385 / 428
2
32
しおりを挟む
ゆずは、魚の下で立ち止まったまま、しばらく呆然としていた。
「・・・そうだ!元のところに戻れば、きっと明衣ちゃんたちも探してくれてるはず」
と顔を上げるゆず。
「あれ?私、どっちから来たんだっけ」
魚の写真を撮るのに夢中になっていたゆずは、自分が来た方向を忘れてしまっていた。
キョロキョロと通りを見回したのだが、まるで思い出すことができない。
「あっ、お花屋さん!・・・は見えない。あとは何見たっけ・・・」
スマホの画像を見ることができない今、ゆずはほんとんどアニメのシーンしか思い出せず、現実と一致させることもできなかった。
「ど、どうしよう・・・」
ゆずの前を何人もの人が通り過ぎていくのだが、何と声をかけていいのかもわからず、ゆずはただキョロキョロするだけだった。
「明衣ちゃん・・・さいちゃん・・・」
不安になったゆずは下を向いてしまった。
「大和!こっちでいいんだよね?」
明衣は走りながら大和に尋ねた。
「あ、ああ。そのまままっすぐ!次の信号を左」
「わかった!」
「待ってよ!はぁ・・はぁ・・・私も迷子になっちゃよ」
しばらく走り続けて、なみもりは疲れてしまっていた。
「ああん。急いでなみもり!」
「わかってるけど・・・無理」
ついに立ち止まってしまった。
なみもりの回復を待ってまた走り出すと、明衣たちはやっとのことでアーケードーの入り口を見つけることができた。
「はぁ・・・はぁ・・・ここ、だね」
「ああ」
「はぁ・・・あっ、あれ!」
なみもりが店の上の方を見上げた。
「ゆずいたの⁉︎」
「ごめん、そうじゃなくて。ゆずの好きなアニメのポスター・・・」
「・・・そっか。じゃあやっぱりここにいる可能性高いね」
「明衣。俺は先にアーケードーの奥まで行くから、二人は店とか脇道とか見ながら来てくれるか?」
「そうだね。あんまり時間かけてると、ゆずがどこか別のところに行っちゃうかもだし」
大和の提案に明衣が頷いた。
「ああ。じゃあ俺行くから」
「お願い、大和!」
大和はアーケードーの中を走っていった。
「なみもり、大丈夫?」
「うん・・・もうちょっと。はぁ、はぁ・・・」
なみもりは、膝に乗せていた手を離した。
「ごめん、いいよ」
「あんたは左側ね。私は右見てくから」
「うん」
息を落ち着かせた二人は、店の中を覗き込みながら歩き始めた。
大和は、左右を見回し人を避けながらどんどん走っていく。
「ゆずちゃん、動かないでいてくれよ」
明衣のうろたえ振りを気にした大和は、こんな時こそ自分が頑張らねばと気合を入れ直した。
後から追う二人は・・・
「なみもり、そっちはどう?」
「・・・いないみたい」
「そう・・・」
明衣は心配そうな表情で、なみもりと顔を見合わせた。
・・・彩香たちはタクシーで、出町商店街に向かっていた。
「ゆず、大丈夫かな?」
「もう一度電話してみるか?」
「うん・・・」
彩香はゆずに電話をかけた。
「やっぱり電池切れてるって」
「そっか・・・」
「ゆず・・・」
彩香は心配そうに窓から外を見た。
「・・・そうだ!元のところに戻れば、きっと明衣ちゃんたちも探してくれてるはず」
と顔を上げるゆず。
「あれ?私、どっちから来たんだっけ」
魚の写真を撮るのに夢中になっていたゆずは、自分が来た方向を忘れてしまっていた。
キョロキョロと通りを見回したのだが、まるで思い出すことができない。
「あっ、お花屋さん!・・・は見えない。あとは何見たっけ・・・」
スマホの画像を見ることができない今、ゆずはほんとんどアニメのシーンしか思い出せず、現実と一致させることもできなかった。
「ど、どうしよう・・・」
ゆずの前を何人もの人が通り過ぎていくのだが、何と声をかけていいのかもわからず、ゆずはただキョロキョロするだけだった。
「明衣ちゃん・・・さいちゃん・・・」
不安になったゆずは下を向いてしまった。
「大和!こっちでいいんだよね?」
明衣は走りながら大和に尋ねた。
「あ、ああ。そのまままっすぐ!次の信号を左」
「わかった!」
「待ってよ!はぁ・・はぁ・・・私も迷子になっちゃよ」
しばらく走り続けて、なみもりは疲れてしまっていた。
「ああん。急いでなみもり!」
「わかってるけど・・・無理」
ついに立ち止まってしまった。
なみもりの回復を待ってまた走り出すと、明衣たちはやっとのことでアーケードーの入り口を見つけることができた。
「はぁ・・・はぁ・・・ここ、だね」
「ああ」
「はぁ・・・あっ、あれ!」
なみもりが店の上の方を見上げた。
「ゆずいたの⁉︎」
「ごめん、そうじゃなくて。ゆずの好きなアニメのポスター・・・」
「・・・そっか。じゃあやっぱりここにいる可能性高いね」
「明衣。俺は先にアーケードーの奥まで行くから、二人は店とか脇道とか見ながら来てくれるか?」
「そうだね。あんまり時間かけてると、ゆずがどこか別のところに行っちゃうかもだし」
大和の提案に明衣が頷いた。
「ああ。じゃあ俺行くから」
「お願い、大和!」
大和はアーケードーの中を走っていった。
「なみもり、大丈夫?」
「うん・・・もうちょっと。はぁ、はぁ・・・」
なみもりは、膝に乗せていた手を離した。
「ごめん、いいよ」
「あんたは左側ね。私は右見てくから」
「うん」
息を落ち着かせた二人は、店の中を覗き込みながら歩き始めた。
大和は、左右を見回し人を避けながらどんどん走っていく。
「ゆずちゃん、動かないでいてくれよ」
明衣のうろたえ振りを気にした大和は、こんな時こそ自分が頑張らねばと気合を入れ直した。
後から追う二人は・・・
「なみもり、そっちはどう?」
「・・・いないみたい」
「そう・・・」
明衣は心配そうな表情で、なみもりと顔を見合わせた。
・・・彩香たちはタクシーで、出町商店街に向かっていた。
「ゆず、大丈夫かな?」
「もう一度電話してみるか?」
「うん・・・」
彩香はゆずに電話をかけた。
「やっぱり電池切れてるって」
「そっか・・・」
「ゆず・・・」
彩香は心配そうに窓から外を見た。
0
あなたにおすすめの小説
プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?
九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。
で、パンツを持っていくのを忘れる。
というのはよくある笑い話。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
付き合う前から好感度が限界突破な幼馴染が、疎遠になっていた中学時代を取り戻す為に高校ではイチャイチャするだけの話
頼瑠 ユウ
青春
高校一年生の上条悠斗は、同級生にして幼馴染の一ノ瀬綾乃が別のクラスのイケメンに告白された事を知り、自身も彼女に想いを伝える為に告白をする。
綾乃とは家が隣同士で、彼女の家庭の事情もあり家族ぐるみで幼い頃から仲が良かった。
だが、悠斗は小学校卒業を前に友人達に綾乃との仲を揶揄われ、「もっと女の子らしい子が好きだ」と言ってしまい、それが切っ掛けで彼女とは疎遠になってしまっていた。
中学の三年間は拒絶されるのが怖くて、悠斗は綾乃から逃げ続けた。
とうとう高校生となり、綾乃は誰にでも分け隔てなく優しく、身体つきも女性らしくなり『学年一の美少女』と謳われる程となっている。
高嶺の花。
そんな彼女に悠斗は不釣り合いだと振られる事を覚悟していた。
だがその結果は思わぬ方向へ。実は彼女もずっと悠斗が好きで、両想いだった。
しかも、綾乃は悠斗の気を惹く為に、品行方正で才色兼備である事に努め、胸の大きさも複数のパッドで盛りに盛っていた事が発覚する。
それでも構わず、恋人となった二人は今まで出来なかった事を少しずつ取り戻していく。
他愛の無い会話や一緒にお弁当を食べたり、宿題をしたり、ゲームで遊び、デートをして互いが好きだという事を改めて自覚していく。
存分にイチャイチャし、時には異性と意識して葛藤する事もあった。
両家の家族にも交際を認められ、幸せな日々を過ごしていた。
拙いながらも愛を育んでいく中で、いつしか学校では綾乃の良からぬ噂が広まっていく。
そして綾乃に振られたイケメンは彼女の弱みを握り、自分と付き合う様に脅してきた。
それでも悠斗と綾乃は屈せずに、将来を誓う。
イケメンの企てに、友人達や家族の助けを得て立ち向かう。
付き合う前から好感度が限界突破な二人には、いかなる障害も些細な事だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる