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7.注ぐ
しおりを挟むそこからの鬼柳は、とにかく手際が良かった。
抱えるように家に連れ込まれた後、あっという間に服を脱がされ、シャワーで至るところまで洗われ、気づいたらよくわからない液体を尻の穴に塗り込まれていた。シャワー辺りで既にへろへろになっていた僕は、されるがままの状況に戸惑うばかりだ。
「なんで、こんな、手慣れてんだよっ」
「頭の中で桃瀬のことずっと抱いてたから」
「お前の妄想力、凄すぎんだろ……」
「桃瀬はどっちで想像してたの?」
「……あんま、想像したことない」
これは本音だった。なんなら、結婚式のスピーチ場面のほうが具体的に想像していたくらいなのだ。一人でする時も、鬼柳の言動を思い描くというより、声や表情を思い出しながら物理的な快感で抜いていたというのが正直なところで。
だから、今の状況は完全にキャパオーバーだった。
「可愛いね、桃瀬」
「んなわけあるか、っ、ぁ」
隘路を拡げるため、しつこいくらい中を掻き混ぜていた指が抜けていく。かわりに、猛った熱を穴の縁に押し当てられた。土壇場で怖気づきたくなくて、そそり勃った鬼柳のモノから視線を逸らす。しっかり見たわけではないが、僕よりもかなり立派だった気がする。
「入れるね」
「……あぁ」
承諾したものの、どうしても緊張で身体が強張ってしまう。力を抜くことを意識しながら息を吐き出せば、それに合わせて鬼柳が中に入ってきた。
まだ先だけしか入れられてないはずなのに、それでもきつくて苦しい。けれど、散々指で慣らされた甲斐あってか、切れた時のような痛みは感じなかった。
加減なく締めつけられている鬼柳もつらそうで、きつく寄せられた眉の上に汗が浮かんでいる。腹から力を抜いてやりたいけど、どうしたらいいのかわからない。
「きりゅう……っ」
縋るような声を出してしまった僕に、彼は愛おしそうに目尻を下げた。
「好きだよ、桃瀬。……奥まで入っても、いい?」
不意に胸がいっぱいになって、うまく言葉が出てこなくなる。頷くことで意思を伝えれば、嬉しそうに微笑んだ鬼柳がゆっくりと腰を進めてきた。
しばらくしてようやく、これ以上は入らないと感じる突き当たりに熱が触れる。
「っ、はぁ、……全部、入った?」
「全部、は、また今度かな」
「嘘だろ、これで全部じゃ、ないって、……ここ、一番奥じゃねぇ、の?」
「……うん、それは追々ね」
汗でへばりついた前髪をかき上げながら、鬼柳が口角を上げる。意味ありげな表情だったが、なんだか嫌な予感がして追求はしないことにした。
というか、そこまでの余裕がない。苦しいくらいに腹がいっぱいだし、喋るだけでも中に響く。慣れぬ感覚に僕が押し黙るのを見て、鬼柳も合わせて口を閉じた。早く動きたいだろうに、僕のために耐えて、モノが馴染むのを待ってくれている。
あぁ、好きだなぁ、としみじみ思う。
元々、無理を強いてくるような男ではないのだ。優しくて思いやりがあって、相手のことを気遣える。そんな鬼柳が、卑怯な手を使ってでも欲したのが僕だというのは、どうにも心を擽られる事実ではあった。
良くないことはちゃんと叱ったし、反省もしてたし、少しくらいなら甘やかしてもいいか。
「もう動いていいよ、鬼柳」
「……大丈夫?」
「ああ。……まそらの好きにしてくれたらいい」
途端、腹の中の一物が、ぐん、と存在感を増した。
「っ、桃瀬、それはダメだよ……っ」
「ん、っ、いや、悪い。まさか、こんなわかりやすく喜ばれるとは」
「はー……、もう」
溜息とともに、両足を持ち上げられる。ぎらり、と音が聞こえてきそうなほど、鬼柳の瞳に力が籠もった。赤色が強く瞬く。
「好きにしていいって、桃瀬が許したんだからね」
そう告げた彼は、乱暴に僕を揺さぶった……ということはなく、むしろ逆の行動を取った。交わることの気持ちよさを、僕に教え込んだのだ。それはもう、じっくりと丁寧に。
「桃瀬、好きだよ、好き、可愛い」
箍が外れたかのように、鬼柳は僕への好意を惜しみなく伝えてきた。与えられる甘い言葉に埋もれて窒息しそうだ。
くちくち、と奥を優しく掻き混ぜられながら、顔中に触れるだけのキスを浴びる。額、目元、鼻先。口元を覆っている手の甲にまで口づけが降り注ぐ。
その小さな刺激にすら身体が反応し、ぎゅう、と腹の中が締まるのを感じた。
「感じてる桃瀬、ほんとにかわいい」
僕自身ですら触れられない場所を開いて変えてしまった男は、ご機嫌な顔で愛を囁いてくる。
こちらは喘ぎ声を我慢するだけで必死だというのに、鬼柳ばかりが余裕そうなのが癪に障った。かといって、僕にはどうすることもできない。
ただ、一つだけ気になっていることがあった。
「き、りゅう」
「ん? どうしたの?」
手の平の下から小さく声をかければ、奥の壁に痺れを与え続けていた動きが止まった。決して強い刺激ではないのに、トントン、とゆるやかに蓄積されていた快感を、一旦振り払うよう首を振る。
「あのさ。時間、大丈夫なのか?」
「……あー……うん」
まさか夏祭りのことを忘れてたんじゃないだろうな、と疑ってしまうほど曖昧な返事に、僕は鬼柳を睨みつけた。何のために、わざわざこの村で体を繋げてると思ってるんだ。
僕の非難の気持ちに気づいたのか、苦笑と言い訳が返ってきた。
「儀式のこと、忘れてたわけじゃないよ。ただ、初めてだし、桃瀬に気持ちよくなってもらいたかったんだ。ただでさえ、嫌な気持ちにさせちゃった後だし。次がないなんてことになったら、今の俺は耐えられないだろうから」
座敷牢を見据えていた可能性を考えれば、良い変化だと思う。けれど、一つ引っかかることがある。
「お前は? お前だって初めてだろ。……鬼柳も、ちゃんと気持ちよくなってんのか?」
なんだか、僕ばかりが快楽に喘いでる気がするのだが。こちらを優先するあまり自分をおざなりにしてるんじゃないかと問い返せば、鬼柳は男前な顔が台無しなほど相好を崩した。
「めちゃくちゃ気持ちいいよ。本当に、俺がしたいことしかしてないし」
「……それならいいけど」
「多分、俺、相手が感じ過ぎてわけわかんなくなってることにぞくぞくするタイプなんだと思う。時間と環境が許すなら、桃瀬のこともっとずっと甘やかして、俺のことしか考えられなくなるくらいいっぱい感じさせてやりたい。ほんとは声だって聞きた」
「言い方! 変態みたいな言い方になってるからな!?」
最後まで聞いていられなくて、大声で鬼柳の話を遮る。正直、言い方とかの問題ではなく、とんでもないことを告白された気がした。時間と環境に制約があってよかったんじゃないのか、これ。
襲い来る恥ずかしさに唸っている僕をよそに、鬼柳は壁に掛かっている時計にちらり、と視線を向けた。
「もっと桃瀬のこと味わってたかったけど。お風呂も入りたいし、仕方ないか」
その言葉とともに、奥まで入っていたモノがギリギリまで引き抜かれた。急な変化に身構える間もなく、腹の浅いところを突かれる。今日、鬼柳に暴かれるまで存在すら知らなかった性感帯──前立腺を。
内側からの強い刺激に、僕の身体が大きく跳ねた。
「ッ、ん、ふぅ、っ」
指で中を拡げる段階から鬼柳はその一点を執拗に弄り、これまで感じたことのない快楽を僕に覚えさせようとしていた。そんな敏感にされてしまったところを、太くて硬い棒が繰り返し押し潰してくる。さっきまでのゆるやかさとは異なる、追い上げるような早急な動きに、僕は手で口を押さえ直すのが精一杯だった。
生まれて初めての感覚なのに、とにかく気持ちが良い。鬼柳との間で勃ち上がっていた僕の先っぽから我慢汁が滲んでいた。
まるで電流を流されたみたいに、脳内が強い刺激でぐちゃぐちゃになる。
「あッ、ゃ、……ぐ、ぅんっ」
ゆるんだ手の隙間から甲高い声が漏れそうになり、咄嗟に手首あたりの肉を噛んだ。興奮状態にあるからか、あまり痛みは感じない。それよりも、声を噛み殺せたことにほっとした。
だって、外には僕たち担当の村人がいるはずなのだ。こんなみっともなくて恥ずかしい声など、絶対に聞かせたくない。
それなのに、鬼柳は僕の手を引き剥がしてシーツに縫いつけてきた。指と指が絡み、ぎゅうと握り込まれる。
「声、聞きたいけど、……桃瀬は嫌だよね?」
「むり、やだ、ふざけんなっ」
「じゃあ、帰ってからの楽しみにしとく」
「かえってからって……、まっ、ン、ふ」
どこか嬉しそうに微笑んだ鬼柳は、僕が返事に困っている隙を狙って唇を重ねてきた。食べられそうだと錯覚するほど濃厚なキスに、頭がくらくらする。
「んっ、ぅ、ふ、んぅ」
僕の口を塞いだまま、鬼柳が腰の動きを再開した。くぐもった喘ぎはすべて彼に吸い取られていく。
翻弄されっぱなしなのも悔しい気がして必死で舌を絡めると、途端に抜き差しが激しくなった。前立腺をごりごり潰しながら、奥の行き当たりを何度も何度も、容赦なく穿ってくる。あまりの快楽に、爪先まで痺れが走った。
「ん、んんっ、ッ、んっ、ぅん」
速くなる律動に合わせて、繋がっていないほうの手で僕自身も強く扱かれる。下腹部から駆け昇ってくる熱さと呼吸の苦しさで、脳が焼ききれそうだった。
唇と掌と腹の中。鬼柳と繋がっている全てが、熱くて熱くてたまらない。
イきそう、イく、気持ちいい。頭が熱で真っ白になる。
「んぅ、ンッ、──ンンん~~……ッ」
鬼柳に全身で繋ぎ止められながら、僕は絶頂に達していた。直後、腹の奥に彼の精が放たれたのを感じる。
脈動する鬼柳自身から注がれる、彼の熱。──まるで、内側から彼に侵され、喰われているみたいで。
最奥に擦りつけられる甘い毒に体を震わせながら、僕は繋がったままの鬼柳の手をぎゅ、と強く握り締めた。
「ふぁ、……ッ、はァ、はっ、は」
腹の中から鬼柳が出ていくのと同時に、長い口づけからも開放される。荒い呼吸を繰り返す僕の耳を軽く食みながら、先に息を整えた鬼柳が艶やかに笑った。
「桃瀬のイイ声、今度、俺にだけ聞かせてね」
湿り気を帯びた囁きが耳朶を打つ。空になった腹の奥が、きゅう、と疼いた気がした。
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