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6話 猫が住み始める②
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対面に彼が座ると、初老の執事とメイドが料理を運んで来た。料理はきらびやかな皿に似合わず庶民的だ。こんがり焼けた肉,豆と根菜のスープ、柔らかいパン。
健康的な食事に手を伸ばしそうになったが警戒心がそれを止めた。涼太の考えを察したエトワールは手を伸ばし、自分の皿と涼太の皿を入れ替えた。そのまま何も言わずに食べ始めた。それを見て涼太の警戒心は食事を許した。見た目通りの温かい味に涼太は思わず口元を緩めた。
「で?アンタは何なんだ?」
食べ始めて少しした頃、涼太がそう切り出した。エトワールは口のものを呑み込んでからそれに応えた。
「俺はエトワール・クロワデュシュド。この国の国王の弟だけど、もう王位継承権は放棄して大公になって~、今は王立学園の学園長をしているんだ~」
「大公ってなんだ?」
「男爵・子爵・伯爵・侯爵・公爵ってなってる貴族序列中で、公爵位のさらに上の身分のことだよ。まぁ実際は公爵とほぼ変わらないけどね~」
オーラのかけらもないエトワールは意外と高貴な人らしい。貴族のいない日本で育った涼太は実感が湧かず、生返事を返した。
「あ、そうそう。リョータのことだけど、俺が保護することになったから~」
「ふ~ん」
「ふ~ん、ってそれだけ?」
興味がないとでも言うように食べ進める涼太に、何かしらの反応を期待していたエトワールは拍子抜けだ。
「聖女様と同じように国王印の書類あるけど見とく~?」
「へふにいい(別にいい)」
もぐもぐしながら答える涼太に驚きと呆れが混じった表情を見せた。
「ごちそうさま」
先に食べ終えて席を立った涼太にエトワールは急いで残りの伝達事項を伝える。
「さっきの部屋、リョータの部屋だから自由に使って。あと、何か欲しいものあったら言って~」
「わかった。眠いからもう寝るわ」
来たばかりなのにスタスタと自分の家であるかのように、涼太は去って行った。エトワールは肝の据わった子だなぁと感心した。
○○○
エトワールの書斎。三面には彼の努力と知識力を示す本棚が広がり、そのせいで狭くも見える。幅の広い執務机には書類が4塔連なり、書類以外はよく片付いている。椅子は長時間座っても腰が痛くなりにくいように座面と背面は布張りだ。執務机の正面には2、3人掛けのソファが向かい合うように2台とその間にローテーブルが置かれている。
椅子に座っている部屋の主と執務机とソファなどの間に立っている2人の執事が話している。2人が着ている揃いの黒のスーツは身体に沿ったデザインでそれぞれの整ったシルエットを引き立たせている。白い手袋は主人に曇りがないことの象徴だ。リュシオルの髪には白が混じり始めたが、2人とも暗い茶色の髪とヘーゼルの瞳をしている。同じ服を着て同じ色を持っていても雰囲気は対照的だった。リュシオルは穏やかと言うのがぴったりで、涼太と同じくらいの年若い男は硬く石のようだ。
「王命によりリョータ・ハタは私が保護することになった」
「そうですか。騒がしくなりますね」
余韻の残る口調でリュシオルが言い、若い男はうなずいた。
「リョータにはポワーヴルに従者としてついてもらいたい。いいか?」
「かしこまりました」
ポワーヴルと呼ばれた若い男の低い声に、エトワールは頼むなと軽くうなずいた。
涼太の件でいくつか確認をした後、ポワーヴルに続いて退出するリュシオルは何もかもわかっているように微笑んだ。
「あまり無理はしないように。あなたはもう1人ではないのですよ」
「わかってるよ、リュシオル」
リュシオルは、はいと優しくうなずいた。執事と主人というより親と子のようだ。
1人になった書斎で、肩の力を抜いて椅子にもたれかかった。机に載っている手紙を取り、眺めた。兄である国王から返ってきた個人的な手紙には、リュシオルと同じように心配の言葉が長々と綴られている。
自分には心配してくれる人がいるのだと安心した。
健康的な食事に手を伸ばしそうになったが警戒心がそれを止めた。涼太の考えを察したエトワールは手を伸ばし、自分の皿と涼太の皿を入れ替えた。そのまま何も言わずに食べ始めた。それを見て涼太の警戒心は食事を許した。見た目通りの温かい味に涼太は思わず口元を緩めた。
「で?アンタは何なんだ?」
食べ始めて少しした頃、涼太がそう切り出した。エトワールは口のものを呑み込んでからそれに応えた。
「俺はエトワール・クロワデュシュド。この国の国王の弟だけど、もう王位継承権は放棄して大公になって~、今は王立学園の学園長をしているんだ~」
「大公ってなんだ?」
「男爵・子爵・伯爵・侯爵・公爵ってなってる貴族序列中で、公爵位のさらに上の身分のことだよ。まぁ実際は公爵とほぼ変わらないけどね~」
オーラのかけらもないエトワールは意外と高貴な人らしい。貴族のいない日本で育った涼太は実感が湧かず、生返事を返した。
「あ、そうそう。リョータのことだけど、俺が保護することになったから~」
「ふ~ん」
「ふ~ん、ってそれだけ?」
興味がないとでも言うように食べ進める涼太に、何かしらの反応を期待していたエトワールは拍子抜けだ。
「聖女様と同じように国王印の書類あるけど見とく~?」
「へふにいい(別にいい)」
もぐもぐしながら答える涼太に驚きと呆れが混じった表情を見せた。
「ごちそうさま」
先に食べ終えて席を立った涼太にエトワールは急いで残りの伝達事項を伝える。
「さっきの部屋、リョータの部屋だから自由に使って。あと、何か欲しいものあったら言って~」
「わかった。眠いからもう寝るわ」
来たばかりなのにスタスタと自分の家であるかのように、涼太は去って行った。エトワールは肝の据わった子だなぁと感心した。
○○○
エトワールの書斎。三面には彼の努力と知識力を示す本棚が広がり、そのせいで狭くも見える。幅の広い執務机には書類が4塔連なり、書類以外はよく片付いている。椅子は長時間座っても腰が痛くなりにくいように座面と背面は布張りだ。執務机の正面には2、3人掛けのソファが向かい合うように2台とその間にローテーブルが置かれている。
椅子に座っている部屋の主と執務机とソファなどの間に立っている2人の執事が話している。2人が着ている揃いの黒のスーツは身体に沿ったデザインでそれぞれの整ったシルエットを引き立たせている。白い手袋は主人に曇りがないことの象徴だ。リュシオルの髪には白が混じり始めたが、2人とも暗い茶色の髪とヘーゼルの瞳をしている。同じ服を着て同じ色を持っていても雰囲気は対照的だった。リュシオルは穏やかと言うのがぴったりで、涼太と同じくらいの年若い男は硬く石のようだ。
「王命によりリョータ・ハタは私が保護することになった」
「そうですか。騒がしくなりますね」
余韻の残る口調でリュシオルが言い、若い男はうなずいた。
「リョータにはポワーヴルに従者としてついてもらいたい。いいか?」
「かしこまりました」
ポワーヴルと呼ばれた若い男の低い声に、エトワールは頼むなと軽くうなずいた。
涼太の件でいくつか確認をした後、ポワーヴルに続いて退出するリュシオルは何もかもわかっているように微笑んだ。
「あまり無理はしないように。あなたはもう1人ではないのですよ」
「わかってるよ、リュシオル」
リュシオルは、はいと優しくうなずいた。執事と主人というより親と子のようだ。
1人になった書斎で、肩の力を抜いて椅子にもたれかかった。机に載っている手紙を取り、眺めた。兄である国王から返ってきた個人的な手紙には、リュシオルと同じように心配の言葉が長々と綴られている。
自分には心配してくれる人がいるのだと安心した。
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