29 / 61
ブリの照り焼きと通知音
しおりを挟む
「真希ちゃん」
「はーい」
「真希ちゃーん」
「はいはい」
この無意味な会話。見るからにバカップルである。だけどここは私の家だし、誰の目もないから構わないのだ。かのん君の叔父さんのカフェバーに行ってから以降、私はかのん君の濃厚な求愛からあんまり逃げなくなった。それをいいことにかのん君の行動はエスカレートしている。
「今、火使ってるから待っててよ」
「待ってるよー」
本日は私の自宅にて、はじめてかのん君に手料理を振る舞う予定だ。献立は、ブリの照り焼きにほうれん草のおひたし、それからおあげともやしの味噌汁に炊きたてごはん。
本当に普通。毎日食べられる普通の和食。以前ならかのん君はこういうの食べないかもとびくびくしながら出してたかもしれないけど、今なら大丈夫。
「うん、こんなもんかな」
焦げやすい照り焼きが上手くいったところでテーブルに並べる。かのん君も自然とそれを手伝ってくれる。
「おいしそー」
「さあ、召し上がれ」
「はい頂きます」
キチンと手を合わせて、かのん君は味噌汁を一口啜った。
「……おいしい」
「ゴマ油でもやしとおあげを炒めてあるの。コクが出るんだ」
「うーん、真希ちゃんのごはんってすごくほっとする」
ぱくぱくと食欲旺盛にかのん君は私の作ったご飯をほおばっている。
「かのん君がいっぱい食べてくれてうれしい」
「俺も、やっと真希ちゃんのごはんが食べられてうれしいな」
ほのぼのとした空気が二人の間に流れる。付き合い初めて間もないけれど、ずっとこうしていたような錯覚に陥る。その、夜のそういう事もまだなんだけど。
「また真希ちゃんのごはん食べたい! ……いい?」
「もちろん」
そんなおねだりも可愛くてしかたない。私は優しく見つめるかのん君の瞳を覗きこむ。あ……この感じ……キス、かな。
「……真希ちゃん」
「かのん、君」
今にも唇と唇が触れそうになった瞬間。私のスマホがピロンと通知音を立てた。
「んー! もう!」
音消しておけばよかった。ブツブツ言いながらスマホを覗くと桜井さんからのメッセージだった。
『ちょっと、大変』
なんだろう? かのん君の方をチラリと見ると不満そうに唇を尖らせていた。
『なに? どうしたの?』
かのん君の事を気にしながら、そっと返信するとすぐに既読がついて返信が来た。それを見た私は度肝を抜かれた。
『あんた、さらされてる』
どういう事? 嫌な予感がしながら、私はどういう事か桜井さんに聞いた。すると、しばらくの間があって画像が送られてきた。
『これ、あんたよね』
桜井さんの送ってきたのは確かに私の写真だった。それも、どっか明後日を向いていて隠れて撮ったような写真だ。呆然としていると、もう一枚の画像が送られてきた。それは先日かのん君が、私の事を彼女だと宣言したSNSの画像を加工したもの。『耳の形が一致』そう書き添えられている。
「か、かのん君……どうしよ……」
「なに、真希ちゃんどうしたの?」
震える手でスマホをかのん君を見せると、彼の顔がサッと曇った。
「これネットのか……この服この間の土曜日に来ていたやつじゃない?」
「あ、そうかも……」
確かにこのトップスを着ていった気がする。それじゃあ、これはその時に撮られたって事!?
『これどこで見つけたの?』
『メッセージアプリに貼られてて、かのん君のアカウントチェックしてたら見つけたの』
桜井さんに聞くと、そう教えてくれた。ああ、なんだろう胸がドキドキする。
「真希ちゃん、すぐに対処するから」
かのん君が、私の手を強く握る。そして私を抱きしめた。かのん君の香りに包まれて、少しだけほっとした。
「真希ちゃんはちょっと横になるといいよ」
「うん……」
私はベッドに横たわった。ちょっとこの展開はキャパオーバーなのが自分でも分かる。
「どうなっちゃうの……?」
かのん君がどこかと連絡をとっている声を横で聞きながら、私は目を瞑ってこれからを考えながら眉間を押さえた。
【ライト文芸エントリー中 応援よろしくお願いします!】
「はーい」
「真希ちゃーん」
「はいはい」
この無意味な会話。見るからにバカップルである。だけどここは私の家だし、誰の目もないから構わないのだ。かのん君の叔父さんのカフェバーに行ってから以降、私はかのん君の濃厚な求愛からあんまり逃げなくなった。それをいいことにかのん君の行動はエスカレートしている。
「今、火使ってるから待っててよ」
「待ってるよー」
本日は私の自宅にて、はじめてかのん君に手料理を振る舞う予定だ。献立は、ブリの照り焼きにほうれん草のおひたし、それからおあげともやしの味噌汁に炊きたてごはん。
本当に普通。毎日食べられる普通の和食。以前ならかのん君はこういうの食べないかもとびくびくしながら出してたかもしれないけど、今なら大丈夫。
「うん、こんなもんかな」
焦げやすい照り焼きが上手くいったところでテーブルに並べる。かのん君も自然とそれを手伝ってくれる。
「おいしそー」
「さあ、召し上がれ」
「はい頂きます」
キチンと手を合わせて、かのん君は味噌汁を一口啜った。
「……おいしい」
「ゴマ油でもやしとおあげを炒めてあるの。コクが出るんだ」
「うーん、真希ちゃんのごはんってすごくほっとする」
ぱくぱくと食欲旺盛にかのん君は私の作ったご飯をほおばっている。
「かのん君がいっぱい食べてくれてうれしい」
「俺も、やっと真希ちゃんのごはんが食べられてうれしいな」
ほのぼのとした空気が二人の間に流れる。付き合い初めて間もないけれど、ずっとこうしていたような錯覚に陥る。その、夜のそういう事もまだなんだけど。
「また真希ちゃんのごはん食べたい! ……いい?」
「もちろん」
そんなおねだりも可愛くてしかたない。私は優しく見つめるかのん君の瞳を覗きこむ。あ……この感じ……キス、かな。
「……真希ちゃん」
「かのん、君」
今にも唇と唇が触れそうになった瞬間。私のスマホがピロンと通知音を立てた。
「んー! もう!」
音消しておけばよかった。ブツブツ言いながらスマホを覗くと桜井さんからのメッセージだった。
『ちょっと、大変』
なんだろう? かのん君の方をチラリと見ると不満そうに唇を尖らせていた。
『なに? どうしたの?』
かのん君の事を気にしながら、そっと返信するとすぐに既読がついて返信が来た。それを見た私は度肝を抜かれた。
『あんた、さらされてる』
どういう事? 嫌な予感がしながら、私はどういう事か桜井さんに聞いた。すると、しばらくの間があって画像が送られてきた。
『これ、あんたよね』
桜井さんの送ってきたのは確かに私の写真だった。それも、どっか明後日を向いていて隠れて撮ったような写真だ。呆然としていると、もう一枚の画像が送られてきた。それは先日かのん君が、私の事を彼女だと宣言したSNSの画像を加工したもの。『耳の形が一致』そう書き添えられている。
「か、かのん君……どうしよ……」
「なに、真希ちゃんどうしたの?」
震える手でスマホをかのん君を見せると、彼の顔がサッと曇った。
「これネットのか……この服この間の土曜日に来ていたやつじゃない?」
「あ、そうかも……」
確かにこのトップスを着ていった気がする。それじゃあ、これはその時に撮られたって事!?
『これどこで見つけたの?』
『メッセージアプリに貼られてて、かのん君のアカウントチェックしてたら見つけたの』
桜井さんに聞くと、そう教えてくれた。ああ、なんだろう胸がドキドキする。
「真希ちゃん、すぐに対処するから」
かのん君が、私の手を強く握る。そして私を抱きしめた。かのん君の香りに包まれて、少しだけほっとした。
「真希ちゃんはちょっと横になるといいよ」
「うん……」
私はベッドに横たわった。ちょっとこの展開はキャパオーバーなのが自分でも分かる。
「どうなっちゃうの……?」
かのん君がどこかと連絡をとっている声を横で聞きながら、私は目を瞑ってこれからを考えながら眉間を押さえた。
【ライト文芸エントリー中 応援よろしくお願いします!】
0
あなたにおすすめの小説
椿の国の後宮のはなし
犬噛 クロ
キャラ文芸
架空の国の後宮物語。
若き皇帝と、彼に囚われた娘の話です。
有力政治家の娘・羽村 雪樹(はねむら せつじゅ)は「男子」だと性別を間違われたまま、自国の皇帝・蓮と固い絆で結ばれていた。
しかしとうとう少女であることを気づかれてしまった雪樹は、蓮に乱暴された挙句、後宮に幽閉されてしまう。
幼なじみとして慕っていた青年からの裏切りに、雪樹は混乱し、蓮に憎しみを抱き、そして……?
あまり暗くなり過ぎない後宮物語。
雪樹と蓮、ふたりの関係がどう変化していくのか見守っていただければ嬉しいです。
※2017年完結作品をタイトルとカテゴリを変更+全面改稿しております。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あまりさんののっぴきならない事情
菱沼あゆ
キャラ文芸
強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。
充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。
「何故、こんなところに居る? 南条あまり」
「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」
「それ、俺だろ」
そーですね……。
カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」
母に紹介され、なにかの間違いだと思った。
だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。
それだけでもかなりな不安案件なのに。
私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。
「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」
なーんて義父になる人が言い出して。
結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。
前途多難な同居生活。
相変わらず専務はなに考えているかわからない。
……かと思えば。
「兄妹ならするだろ、これくらい」
当たり前のように落とされる、額へのキス。
いったい、どうなってんのー!?
三ツ森涼夏
24歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務
背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。
小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。
たまにその頑張りが空回りすることも?
恋愛、苦手というより、嫌い。
淋しい、をちゃんと言えずにきた人。
×
八雲仁
30歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』専務
背が高く、眼鏡のイケメン。
ただし、いつも無表情。
集中すると周りが見えなくなる。
そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。
小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。
ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!?
*****
千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』
*****
表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる