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1-1. とある墓守の最期
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この惨劇の最初の犠牲者となるのは、バビリア王国南西部に位置する墓地に勤める若い墓守、ザイマ・リィレバント。
墓守と言っても、彼は王国第三騎士団の一員であり、王国の象徴である螺旋の塔がデザインされた革甲冑を身に纏い、片手には提灯を、腰には聖属性付与された剣を装備した戦士だ。
死んだ人間が土葬される場所である墓地には、ゾンビが湧く。
正確に言うと、死んで魂がいなくなった人間の肉体に、人間じゃない魂が宿って、棺桶の中から出てくる。
肉眼では見えないほど小さな魔獣、入魂蟲。この魔獣は、死んだ人間の体をヤドカリみたいに貰い受けて、仲間のために更なる死体を作ろうと奔走する。
だから、墓から出てきたゾンビを再び墓地送りにするために、彼のような武装した墓守が、毎日墓を巡回して監視しなければならない。
一部のインテリな人間から、「死体の埋葬方法を土葬ではなく火葬にすれば、ゾンビが発生しなくなる」という提言がされた事もあったのだけれど、「罪のない人間を焼くなど言語道断だ」という教会の見解によって、今でも死体は死後硬直で動かしにくい身体に故人が生前よく着ていた綺麗な服を着せ、防腐処理をした後に、簡素で隙間だらけの石棺に入れられている。
というわけで現在、この墓地では二日に一体ほどの頻度で人型ゾンビが出現するため、常時四人の騎士が巡回している。
「おい、そこのお前。そんなところで何をしている」
ゾンビらしき存在を発見したら、まずは声をかける。夜分遅くに墓地にいる人間が健全な一般人である可能性は低いとはいえ、無いわけではない。
「聞こえていないのか!」
反応が無かった場合、相手が人間である可能性はほぼゼロなので、いつ襲い掛かって来ても反撃できるように、剣を鞘から抜き、相手に近づいてゾンビか否かの最終確認をする。
そのためには、顔を見るのが一番簡単。ゾンビの服装と浮浪者の服装に大差はないけれど、生きている人間の顔面は、生きていない人間の顔面とは大違いだから。具体的には、皮膚の色や弛み具合が。
わざわざそんな事を確認していたら危険だと思うかもしれないけれど、ゾンビは動きが鈍くて、膂力も人間と同じくらい。油断して首元に噛みつかれでもしない限り、そうそう殺されやしない。
だから墓守は、細心の注意を払いながら提灯を相手の方に向けた。
「こんばんわ、こんな夜遅くにどうされたのですか」
彼が態度を一変させたのも無理はない。光に照らし出されたのは、灰色のワンピースを着、真っ白な長髪を夜風になびかせる、琥珀色の瞳をした女性だったから。
女性は墓守の瞳を真っすぐに見て微笑し、軽く会釈した。そして、その優し気な雰囲気のまま静かに墓守へ近付き、首元を噛みちぎった。
「え……」
脳へ向かうはずだった血液が、心臓の鼓動で波打ちながら頸動脈から吹き出て、女性の白い肌を鮮やかな紅に染めた。
墓守は、自分の身に起きた事を理解するのにしばしの時間を要した。
「ああ……あああああああああああぁぁぁ!」
激痛で極限まで鮮明になった意識が大量出血によって朦朧としていく中、ザイマの耳は最後に女性の囁きを聞いた。
「さようなら。そして、ようこそ」
こうして、未来ある一人の若者が死んだ。
悲鳴を聞いて駆けつけてきた他三名の墓守達も、概ね彼と同じような運命を辿った。
墓守と言っても、彼は王国第三騎士団の一員であり、王国の象徴である螺旋の塔がデザインされた革甲冑を身に纏い、片手には提灯を、腰には聖属性付与された剣を装備した戦士だ。
死んだ人間が土葬される場所である墓地には、ゾンビが湧く。
正確に言うと、死んで魂がいなくなった人間の肉体に、人間じゃない魂が宿って、棺桶の中から出てくる。
肉眼では見えないほど小さな魔獣、入魂蟲。この魔獣は、死んだ人間の体をヤドカリみたいに貰い受けて、仲間のために更なる死体を作ろうと奔走する。
だから、墓から出てきたゾンビを再び墓地送りにするために、彼のような武装した墓守が、毎日墓を巡回して監視しなければならない。
一部のインテリな人間から、「死体の埋葬方法を土葬ではなく火葬にすれば、ゾンビが発生しなくなる」という提言がされた事もあったのだけれど、「罪のない人間を焼くなど言語道断だ」という教会の見解によって、今でも死体は死後硬直で動かしにくい身体に故人が生前よく着ていた綺麗な服を着せ、防腐処理をした後に、簡素で隙間だらけの石棺に入れられている。
というわけで現在、この墓地では二日に一体ほどの頻度で人型ゾンビが出現するため、常時四人の騎士が巡回している。
「おい、そこのお前。そんなところで何をしている」
ゾンビらしき存在を発見したら、まずは声をかける。夜分遅くに墓地にいる人間が健全な一般人である可能性は低いとはいえ、無いわけではない。
「聞こえていないのか!」
反応が無かった場合、相手が人間である可能性はほぼゼロなので、いつ襲い掛かって来ても反撃できるように、剣を鞘から抜き、相手に近づいてゾンビか否かの最終確認をする。
そのためには、顔を見るのが一番簡単。ゾンビの服装と浮浪者の服装に大差はないけれど、生きている人間の顔面は、生きていない人間の顔面とは大違いだから。具体的には、皮膚の色や弛み具合が。
わざわざそんな事を確認していたら危険だと思うかもしれないけれど、ゾンビは動きが鈍くて、膂力も人間と同じくらい。油断して首元に噛みつかれでもしない限り、そうそう殺されやしない。
だから墓守は、細心の注意を払いながら提灯を相手の方に向けた。
「こんばんわ、こんな夜遅くにどうされたのですか」
彼が態度を一変させたのも無理はない。光に照らし出されたのは、灰色のワンピースを着、真っ白な長髪を夜風になびかせる、琥珀色の瞳をした女性だったから。
女性は墓守の瞳を真っすぐに見て微笑し、軽く会釈した。そして、その優し気な雰囲気のまま静かに墓守へ近付き、首元を噛みちぎった。
「え……」
脳へ向かうはずだった血液が、心臓の鼓動で波打ちながら頸動脈から吹き出て、女性の白い肌を鮮やかな紅に染めた。
墓守は、自分の身に起きた事を理解するのにしばしの時間を要した。
「ああ……あああああああああああぁぁぁ!」
激痛で極限まで鮮明になった意識が大量出血によって朦朧としていく中、ザイマの耳は最後に女性の囁きを聞いた。
「さようなら。そして、ようこそ」
こうして、未来ある一人の若者が死んだ。
悲鳴を聞いて駆けつけてきた他三名の墓守達も、概ね彼と同じような運命を辿った。
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