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ランは沿道の人々の勢いに圧倒されそうになりながらひたすらに手を振った。
「ばいばい! ばいばい!」
少し顔を引き攣らせているランとは対照的に、ルゥはご機嫌で手を振っている。
「そんなに身を乗り出しちゃだめだって!」
「はは、ルゥは大物だな」
「手を振る度にかわいいって言われるから浮かれちゃってるんだよ」
ランは苦笑して、ルゥをしっかりと抱き直した。
「さ、そろそろ折り返し地点だ。もうしばらく頼むぞ」
「うん」
ランはもうひとがんばりだとしゃんと背筋を伸ばした。その時だった。
ドン! という大きな音がして、急に馬車が止まった。
「なんだ、どうした!?」
何事からとランとレクスが辺りを見渡すと、前方に煙が立っている。
「いったい何?」
「ラン、少し様子を見てくる」
「ちょっと、危ないって!」
ランは止めようとしたが、それよりも一瞬早くレクスは馬車を降りてしまった。
「レクス、戻っ――」
ランがそう叫ぼうとした途端に、真っ赤な炎の塊が目の前に落ちて爆発した。
「ああっ」
その衝撃を受けて、ランは咄嗟に腕の中のルゥをぎゅっと抱きしめる。
「レクス!」
燃えさかる炎と煙の中で、ランがなんとか目をあけると少し離れたところにレクスが倒れているのが見えた。
「おいっ、おいレクス! しっかりしろ!」
ランは必死に呼びかけたが、返答は無い。駆け寄りたくてもルゥを抱いたままこの炎の中に飛び込む訳には……とランが躊躇している時だった。
『動くな』
「えっ……」
ぞっとする感覚がランを襲う。下半身の力がへなへなと抜けてしまい、ランは馬車の床にへたり込んだ。
「な……何……?」
『麻痺』
すると今度は手足がびりびりと痺れて力が入らなくなる。ルゥを抱いていることも出来なくなって、ランはその上に覆い被さった。
「こ、これは……魔法……?」
「その通りだ」
すると知らない声がして、ランの目元を覆う。ビリッと強い衝撃がランの脳に走り――ランは意識を手放す。
遠くで、ランのティアラがカシャンと音を立てて落ちる音がした。
――どこかで水の滴る音がする。さっきまでの炎の熱が嘘のような肌寒さを頬に感じて、ランはうっすらと目をあけた。
「……ん」
そこは暗い廃屋のようなところだった。ランはそこで後ろ手に縛られて転がされていた。
「オレ、は一体……」
暗闇の中でランは目をこらす。うっすらと部屋の隅から光が漏れている以外には何もない殺風景な部屋だった。
「あっ……! ルゥ、ルゥは……?」
ランははっとして辺りを見渡した。
「ルゥっ!」
「ママ?」
すると小さな声がする。ランがそちらをなんとか振り返ると、ルゥも同じ様に縛られ、地面に転がされていた。
「こんな……ひどい……」
「ママぁ」
ランは芋虫のように這いずって、ルゥの側に行く。
「大丈夫だよ、ママはここだよ」
自由にならない手の代わりにランはルゥに頬ずりをした。
それにしても、一体誰がこんなことをしたのだろうか。
「攫われた……んだよな」
かび臭い部屋で、ランはどうしていいか分からず、身を強ばらせた。
「ばいばい! ばいばい!」
少し顔を引き攣らせているランとは対照的に、ルゥはご機嫌で手を振っている。
「そんなに身を乗り出しちゃだめだって!」
「はは、ルゥは大物だな」
「手を振る度にかわいいって言われるから浮かれちゃってるんだよ」
ランは苦笑して、ルゥをしっかりと抱き直した。
「さ、そろそろ折り返し地点だ。もうしばらく頼むぞ」
「うん」
ランはもうひとがんばりだとしゃんと背筋を伸ばした。その時だった。
ドン! という大きな音がして、急に馬車が止まった。
「なんだ、どうした!?」
何事からとランとレクスが辺りを見渡すと、前方に煙が立っている。
「いったい何?」
「ラン、少し様子を見てくる」
「ちょっと、危ないって!」
ランは止めようとしたが、それよりも一瞬早くレクスは馬車を降りてしまった。
「レクス、戻っ――」
ランがそう叫ぼうとした途端に、真っ赤な炎の塊が目の前に落ちて爆発した。
「ああっ」
その衝撃を受けて、ランは咄嗟に腕の中のルゥをぎゅっと抱きしめる。
「レクス!」
燃えさかる炎と煙の中で、ランがなんとか目をあけると少し離れたところにレクスが倒れているのが見えた。
「おいっ、おいレクス! しっかりしろ!」
ランは必死に呼びかけたが、返答は無い。駆け寄りたくてもルゥを抱いたままこの炎の中に飛び込む訳には……とランが躊躇している時だった。
『動くな』
「えっ……」
ぞっとする感覚がランを襲う。下半身の力がへなへなと抜けてしまい、ランは馬車の床にへたり込んだ。
「な……何……?」
『麻痺』
すると今度は手足がびりびりと痺れて力が入らなくなる。ルゥを抱いていることも出来なくなって、ランはその上に覆い被さった。
「こ、これは……魔法……?」
「その通りだ」
すると知らない声がして、ランの目元を覆う。ビリッと強い衝撃がランの脳に走り――ランは意識を手放す。
遠くで、ランのティアラがカシャンと音を立てて落ちる音がした。
――どこかで水の滴る音がする。さっきまでの炎の熱が嘘のような肌寒さを頬に感じて、ランはうっすらと目をあけた。
「……ん」
そこは暗い廃屋のようなところだった。ランはそこで後ろ手に縛られて転がされていた。
「オレ、は一体……」
暗闇の中でランは目をこらす。うっすらと部屋の隅から光が漏れている以外には何もない殺風景な部屋だった。
「あっ……! ルゥ、ルゥは……?」
ランははっとして辺りを見渡した。
「ルゥっ!」
「ママ?」
すると小さな声がする。ランがそちらをなんとか振り返ると、ルゥも同じ様に縛られ、地面に転がされていた。
「こんな……ひどい……」
「ママぁ」
ランは芋虫のように這いずって、ルゥの側に行く。
「大丈夫だよ、ママはここだよ」
自由にならない手の代わりにランはルゥに頬ずりをした。
それにしても、一体誰がこんなことをしたのだろうか。
「攫われた……んだよな」
かび臭い部屋で、ランはどうしていいか分からず、身を強ばらせた。
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