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3 距離の差を価格の差にする
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盛大にかっこつけたのはいいものの、これからの話は明らかに立ち話で済せられるほどの長さではなかった。
私はアリシアにその旨を正直に伝え、アリシアが住む小屋でテーブルを囲んで椅子に腰かけてから、本題に入る。
「気を取り直して、仕事の話だ。前回の貴族との取引でまとまった金が入ったので、今回から商売のやり方を変えようと思う」
私はテーブルの上で手を組み、続ける。
「今まで私たちは、治安が悪いせいで商品を運ぶのが難しい場所に向かうことで利ザヤを稼いできた。この方法は成功すれば稼ぎが大きいが、危険な場所に赴くため、失敗する可能性も高い。最悪の場合、命を落としてしまう。なのでこれからは、商品を素早く長距離運ぶことで利ザヤを稼ぐ方法に変える」
アリシアは理解できていないようだったので、私は具体例を交えた説明を試みる。
「例えば、魚の値段を考えてみてほしい。海や川の近くにある国では、魚というのは庶民の食べ物だが、近くに海や川のない国では、同じ魚が高級品となる。この差を利用して、海や川の近くで安く買った魚を、海や川から遠い場所で高く売ろうというのが、これから私がやろうと思っている商売なんだ」
説明を受けたアリシアは、釈然としない表情で首を傾げた。
「言っていることはわかるけど、魚が取れにくい場所に住む人たちは、高いお金を払ってでも魚を食べたいと思うのかな? 魚が取れにくいってことは、魚を美味しく食べる文化が育ちにくいはずでしょ」
どうやら、具体例の出し方に引っかかったらしい。その鋭い推察力を、もう少し私のメンツを立てる方向で発揮していただけるととてもありがたいのだが。
「今のはあくまでも例え話で、実際に魚を取引しようというわけではないから安心してくれ」
「そう。なら良かった」
方針については納得してもらえたようなので、ここからは私が考えている具体的な輸送計画と、その計画で発生するであろうリスクについて一つ一つ説明していった。いかんせん私はドラゴンによる長距離輸送を企てた経験がないので、ドラゴンをよく知るアリシアから見て私の計画が十分に実現可能なものなのかどうかを話し合い、必要に応じて計画を修正していった。
そうした綿密な話し合いが終わる頃には、透き通った青い空に太陽が高々と昇っていた。
「出発は明日の早朝にしよう。この山の直射日光を浴びながら下山は厳しい」
これからの見通しが立ってきたことに安堵すると、自分がかなり空腹になっていると気づいた。
すると、アリシアが手を叩き、
「とりあえずお昼にしましょう。朝から何も食べていないんだし」
と言って立ち上がった。
彼女も私と同じように思っていたらしい。
「手伝うよ。何をすればいい」
「じゃあ、近くにある川で水を汲んできて」
「了解」
私はアリシアにその旨を正直に伝え、アリシアが住む小屋でテーブルを囲んで椅子に腰かけてから、本題に入る。
「気を取り直して、仕事の話だ。前回の貴族との取引でまとまった金が入ったので、今回から商売のやり方を変えようと思う」
私はテーブルの上で手を組み、続ける。
「今まで私たちは、治安が悪いせいで商品を運ぶのが難しい場所に向かうことで利ザヤを稼いできた。この方法は成功すれば稼ぎが大きいが、危険な場所に赴くため、失敗する可能性も高い。最悪の場合、命を落としてしまう。なのでこれからは、商品を素早く長距離運ぶことで利ザヤを稼ぐ方法に変える」
アリシアは理解できていないようだったので、私は具体例を交えた説明を試みる。
「例えば、魚の値段を考えてみてほしい。海や川の近くにある国では、魚というのは庶民の食べ物だが、近くに海や川のない国では、同じ魚が高級品となる。この差を利用して、海や川の近くで安く買った魚を、海や川から遠い場所で高く売ろうというのが、これから私がやろうと思っている商売なんだ」
説明を受けたアリシアは、釈然としない表情で首を傾げた。
「言っていることはわかるけど、魚が取れにくい場所に住む人たちは、高いお金を払ってでも魚を食べたいと思うのかな? 魚が取れにくいってことは、魚を美味しく食べる文化が育ちにくいはずでしょ」
どうやら、具体例の出し方に引っかかったらしい。その鋭い推察力を、もう少し私のメンツを立てる方向で発揮していただけるととてもありがたいのだが。
「今のはあくまでも例え話で、実際に魚を取引しようというわけではないから安心してくれ」
「そう。なら良かった」
方針については納得してもらえたようなので、ここからは私が考えている具体的な輸送計画と、その計画で発生するであろうリスクについて一つ一つ説明していった。いかんせん私はドラゴンによる長距離輸送を企てた経験がないので、ドラゴンをよく知るアリシアから見て私の計画が十分に実現可能なものなのかどうかを話し合い、必要に応じて計画を修正していった。
そうした綿密な話し合いが終わる頃には、透き通った青い空に太陽が高々と昇っていた。
「出発は明日の早朝にしよう。この山の直射日光を浴びながら下山は厳しい」
これからの見通しが立ってきたことに安堵すると、自分がかなり空腹になっていると気づいた。
すると、アリシアが手を叩き、
「とりあえずお昼にしましょう。朝から何も食べていないんだし」
と言って立ち上がった。
彼女も私と同じように思っていたらしい。
「手伝うよ。何をすればいい」
「じゃあ、近くにある川で水を汲んできて」
「了解」
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