少年と銀貨  第一章:始まりの世界

五十嵐 昌人

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第一章:始まりの世界 ”自己啓発編”

69.交渉=ファースト・アタック①

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「ピッピッ」
 教室の最後尾さいこうびにある自身の席に切り替わった。机には
誰がやったか不明なタカフミの名前がカタカナで彫られ
ていた。名前が書いてあるだけなので騒ぐ必要もないと
担任の先生には報告していない。

 ホームルームの終了を告げるチャイムが鳴ると同時に
殆んどの生徒は、部活へと外へ出て行く中、タカフミと
1人の男子だけが残っていた。タカフミは父親から友達
集めの話を聞かされていた時から、一番最初に声を掛け
て仲間に入って貰う人物をじっくりと考えていた。そこ
からみちびき出された結論けつろんはクラスで二番目に頭が良い男子
で城ヶ崎ミサトが来るまで家が御金持ちランキング1位
の地位に君臨くんりんしていたイケメン君だ。

 タイミングを見計らい最前列にいる男子に声を掛けた。
哀川あいかわ君。ちょっと話があるんだけど良いかな?」
「誰よ?」
 声に聞き覚えもなく、姿が見えない相手からの声に少
戸惑とまどいながらも首をひねって相手の存在を確認する哀川。
「何だよ。大山くんか。おどかすなよ」
「ごめん。二人っきりで話したい事があったから待って
たんだ」
「そっか。まぁ新学期始まって校長からの特例が全校生
徒に知れ渡ったんだから何かと不安になるよな」
「うん。そうなんだ。で突然なんだけど僕と友達になっ
て色々と協力して欲しいんだ!」
 目をキラキラ輝かせて見つめるタカフミ。
「いきなり、直球だな。変な小細工こざいくしてくる奴より信用
できるけどさ……。タカフミくんも座ったら」
 哀川はタカフミのキラキラした視線を全て受け止める
自信は無かったが椅子の背もたれを正面にする格好に座
りなおして話を聞く体勢をとった。
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