箒で空を飛ぶように、サイコな付喪神はざまあをする。

白田ひらり

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「出来損ない」

「無能」

「リュイソ家の恥さらし」

それが9歳の私、レティシア・フィン・リュイソの評価である。

仕方ないと思うよ。私の守護精霊は最凶にやらかすから。

例えば、私に出さられる食事は毎回必ず私より先に一口食べて、気に入らなけば窓の外に捨ててしまう。大切に私が育てた花が咲けば土から引き抜き、その花を持ったまま屋敷の中を徘徊し、部屋中を泥まみれにしたり、しかもゴミを漁るのは当たり前。この前なんか、子供の頭部ぐらいある蜂の魔物キラービーに戦いを挑み全身を刺され、帰宅した所を目撃した使用人達を恐怖のドン底に突き落とし。数えればキリがないほど、私の守護精霊はバカな事を繰り返す。

因みに守護精霊とは、人間が産まれた時に神様から、精霊石と呼ばれる精霊の卵を授かる。精霊石は持ち主が6歳の誕生日を迎えると、卵が羽化するように守護精霊が生まれるのだ。守護精霊の力は戦闘に有利な物、生産業や商いに必須の物とか様々あって、皆んな生活に役立てている。 

貴族は戦闘に有利な守護精霊を持つことが多く、その中でも火、水、土、風、光、闇の力を持つ守護精霊は強力だともてはやされている。

そしてリュイソ家の守護精霊は、世界に跋扈(バッコ)する危険な魔物を倒すための強力な水の力を秘めているのだ。つまり強力な守護精霊を輩出してきた、歴史ある伯爵家である。

父はリュイソ伯爵として、本来なら家柄、血筋を守り、一族の繁栄のため政略結婚をすべきだったが、身分違いの大恋愛の末、周囲の反対を押し切り母と結婚したが…。

私は精霊石を持たず、小さく醜い鬼のような姿の守護精霊と共に生まれたことで、当然、母は親戚から嫌がらせをされ、耐えきれず自死した。

その後、父は悲しみを紛らすように再婚したが、父と継母に愛はあったのか私には分からない。1年後に異母妹リアナ・フィン・リュイソが生まれた。キラキラと水色に輝く精霊石を握って。

月日が経つにつれて私の守護精霊は更に醜くなり、父は私に見向きもしなくなった。リアナと継母は、これ幸いと私を屋根裏部屋に追いやりメイドのように扱うようになったのだ。

私に優しい使用人は、継母の権限で解雇され、当然のように屋敷に残った使用人達から冷遇されるようになり、私の味方をしてくる人は誰も居なくなった。

だから、きっと、私は貴族としての責務として、愛の無い結婚か、何回も結婚してるであろう年の離れ過ぎた相手と政略結婚をするのだろう。それまでリュイソの家の使用人として過ごすのだ。

そんな風に漠然と、未来を想像しながら私は
、雲一つない青空の下でピンと張った紐に、洗ったばかりのシーツを引っ掛けて広げながらシワを伸ばしていると、爽やかな風がシーツを揺らした。

風でシーツが飛ばないように押さえて洗濯バサミでとめるため、私はエプロンのポケットから洗濯バサミを取り出そうと漁るが…。

ポケットは空っぽ。

『紫月!洗濯バサミプリーズ!』

息を吸かのような自然さで、私の守護精霊に洗濯バサミを要求したが、私の口から出た言葉はこの国の言語では無い聞いた事のない言葉。

しかも私は自分の守護精霊の名を、間違って呼んだのだ。

彼の名前はジャックだし、絶対無視されるよね。そう思いながら、名を間違えた件の守護精霊を見ると、奴は『ヒャッハー』とモヒカンの者や世紀末的な者の歓声に似た奇声を発している。

ついに狂ったか。うん。関わりたくない案件じゃ。

人型をしているが、2本の角を主張する禿げ…スキンヘッドで、背が低く私の膝ぐらいしかない。手足や首はやたらと細く、死斑の浮き出た灰色の皮膚は骨格に張り付き、お伽話に出てくる餓鬼そのまんまの奴が、『ヒャッハー』を連呼して洗濯バサミを入れた籠を振り回し、中に入っている洗濯バサミを撒き散らしている。
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