【完結】出来損ないのオメガですが王族アルファに寵愛されてます~二度目の恋は天使と踊る~

高井うしお

文字の大きさ
70 / 82

-2

しおりを挟む
「食事だ」

 しばらくすると、またあの男がやってきた。コップに入ったお茶とサンドイッチを床に置くとそのまま退室しようとする。

「ちょっと、これじゃ食えない」
「……お上品なことだ」

 男は至極面倒そうな顔をしてランの腕の縄を解いた。

「ルゥ、ちゃんと食べようね」
「……嫌」
「元気がなくなっちゃうよ」

 ランはむずがるルゥになんとか言い聞かせながら食事をさせた。

「ん、よしいい子」
「ママ」
「何?」
「おしっこ」

 みるとルゥはもじもじしている。ランは慌てて見張っていた男を振り返った。

「……あの」
「……そこの隅に」

 男にそう言われてみると、バケツが置いてあった。

「ルゥ、そこでしな」
「うん」

 ルゥのお漏らしの危機を脱すると、ランはやっかいなことに今度は自分もしたくなった。

「すみませんオレも……手の縄を外して」

 男はランを引き摺ってバケツのそばに立たせると、拘束した手を前に縛り直した。

「ほら、しろ」
「……くそっ」

 悪趣味なことに男は監視をやめる気はないらしい。その屈辱でランの顔は歪んだ。

「……ようやくいい顔になってきた」

 男はそんなランを見て、満足そうにしている。
 こんな男のいいなりになるしかないなんて、とランは悔しくてたまらなかった。

「向こうの色よい返事を待つことだな」

 男はそう捨て台詞を残して去っていった。

「いつまでもここに居るわけにはいかない……」

 見張りがいなくなり、ランはどうにかここから出られないか考えはじめた。ランだけならまだいい。ここにはルゥもいるのだ。
 あの男達が無事に帰してくれるのか、確証もない。

「ママ、さむい」
「うん、ママにくっついて」

 こんな風に縛られていては、ルゥを抱きしめてやることも出来ない。
 ここは隙間風も酷くて、夜風が冷たく吹き込んでくる。

「……ん? 隙間風?」

 ランはそのことに気が付いて身を起こした。どこかから風が入り込んでくるなら、その穴が空いているはずだ。

 ランが五感を研ぎ澄ませて風の入り口を探ると、朽ちた木箱の後ろの壁が崩れているのを発見した。

「ここ……、ここから出られるか……?」

 ランは漆喰の壁と中の木材をつま先で剥がそうとした。
 すると存外に大きな音がして、ビクリとしてしまう。

「バレないように……少しずつ……」

 ランは根気強くそこを足でひっかき続けた。
 どれぐらい時間が経っただろうか、窓も塞いであってよくわからないが、明け方の鳥の鳴き声がする。

「これぐらい空けば……」

 そこは先程よりも大きく空いていた。この大きさなら外に出られる。ただし……ルゥだけ。

「ルゥ」

 ランは眠っていたルゥに声をかけた。

「なに、ママ」
「あのな、ここから外に出てパパにお迎えに来てくれるように頼んで欲しいんだ」
「ママは?」
「ママは行けない、ルゥひとりでいけるか?」

 ルゥはじっとランの顔を見つめた。そして元気よく頷く。

「うん、できるよ」
「よし、いい子だ」

 ランは身を引きちぎられそうな思いで、ルゥを穴から外に出した。

「ママ、まってて」
「うん! 頼りにしてるよ」

 精一杯の笑顔をルゥに向けると、ルゥはしっかりした足取りで歩いていった。

「これで、ルゥだけでも助かる……」

 ほっとした直後、すぐに不安が襲ってくる。ルゥが途中でまた奴らに捕まったら。もしくはどこかで事故にあったりしたら。

「ふっ……くっ……」

 ルゥがいたことで張り詰めていた気持ちが揺るんで、ランは涙を流した。

「大丈夫、あの子はしっかりしてるから」

 自分にそう言い聞かせ、ランは唇を噛みしめた。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

【完結】伯爵家当主になりますので、お飾りの婚約者の僕は早く捨てて下さいね?

MEIKO
BL
 【完結】伯爵家次男のマリンは、公爵家嫡男のミシェルの婚約者として一緒に過ごしているが実際はお飾りの存在だ。そんなマリンは池に落ちたショックで前世は日本人の男子で今この世界が小説の中なんだと気付いた。マズい!このままだとミシェルから婚約破棄されて路頭に迷う未来しか見えない!  僕はそこから前世の特技を活かしてお金を貯め、ミシェルに愛する人が現れるその日に備えだす。2年後、万全の備えと新たな朗報を得た僕は、もう婚約破棄してもらっていいんですけど?ってミシェルに告げる。なのに対象外のはずの僕に未練たらたらなのどうして? ※R対象話には『*』マーク付けます。

巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編完結】

晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。 発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。 そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。 第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。

生まれ変わったら知ってるモブだった

マロン
BL
僕はとある田舎に小さな領地を持つ貧乏男爵の3男として生まれた。 貧乏だけど一応貴族で本来なら王都の学園へ進学するんだけど、とある理由で進学していない。 毎日領民のお仕事のお手伝いをして平民の困り事を聞いて回るのが僕のしごとだ。 この日も牧場のお手伝いに向かっていたんだ。 その時そばに立っていた大きな樹に雷が落ちた。ビックリして転んで頭を打った。 その瞬間に思い出したんだ。 僕の前世のことを・・・この世界は僕の奥さんが描いてたBL漫画の世界でモーブル・テスカはその中に出てきたモブだったということを。

冤罪で追放された王子は最果ての地で美貌の公爵に愛し尽くされる 凍てついた薔薇は恋に溶かされる

尾高志咲/しさ
BL
旧題:凍てついた薔薇は恋に溶かされる 🌟第10回BL小説大賞(2022年)奨励賞。2025年11月アンダルシュノベルズより刊行🌟 ロサーナ王国の病弱な第二王子アルベルトは、突然、無実の罪状を突きつけられて北の果ての離宮に追放された。王子を裏切ったのは幼い頃から大切に想う宮中伯筆頭ヴァンテル公爵だった。兄の王太子が亡くなり、世継ぎの身となってからは日々努力を重ねてきたのに。信頼していたものを全て失くし向かった先で待っていたのは……。 ――どうしてそんなに優しく名を呼ぶのだろう。 お前に裏切られ廃嫡されて最北の離宮に閉じ込められた。 目に映るものは雪と氷と絶望だけ。もう二度と、誰も信じないと誓ったのに。 ただ一人、お前だけが私の心を凍らせ溶かしていく。 執着攻め×不憫受け 美形公爵×病弱王子 不憫展開からの溺愛ハピエン物語。 ◎書籍掲載は、本編と本編後の四季の番外編:春『春の来訪者』です。 四季の番外編:夏以降及び小話は本サイトでお読みいただけます。 なお、※表示のある回はR18描写を含みます。 🌟第10回BL小説大賞での応援ありがとうございました! 🌟本作は旧Twitterの「フォロワーをイメージして同人誌のタイトルつける」タグで貴宮あすかさんがくださったタイトル『凍てついた薔薇は恋に溶かされる』から思いついて書いた物語です。ありがとうございました。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

回帰したシリルの見る夢は

riiko
BL
公爵令息シリルは幼い頃より王太子の婚約者として、彼と番になる未来を夢見てきた。 しかし王太子は婚約者の自分には冷たい。どうやら彼には恋人がいるのだと知った日、物語は動き出した。 嫉妬に狂い断罪されたシリルは、何故だかきっかけの日に回帰した。そして回帰前には見えなかったことが少しずつ見えてきて、本当に望む夢が何かを徐々に思い出す。 執着をやめた途端、執着される側になったオメガが、次こそ間違えないようにと、可愛くも真面目に奮闘する物語! 執着アルファ×回帰オメガ 本編では明かされなかった、回帰前の出来事は外伝に掲載しております。 性描写が入るシーンは ※マークをタイトルにつけます。 物語お楽しみいただけたら幸いです。 *** 2022.12.26「第10回BL小説大賞」で奨励賞をいただきました! 応援してくれた皆様のお陰です。 ご投票いただけた方、お読みくださった方、本当にありがとうございました!! ☆☆☆ 2024.3.13 書籍発売&レンタル開始いたしました!!!! 応援してくださった読者さまのお陰でございます。本当にありがとうございます。書籍化にあたり連載時よりも読みやすく書き直しました。お楽しみいただけたら幸いです。

【完結】一生に一度だけでいいから、好きなひとに抱かれてみたい。

村松砂音(抹茶砂糖)
BL
第13回BL大賞で奨励賞をいただきました! ありがとうございました!! いつも不機嫌そうな美形の騎士×特異体質の不憫な騎士見習い <あらすじ> 魔力欠乏体質者との性行為は、死ぬほど気持ちがいい。そんな噂が流れている「魔力欠乏体質」であるリュカは、父の命令で第二王子を誘惑するために見習い騎士として騎士団に入る。 見習い騎士には、側仕えとして先輩騎士と宿舎で同室となり、身の回りの世話をするという規則があり、リュカは隊長を務めるアレックスの側仕えとなった。 いつも不機嫌そうな態度とちぐはぐなアレックスのやさしさに触れていくにつれて、アレックスに惹かれていくリュカ。 ある日、リュカの前に第二王子のウィルフリッドが現れ、衝撃の事実を告げてきて……。 親のいいなりで生きてきた不憫な青年が、恋をして、しあわせをもらう物語。 ※性描写が多めの作品になっていますのでご注意ください。 └性描写が含まれる話のサブタイトルには※をつけています。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」さまで作成しました。

夫婦喧嘩したのでダンジョンで生活してみたら思いの外快適だった

ミクリ21 (新)
BL
夫婦喧嘩したアデルは脱走した。 そして、連れ戻されたくないからダンジョン暮らしすることに決めた。 旦那ラグナーと義両親はアデルを探すが当然みつからず、実はアデルが神子という神託があってラグナー達はざまぁされることになる。 アデルはダンジョンで、たまに会う黒いローブ姿の男と惹かれ合う。

処理中です...