黒庭 ~閉ざされた真実~

五十嵐 昌人

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捜査最終日

106. 十一日目(謹慎三日)、室木との接触

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 再び目を覚ましてソファーから起き上がった後藤は時刻を確認した。16時
を少し回っていた。長い間眠っていた事が分かり、疲労が蓄積されていた事が
伺えた。両手を左右一杯に伸ばして身体を解した後、喉が渇いている事に気付
いた。腹は空いてなかったのでチーズバーガーとコーラを持って冷蔵庫へと移
動する。

 同期の小林の事は一旦置いといて鑑識官の室井と接触を図る事に決めた。心
を落ち着ける為、冷蔵庫にチーズバーガーとコーラを入れてからミネラルウォ
ーター入りのペットボトルを取り出して、ラッパ飲みで喉を潤していくとキッ
チンから雨音が聞こえていた。

 夕方から雨が降るって言っていた事を思い出しながら11桁の番号が書かれ
たメモを左手に掲げて右手に持った携帯電話で順番に番号を押していく。
「はたして相手は俺からの電話に出るのだろうか?」
「トルゥールルー」
「カチャッ」
 ワンコールが鳴り止まない内に相手が電話に出た。
「もしもし、後藤巡査か?」
「どうして私の名を?」
「質問を質問で返してきたか。まぁ良い。君が僕に電話をくれたって事は山城
先生と直接会った事を意味している。僕は本物の室木真司だ。テレビ電話に、
切り替えて君が持っている卒業アルバムで顔を確認して貰って構わない。5秒
後にこちらから掛けるから設定を確認してくれ」
「わかりました。そうさせて貰います」
 テレビ電話モードで、お互いの顔を確認した後、後藤は本題に入った。

「ある事件を捜査中に木島課長が亡くなったのですが自殺じゃないかという噂
がありまして個人的に興味を持って黒沢警部と一緒に捜査を進めています」
「あぁ。こっちにも、そういう情報は届いている。何が知りたい?」
「木島課長は自殺なんですか!?」
「あぁ。それについては間違いない。只、上からの圧力で他殺という事になっ
ている」
「そこまでハッキリと話して貰えると逆に怪しいんですけど庭村さんの娘さん
が交通事故死した件で何故、室木鑑識官がサインしているのか疑問に思ったん
ですよ」
「僕と黒沢と庭村が中学の同級生だった事がそんなに不自然かい?」
「えぇ、不自然だと感じました。庭村って人を探しているんですけど写真が無
くて正体不明の状態でして手掛かりが欲しいんです」
「それに関しては残念ながら君に協力してあげられる事は何も無いんだ。山城
先生から聞いたとは思うが黒沢と庭村は人生の地獄だった日々から救い出して
くれた恩人なんだ。だから仲間を売る事は出来ない。だが君はもう会っている」
!?」 
 あまりにも突拍子もない言葉に素っ頓狂な声を出していた。
「そうだ。詳しくは言えないがな」
(母方の姓を名乗っているのだろうか)
「他に僕から言える事となると君をこの事件から手を引かせる為の助言をする
事しかない。あの二人は常人では無い感覚があるのは承知しているつもりだ」

「木島課長が自殺しなければならなかった真実が知りたいんですっ!」
「僕には刑事ドラマの見過ぎに思える。真実が絶対だなんて思ってないし本当
の事を知らない方が幸せな事もあると思うんだ」
「綾部教官にも手を引けと同じことを言われました」
「懐かしい名前を聞いたな。綾部教官が説得してもダメだったんなら僕なんか
では到底歯が立ちそうにないな。だがこれだけは言わせてくれ真実を手に入れ
る為に狭い籠の中での生活が待っていると分かっていても、それでもそれを求
めるのか?」
「難しい事は、良く分かりませんし何を言わんとしているのか俺の頭では理解
出来ません。でも室木さんが悪い人じゃない事だけは分かりました」

「お前、バカだろ? そんな事、声を聴いただけで分かるもんかっ」
「そうかもしれません」
 後藤には室木の照れ隠しに感じられた。

「拳銃も取り上げられて無いんだろ? 何か武器になる物は最低限用意してか
ら出かけろよ。死ぬなよ」
「はい。未だ死にたくないです」
「プーップーップー」
 電話はここで切れたが頭の中で占い師の朱美とマドンナ高橋の二人を抱きに
無事に生還するんだと強い気持ちが芽生えていた。特に高橋に関しては触感だ
けで感じ取っていただけで視覚という部分の楽しみが残されている事に期待を
隠せなかった。
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