少年と銀貨  第一章:始まりの世界

五十嵐 昌人

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第一章:始まりの世界 ”チーム対抗戦” 

♯125.チーム対抗戦の始まり㊼ バトル開始2 ケンカの続き2

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 鈴木が立ち上がりの動きを見せると気合いを入れ
る為に両頬にビンタを当てて、立ち上がりきるのを
待つ堀部。
「じゃあ、行きますか?」
「望むところだ」
 鈴木の合図で試合序盤に使われる事が多いレスラ
ーがリング中央でガッチリと組み合う”ロックアップ”
を始める。お互い相手の首の後ろを引き込み至近距
離での攻防戦なので初めて見る人には、特に新鮮に
映ることが多い。

 力と力のぶつかり合いは迫力があり、両者の足に
力が込められているのがハッキリと分かるハの字の
態勢になっていた。

 この様子を巨大モニターで観ていた明石が、霞実
先生の隣に移動して口を開く。
「手四つからロックアップって順番が違う気がする
んですけど、どう思います?」
「そうかな? 子供なんだから今はそんな事考える
必要は無いと私は思うわ。変に大人の顔色をうかが
う子供が増えても寂しいしね」
「先生は優しいんですね」
「それは保険医だからさ。白衣の天使って奴じゃん」
「自分で言いますか。ソレを……」
 霞実は腹を抱えて笑った後に言葉を続けた。

「今観るとさ。体重を掛けた八の字の態勢が解けて、
ドッシリとした足に根を生やした感じで落ち着いて
るよね!?」
「それが、どうかしましたか?」
 霞実の質問の意図するところが分からずに質問を
質問で返す明石。
、魂のロックアップをしたかったんだって」
「あっあーっ。あの相手の力量を測定する技ですか」
「明石君って意外と鈍感だよね?」
(あなたにだけは言われたくないと思う明石) 
「いやいや、たまたま見落としただけですよ。まぁ
良い訳すると空手家なんでプロレス知識は少ないと
思いますけど」
 
「確かに名古屋泊まりに来た時、正拳突きとか後ろ
回し蹴りの話をしてたかも。ちなみにフルコン?」
「あっはい。フルコンタクト空手です」
「じゃぁ今度、一緒に稽古しよっか」
「ホントっすか?」
 目が点になった後、天にも昇る気持ちになる明石。
「大山チームが勝ったらだけどねっ」
「それなら全力で応援します! 約束ですよ」
 はにかんだ笑顔にズキュンとなる明石だった。



*フルコン空手=フルコンタクト空手。直接打撃制
を採用した空手。寸止め空手の対義語でもある。
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