黒庭 ~閉ざされた真実~

五十嵐 昌人

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捜査最終日

注意:87. 十一日目(謹慎三日)、山城の告白⑥

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 煙草を吸い終えたのか吸い込み後、取り込んだ煙を鼻の上へと吐
き出す動作が終わると灰皿の中で揉み消して再び続きを喋り始めた。
一瞬の動作ではあったが後藤は紫煙で眼前が真っ白になったので、
煙を吸いたくなくて慌てて距離を取ろうとするが足がもつれて移動
する事は叶わなかった。山城は、顔を赤らめて恥ずかしがっている
後藤には触れずに何事も無かったかのように、ここから先について
は口を挟んでくれても構わないという許可を出した。
「その黒板には、”愚かな事をしでかした男女計八人に告ぐ、全員
に罪を償って貰う!!”と書かれてあったんです」
「宣戦布告というやつですね。しかし、どうして気の弱いユカから
だったんでしょうか? リーダー格を狙った方が効果は大きいと思
うのですが……」
「確かにそれが一般的な考え方かもしれませんね。しかし、あの二
人はそうでは無かった。つまり、最後にリーダーを追い込む為に周
りの人物から罰を与える手法を選んだと思いました」
「一人が罰を受けた事によって残りのメンバーに動揺が広がったと
は思いますが同時に警戒するようにもなったと思います。そこら辺
の対応はどうだったんです?」
「男子生徒のリーダー格は今までの権力が及ばない危険な相手だと
認識して対抗策として黒沢と庭村に声を掛けて、どちらか二人に始
末して貰おうと考えていました。二人はしばらく考えさせてくれと
解答を保留にしました」
「保留にする位だから引き受けてくれる可能性が半分はあると思っ
ていたんですよね」
「えぇ、もちろんです」
「それから、どうなったんですか?」
「二人目と三人目の犠牲者が連日で起きました。二人目は女子生徒
でしてマスクをして顔を隠していましたが頬がパンパンに膨れた状
態で仲間にだけマスクの下の様子を見せると鼻が”くの字”に折れ曲
がっていたそうです。そして三人目は初の男子生徒で塾の帰り道を
襲われたみたいで右肩を外されてから硬い棒状のような物で殴られ
て骨折した状態で登校してきました」
「女子生徒の顔を暴行したのは誰ですか?」
「庭村です。一度、試したかったと聞いて背筋が冷たくなりました」
「庭村って奴は相当な悪ですね。これで三人の犠牲者が出た訳です
が彼らも流石に焦ったでしょうね。男子も確実に的に入ってる訳で
すから」
「それはもう挙動不審な行動が目立つ時期でもありました。廊下を
歩く時でも周りをキョロキョロと見る癖が付いてしまいましたから。
睡眠不足だとも言ってました。そうそう保留の返事が出た日でもあ
ったんです。断りのカードが切られるとは夢にも思っていなかった
んですけど諦め切れずに毎日、放課後に何度も説得したみたいです。
それでも興味が無いとの一点張りで冷たい態度で突き放されたと私
に愚痴をこぼしてました。二人は無理でも、どちらかは協力してく
れると勝手に信じていたんですよ。あの時の落ち込みようは、半端
じゃ無かったですね」
「その時の山城先生は複雑な心境だったんでしょうね。二人に室木
の力になってくれと協力を要請していたのは自分でイジメた側の彼
らの力にはならない事を誰よりも知っていた人物ですから」
「まぁ、その時は全員に罰を与えるとは予想していませんから二人
の事を言うつもりはありませんでした。危険を感じるようなら自宅
待機も念頭に置いた方が良いかもしれない等の助言は話したとは思
います」
「次がメンバーの半分に相当する四人目ですが男子ですか?」
「そうです。四人目は男子生徒でサッカー部の次期キャプテンを任
せられる存在だった生徒なんですが利き足である左足首にヒビが入
ってしまい大事な試合に欠場する事となり、試合は惨敗。チームに
迷惑を掛けたと思い込むようになり、自信喪失と狙われた恐さとで
サッカーとは距離を置くようになりました」
「ヒビの入った原因は何だったんです」
「通学路の階段で後ろから突き飛ばされたと話してました。それと
犠牲者が半分になってから彼らは群れて行動する事を辞めました」
「犯人が誰かが分かっていない状態で対抗策も取れていない仲間と
行動する事は無意味ですもんね。空中分解って奴ですね」 
 後藤は簡単に崩壊してしまう彼らの繋がりに一抹の寂しさを覚え
てコップに麦茶のお代わりを注いだ。

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