少年と銀貨  第一章:始まりの世界

五十嵐 昌人

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第一章:始まりの世界 ”自己啓発編”

70.交渉=ファースト・アタック②

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「話を聞いてくれるのは凄く嬉しい。やっぱり、哀川君
に一番最初に声を掛けて良かったよ」
「お世辞せじは良いから、どうして俺を最初に選んだ?」
「僕は人間観察かんさつが趣味みたいな所があって頭脳でも運動
でもトップに立てる実力がそなわってるのにトップ下に甘
んじているのは何か別の理由があると思ってたんだ」
 哀川はタカフミが何かを観て来たかのように話す喋り
方に腕組みを始める。
「なるほど。それで何が理由か分かったのか?」
「あくまで仮説かせつだけどトップに立ってしまったら嫌でも
目立つし、あまり注目を浴びたく無かったんだと思う。
 一番の理由はギリギリで競い合う好敵手ライバルが欲しくて、
でも現実には見合うだけの人物が居らず物足りなさを感
じてるから毎日、部活に入らずに帰宅する日々を繰り返
してる気がしてたんだ。もちろん帰宅部何てのは基本的
に許されないんだけど学園への寄付金額が最多な御子息
の意見はすんなりと通ったと。もちろん仮説だけどね」
 この辺りまで来ると背もたれに両肘りょうひじを乗せ中央にあご
乗せて前のめりになって聞き入っている哀川がいた。

「仮説にしては凄い観察眼かんさつがんだ。授業中に窓をぼーっと眺
めていたとしても普通はそこまで辿り着かないぜ。新し
い超能力か何かか?」
「って事はやっぱり正解だって認めてる事になるね!」
「あぁ、やる気スイッチが入る物が見付からなくて学園
生活が退屈たいくつで仕方がない位だ」
「それなら、やっぱり一緒に行動した方が良いと思う」
「まだ具体的な話は見えてこないけど、そんな交渉で人
納得なっとくすると思ってるのか?」
「でも最初の時よりは興味を持ってるよね?」
「質問を質問で返すのも流行ってるのか? まぁ興味は
少しある」

「哀川君の場合は未だ詳しくは説明出来ないけど友達を
25人集めて署名して貰うクエストがあって、どうした
みんなで楽しみながらきそえるのか考えたら1チーム五人を
代表として競技きょうぎして負けた方が署名、つまりサインする
イベントを学生間で流行らせようと思ってるんだ」
「成程、競技に参加するチーム内から各5人をセレクト
するって意味でチームの上限は決めないって事か?」
「さすが、秀才しゅうさい。話を理解するのが早い。チーム対抗戦たいこうせん
だね! 競技によってはギャラリーも増えるし、観戦かんせん
て一緒に興奮こうふんを味わって貰いたいねらいもあるんだ」
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