解き、僕の太腿を支えるように。添わされる。だから、ああ、彼のペースでそのまま突かれるのかなって。そう気持ちだけ身構えていたが。そうはならず。
「ルルシャは、気にしなくていい。これは、俺がかってにやった事だ。親父と話して、ケジメとしてやった事だ。だから気にしなくていい。それは、なんども言っただろ」
 そんな言葉を吐いた相手に。また自分が欲しい言葉を言わせた、言わせてしまったんだと感じ。首を振る。違うと。君と話し合わず、かってに一人で街から出て。それで、人間が一人で外の世界で生きられないと。どれだけ僕が弱い存在か知っているガルシェが。追いかけてこないなんて、考えなかったわけではない。追いかけて来るなと言いながら、喜んで。そんな要素を残して。あまりにみっともなく、身勝手な人間の。浅ましい考えに、踊らされた人を。だからこそ、むしろ縛り付けているのは僕の方だと。キァルくんに言った理由だった。彼は、どちらかというと。狼の習性で僕を縛り付けていると、気にしている節はあったが。結婚を、番になる事を断れないように。あんまりな求婚をする、今まで大事にしてきた全てを投げ捨てて。投げ捨てさせたのは、僕なのにって。
 だからこそ、罪の証なのだ。人間にとって、結婚とは契約。法的に認められた、書き綴られた約定に同意した夫婦を指す。番のネックレスが彼にとっての番の証なら、僕にとってのそれは。でも、鏡を前にして。物思いに耽る夫の姿を見てからというもの、聞きたくて。聞けない部分。ずっと灰汁のように浮いたまま消えず、心の奥底にしまい込んでいたあったものが。こうして深く繋がった今。脳裏に過って。
「ガルシェは、僕と番になって。後悔、してない?」
 学校の屋上で似た質問をしただろう。あの時も、彼は否定にと。首を大きく横に振ってくれたけれど。今は、どうなのだろうって。縛った分だけ、解放してあげたいと思う。僕なんかに。僕みたいな人間なんかに。こんな、醜い心を持った。ちっぽけな存在なんかに、この人を縛り付けて、独占してよくはないと。思わずにはいられないのだ。自信のなさがそうさせるが、事実。客観的に見た僕という存在はそうで。たくさん、酷い事をしただろう。皆、ルルシャは優しいと言ってくれるけれど。それは表面上しか見ていない。ちゃんと怒ってくれる人は、ルオネだってそうで。ガカイドだって。盲目的に、僕を肯定する彼に。甘え過ぎてはいけないとわかっていても、依存しそうで。もうしてるだろって、冷静な自分がいつも囁く。お互い、相手が居ないともう駄目だとわかっていても。正しい道に、戻してあげたいのだ。彼を、ユートピアに返してあげたい。僕なんて、放って。捨ててくれて、いいのにって。たくさん貰ったから。彼には、貰ってばかりで。今も、本来は雌の狼が。彼の本来の番が、受け取るべきだった。赤ちゃんの素を、狼の子種を。人間の、ましてや男である僕なんかの。お腹の中に吐き出して。
「ルルシャ。前にも言ったけど、俺の気持ちを疑うなら。さすがに怒るぞ。番でもそれは許しちゃいけないって、言っただろう」
「わかってる。わかってるけど、不安なんだ。こうして、君と交尾までして。蜜月を過ごして。でもこれでいいのかなって、思わずにはいられない。幸せになって欲しいのに、僕なんかとって」
 思わずにはいられないのだ。一緒に暮らしていたら、不満はいくらでも出てくるだろう。僕もそうで、幾ら愛されているとわかっていても。彼の日常でする行動や、結果に。不満が募る。それはガルシェだって同じな筈で。僕に対して、もっとこうして欲しい、直して欲しいって。いっぱい、言いたい事がある筈なのだ。互いに常識が違い過ぎて、食い違いなんて日常茶飯事。狼と人が、似てはいるが違う生活様式で。気を遣いながら、相手に合わそうとして。均衡を保っているに過ぎない。 
「俺の幸せは、俺が決める。親父でも、ましてやルルシャでもない。俺が、番として居て欲しいのは。ルルシャだけだ、じゃなければだれが好き好んで、それも男の。尻の穴にチンコ突っ込んだりするかよ」
「もうちょっと言い方あるでしょ」
「事実だ。雌のマンコじゃなかったけれど。でも番の子宮に種付けたい。孕ませたいって。そう本能が叫んでる。そうして、今も交尾してる。俺はルルシャ以外の男も、同族の雄もごめんだ。頑なにレプリカントの他の雄とヤらないでいると、同僚にもおふざけ半分に相手しようかと聞かれた事があるが。俺は番とだけ交尾したい、それは今も変わらない。好きになった奴がたまたま人間で、たまたま男だっただけだ」
 明け透けに、オブラートに包まず。思わず顔を顰めるような相手の言い分に、でもどこかスカッとするような。自分の気持ちを代弁するような、そんな不思議な感覚に囚われる。僕も、ガルシェ以外のレプリカントの男性に。ましてや人間の男にも興奮なんてできないであろう。たまたま、この狼の顔をした人に。恋して、恋してしまって。命も、魂も投げうって、股まで開いて。
 ガシガシと、片手で後頭部を搔いて。銀狼が溜息を吐いていた。興が削がれたと、その顔が物語っていたが。腸壁で包んでいる彼の肉棒は、硬いままである。抜こうにも、もう片方の手が押えつけるように僕の太腿を掴んでいて。そうもできない。交尾する気が失せたなら、できれば抜いて欲しいのに。休憩したい。
「喧嘩したかったわけじゃないんだ。ごめん、ガルシェ」
「発情期で、腰の奥は疼いてるけど。なんか頭は冷えた。変な気分だ、まったく。俺の番は本当に、心配性というかなんというか」
 難しいな。そう枕に頭をぼすりと預け、天井に向かって呟いた狼の言の葉。それは、お互いの境遇であったり。夫婦生活であったり。種族や性別の隔たりであったり、それらであって。全ても含んでいた。
「取り返しのつかない烙印、押して。本当は後悔してるんじゃないの?」
 核心に触れた。一番、深く僕達を繋ぎ止めている呪い。負の要素。この男に本来刻まれていいものではなく、そして誰にも、刻まれない方がいい。不名誉な、雄として失格の証。だからガカイドのは、どうにか消せないかと。頭を悩ましたのに、だというのに。この銀狼は自ら刻んでしまうのだから。取り返しのつかない要素だからこそ、後で嫌になって。疎んで、消したいと願うのではないかと。彼の気持ちをかってに決めつけ、僕から本当は離れたいと。感じてやしないかと。悩んで、でもそれは違うと。彼の僕に対する好意をいまさら疑いたくはないが。
 ガルシェの瞳が、僕から横に逸らされる。あーって、声に出して。どう言うか悩み、傷つけない言葉を探しているようであった。よく、僕に対して自分の気持ちを伝える時やる彼の仕草だった。この狼はド直球とばかりに、愛情を。甘噛みや、舐めたり、身体を擦り付けたりして伝える分。言葉では毎回、伝えようとして。時間を要する。追い詰められて、咄嗟に言う台詞は。学校の屋上でも、交尾中で理性が飛んだりした時も。だいたいは僕を傷つけるのだが。それは、本人もわかっているのだろう。だからこそ、こうして自分なりの言葉を探してくれていて。僕はわりと、思った事をそのまま口に出してしまうのだが。憎まれ口を叩く、そういう所が可愛くないと皆から言われる。自分の欠点だった。
「いや、ほら。人間で言う刺青みたいなものだろう? だから、どうせ刻むならできればかっこいい模様が良かったなー、なんて……」
「はっ?」
 聞き間違えだろうか。え、今。この男。なんて言った。自分の鼓膜を一度鉛筆とかで破って、再生してからもう一度訪ねたい。その上で、やはり、何て言ったか理解できない。そんな内容だった気がする。エヘヘと、照れたように笑い。自分の胸。片方だけを擦り、烙印を恥ずかしそうに隠す狼の手。そんな相手の様子を見た上で。
「なあ、なんかルルシャ。怖いにおいがする。なんで怒ってるんだ? 俺、マズイ事言ったか。やっぱり、男のルルシャ相手に。なんども孕ますって言ったの良くなかったか? それとも、交尾が下手だからか。ルルシャの中、きもちよくて。つい思いっきり突いてしまって、痛かった、よな」
 僕、何を今まで悩んでいたのだろう。この数カ月を振り返り。一番悩んで、悩んで。彼との初夜をどうするか以上に、頭の中にあった悩み。枷。罪だと感じていたものが、いつの間にか消えていて。きっとそれは、良かったと。そう思っても良い筈なのに。性格の悪い僕は、どうしてかこんなにも。怒りで溢れている。ぴすぴす鼻を鳴らしながら、腰の上に跨った。性器で繋がった状態の僕を見上げる。情けない顔をした狼。
「いてっ、いて! おい、どうしたんだよ。ルルシャ、いてっ」
「うるさい」
 ぽかぽか、彼にとっては本当は痛くないであろうに。それがわかっていても、でも容赦はなく握りこんだ拳を交互に振り下ろす。その腹が立つ狼の顔に向かって。ぶにって、殴られた黒い鼻が変形して。ちょっとはダメージが与えられたのか。尻尾を引っ張った時みたいに、悲鳴を上げるガルシェ。逃げようにも、僕が上に乗っているし。そりゃ、振り落とせばできるのであろうが。彼がそんな事をする筈もなく。そして、この状況においても。ペニスは抜きたくはないのだろう。
 ああ、でも。そうか、後悔してなかったのか。僕と結婚して。人間なんかを番にして、この人は。後悔してなかったのか。殴るのに飽いた僕は、両腕で自身の顔を庇う男を見下ろし。呼吸を落ち着けていた。中を埋める存在に、意識を戻し。また刺激を与える。腰を持ち上げ、落とす。そしてゆっくりと、まだ大きくなっていない。彼の亀頭球すら、飲み込んで。
「ルルシャ……?」
 突然殴るのを止め、そして自分の瘤を受け入れた人を。怖いものでも見たとばかりに、怯えた目をする銀狼。僕なんかに嫌われる事を恐れる、とても臆病になってしまったガルシェ。君も、結構僕の気持ちを疑うよねって。そんなふうに思ったが。不安にさせているのはお互い様かと。強い存在感を示す、一番敏感な場所を括約筋が締め付け。状況について行けていない雄は、それでもペニスに与えられる刺激に。あっ、あっ、ルルシャ。そう声を漏らしながら、身体を震わせ。腰を掴んで来た。もっと奥に。挿入しようと、いい加減我慢ができなくなったのか。滾った生殖器が、さらに膨らむ。射精の前兆を感じ。言葉もなく、微笑んで。手を伸ばし狼の額に触れる。いいこ、いいこ。そんな子供扱いとも取れる。一応成人男性である、ガルシェを。ただ撫でて、それで嬉しそうに甘え声を出す。夫の姿に、満足感を得られた。やがでそんな動きすら阻害するように、膨らんだ亀頭球と。ぶしゃぶしゃ吐き出される液体を、胎内に感じ。より膨らむお腹を抱えながら、彼の腰の上でふぅふぅ息を整えながら。狼の射精を静かに受けた。
「ルルシャ、チンコ、俺のチンコ溶ける。ルルシャの中で、うう……」
 たとえイけなくても、僕はこれで良かった。こんなにも、僕を求めてくれて、そして種付けしてくれる。彼のみだらな姿を独占しているのだから。とても、贅沢だと思う。またわがままになった。彼の交尾が下手かどうか聞かれたら、正直比例対象が居ないので上手く言えないが。絶頂できないのは、僕側にも問題があるだろう。だからそんなに気にしなくていいのに。男の沽券という奴だろうか。太く、長い逸物で力任せに奥を突かれたら。そりゃ痛いけど。人を腰の上に乗せたまま、舌をだらしなく垂らし。熱心に種付けをする。こちらを見上げてくる蕩けた狼の顔を優越感すら感じながら見下ろし、中にあるものを締め付けると。その刺激に歓喜した陰茎が震え、勢いよくびゅるりと射精されるのだから。僕も、ガルシェの熱い飛沫に控えめながらも乱れた。
 朝も、昼も、夜もなく。起きて、交尾して。休憩して、交尾して。食べて、交尾して。いつの間にか寝てしまって、起きたら、また交尾する。回数なんて数えている暇もない。どちらからというものでもなく、腰を擦り付け。言葉もなく、甘いキスを贈り合い。食べ物も飲み水も、全て夫の口移しで与えられながら。
 トイレ事情に関しては、もう扉が壊れて閉じられないのもあって。手を繋ぎ、僕は見ないようにしながら。ガルシェが排泄を終えるのを待った。発情期の彼は、少しでも離れている時間を強く拒んだから。目の届く範囲で、交尾対象を置いておきたいのか。どこへ行こうにも、銀狼は横にひっついて回った。母親の後を付いて回る、小鴨のようだ。無論、僕がおしっこする時も。その、大きい方を。する時も。じっと見られた。においだって嗅がれて。人として辱めを受け続けた。軽く局部を綺麗にしたら、交尾が再開されるので。きっと彼のペニスは、僕の中に居る時間の方が長かっただろう。一度射精を開始すると、一時間近く。ロッキングしてしまい、離れられないのだから。僕の体力に余裕がありそうなら、抜かずに、そのまま。という場合もあったし。体力が尽きたら、手で刺激してあげるというのもあった。お互いの体臭なんて、お風呂に入れない以上。気にしてられないし。自分でもかなりの悪臭だとは馬鹿になった鼻でもわかる。寝室なんて酷いものだ。食べカスと、汚れを拭き取ったタオルと。シーツを一度も変えていないベッド。お互いの精液と、よくわからない体液で汚れ。変色し。防水シートを下に敷いてなければ、ベッド自体駄目にしていただろう。そこだけは、夫の事を褒められた。一番汚しているのは、その夫なのだが。海産物のような、饐えた臭いがずっと充満している。換気も考えたが、臭いを放つ根本を断たない限り。あまり意味があったかは、定かではない。お風呂に蜜月の間、一切入る事を許可されない。それはガルシェがせっかく付けた臭いが薄れるからだろう。
 ただ思ったよりも汚くないのは、銀狼が全て舐めて綺麗にしてくれるからで。最悪の最悪は回避されていた。髪がちょっとギトギトするぐらいだ。人間である僕は、どうしても皮脂で汚れる。対してガルシェはそこらへんはあまり変わらないが、抜け毛が酷い。毛の塊が部屋のあちこちにあり、ブラッシングしなければいけないのに。くっついて、ペニスを擦りつけ。次の交尾をと、隙あらば求愛してくる雄に。僕はたじたじだった。
 それと大事にしていたサボテン。悲しい事に枯らしてしまった。ガルシェが動けない僕の代わりに水やりをやろうとしてくれて、そんなに必要ないのに。畑にやるように、されて。犠牲になってしまった。咎めようとも思ったが、相手は普通ではない状態であるし。僕の為にしようとしたのだから、叱るのもなって。ベッドに寝転がりながら、ただ。ごめんと交尾を終えた為に理性的な内な今だけ。申し訳なさそうに謝る夫を撫でていた。膨らんだお腹を抱えながら、ガルシェを撫でるこの状況は。とても奇妙ではあったが。
 でもそんな、交尾する事しか頭にないような。ガルシェであっても。発情期も後半に差し掛かれば、軽い触り合いだけをして。交尾せず、そのまま寝てしまうって場面もあった。本能がだんだん落ち着き、元の彼に戻りつつあるのだなと。後ろから太いものを突き立てられ、喘がされながら感じた。最初の性急で、稚拙で、荒くたい抽挿ではなく。ゆったりとした、人同士がするような。セックスを楽しむような。そんな余裕が男の中に生まれつつあったから。六日目、七日目になると。後ろだけの刺激でも、気持ちいいのだと自覚し始め。激しくされない分、アナルセックスの快感を僕も受け止める事ができるようになってきていた。
 このまま順調に開発が進んだとして、いずれ。僕の身体はどうなってしまうのだろう。そう男に突き上げられ、種付けされ。瘤で蓋をされながら思う日々も。なんとか過ぎ去れば。
 朝。元気よく朝立ちした自分のそこをベッドに座って眺める、夫の姿に。何をしているのかと、寝癖でぼさぼさの髪をいじりながら声を掛けようか、掛けまいか。悩んでいると。狼の頭が一人、納得するように一度頷き。朝立ち占い。かってに命名したそれを終えると。こちらに向き直り。
「発情期。終わったぞ、ルルシャ!」
 どこか、既視感を感じる。そのような事をのたまう雄に、ああ。そうなんだって。ただただ、生きてた。良かったと、安堵していた。本当にこの一週間、彼の精子がお腹の中を常に泳いでいる状況に置かれたし。腹痛で多少搔き出した程度で、奥深くに出された数百匹。数千匹は残っていそうで。実際、大量に一度に中出しされる彼の精子は。何十憶とあるのだろうが。それらが、綺麗に外に出せるかというと。答えはNOだった。多少は搔き出せたとして、すぐに追加が注がれるし。人間よりも俺の精子は長生きだから、数日排卵がズレてもちゃんと孕むぞって。自信満々に、注いで膨れた僕の腹を撫でながら語る雄から目を逸らすしかなかった。
 でも、終わってみれば。不思議と、呆気ないもののように感じ。でももう少し、優しく抱かれたいものだった。獣のように犯されるのは、やはり。生命に関わりそうで。怖いというのもあった。彼のペニスで無茶苦茶にされているのは、傷つきやすい内臓であるのだから。
「そういえば、雌と交尾して。万が一、妊娠しなかった場合。少し間をあけて、もう一度雌は発情するんだけど。蜜月二回目はどうする、ルルシャ?」
 理性が戻った分、ちょっと恥ずかしそうにしながら。夫が床を雑巾で拭き、手を動かすのを止めないまま僕に尋ねて来る。乱れに乱れ、所構わず致した行動の後片付けを二人して、ひたすらやるというのは。なんだかこう、虚無感というか。途方もない虚しさがあった。あったのだが、そんな。え、聞いてないんですけれどって。てっきり彼との一年で一回きりの濃すぎる交尾は終わったものと思っていたから。油断していた僕は、側頭部を鈍器で殴られたような衝撃に襲われる。
 恥ずかしがりながらも。毛皮をぼさぼさにして。期待に、見上げてくる狼の雄。僕も、そして長い射精をするガルシェも。この一週間でかなり疲弊している筈なのに、汚れてはいても。どこか艶々している銀毛が眩しい。僕、次こそ死ぬ気がした。量ってはいないが、体重も落ちている気がする。後ろで快感を多少は感じられるようになった分、ガルシェに犯されて。変わっていく自分の身体の事を加味して。まだ、ちゃんと膝が笑って普通に歩けないのに。
 本当に、どうしよう……。そう思わずにはいられなかった。無論、発情期以外でも。これから、彼とのセックス事情は解禁されたのだから。求められた場合、できうる範囲で応えてあげたいのだが。蜜月は、僕の体力が持たない。本当に、持たないのだ。壊されそうで。どうしよう。彼の為に命を使うのなら本望だが、唯一。腹上死だけは嫌だ。そんな情けない死に方だけはしたくない。
 でもきっと、シたいとちゃんと相談されたら。この銀狼に甘い自覚がある僕は、受け入れてしまうのだろうなって。ただ無理やり発情するのは止めさせよう。寿命が縮まりかねない。それだけは固い決意で止めようと思った。禁欲は、良くない。いろいろな意味で。
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