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簡単ではないけれど
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予感はあったが再会の僅か数日後。11月を迎えるのを待たずに、憬が息を引き取ったと修から短いメッセージが届いた。
連絡を受けた龍弥は修が心配になり、すぐにでも駆け付けたくて仕事を放り出して電話を掛けると、修は大人しくそれを受け入れてくれた。
街がすっかりクリスマスイルミネーションに染まる中、憬の49日法要を済ませた修は、龍弥の再三にわたる催促を受け入れる形で家を引き払って龍弥の部屋に引っ越してきた。
「本当に荷物少ないよな」
普段使っていない物置になっていた玄関脇の部屋に、修の荷物は全て運び入れた。
家具は処分してしまったので衣類が殆どの段ボールを開けると、適当にハンガーに掛けてクローゼットに吊るしていく。
「だから休んでまで手伝いは良いって言ったじゃないか」
パソコンやプリンターを設置しながら、裏で絡まるコードを器用に纏めると、修はデスクの上にスイッチ式の延長コードを固定して満足そうにそれを眺める。
「なー。そんな感じだな。やっぱ後で店覗きに行くかな」
次の段ボールを開けると、部屋の様子を見渡して龍弥は確かに必要なかったと呟く。
「僕が住んでたマンションに何度も来たじゃないか。どう考えても手伝いが要るほどの荷物はないって分かるだろうに」
「まあ、そうだけど。いいじゃん別に。人手があった方が片付くの早いんだし」
「確かに助かるけど、このところ憬のことでたくさん仕事を休ませたから……」
どこか弱々しい声で修が肩を落とす。
「世話になった前のオーナーだってのは周知のことだ。俺だって恩人に泥掛けるようなことはしたくないから手伝っただけで、修から礼を言われることじゃない」
デスクには三人で撮ったあの日の写真が飾られている。
「目の前で痴話喧嘩すんなって笑われるぞ」
写真立てを顎で指すと、龍弥は笑ってさっさと片付けようぜと作業を再開する。その隣にやってきて修が苦笑いでそうだねと呟くと、二人で残りの段ボールの荷物を全て片付けた。
「さて。なんだかんだ片付いたじゃないか。じゃあ俺は店に顔出してくるわ」
「今から出るのかい?ご飯はどうするの」
「んー。店の状況見て考えるけど、仕事に行くなら外で食うかな」
「そうか。そうだよね」
言葉では納得したそぶりを見せるクセに、修は龍弥のニットの裾を掴んで離そうとしない。
「なんだよ。居て欲しかったらそう言えよ」
修の腰を抱き寄せると、グッと近付いた距離で顔を見つめながら龍弥が囁く。
「でも、君は仕事だろ」
「その手の可愛いワガママなら大歓迎だ。言えよ」
「……行かないでここに居てくれないかい」
「はいよ。ご褒美な」
チュッとリップ音を立てて修の唇を攫うと、グリグリと股間を押し当ててふざけながら楽しそうに笑う。
啄むキスを繰り返しながらリビングに移動して、ソファーで寛ぎながら夕飯はなににするか決めあぐねていると、どうせ買い出しに出るならたまには外食しようと話がまとまった。
連絡を受けた龍弥は修が心配になり、すぐにでも駆け付けたくて仕事を放り出して電話を掛けると、修は大人しくそれを受け入れてくれた。
街がすっかりクリスマスイルミネーションに染まる中、憬の49日法要を済ませた修は、龍弥の再三にわたる催促を受け入れる形で家を引き払って龍弥の部屋に引っ越してきた。
「本当に荷物少ないよな」
普段使っていない物置になっていた玄関脇の部屋に、修の荷物は全て運び入れた。
家具は処分してしまったので衣類が殆どの段ボールを開けると、適当にハンガーに掛けてクローゼットに吊るしていく。
「だから休んでまで手伝いは良いって言ったじゃないか」
パソコンやプリンターを設置しながら、裏で絡まるコードを器用に纏めると、修はデスクの上にスイッチ式の延長コードを固定して満足そうにそれを眺める。
「なー。そんな感じだな。やっぱ後で店覗きに行くかな」
次の段ボールを開けると、部屋の様子を見渡して龍弥は確かに必要なかったと呟く。
「僕が住んでたマンションに何度も来たじゃないか。どう考えても手伝いが要るほどの荷物はないって分かるだろうに」
「まあ、そうだけど。いいじゃん別に。人手があった方が片付くの早いんだし」
「確かに助かるけど、このところ憬のことでたくさん仕事を休ませたから……」
どこか弱々しい声で修が肩を落とす。
「世話になった前のオーナーだってのは周知のことだ。俺だって恩人に泥掛けるようなことはしたくないから手伝っただけで、修から礼を言われることじゃない」
デスクには三人で撮ったあの日の写真が飾られている。
「目の前で痴話喧嘩すんなって笑われるぞ」
写真立てを顎で指すと、龍弥は笑ってさっさと片付けようぜと作業を再開する。その隣にやってきて修が苦笑いでそうだねと呟くと、二人で残りの段ボールの荷物を全て片付けた。
「さて。なんだかんだ片付いたじゃないか。じゃあ俺は店に顔出してくるわ」
「今から出るのかい?ご飯はどうするの」
「んー。店の状況見て考えるけど、仕事に行くなら外で食うかな」
「そうか。そうだよね」
言葉では納得したそぶりを見せるクセに、修は龍弥のニットの裾を掴んで離そうとしない。
「なんだよ。居て欲しかったらそう言えよ」
修の腰を抱き寄せると、グッと近付いた距離で顔を見つめながら龍弥が囁く。
「でも、君は仕事だろ」
「その手の可愛いワガママなら大歓迎だ。言えよ」
「……行かないでここに居てくれないかい」
「はいよ。ご褒美な」
チュッとリップ音を立てて修の唇を攫うと、グリグリと股間を押し当ててふざけながら楽しそうに笑う。
啄むキスを繰り返しながらリビングに移動して、ソファーで寛ぎながら夕飯はなににするか決めあぐねていると、どうせ買い出しに出るならたまには外食しようと話がまとまった。
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