少年と銀貨 第一章：始まりの世界

第一章：始まりの世界 ”準備運動編”

♯６６．かけっこバトル⑱ 立花マイカの名案１ （改）

　立花はスタートの位置に着いている二人の準備運動が
終わったのを確認すると真顔になって声を掛けた。
「二人とも準備は良い？」
「僕は構わないよ」
　堀部は注目の集まる中、期待されている事が何よりも
嬉しくて気持ちに張りが出ている。
「あぁ、もちろん」
　堀部とは対照的に肩に力が入っている陸城。

「位置に付いて。よーいっドン！」
　立花からのスタート合図が終わると勢いよく飛び出
した二人。ロケットスタートに成功した堀部が先行し
て後に陸城が続く展開となった。

　観客は、堀部の速さに圧倒されてはいたが陸上部の
期待の星と言われてる相手に逃げ切りが通用するとま
では思っていなかった。そんな中、タカフミは立花に
近寄って先程、仕入れた情報を耳打ちした。
「ふぅーん。陸城くんと牧村くんってお嬢様タイプが
好きなんだね。城ヶ崎さんなら、さっき見掛けたから
電話で呼び出せるよ」
「ここに来てたんだ？」
「あの人は家で大人しくしてるタイプじゃないよ」
「何かアイデアはある？」
「うん。良い事、思い付いたわ。今日は催眠術を施し
ていないし、外でのイベントだから確実に男子の弱点
を付けるし……」
「何の話をしてるの？」
「こっちの話よ。転ばなければこっちの勝ちは揺るが
ないと思うわ」
「それは頼りになるよ」
「えぇ任せといて。ゴール付近に呼び出すわ」
「具体的に作戦はあるの？」
「動揺されても困るから詳しくは言えないけど会話を
続けてもらえば問題ないわ」
　立花が参加した理由に清武から直接指導して貰える
事になった御礼を早い時期にしたかったのだ。他には
宮間がタカフミにトラウマを与えてないかも心配にな
っていたのでタカフミから笑顔を引き出したかったの
もあった。

「あぁ、分かった。それで勝ちが動かないんなら指示
通りにするし作戦内容は聞かないよ」
「私を信じてくれてありがとうね。その方が確実よ。
このイベントは、成功させたいと思ってるから私も
とっても楽しみよ」
　立花の顔が小悪魔の微笑みに見えたタカフミだった。