黒と赤

もり

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赤②

月曜日、黒は出社しなかった。
9時のチャイムで自分のデスクに向かい、誰も座っていない隣の席を見る。
PCを開き、作業を開始する。
いつも通り作業をこなしてはいたが、心の中ではあの日の出来事を思い出した。
金曜日にあの出来事があって、土日の二日間で一応休めるから、出社する可能性もあるかなと思っていたのだが。
まあ、そりゃそうだよな・・・
がっかりしたような、ほっとしたような。
主のいない整えられた綺麗な机を、横目でちらりと見て、俺は仕事に集中しようとした。
が、そんなことできるはずもなく、ほとんど仕事が進まなかった。
たまに会社の先輩が「あれ、今日黒休みなんだ?」と声をかけられドキリとする。
「あーーー・・・はい、そうみたい、です・・・」
少し動揺してる俺を不思議そうに見てくる人もいたが、まさか金曜にあんな出来事があったとは思ってもないだろう。
特に不審がられることもなく、信じられないくらい会社はいつも通りだった。
たまに同僚と世間話をし、上司からは書類の期限を聞かれたりと、いつもと変わらない日常がそこにあった。
あれは、夢だったのかな、とも一瞬思った。
だが夢じゃない事は一番よく分かっている。
あいつ今何してんだろな・・・今週はもう来ないかも・・・それどころか数カ月来ない可能性も全然あるな・・・
他人事のように同情した。俺があいつの立場だったら絶対に会社来れないな。
・・・・・・最悪会社、辞めるかもしれねぇな
それはそれでいい気もした。あいつがここで働いてる限り、何食わぬ顔をして仕事を続けられる気がしなかった。
もっと最悪な可能性も、ふと頭をよぎる。
・・・・・・・・・・まさか・・・自殺・・・はしねえよ・・・な?
そこまでの事じゃねぇだろ・・・
そしてもう一つ、恐ろしい可能性にも気がつく
・・・・・・だれかに話してねえよな?
とたんに、周りの上司や同僚の様子が気になりだした。
心臓の音がだんだん大きくなる。
ちらちらと周りの様子を窺うが、皆特に変わりなく仕事をしているように見える。
いや、会社のやつに話してるとは限らない。
警察に話してるかも・・・
その瞬間、胸がドクンと大きく動いた。頭がくらくらする、冷や汗が止まらない。全身汗びっしょりになった。
どうして自分はその可能性を今まで考えなかったのか・・・どうしてあいつが誰にも言わないと決めつけてたのか。
もし、警察に、話してたら・・・会社をクビどころか、下手すりゃ捕まる、、社会的に俺は、終わる・・・
汗がデスクの上にぽたぽた落ちる。口の中はもうカラカラだ。
だ、大丈夫だ、大丈夫だろ
必死に心を安静に保とうと、都合の良い解釈をして、自分に言い聞かせる。

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