勇者と魔王は、女子高で青春を謳歌します ~ちなみに勇者は男です~

たまかけ

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第一章 再開した2人、炎上した勇者宅

3勇者と魔王は、森をてくてく歩きます。

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 灰が目の前を舞う。ただの灰ではない。俺の家だ。俺の家だったのだ。いくら、あまり使っていなかったといえども自分の家が壊れるのは残念だ。というか、これからマオと一緒に住むはずだったのに。

(あぁぁっぁぁ)

 無念。残念。
 火竜は俺の家をぶっ壊して、早々に飛び立っていった。
 横を見るとマオが不思議そうな顔を向けてきた。可愛くて思わずキスしそうになったが、思いとどまる。キスを含めて、することするには、言うことを言わなければいけない。そもそも言ったところで、俺の機能的にすることもできないのだが……。

「よろしかったのですか。あのような無礼者に制裁を加えずに」
「まぁ、よくねぇったらよくねぇが。……ん? 火竜って魔族だろ。俺なんかが・・・・・言うのはあれだが、同族をそんな風に言ってもいいのか」
「むぅ、魔族にも色々とありまして。『魔族』の主である『魔王』、つまり私が倒された現在いま、もう前の『魔族』は崩壊して、幾つもの族に分裂していると思われます。わたくしは『魔族』から『鬼族きぞく』へ、先ほどの火竜は『竜族』へと呼ばれるべき存在に当てはまります」

 あぁと納得する。マオは魔族の中で角を生やしている人種ーー減少傾向にあり、絶滅の兆しが見え始めていたのだがーーだからな。角から鬼で、『鬼族』なんだろう。
 マオは他にも『馬族まぞく』、『風族ふうぞく』、『裸族らぞく』などいろいろと分裂していると教えてくれた。
 頭を下げるようにして、角を強調していた彼女を見て、マオの角はリボンみたいで可愛らしいなと思ったが、もし人族のところに行くとしたら隠さなければいけない。
 元勇者ーー鑑定するとどう表示されるかわからないがそんなことは知らん。俺は勇者なんて辞めたーーがこんなことをいうのは不適切かもしれないがハッキリ言って、俺に人族を誇り愛する愛族心は皆無だ。勇者というくそったれな仕事を押し付けられたのだから、人族のために働けとか言われたら言ったやつをぶっ殺すーーことはできなくなったので、自殺して逃げるかもな。何が言いたいかというと、俺はマオを好きになったように魔族ということはどうでもいいが、人族、特に王都にいる保守層と呼ばれる連中は魔族を迫害する風潮があるのだ。
 この森を所有するフォーテインという街では角さえ隠せられれば大丈夫そうだが、さてどうやって隠そう。すでに家がぶっ壊れたので、フォーテインで職を探さして、部屋を探さなければいけないな。
 一緒に過ごそうと言ったのに、もしかしたらマオには不便をかけるばかりかもしれない。

「……マオ、すまない」
「ユウさんが頭を下げる必要がどこにあるのですか」
「ここで一緒に住もうって約束したのに」
 
 謝るべきことはいくつかある。聞いておきたいことも、話し合わなければいけないことも沢山ある。
 その中でまず言いたかったことが、あの時の約束。果たされそうで、あっさり諦めて灰になった約束。謝罪すべきはこれだ。

「私はもう一度出会えた幸せで十分です。ですが……ですが申し訳ないと思われるのでしたら、これから一緒に」
「ああ。俺たちは勇者と魔王ってくそったれな仕事を終えた身なんだ。これから一緒に楽しく過ごしていこう」
「本当ですか。うれしく存じます」
「……だか、マオ。これからが大変にっ。あっそうだ、今更なんだがマオって呼んでいいか」

 本当に今更である。しかし、今後のスムーズな生活のためには合意をとっていくのが大切だと、過去のとある事件から学んでいる。授業料として持っていかれたものもあるが、と俺は自分の下腹部へ視線を下げる。

「ユウさんのお好きなように呼んでいただければ。わたくしもユウさんとお呼びしてよろしくて」
「ああ。いいぞいいぞ」

 聞くまでも無かったようだなーーいやいや、このような慢心が事件を生む。へりくだって、何こいつと思われようが、マオに聞くべきことは聞こう。
 では、本題に移ろう。目の前の美しくかわいい、心への毒について。

「ところでマオ。服はどうしたんだ」
「はぁっ、あっ、そそれはですね……」

 マオがシャワーを浴びていたのは、海水まみれになってしまったからだそうだ。あの時のドアノブのしょっぱさはこれが原因かと納得納得。
 俺と同じように目覚めたんだが、場所が海に面しているフォーテインの岸辺で波に打たれてしまっていたそうだ。厳しい岩場である為、フォーテインは海に面しているのに港がなく、危ないので人も寄り付かないのが幸いだった。海も森もあるというのに、フォーテインは観光都市としてもリゾート地としても栄えていない可哀そうな街なのである。
 その可哀そうなおかげで、マオはここまで人族に遭遇していないのだろうと思うと、ありがとう。可哀そうな街と感謝を送っていた。頭の中で。本心で。

「……それでシャワーを浴びていたのか」
「はい、勝手にお宅へ入り、シャワーまで勝手に使って申し訳ないと思いながらも、体が塩まみれでしたので」
 
 マオは上半身を折り、謝罪を表す。マオは背中もきれいだった。鎖骨をちょっと舐めてみたい。しないけど。

「はは。……何か俺ら謝ってばっかりだな」
「ふふふ、そうですね」
「ん? マオってどうやって来たんだ。フォーテインの森としか言っていなかっただろ」
「いえ、その情報で十分でした……」

 マオは『眷属支配』というコアスキルを使って、カラスやトビ、イタチなどに調べさせ、道案内をさせたそうだ。
 コアスキルが使えるといっても、効力は弱くなってしまっているらしい。マオ曰く、『絶対命令』が『お願い』レベルにまで下がってしまっているそうだ。俺も簡易的な『術式創造』なら使えるんだが、わざわざ水晶にするまでもないもばかりだ。実用的に使いたかったら、圧倒的に足りないMPをどうにかしなければならない。マオも同じような状況だと思われる。

 ◆ ◆ ◆ ◆

 裸のマオに自分が羽織っていたコートを着せて、街へと森の整備されていない道を進んで行く。フォーテインの森は潮風が強く、植物が自生しないため、動物も生息していないため、そのほとんどが開発されていない。森にある人工物はフォーテインと他の街や学校までを繋ぐレンガの道だけ。よって、その整備された道さえ通らなければ、人族というか誰にも会うことはないだろう。

 しかし、とマオの姿をちらりと横目で見た後に、じっくりと見る。かわいい。一回り二回り大きい俺のコートに全身を隠すため、身体を小さく抱き寄せる姿は彼女の幼い顔立ちに似合いかわいく思った。
 いや、そうじゃない。俺の感想なんて言っている状況ではない。
 燃え尽きた俺の家に服が残っている訳もなく。裸のまま家を飛び出したマオに着せられるのは俺のコートしかなかった。流石に俺の履いているズボンやシャツを着せるのは気が引けた。変態さんに思われてしまうかもしれない。でも、この状況をはたから見られていたら、俺は変態さんだよな。女の子の服を剥いで、自分のコートだけを着せる変態だと思われるかもな。

「なぁ、ここまで来てなんだが、待っていてくれてもよかったんだぞ。流石に恥ずかしいだろう」
「……はい、他の人に見られてしまうかもと思うと、恥ずかしいです」

 俺の後ろに隠れるように片手でコートの前面を、もう一方で俺の裾を掴んでうつむき気味に付いてきている。足取りは重い。
 マオはですがと、上気した顔をこちらに向け、上目遣いのまま口を開く。

「ですが、ユウさんと今は離れたくありません」
「うっ。そ、そうか」
「ユウさん、私は真剣にお話を」

 破壊力すんごい。思わず頬が緩んでしまう。キスしたい、押し倒したい。押し倒してもキスから先はできないけど、滅茶苦茶キスしたい。……しないけど!

 もうかなり歩いた。空の真ん中にあった太陽は少しずつ傾き始めている。いや、思ったより時間が経っていないな。距離的な問題ではなく疲労感から。
 決してマオとよくいう、日中、宿でする『ご休憩』をしたのではなく、ステータス的な問題だろう。いつもと同じような速度で歩けば、そりゃ疲れるな。というか、宿で『ご休憩』したのに疲れているっておかしいよな。世の中。
 街まであと数分というところで俺は足を止め、マオに向き直る。

「だが、ここまでだ。さすがに街の中にその格好で入るのはマズイ」
「……そうですよね」

 少し残念そうなマオの角を撫でてやると、嬉しそうに目を細めた。俺もうれしくなって、顔が緩む。
 マオにこれからの俺の動きを伝え、マオに草むらで隠れてもらう。ここは整備された道から十分はなれている。人族に見つかる心配はほとんどないだろう。

「……あまりいい服は買えないと思う」
「この状況では仕方のないことです。……お早いお帰りをお待ちしております」
「ああ。じゃっ、行ってくる」
「はい、行ってらっしゃい。お気をつけて」

 俺は街へと急ぎ足で行く。もちろん息を切らさない程度の速さで可及的に急ぐ。
 街でマオの服とマオの角をどうにか隠すものを買いに行くのだ。
 ふと、マオに言っていなかったことを思い出し、無意識に口に出す。

 「金も燃えちまったが、何とかなるだろう」

 ーー勇者こと、ユウ=カレントは楽観的だった。
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