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3、白騎士の来訪
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廃城の前に白銀のフルプレートアーマーを身に纏い大振りの白く輝く剣を背に持った騎士が現れた。
顔は兜で隠れておりその思惑のうちを読み取ることはおろか、騎士の性別を読み取ることすら叶わない。
ゆったりとした、それでいて隙の無い足取りで騎士は廃城の中へと歩みを進める。
騎士は自身が思っていたほど寂れた様子のない廃城の内装に違和感を感じながら真っ直ぐに突き進み、やがて玉座の安置された謁見の間へとたどり着く。
玉座にはアンネリーゼが腰掛けており、目線はじっと騎士が謁見の間の扉を開けるその瞬間から騎士を捉えているようであった。その横にはイルヴェリナが佇み、騎士の来訪に対して丁寧に頭を下げる。
「これはどうも、王国の白騎士殿。魔物の闊歩する危険地帯の中をわざわざ御来場ありがとうございます。しかし、我が主とて暇な訳ではございません。なんの連絡もせずに急遽城を尋ねてくるのは少々不躾ではありませんか?あなたの人となりは私、存じ上げませんが騎士の品位というものが問われる自体になったとしてもおかしくはありませんよ。」
騎士の来訪自体はイルヴェリナが察知し気付いていた。突然の来訪とはいえ騎士に対して投げつけられた言葉はいささかやり過ぎのようにも見えたが、プライドの高い騎士とは思えぬ腰の低さで騎士は返答を返す。
「ここが貴殿らの居城であること、知らなかったがゆえに無礼な作法を取ってしまったこと、大変申し訳ない。言い訳にはならないが、以前からこの城は魔物共のそう住処となっており、とても人の住めるような環境ではないと聞かされていたために貴殿らのように住まれている方がいるとは思はなかったのだ。」
「突然の訪問をなされた理由はわかりました。ですが一体なんの目的でこの城にやってきたのですか。確かにあなたの言う通り、この辺り一体は強靭な魔物が多く一般人が立ち入って生きていられるような場所ではありません。この城は例外ではありますが…。とにかく、そんな物騒な噂を耳している上でなぜわざわざ訪れたのか、納得のいく説明をして欲しいところでございますね。」
騎士はそっと自分の被っている兜を外し、自身の素顔を顕にした。兜の中から現れた美しい金髪に凛とした強い意志を感じられる整った顔立ち。その顔にアンネリーゼは覚えがあった。
「私の名はヴィーネ。アンネリーゼ嬢、息災のようで何よりだ。あなたをこの地に追放する役目を負ったあの日以来だな。」
ヴィーネはアンネリーゼをこの廃城のある危険地帯まで送り届けた騎士の1人であり、アンネリーゼに廃城について教え少しばかりだが食料を渡してくれた人物でもある。化け物の伝承が伝わってはいるが外で過ごすよりは安全であろうと教えた廃城で、城主のような扱いを受けているのには驚いたが、何とか生き抜いてくれたようでヴィーネは安心した心地になった。
「そちらのメイドは私を王国の騎士と呼んだが、残念ながらそれは違う。私は騎士の位を返上してきたのだ。騎士として法を守る守護者として生きていると思っていたのだがな。思うように喋れない、疑いを自分の力で証言して晴らすことの出来ないアンネリーゼ嬢に非情な判断をくだす国に対して不信感を覚えてしまってな。」
物悲しげに語るヴィーネであったがすぐにその憂いを帯びた表情を振り払うと改めてアンネリーゼに向かって笑顔を見せた。
「それにしても…、噂というのはやはり当てにならないな。アンネリーゼ嬢が無事でいる所を見るにこの城に住むとされる凶悪な魔物もいなかったようだし、どこで出会ったのかは分からないが危険地帯と言われる中にも人が住んでいたようだしな。」
ヴィーネはイルヴェリナを横目に見つつ語るとイルヴェリナはニヤリとした笑みを返す。
「なるほど、ヴィーネ様はこの城に魔物はいないと思っていらっしゃるのですね。なるほど、なるほど。」
「…実際いないだろう?隅々まで私が確認したわけではないが、もし本当に凶悪な魔物がいるのであればあなたたちのようにか弱い女性が生き残ることができるはずないだろう。」
「仰りたいことは分かりますし、妥当な判断だと言えます。ですが、本当にそうでしょうか?…私はこの城で長い間眠っていたのです。そう本当に長い間。私の名前はイルヴェリナ。いかがです?どこかで聞いたことはないですか?王国の人間、ましてや騎士ともなると知っていても何らおかしく無いとは思うのですが。」
イルヴェリナの名前を聞いた瞬間、ヴィーネの顔は顔面蒼白となる。目の前でこの世の終わりが始まった時のような絶望の表情を浮かべ固まっている。
「どうやら知っていらっしゃるご様子ですね。アンネ様、いかがですか?自分が助けた存在が一体何者なのか知りたくありませんか?」
ヴィーネの反応に気を良くしたイルヴェリナはアンネリーゼへと語りかける。アンネリーゼとしても自分が解放してしまった存在が、こんな廃城を所持していた存在が何者なのか気になるところではあったので一も二もなく頷く。
「どうやらアンネ様も知りたいご様子ですので、私について知っていることを喋って見てはいかがですか、ヴィーネさん。」
「…ヴァンパイアの真祖、イルヴェリナ。神話にも登場する名前だ。太陽の神からその権能の1部を奪ったことで、ヴァンパイアでありながら日の光という弱点を克服している。他の弱点は確かにそのままだが、彼女に対して朝まで時間を稼ぐという対ヴァンパイア戦において最も効果の見込める作戦は意味が無い。他の弱点も高すぎる戦闘能力の隙を縫って狙うのはあまりにも無謀すぎる。そんな伝説上の化け物だ…。しかし!イルヴェリナは300程年前に討伐されたはずだ!王国の記録にそう残っている!」
「討伐された、ねぇ?そうね、正確には分からないけどここ数百年間眠っていたのは事実です。ですが私の主が私を起こしたので、だからこうして起きています。」
異性が見れば、いや同性であっても思わずどきりとしてしまう蕩けた笑みを浮かべアンネリーゼの方に目をやるイルヴェリナ。
ヴィーネは彼女が本物のイルヴェリナかどうかは別として、廃城の凶悪な魔物が彼女でありその彼女を目覚めさせ自身の配下として置いているのがアンネリーゼだと言うことを理解した。
「アンネリーゼ嬢…、君は一体何者なんだ…?」
顔は兜で隠れておりその思惑のうちを読み取ることはおろか、騎士の性別を読み取ることすら叶わない。
ゆったりとした、それでいて隙の無い足取りで騎士は廃城の中へと歩みを進める。
騎士は自身が思っていたほど寂れた様子のない廃城の内装に違和感を感じながら真っ直ぐに突き進み、やがて玉座の安置された謁見の間へとたどり着く。
玉座にはアンネリーゼが腰掛けており、目線はじっと騎士が謁見の間の扉を開けるその瞬間から騎士を捉えているようであった。その横にはイルヴェリナが佇み、騎士の来訪に対して丁寧に頭を下げる。
「これはどうも、王国の白騎士殿。魔物の闊歩する危険地帯の中をわざわざ御来場ありがとうございます。しかし、我が主とて暇な訳ではございません。なんの連絡もせずに急遽城を尋ねてくるのは少々不躾ではありませんか?あなたの人となりは私、存じ上げませんが騎士の品位というものが問われる自体になったとしてもおかしくはありませんよ。」
騎士の来訪自体はイルヴェリナが察知し気付いていた。突然の来訪とはいえ騎士に対して投げつけられた言葉はいささかやり過ぎのようにも見えたが、プライドの高い騎士とは思えぬ腰の低さで騎士は返答を返す。
「ここが貴殿らの居城であること、知らなかったがゆえに無礼な作法を取ってしまったこと、大変申し訳ない。言い訳にはならないが、以前からこの城は魔物共のそう住処となっており、とても人の住めるような環境ではないと聞かされていたために貴殿らのように住まれている方がいるとは思はなかったのだ。」
「突然の訪問をなされた理由はわかりました。ですが一体なんの目的でこの城にやってきたのですか。確かにあなたの言う通り、この辺り一体は強靭な魔物が多く一般人が立ち入って生きていられるような場所ではありません。この城は例外ではありますが…。とにかく、そんな物騒な噂を耳している上でなぜわざわざ訪れたのか、納得のいく説明をして欲しいところでございますね。」
騎士はそっと自分の被っている兜を外し、自身の素顔を顕にした。兜の中から現れた美しい金髪に凛とした強い意志を感じられる整った顔立ち。その顔にアンネリーゼは覚えがあった。
「私の名はヴィーネ。アンネリーゼ嬢、息災のようで何よりだ。あなたをこの地に追放する役目を負ったあの日以来だな。」
ヴィーネはアンネリーゼをこの廃城のある危険地帯まで送り届けた騎士の1人であり、アンネリーゼに廃城について教え少しばかりだが食料を渡してくれた人物でもある。化け物の伝承が伝わってはいるが外で過ごすよりは安全であろうと教えた廃城で、城主のような扱いを受けているのには驚いたが、何とか生き抜いてくれたようでヴィーネは安心した心地になった。
「そちらのメイドは私を王国の騎士と呼んだが、残念ながらそれは違う。私は騎士の位を返上してきたのだ。騎士として法を守る守護者として生きていると思っていたのだがな。思うように喋れない、疑いを自分の力で証言して晴らすことの出来ないアンネリーゼ嬢に非情な判断をくだす国に対して不信感を覚えてしまってな。」
物悲しげに語るヴィーネであったがすぐにその憂いを帯びた表情を振り払うと改めてアンネリーゼに向かって笑顔を見せた。
「それにしても…、噂というのはやはり当てにならないな。アンネリーゼ嬢が無事でいる所を見るにこの城に住むとされる凶悪な魔物もいなかったようだし、どこで出会ったのかは分からないが危険地帯と言われる中にも人が住んでいたようだしな。」
ヴィーネはイルヴェリナを横目に見つつ語るとイルヴェリナはニヤリとした笑みを返す。
「なるほど、ヴィーネ様はこの城に魔物はいないと思っていらっしゃるのですね。なるほど、なるほど。」
「…実際いないだろう?隅々まで私が確認したわけではないが、もし本当に凶悪な魔物がいるのであればあなたたちのようにか弱い女性が生き残ることができるはずないだろう。」
「仰りたいことは分かりますし、妥当な判断だと言えます。ですが、本当にそうでしょうか?…私はこの城で長い間眠っていたのです。そう本当に長い間。私の名前はイルヴェリナ。いかがです?どこかで聞いたことはないですか?王国の人間、ましてや騎士ともなると知っていても何らおかしく無いとは思うのですが。」
イルヴェリナの名前を聞いた瞬間、ヴィーネの顔は顔面蒼白となる。目の前でこの世の終わりが始まった時のような絶望の表情を浮かべ固まっている。
「どうやら知っていらっしゃるご様子ですね。アンネ様、いかがですか?自分が助けた存在が一体何者なのか知りたくありませんか?」
ヴィーネの反応に気を良くしたイルヴェリナはアンネリーゼへと語りかける。アンネリーゼとしても自分が解放してしまった存在が、こんな廃城を所持していた存在が何者なのか気になるところではあったので一も二もなく頷く。
「どうやらアンネ様も知りたいご様子ですので、私について知っていることを喋って見てはいかがですか、ヴィーネさん。」
「…ヴァンパイアの真祖、イルヴェリナ。神話にも登場する名前だ。太陽の神からその権能の1部を奪ったことで、ヴァンパイアでありながら日の光という弱点を克服している。他の弱点は確かにそのままだが、彼女に対して朝まで時間を稼ぐという対ヴァンパイア戦において最も効果の見込める作戦は意味が無い。他の弱点も高すぎる戦闘能力の隙を縫って狙うのはあまりにも無謀すぎる。そんな伝説上の化け物だ…。しかし!イルヴェリナは300程年前に討伐されたはずだ!王国の記録にそう残っている!」
「討伐された、ねぇ?そうね、正確には分からないけどここ数百年間眠っていたのは事実です。ですが私の主が私を起こしたので、だからこうして起きています。」
異性が見れば、いや同性であっても思わずどきりとしてしまう蕩けた笑みを浮かべアンネリーゼの方に目をやるイルヴェリナ。
ヴィーネは彼女が本物のイルヴェリナかどうかは別として、廃城の凶悪な魔物が彼女でありその彼女を目覚めさせ自身の配下として置いているのがアンネリーゼだと言うことを理解した。
「アンネリーゼ嬢…、君は一体何者なんだ…?」
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