ジェンダーレス男子と不器用ちゃん

高井うしお

文字の大きさ
47 / 61

テレビデビュー!

しおりを挟む
「私がそばにいるから!……違うな。うーん」

 仕事で疲れたかのん君が早々に寝てしまったあと、私はぶつぶつと見えない敵と戦う口上を考えて居た。かのん君が私を助けてくれたように、私もかのん君を助けたいんだけどな。

「もうよく分かんないや」

 そんなことを考えていたら時刻は深夜を回ってしまってた。いけない、早く寝ないと……。

「そんな台詞、言う機会がないのが一番だけどね……」



 そんな風にして眠りについた翌朝、かのん君のノックで目を覚ました。

「真希ちゃーん朝ご飯だよー」
「ふぁーい」

 ああ、寝不足だ。かのん君は夜遅くまで仕事だったのに起きてご飯を作ってくれたらしい。

「あー、ふあー」
「眠そうだね、夜更かししたから」
「かのん君は元気だねー」
「うーん、なんか興奮してるのかも……。俺ね、今度テレビに出るんだ」
「えっ……?」

 かのん君の突然の告白に私は食べてたパンをおっことしそうになった。

「テレビ……?」
「うん、前から山口さんから出ないかって言われてたんだけど」
「なんで急に?」
「なんか覚悟が出来たっていうか。ちゃんと芸能界で生き残らなきゃって思って」

 かのん君はちょっとインタビューに答えましたみたいな言い方だけど、違うよね。これ。なんで急にこんな事言いだしたんだろう。

「それってどんな番組?」
「うん、バラエティなんだけど……」
「えっ……?」

 またまた私はパンを落としそうになった。ええい、とっとと食べてしまおう。

「それってトーク番組とか……?」
「ううん、クイズ番組だよ」

 放映が決まったら教えるとかのん君が言っているのを私は上の空で聞いていた。なんか……いやな予感がする。



「それでは今週の『クイズでかまって』はじまりましたー、司会のかまいたち虹朗です。
いくわよーそれではゲスト! 若手俳優の真鍋敦之さんに新人女優のあさか令佳さん、それからモデルのかのんさんでーす」

 そして放映日、私はテレビの前に釘付けになっていた。大人気おねぇタレントかまいたち虹朗の看板番組。ゴールデンタイムの放送に、かのん君はゲストで出ていた。

「いやー今日はフレッシュな顔ぶれですね」

 サブ司会の局アナが合いの手を入れる。

「なかでも、かのんさんはテレビ初登場だとか」
「よろしく、おねがいします」

「いやーん、緊張しちゃってかわいい~、私がもみほぐしてあげようかしら」
「あ……大丈夫です」
「ちょっとー、しょっぱーい。かまうぃっしゅ!」

 かのん君の素の反応に対して、かまいたち虹朗はお決まりの一発ギャグで場を和ませた。やるな……さすがプロ。
 そうして、クイズ番組らしく、セットへとゲスト達は移動する。この番組は一般常識をどれだけ答えられるかを競い合い、答えられなければ罰ゲームが待っている。

「それじゃあ第一問……」

 かのん君とほかのゲスト達は次々と答えて行き、出来なければセンブリ茶や、グルグルバットをさせられていた。芸人さんが出るようなのと違って罰ゲームもマイルドなようだ。
 そしてコーナーはそれぞれのゲストに関するフリートークへと移っていった。

「かのん君はモデルだそうだけどぉ、メイクばっちりね」
「これは元々趣味でして……」
「お母さんの鏡台から口紅盗ったりしたぁ? あたしはそうだったのよぉ」
「いえ、小さい頃はそんな事なくて中学くらいですね、周りの女の子達がメイクしてるの見て自分もやりたくなって」

 ここまではかのん君から以前聞いた内容だ。かまいたちさんはそれを聞いてぐいっと身を乗り出した。

「そうなの? 男の人好きとかじゃなくて?」
「それはないです、彼女もいますし」
「ええ~、残念かまういっしゅー」
「めちゃくちゃかわいいです」
「ああ~」

 スタジオはドッと笑いに包まれた。そして画面をみていた私は恥ずかしさで身もだえていたのだった。かのん君が人前でのろけるのはいつもの事だけど、これは日本全国にむけてだもん。そりゃ恥ずかしいよ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

椿の国の後宮のはなし

犬噛 クロ
キャラ文芸
架空の国の後宮物語。 若き皇帝と、彼に囚われた娘の話です。 有力政治家の娘・羽村 雪樹(はねむら せつじゅ)は「男子」だと性別を間違われたまま、自国の皇帝・蓮と固い絆で結ばれていた。 しかしとうとう少女であることを気づかれてしまった雪樹は、蓮に乱暴された挙句、後宮に幽閉されてしまう。 幼なじみとして慕っていた青年からの裏切りに、雪樹は混乱し、蓮に憎しみを抱き、そして……? あまり暗くなり過ぎない後宮物語。 雪樹と蓮、ふたりの関係がどう変化していくのか見守っていただければ嬉しいです。 ※2017年完結作品をタイトルとカテゴリを変更+全面改稿しております。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あまりさんののっぴきならない事情

菱沼あゆ
キャラ文芸
 強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。  充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。 「何故、こんなところに居る? 南条あまり」 「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」 「それ、俺だろ」  そーですね……。  カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」 母に紹介され、なにかの間違いだと思った。 だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。 それだけでもかなりな不安案件なのに。 私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。 「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」 なーんて義父になる人が言い出して。 結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。 前途多難な同居生活。 相変わらず専務はなに考えているかわからない。 ……かと思えば。 「兄妹ならするだろ、これくらい」 当たり前のように落とされる、額へのキス。 いったい、どうなってんのー!? 三ツ森涼夏  24歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務 背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。 小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。 たまにその頑張りが空回りすることも? 恋愛、苦手というより、嫌い。 淋しい、をちゃんと言えずにきた人。 × 八雲仁 30歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』専務 背が高く、眼鏡のイケメン。 ただし、いつも無表情。 集中すると周りが見えなくなる。 そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。 小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。 ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!? ***** 千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』 ***** 表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

処理中です...