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4話 現地視察なのですわ
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「それでは今日はお疲れ様でした。お休みなさいませ、ハルト様」
「あ……うん」
キスもしないのだからある程度想像はついていたが、式が終わって夜になるとリリアンナは自分の寝室……と、いうか勝手に空き部屋をリリアンナは寝室にしてしまったのだが……へと帰ってしまった。つまりは初夜も当然無し、という訳である。
「いやいやいや……そもそも、俺はリリアンナをよく知らないし……」
一人になった自室で、ハルトは独り言を呟いている。世によく知らない女と寝る男なんてごまんといるものだが、ハルトの性分では……無理だった。
「そもそもまだ自分の奥さん、って見れないよぉ~!」
ハルトはそう言いながらぐしゃぐしゃと頭をかいた。ハルトはリリアンナの……容姿に関しては美しいと思っている。性格については……ちょっとおかしな所はあるけども……。
「はぁ、なんか疲れた。寝よ」
ハルトはぐったりとしてベッドに潜り込んだ。これまでのハルトは自分が物理的に強くなる事や、戦略や魔物討伐の作戦に頭を悩ませても、こういう事には脳みそを裂いてこなかったのだ。
「はあ……。ハルト様、大丈夫だったかしら」
一方ここはリリアンナの寝室。彼女は窓辺で月の光を浴びながら夜空を眺めていた。
「申し訳ないわ……私の目的に巻き込んでしまって」
この国では女に資産を持つ権利が無い。だからこそ、やりたい事があるなら資産のある夫を持つ必要があったのだ。そして王子との結婚がご破算になった所で、リリアンナの選択はハルトとの結婚しかなかった。
「ハルト様……良い方なのにね……」
利用するせめてもの償いに、リリアンナは形だけの妻として努めようと思った。ハルトに愛する人が出来た時は……見ない振りや身を引く事を考えていたのだ。だから神の誓いのキスも避けた。
「はぁ……」
モンブロワの領主の館には、この夜……ちょっと噛み合わないため息が響き渡ったのである。
「ご主人様、おはようございます」
「んーっ! おはようエドモンド」
「朝のお茶でございます」
「ありがとう」
エドモンドはハルトの寝室を見渡した。そしてそこに新妻の姿の無い事を知って密かに嘆息した。
「エドモンド、リリアンナに伝えてくれ。今日は街に出ると」
「は、畏まりました」
朝食を終え、馬車の準備が整うと二人はワーズの街に繰り出した。
「ハルト様、なぜ急に外出を……?」
「リリアンナ、君は自分の押さえた用地を実際見たかい?」
「……いいえ」
「やっぱりね。いいかいリリアンナ。戦場……じゃなかった現場を実際に見ることは大事だよ」
ハルト達の乗った馬車は大通りの、リリアンナが仮押さえした土地の前に止まった。
「さぁ、ここだよ」
「ここは……うっ……」
リリアンナは思わずハンカチで鼻を押さえた。それもそのはず、その辺は水はけが悪いのか、汚水がたまっていたのだ。
「あっさりと土地を貸し出す訳だ」
「ハルト様……私浅はかでしたわ……仲介者には文句を言って……」
「いや、このままでいいよ」
「……?」
訝しむリリアンナに向かって、ハルトはにっこりと笑った。
「この辺をまとめて再開発しよう。下水を整えて、建物も補強して……なんせ俺はここの領主様なんだからさ」
「ハルト様!」
リリアンナはハルトを見上げた。そしてもしかして自分はこの夫である勇者ハルトを侮っていたのかもしれない、と思った。
(まぁ、こういう事はウルスラが得意だからな……何か仕事を与えておけばしばらく大人しくしているだろうし)
一方のハルトはそんな事を考えていた。いや、得意なものにやらせるのが一番だし、それがリーダーの努めなのだが。
「ぶえっくし! まったくハルト達どこいっちゃったのよ」
ウルスラはその頃、一人でくしゃみをしていた。そーっと足を忍ばせて向かったのはリリアンナの部屋である。
「あたしがあの女の悪巧みを暴いてやるわ」
リリアンナの部屋はごく簡素であった。元々あったベッドとキャビネット。しかし、文机の周りだけは本や書類が散らばっている。
「ふうん……なにこれ……」
ウルスラが手に取ったのは先日ハルトが目にした事業計画書である。
「ふーむ、なになに……」
ウルスラはこれがきっと諸悪の根源だと確信してそのページをめくった。
「うむむむう……これは……」
そうしてウルスラは事業計画書を熟読しはじめたのである。
「リリアンナ、ほらレース小物の店があるよ」
「あら本当」
その頃、ハルト達はついでに街を散策していた。ハルトはリリアンナの気を引こうと女性の好みそうな店を指差した。
「入ってみよう。気に入ったのがあったら言ってくれ」
「えっ……」
ハルトは先だって店のドアを開いた。店は古びていたが、多種多様なレースの生地や細工物が並べてあった。
「あら……これはいいレースですわね」
「お嬢様、お目が高いね」
店にある生地を一目で見てそう感想をもらしたリリアンナに店主の老女は目を細めた。
「おいおい、この人は俺の妻なんだ。奥様って呼んでくれなくちゃ」
「あらあら新婚さんかね。それはそれは」
ハルトと店主がやりあってる間も、リリアンナはレース生地に見入っていた。
「なんて繊細で……作りもしっかりしてる」
リリアンナは王宮で沢山の高級レースを目にしてきた。このレースはそれにも負けない位の上質さだったのだ。
「これ、一反でおいくらかしら」
「そうさね、5000デナルくらいかね」
「高いっ!」
「安いわ!」
ハルトとリリアンナは同時に反対の反応をした。
「……え!?」
「あ……うん」
キスもしないのだからある程度想像はついていたが、式が終わって夜になるとリリアンナは自分の寝室……と、いうか勝手に空き部屋をリリアンナは寝室にしてしまったのだが……へと帰ってしまった。つまりは初夜も当然無し、という訳である。
「いやいやいや……そもそも、俺はリリアンナをよく知らないし……」
一人になった自室で、ハルトは独り言を呟いている。世によく知らない女と寝る男なんてごまんといるものだが、ハルトの性分では……無理だった。
「そもそもまだ自分の奥さん、って見れないよぉ~!」
ハルトはそう言いながらぐしゃぐしゃと頭をかいた。ハルトはリリアンナの……容姿に関しては美しいと思っている。性格については……ちょっとおかしな所はあるけども……。
「はぁ、なんか疲れた。寝よ」
ハルトはぐったりとしてベッドに潜り込んだ。これまでのハルトは自分が物理的に強くなる事や、戦略や魔物討伐の作戦に頭を悩ませても、こういう事には脳みそを裂いてこなかったのだ。
「はあ……。ハルト様、大丈夫だったかしら」
一方ここはリリアンナの寝室。彼女は窓辺で月の光を浴びながら夜空を眺めていた。
「申し訳ないわ……私の目的に巻き込んでしまって」
この国では女に資産を持つ権利が無い。だからこそ、やりたい事があるなら資産のある夫を持つ必要があったのだ。そして王子との結婚がご破算になった所で、リリアンナの選択はハルトとの結婚しかなかった。
「ハルト様……良い方なのにね……」
利用するせめてもの償いに、リリアンナは形だけの妻として努めようと思った。ハルトに愛する人が出来た時は……見ない振りや身を引く事を考えていたのだ。だから神の誓いのキスも避けた。
「はぁ……」
モンブロワの領主の館には、この夜……ちょっと噛み合わないため息が響き渡ったのである。
「ご主人様、おはようございます」
「んーっ! おはようエドモンド」
「朝のお茶でございます」
「ありがとう」
エドモンドはハルトの寝室を見渡した。そしてそこに新妻の姿の無い事を知って密かに嘆息した。
「エドモンド、リリアンナに伝えてくれ。今日は街に出ると」
「は、畏まりました」
朝食を終え、馬車の準備が整うと二人はワーズの街に繰り出した。
「ハルト様、なぜ急に外出を……?」
「リリアンナ、君は自分の押さえた用地を実際見たかい?」
「……いいえ」
「やっぱりね。いいかいリリアンナ。戦場……じゃなかった現場を実際に見ることは大事だよ」
ハルト達の乗った馬車は大通りの、リリアンナが仮押さえした土地の前に止まった。
「さぁ、ここだよ」
「ここは……うっ……」
リリアンナは思わずハンカチで鼻を押さえた。それもそのはず、その辺は水はけが悪いのか、汚水がたまっていたのだ。
「あっさりと土地を貸し出す訳だ」
「ハルト様……私浅はかでしたわ……仲介者には文句を言って……」
「いや、このままでいいよ」
「……?」
訝しむリリアンナに向かって、ハルトはにっこりと笑った。
「この辺をまとめて再開発しよう。下水を整えて、建物も補強して……なんせ俺はここの領主様なんだからさ」
「ハルト様!」
リリアンナはハルトを見上げた。そしてもしかして自分はこの夫である勇者ハルトを侮っていたのかもしれない、と思った。
(まぁ、こういう事はウルスラが得意だからな……何か仕事を与えておけばしばらく大人しくしているだろうし)
一方のハルトはそんな事を考えていた。いや、得意なものにやらせるのが一番だし、それがリーダーの努めなのだが。
「ぶえっくし! まったくハルト達どこいっちゃったのよ」
ウルスラはその頃、一人でくしゃみをしていた。そーっと足を忍ばせて向かったのはリリアンナの部屋である。
「あたしがあの女の悪巧みを暴いてやるわ」
リリアンナの部屋はごく簡素であった。元々あったベッドとキャビネット。しかし、文机の周りだけは本や書類が散らばっている。
「ふうん……なにこれ……」
ウルスラが手に取ったのは先日ハルトが目にした事業計画書である。
「ふーむ、なになに……」
ウルスラはこれがきっと諸悪の根源だと確信してそのページをめくった。
「うむむむう……これは……」
そうしてウルスラは事業計画書を熟読しはじめたのである。
「リリアンナ、ほらレース小物の店があるよ」
「あら本当」
その頃、ハルト達はついでに街を散策していた。ハルトはリリアンナの気を引こうと女性の好みそうな店を指差した。
「入ってみよう。気に入ったのがあったら言ってくれ」
「えっ……」
ハルトは先だって店のドアを開いた。店は古びていたが、多種多様なレースの生地や細工物が並べてあった。
「あら……これはいいレースですわね」
「お嬢様、お目が高いね」
店にある生地を一目で見てそう感想をもらしたリリアンナに店主の老女は目を細めた。
「おいおい、この人は俺の妻なんだ。奥様って呼んでくれなくちゃ」
「あらあら新婚さんかね。それはそれは」
ハルトと店主がやりあってる間も、リリアンナはレース生地に見入っていた。
「なんて繊細で……作りもしっかりしてる」
リリアンナは王宮で沢山の高級レースを目にしてきた。このレースはそれにも負けない位の上質さだったのだ。
「これ、一反でおいくらかしら」
「そうさね、5000デナルくらいかね」
「高いっ!」
「安いわ!」
ハルトとリリアンナは同時に反対の反応をした。
「……え!?」
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