黒庭 ~閉ざされた真実~

五十嵐 昌人

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捜査最終日

123. 十一日目(謹慎三日)、木島課長の自殺の真相

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「そうそう、大人しくしてれば手荒な事は、しないと約束しよう。
一つ、補足しておく事があったよ。停車中のオートマ車でシフトレ
バーを動かす時の制約があってね。P(パーキング)に入れたまま
停車している場合に次にD(ドライブ)に入れようとする時は必ず
ブレーキペダルを踏まないとギアチェンジ出来ないんだよ。そこで
俺は事故が起きる二週間前から隆とドライブに出かけて平坦な道の
時はなるべくN(ニュートラル)に入れた方が燃費が良くなるから
絶対試した方が良いと長々と説明した訳だ。Nからならブレーキペ
ダルを踏まなくてもシフトレバーが動かせてギアチェンジできるか
ら楽だとも話したさ。それに娘のプレゼントの好みを私が教えると
言って呼び出したから念入りに聞いていた日だったんじゃないかな」
 そこまで話すと一旦、回転椅子から立ち上がり背もたれを前にし
てから、それを抱きしめるように着席した。

「前の話の続きだが借金の立て替えは誰がしていると思う? 姉は
元々、今が楽しければ良い楽観主義だったから貯蓄はない。養子に
入るまでの愛里は姉の借金の利子を返済するのに、給料の殆んどを
工面してたんだ。なので食事も週に一回だけしか贅沢できなかった
そうだ。お金目的なら養子に入った時点で生命保険という手段も有
りだろうが、あいにく俺はお金には困っていない。製薬会社での俺
の仕事は中折れに効く精力剤だ。簡単に言えば勃起薬だな。40代
以上の顧客で毎年黒字を維持している。未だ未だ現役でいたいとい
う高齢者の常連客も居るくらいだ。泣いて喜んだ客もいるくらいだ
ぜ。人助けになっていると思わないか?」
「……」

「お金の代わりに隆に身体で返して貰っているんだよ。でもね、人
はいつか飽きてしまうものなんだ。だから二人目が欲しいと黒沢に
頼んだんだよね。そしたら連れてきたのがバリバリのエリートで、
相棒の木島課長だったって訳さ。それはそれは興奮したよ。エリー
トの顔が苦痛に歪む姿を拝めるかもしれないんだからね~。でも、
彼は私の物にはならなかった。身の危険を察知した彼は警官殺しの
事件対策で拳銃を所持していた黒沢の拳銃を抜き取って素早く安全
装置を外し、今も忘れられない言葉を放ってね。こう言ったんだ。
』と言って銃口を口に、
咥え引き金を引いたよ。”ズドン”という音が今も耳に残っている。
恐らく、その場に居た黒沢も同じだろう。柄にも無く二人で呆然と
して、それから私は泣いたんだ。あんなに泣いたのは確か子供の時、
父親にねだって買って貰った超合金が壊れた時、以来だったと思う。
これが君が知りたかった木島課長の自殺についてだ。黒沢には二人
目を紹介出来なかったペナルティとして疑いの晴れた拳銃と手錠を
頂いたがな。隆の手錠の痕は黒沢が持っていた品物だよ。そうそう、
拳銃の音が外に漏れなかったのかって言いたいんだろうが、この部
屋は室内射撃で使われている特殊な防音壁を施してある。現に今、
大雨が降っているにも関わらず全く聞こえないだろう!? 君が良
く見てる番組の天気予報士も金で買収して雨が降る時刻の時間を早
めにして貰ったよ!」
 庭村は雨音を聞かせる為に部屋のドアを開けた。
「ザッザーザーッ」
(この世には目的達成の為ならば手段を撰ばない人種が複数居る)
 後藤は真実を伝える事が必ずしも遺族や残された者を救える事で
は無い事を身をもって経験した。何故、ありがとうと言えたのかは
今の自分には到底理解出来なかったが特別プライドが高くもないか
らこそ、生にしがみついてやろうと思った。

 
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