13 / 15
お兄ちゃんの味野郎!
しおりを挟む
俺が63円でネムコインを追加購入して5日後。
12月21日。
この五日間もまた仮想通貨の値段は激しく上下した。
所有量が増えたせいで、価格の上下動与える精神的な負担も増えている。
価格の動きに合わせて、俺のテンションも上がったり下がったりの日々。
そしてその結果……。
ネムコインの価格は100円を超えていた。
11000ネムコインを所有している俺は110万円を手にしている計算になる。
もちろん現時点での話だが……。
「お兄ちゃん、あの時は叩いて、ごめんねっ!」
夏葉がリビングのソファーでノートPCを眺める俺にすり寄ってくる。
夏葉はネムコインを買い増ししようとしたとき、俺をリモコンで殴打しようとした。
力士であれば廃業の危険がある行為だ。
しかし俺はそれでも買い増しを強行した。
その結果、40万円が110万円に……。
「ねえ、お兄ちゃん、私、温泉に行きたいなっ」
夏葉、俺の肩に頭を乗せると、甘えた声を出す。
この数日、急激に増えたこの金で温泉に行こうとの提案である。
投資した40万との差額で考えると70万、こんな大金が急に転がり込んで来たのだ。
温泉のひとつも行きたくなる気持ちは理解できる。
ゴロゴロとまるで猫のように俺にまとわりつく夏葉。
「ねえ、ねえ、お兄ちゃん、おんせーん」
夏葉の声はさらに甘えん坊モードに。
たしかに90万増えたなら数万円の温泉旅行なら十分に可能。
可能ではあるのだが……。
「いや、そんなムダ金はない」
俺はきっぱりと断った。
「えーっ、どうして!? あるでしょ」
「この金を使ってしまったら、もう増やせないだろうが! この金はな、未来にもっと増える金だ。ここで使ってどうする?」
俺は心からそう思っていた。
いままでの俺ならば、夏葉の提案に大賛成し、兄妹水入らずの温泉ライフを堪能したことだろう。
しかし、俺は仮想通貨への投資を通じて大きな心境の変化があったのだ。
この金は俺の代わりに金を掴んで帰って来てくれる。
まるでアユを使ってアユを釣るアユの友釣りのように。
元手となるアユを食べてしまうのは愚か者の行動なのである!
金を働かせて、お金を得る。
それこそが絶対働かないマンの取るべきスタイルなのだ。
夏葉にもそのことをわかってもらわねばなるまい……。
「いいか、夏葉、金の使い方とは、このようにやるんだ」
俺はそう宣言すると、さらに20万をクイック入金し、その金で仮想通貨イーサリアムを購入する。
イーサリアムとはビットコインに次いで時価総額でナンバー2の仮想通貨、多くの仮想通貨はイーサリアムの技術を使用して開発されていて、第二の仮想通貨界の基軸通貨として………………、グハッ!
俺の思考が強い衝撃によって寸断される。
側頭部を固い物で強打されたかのような……………………。
夏葉がテレビのリモコンを握り締めている!
ついにリモコンが俺の頭に振り下ろされたのだ。
さっきまであんなに俺に甘えていたのに、いまでは鬼の形相で金棒ではなく、リモコンを……。
「おい、なにをする!」
「お兄ちゃんこそ! なにしてるの!」
「なにって、さらに投資をして、金を増やそうと……」
「お兄ちゃん、完全に冷静さを失ってるよ! やっぱり味をしめてる! 味をしめまくりだよ! お兄ちゃんの味野郎!」
味野郎!?
俺は味野郎なのか?
たぶん悪口なのだろうが、全然悔しくはない。
しかし、夏葉にとって俺が味野郎になってしまったことは相当に腹立たしいことらしい。
「バカバカ、もう60万円だよ! なに考えてるの! 本当に破産しちゃうよ!」
「落ち着け、いいか、イーサリアムはビットコインに対抗できる存在なんだ。スマートコントラクトといってな……」
「そんなの、知らないよ! 60万円をなんだと思ってるの! 大変なことになっても知らないからねっ! ちょっと設けたからってお兄ちゃんは天狗になってるよ、仮想天狗だよ!」
夏葉はぶんぶんとテレビのリモコンを振り回しながら、いまにも泣き出さんばかり。
怒り狂う夏葉をなだめるために、仮想天狗こと俺はいずれは温泉に連れていくことを約束せざるを得ないのであった。
12月21日。
この五日間もまた仮想通貨の値段は激しく上下した。
所有量が増えたせいで、価格の上下動与える精神的な負担も増えている。
価格の動きに合わせて、俺のテンションも上がったり下がったりの日々。
そしてその結果……。
ネムコインの価格は100円を超えていた。
11000ネムコインを所有している俺は110万円を手にしている計算になる。
もちろん現時点での話だが……。
「お兄ちゃん、あの時は叩いて、ごめんねっ!」
夏葉がリビングのソファーでノートPCを眺める俺にすり寄ってくる。
夏葉はネムコインを買い増ししようとしたとき、俺をリモコンで殴打しようとした。
力士であれば廃業の危険がある行為だ。
しかし俺はそれでも買い増しを強行した。
その結果、40万円が110万円に……。
「ねえ、お兄ちゃん、私、温泉に行きたいなっ」
夏葉、俺の肩に頭を乗せると、甘えた声を出す。
この数日、急激に増えたこの金で温泉に行こうとの提案である。
投資した40万との差額で考えると70万、こんな大金が急に転がり込んで来たのだ。
温泉のひとつも行きたくなる気持ちは理解できる。
ゴロゴロとまるで猫のように俺にまとわりつく夏葉。
「ねえ、ねえ、お兄ちゃん、おんせーん」
夏葉の声はさらに甘えん坊モードに。
たしかに90万増えたなら数万円の温泉旅行なら十分に可能。
可能ではあるのだが……。
「いや、そんなムダ金はない」
俺はきっぱりと断った。
「えーっ、どうして!? あるでしょ」
「この金を使ってしまったら、もう増やせないだろうが! この金はな、未来にもっと増える金だ。ここで使ってどうする?」
俺は心からそう思っていた。
いままでの俺ならば、夏葉の提案に大賛成し、兄妹水入らずの温泉ライフを堪能したことだろう。
しかし、俺は仮想通貨への投資を通じて大きな心境の変化があったのだ。
この金は俺の代わりに金を掴んで帰って来てくれる。
まるでアユを使ってアユを釣るアユの友釣りのように。
元手となるアユを食べてしまうのは愚か者の行動なのである!
金を働かせて、お金を得る。
それこそが絶対働かないマンの取るべきスタイルなのだ。
夏葉にもそのことをわかってもらわねばなるまい……。
「いいか、夏葉、金の使い方とは、このようにやるんだ」
俺はそう宣言すると、さらに20万をクイック入金し、その金で仮想通貨イーサリアムを購入する。
イーサリアムとはビットコインに次いで時価総額でナンバー2の仮想通貨、多くの仮想通貨はイーサリアムの技術を使用して開発されていて、第二の仮想通貨界の基軸通貨として………………、グハッ!
俺の思考が強い衝撃によって寸断される。
側頭部を固い物で強打されたかのような……………………。
夏葉がテレビのリモコンを握り締めている!
ついにリモコンが俺の頭に振り下ろされたのだ。
さっきまであんなに俺に甘えていたのに、いまでは鬼の形相で金棒ではなく、リモコンを……。
「おい、なにをする!」
「お兄ちゃんこそ! なにしてるの!」
「なにって、さらに投資をして、金を増やそうと……」
「お兄ちゃん、完全に冷静さを失ってるよ! やっぱり味をしめてる! 味をしめまくりだよ! お兄ちゃんの味野郎!」
味野郎!?
俺は味野郎なのか?
たぶん悪口なのだろうが、全然悔しくはない。
しかし、夏葉にとって俺が味野郎になってしまったことは相当に腹立たしいことらしい。
「バカバカ、もう60万円だよ! なに考えてるの! 本当に破産しちゃうよ!」
「落ち着け、いいか、イーサリアムはビットコインに対抗できる存在なんだ。スマートコントラクトといってな……」
「そんなの、知らないよ! 60万円をなんだと思ってるの! 大変なことになっても知らないからねっ! ちょっと設けたからってお兄ちゃんは天狗になってるよ、仮想天狗だよ!」
夏葉はぶんぶんとテレビのリモコンを振り回しながら、いまにも泣き出さんばかり。
怒り狂う夏葉をなだめるために、仮想天狗こと俺はいずれは温泉に連れていくことを約束せざるを得ないのであった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
乙女ゲームの正しい進め方
みおな
恋愛
乙女ゲームの世界に転生しました。
目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。
私はこの乙女ゲームが大好きでした。
心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。
だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。
彼らには幸せになってもらいたいですから。
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる