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ハイヒールの花婿
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「それじゃ、手をあげて……はいはい」
ドレスの仮縫いの日がやって来た。このチェックが終わったら、本縫いに入る。
「まー、ゆっくりみんなとお話出来るのは二次会かな……」
「うん、二次会は好きに出来るから」
「それにしてもさくらが二次会幹事を引き受けてくれるとはなぁ……」
かのん君が結婚の報告をさくらちゃんにした時、、自分から申し出てくれたらしい。そしてリングピローもさくらちゃんが作ると。さくらちゃんなりの私達への贖罪なのかもしれない。
「これからもいい友達でいられるといいね」
「うん」
一度はSNS炎上犯として関係を切ろうとした。それを止めたのは私だ。今はさくらちゃんは学生時代からの貴重な友人として寄り添ってくれている。
結婚式の準備は目まぐるしく、あっという間に月日が過ぎた。
――そして晩秋。ついに私達の結婚式の前日となった。かのん君のおすすめエステサロンでウェディングコースも奮発してつけて、私史上このうえない肌のコンディションになっている。
「とうとう明日だねー」
「うん……かのん君は今日は早く帰ってこられて良かった」
「山口さんに本当は休みにしてくれって言ったんだけどなぁ」
「まぁ、明日はバタバタだろうし。今日はゆっくりしとこ」
温かいハーブティを頂きながら、ぼんやりとテレビを見る。
「……真希ちゃん、予行練習しとこうか」
「ん?」
「ほら、俺すぐ緊張するし」
かのん君は軽く微笑むと私の手をとった。
「真希さん……病める時も、えー健やかなる時も」
「かのん君、私達人前式にしたじゃん」
「いいの! つまりお互いに何があっても、一緒にいる事を誓いますか?」
「誓います」
「では誓いのキスを」
私はかのん君にキスをした。なにこれ。私はふふっと笑いがこぼれるのを抑えられなかった。その口をまたかのん君がふさぐ。
「……出会ったのは五月だっけ」
「半年だね。まるでジェットコースターみたいだった」
「結局デートらしいデートは水族館だけか」
かのん君が軽くため息をつく。同棲しているから毎日会ってはいるけどお出かけはまた違うもんね。
「沖縄もいったじゃん」
「途中邪魔が入ったけどね……ま、これからどこにでも行けばいいか」
「うん、夫婦でお出かけもデートだよ」
夫婦。自分で口に出してから、頬が赤くなるのを感じる。まだこの言葉には慣れない。
「真希ちゃん、明日はよろしくね」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
私たちはお互いに頭を下げた。そしてまたキスを交わす。
「もうこんな時間だ、明日の為に寝なきゃ」
「……しかたないね」
もう少しいちゃいちゃして居たかったけれど、寝不足でクマでもできたら各方面に申し訳ない。私は高揚する気分を必死に押し殺して眠りについた。
翌日は朝からメイクにヘアアレンジにと大忙しだ。早起きをしてかのん君の作ってくれた完璧なイングリッシュブレックファーストを頂く。
「今食べておかないと、式中はあんまり食べられないっていうし」
「おいしい……お代わりしたいくらい」
「それはドレスが入らなくなるよ!」
そして式場までタクシーで移動。かのん君がスッピンを晒したくないとか言うもので。そしてヘアメイクをして貰う。
「んんー化粧乗りばっちり」
「……かのん君」
「何?」
「どうしてここにいるの?」
花嫁の控え室の鏡にデンと陣取っているのはかのん君だ。
「えーだってメイクするとこないんだもん。一人じゃ寂しいし」
「式前に花嫁姿見るのってダメなんじゃなかったっけ……まーいーか」
かのん君は自分でメイクしている。男子メイクはなにやらお作法が違うそうで、撮影とかでもほとんど自分でやっているらしい。私は素直にプロの手を借りる。髪がシンプルなアップスタイルに、そして顔面に縦横無尽にぶらしが行き交う。
「おお……これが私」
「あー真希ちゃん、いいねいいね」
プロのメイクさんの手によって、顔がシュッとして目がパッとして見える。このままスタンプにして持って帰れないかしら……。私はそんなバカな事を考えていた。
ドレスの仮縫いの日がやって来た。このチェックが終わったら、本縫いに入る。
「まー、ゆっくりみんなとお話出来るのは二次会かな……」
「うん、二次会は好きに出来るから」
「それにしてもさくらが二次会幹事を引き受けてくれるとはなぁ……」
かのん君が結婚の報告をさくらちゃんにした時、、自分から申し出てくれたらしい。そしてリングピローもさくらちゃんが作ると。さくらちゃんなりの私達への贖罪なのかもしれない。
「これからもいい友達でいられるといいね」
「うん」
一度はSNS炎上犯として関係を切ろうとした。それを止めたのは私だ。今はさくらちゃんは学生時代からの貴重な友人として寄り添ってくれている。
結婚式の準備は目まぐるしく、あっという間に月日が過ぎた。
――そして晩秋。ついに私達の結婚式の前日となった。かのん君のおすすめエステサロンでウェディングコースも奮発してつけて、私史上このうえない肌のコンディションになっている。
「とうとう明日だねー」
「うん……かのん君は今日は早く帰ってこられて良かった」
「山口さんに本当は休みにしてくれって言ったんだけどなぁ」
「まぁ、明日はバタバタだろうし。今日はゆっくりしとこ」
温かいハーブティを頂きながら、ぼんやりとテレビを見る。
「……真希ちゃん、予行練習しとこうか」
「ん?」
「ほら、俺すぐ緊張するし」
かのん君は軽く微笑むと私の手をとった。
「真希さん……病める時も、えー健やかなる時も」
「かのん君、私達人前式にしたじゃん」
「いいの! つまりお互いに何があっても、一緒にいる事を誓いますか?」
「誓います」
「では誓いのキスを」
私はかのん君にキスをした。なにこれ。私はふふっと笑いがこぼれるのを抑えられなかった。その口をまたかのん君がふさぐ。
「……出会ったのは五月だっけ」
「半年だね。まるでジェットコースターみたいだった」
「結局デートらしいデートは水族館だけか」
かのん君が軽くため息をつく。同棲しているから毎日会ってはいるけどお出かけはまた違うもんね。
「沖縄もいったじゃん」
「途中邪魔が入ったけどね……ま、これからどこにでも行けばいいか」
「うん、夫婦でお出かけもデートだよ」
夫婦。自分で口に出してから、頬が赤くなるのを感じる。まだこの言葉には慣れない。
「真希ちゃん、明日はよろしくね」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
私たちはお互いに頭を下げた。そしてまたキスを交わす。
「もうこんな時間だ、明日の為に寝なきゃ」
「……しかたないね」
もう少しいちゃいちゃして居たかったけれど、寝不足でクマでもできたら各方面に申し訳ない。私は高揚する気分を必死に押し殺して眠りについた。
翌日は朝からメイクにヘアアレンジにと大忙しだ。早起きをしてかのん君の作ってくれた完璧なイングリッシュブレックファーストを頂く。
「今食べておかないと、式中はあんまり食べられないっていうし」
「おいしい……お代わりしたいくらい」
「それはドレスが入らなくなるよ!」
そして式場までタクシーで移動。かのん君がスッピンを晒したくないとか言うもので。そしてヘアメイクをして貰う。
「んんー化粧乗りばっちり」
「……かのん君」
「何?」
「どうしてここにいるの?」
花嫁の控え室の鏡にデンと陣取っているのはかのん君だ。
「えーだってメイクするとこないんだもん。一人じゃ寂しいし」
「式前に花嫁姿見るのってダメなんじゃなかったっけ……まーいーか」
かのん君は自分でメイクしている。男子メイクはなにやらお作法が違うそうで、撮影とかでもほとんど自分でやっているらしい。私は素直にプロの手を借りる。髪がシンプルなアップスタイルに、そして顔面に縦横無尽にぶらしが行き交う。
「おお……これが私」
「あー真希ちゃん、いいねいいね」
プロのメイクさんの手によって、顔がシュッとして目がパッとして見える。このままスタンプにして持って帰れないかしら……。私はそんなバカな事を考えていた。
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