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9話 みんなで②
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「さ、みんな揃ったことだし食べよう!」
エトワールの言葉と共に朝食が始まった。少しばかりの気まずさを感じながらも近くに座っていたエトワールやポワーヴルたちと話しながら順調に食べ進めた。
モワノーが作ったというほんのりとした甘みのあるデザートまで食べ終わり、少し先に食べ終わっていたエトワールとダイニングルームを出た。
涼太の部屋を通り過ぎた先にあるエトワールの部屋に連れてこられた。
「ご飯食べ終わったばかりなのに悪いんだけど、今から俺と王宮に行ってくれる~?」
これまでのエトワールの言動から断る気は特に起きなかった。
「急だな」
衣装部屋らしき小部屋で服を漁っているエトワールにそう返すと、ごめんねと真剣に謝られた。謝罪を求めていたわけではない涼太は何と返していいかわからなかった。
「これでいいかな~」
小部屋から出て来たエトワールに渡された服に言われるがまま着替えた。着慣れない高そうな服に手間取っている間にエトワールは着替えを済ませていた。
紺色のスリーピーススーツに濃い灰色のネクタイ。近くで見るとスーツには細かい模様が入っていて決して安物には見えない。先の細い革靴はよく手入れされている。
「そんな服着てると本当に偉い人みたいだな」
「ちゃんと偉い人なんだけど~…」
そう言いながら涼太の支度を手早く手伝ってくれた。
「リョータ、これを髪に結んでくれな~い?」
「下手でも文句言うなよ」
くすんだ黄色のリボンを受け取り、彼の髪を掬うとその感触に声が漏れた。それなりの長さがあるのに枝毛はなく、根本から毛先までツヤがある。サラサラと溢れる髪の扱いに困りながら、わからないなりに結んだ。
「…できたぞ」
「ありがと~。じゃ、行こっか」
ろくに確認もせずに、エトワールは玄関へ向かった。無駄に広い玄関から外へ出ると、馬車とリュシオルが待っていた。
この世界に来て初めて見る外に、涼太は忙しなく辺りに目をやった。周囲には太い木々が生い茂っていて、郊外という言葉がしっくりくる。目を凝らすと、少し離れたところに城っぽいものが見える。それ以外には今までよく見た高層ビルのような高い建物も一軒家ほどの建物もない。おかげで、青い空がとても広い。視線を下ろすと、左右には木の緑と花の優しい色があふれる美しい庭があり、正面には石畳が門まで伸びている。振り返れば、豪邸とも言うべき建物が建っている。別世界の景色に涼太は口を開け、エトワールを見た。
(ガチで金持ちなのかよ…)
「お待ち…して、ました」
玄関で2人を待っていたリュシオルはエトワールを見て、言葉を詰まらせた。小さい子どもでも見るような優しい笑顔をたたえる彼に、自身の姿を確認していないエトワールはどうしたの、と返した。
「どうして今日は愛らしくしたのですか?」
「…え?」
きょとんとして聞き返すエトワールに、リュシオルはちょっと待っていてくださいと言い置いて、どこかへ行ってしまった。
しばらくして戻って来たリュシオルは、持って来た手鏡をエトワールに渡した。自身の頭を確認したエトワールは目を合わせようとしない涼太に向き直った。
「リョータくぅん…、これ、何?」
エトワールの頭には、少し不恰好で大きな蝶々結びがついている。動くたびに揺れて、成人男性には可愛いらし過ぎる。
「…文句は聞かねぇって言った」
まずいかなぁ、とは涼太も思っていた。だが、彼にできる結び方は1つしかなかったのだ。
涼太は下を向き、もにゅと口を尖らせた。その怒られたが納得いかない子どものような反応にエトワールは思わず噴き出した。
「あははっ。まぁいいよ~、これはこれで可愛いし」
蝶々を揺らして、エトワールは涼太と馬車に乗り込んだ。リュシオルが御者台に乗り、馬車は動き出した。
エトワールの言葉と共に朝食が始まった。少しばかりの気まずさを感じながらも近くに座っていたエトワールやポワーヴルたちと話しながら順調に食べ進めた。
モワノーが作ったというほんのりとした甘みのあるデザートまで食べ終わり、少し先に食べ終わっていたエトワールとダイニングルームを出た。
涼太の部屋を通り過ぎた先にあるエトワールの部屋に連れてこられた。
「ご飯食べ終わったばかりなのに悪いんだけど、今から俺と王宮に行ってくれる~?」
これまでのエトワールの言動から断る気は特に起きなかった。
「急だな」
衣装部屋らしき小部屋で服を漁っているエトワールにそう返すと、ごめんねと真剣に謝られた。謝罪を求めていたわけではない涼太は何と返していいかわからなかった。
「これでいいかな~」
小部屋から出て来たエトワールに渡された服に言われるがまま着替えた。着慣れない高そうな服に手間取っている間にエトワールは着替えを済ませていた。
紺色のスリーピーススーツに濃い灰色のネクタイ。近くで見るとスーツには細かい模様が入っていて決して安物には見えない。先の細い革靴はよく手入れされている。
「そんな服着てると本当に偉い人みたいだな」
「ちゃんと偉い人なんだけど~…」
そう言いながら涼太の支度を手早く手伝ってくれた。
「リョータ、これを髪に結んでくれな~い?」
「下手でも文句言うなよ」
くすんだ黄色のリボンを受け取り、彼の髪を掬うとその感触に声が漏れた。それなりの長さがあるのに枝毛はなく、根本から毛先までツヤがある。サラサラと溢れる髪の扱いに困りながら、わからないなりに結んだ。
「…できたぞ」
「ありがと~。じゃ、行こっか」
ろくに確認もせずに、エトワールは玄関へ向かった。無駄に広い玄関から外へ出ると、馬車とリュシオルが待っていた。
この世界に来て初めて見る外に、涼太は忙しなく辺りに目をやった。周囲には太い木々が生い茂っていて、郊外という言葉がしっくりくる。目を凝らすと、少し離れたところに城っぽいものが見える。それ以外には今までよく見た高層ビルのような高い建物も一軒家ほどの建物もない。おかげで、青い空がとても広い。視線を下ろすと、左右には木の緑と花の優しい色があふれる美しい庭があり、正面には石畳が門まで伸びている。振り返れば、豪邸とも言うべき建物が建っている。別世界の景色に涼太は口を開け、エトワールを見た。
(ガチで金持ちなのかよ…)
「お待ち…して、ました」
玄関で2人を待っていたリュシオルはエトワールを見て、言葉を詰まらせた。小さい子どもでも見るような優しい笑顔をたたえる彼に、自身の姿を確認していないエトワールはどうしたの、と返した。
「どうして今日は愛らしくしたのですか?」
「…え?」
きょとんとして聞き返すエトワールに、リュシオルはちょっと待っていてくださいと言い置いて、どこかへ行ってしまった。
しばらくして戻って来たリュシオルは、持って来た手鏡をエトワールに渡した。自身の頭を確認したエトワールは目を合わせようとしない涼太に向き直った。
「リョータくぅん…、これ、何?」
エトワールの頭には、少し不恰好で大きな蝶々結びがついている。動くたびに揺れて、成人男性には可愛いらし過ぎる。
「…文句は聞かねぇって言った」
まずいかなぁ、とは涼太も思っていた。だが、彼にできる結び方は1つしかなかったのだ。
涼太は下を向き、もにゅと口を尖らせた。その怒られたが納得いかない子どものような反応にエトワールは思わず噴き出した。
「あははっ。まぁいいよ~、これはこれで可愛いし」
蝶々を揺らして、エトワールは涼太と馬車に乗り込んだ。リュシオルが御者台に乗り、馬車は動き出した。
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