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何時も死んだ魚の目みたくに濁りきった…、例えるならロープレの毒沼地みたいな目をしてるのに、今はその目がキラッキラッとアメジストのように輝いている。うん。実に楽しそうだ。
そして私の目の前で、褒めろと催促するように空っぽの籠を掲げて奴は、ドヤ顔をした。
『御所望の洗濯バサミを、お持ちしました!』
『ありがとう…かな?』
『どうして疑問系なのですか!このとうり洗濯バサミをお持ちし……!?』
ススッと籠から目を逸らす私に奴は不満を隠す事なく籠を覗き込み、顔が赤紫色に変わった。
『こ、こ、この籠を見てください!底に穴が開いていたので、洗濯バサミが落ちたのです』
ボキャッと言う音と共に籠の底に左腕を貫通させ、私に穴を開けた籠を見せ付けて自分は悪くないとアピールするバカ。
どうしよう。私の守護精霊がバカすぎる案件が発生したでござる。え?粛正して正すべきか!?
『光速で洗濯バサミをお持ちいたします!』
不穏な空気を感じ取ったのか、走り去るバカ。その背中に、『謝れや!』と怒りを飛ばして、ふと、ヒラヒラと風になびく真っ白な洗濯物を見て思う。
業務用の洗濯乾燥機があれば、こんな洗濯なんて楽に終わるのに。と。
んんん?洗濯乾燥機とはなんぞや?この屋敷では聞いた事がないぞ?使用人の誰からも。
そう言えばどうして、私はこの国の言語ではない言葉を理解して話す事ができたのだろう?何だろ?私は何かを忘れてる?
小さな疑問は、大きな違和感に変わる。
『葉月様!今こそ洗濯バサミをお持ちします!』
棒のようにつなげた洗濯バサミを、無意味に振り回すバカに『葉月』と呼ばれ、懐かしさが込み上げて唐突にダムが決壊するように、私の頭の中にダイレクトにこの国では…、いや、この世界じゃ無い何処かの世界の情報が流れ込む。
高層ビルの建ち並ぶ街並み。
すし詰め状態の満員電車。
便利な家電や、カラフルで可愛いお菓子や、ハンドメイドした雑貨と聖書というなの薄い本。神本とも言う。
危険な魔物や、守護精霊、魔法が存在しない代わりに科学が発達した世界。戦争もあるが私が暮らしていた国は平和だった。
そっか。そっか。これは、私の前世の記憶だ。
『紫月!洗濯バサミプリーズ!』から始まった違和感の正体が分かりスッキリすると同時に、前世のお父さん、お母さん。友人にもう会えないのかと実感すると悲しくなる。
『葉月様!?何処か痛いのですか?まさか私めの気付かぬ場所で、糞婆に何かされたのですか?』
つなげた洗濯バサミを放り出し、私の足元に駆け寄るバカ。…バカだけど、この世界で私のことを唯一心配する存在。
前世を思い出したの、てへ。なぁ~んて言ったら、バカ改め私の守護精霊は何て言うかな?今までの行動が奇想天外すぎて予想できん。
何も言わない私に焦れたのか、『糞共をまとめて、あの世に破棄しましょうかね?』と口角を上げる私の守護精霊は、悪鬼か悪魔のように、何かが黒い。恐ろしい。…え?まさか私の守護精霊は守護悪魔とかなのか?信頼して後ろを向いたら、背中から魂を引っこ抜かれる案件なのか!?
『大丈夫ですか、葉月様?』
澄んだアメジストのような目が、私を見つめる。んんん!?この目、前世で見た事あるかも!!
このアメジストのような目は、野良犬にカミカミされてたところを、救出した人形にそっくりなのだ。
持ち主を探したが持ち主は名乗り出ず、救出した手前捨てるのはちょっとできなくて、仕方ないから持ち帰ったのだ。取れかけた手足を縫い直し、目の色と私の名前の一文字から紫月と名前をつけて、…不審者避けに日あたりが良い玄関に置いていた。
顔が日に焼けして色褪せたが、無視したんだよね…。大切にした記憶がない。え?恨まれてる?怨まれてるよね!?油断したら、包丁で背中刺されるヤツですか?まさかの案件事案発生!?
いや、でも人形の紫月と目の前の守護精霊が同一人物と決まったわけじゃないし。
殺人鬼が乗り移った人形のホラー映画を思い出し、生まれたての子鹿のようにプルプル震えながら、私は確認するため勇気を振り絞る。
『あの…。もしかして、キミって昔、人形だった?』
何言ってんだ私!言語力がなさすぎじゃあありませんか?これじゃあ伝わる物も伝わらないぞ。
『はい。葉月様にお助けいただき、名前までつけて頂いた紫月です!私めは、葉月様に思い出していただける事を、ずっと待っていたのです!今日はなんと素晴らしい日なのでしょうか!!』
案件でござる!案件発生でござりまする!!背後の攻撃に備えるのじゃぁぁぁぁ!!!
頭の中でグワングワンと警報が鳴り響き、私はよろめいた。
『ああぁぁぁぁ、葉月様。前世を思い出されて、お加減がよろしく無いのですね。私めが不甲斐ないばかりに、気づかず申し訳ありません。すぐにお部屋でお休みください!』
『え?でも仕事が終わってないから、休めないわ』
情報、記憶を整理する時間は欲しいが、休めば継母とリアナの嫌がらせが酷くなるから、紫月のありがたいもうしでに素直に頷けない。
『仕事など、私めにお任せください!ささ、葉月様はお休みください!』
そして私の目の前で、褒めろと催促するように空っぽの籠を掲げて奴は、ドヤ顔をした。
『御所望の洗濯バサミを、お持ちしました!』
『ありがとう…かな?』
『どうして疑問系なのですか!このとうり洗濯バサミをお持ちし……!?』
ススッと籠から目を逸らす私に奴は不満を隠す事なく籠を覗き込み、顔が赤紫色に変わった。
『こ、こ、この籠を見てください!底に穴が開いていたので、洗濯バサミが落ちたのです』
ボキャッと言う音と共に籠の底に左腕を貫通させ、私に穴を開けた籠を見せ付けて自分は悪くないとアピールするバカ。
どうしよう。私の守護精霊がバカすぎる案件が発生したでござる。え?粛正して正すべきか!?
『光速で洗濯バサミをお持ちいたします!』
不穏な空気を感じ取ったのか、走り去るバカ。その背中に、『謝れや!』と怒りを飛ばして、ふと、ヒラヒラと風になびく真っ白な洗濯物を見て思う。
業務用の洗濯乾燥機があれば、こんな洗濯なんて楽に終わるのに。と。
んんん?洗濯乾燥機とはなんぞや?この屋敷では聞いた事がないぞ?使用人の誰からも。
そう言えばどうして、私はこの国の言語ではない言葉を理解して話す事ができたのだろう?何だろ?私は何かを忘れてる?
小さな疑問は、大きな違和感に変わる。
『葉月様!今こそ洗濯バサミをお持ちします!』
棒のようにつなげた洗濯バサミを、無意味に振り回すバカに『葉月』と呼ばれ、懐かしさが込み上げて唐突にダムが決壊するように、私の頭の中にダイレクトにこの国では…、いや、この世界じゃ無い何処かの世界の情報が流れ込む。
高層ビルの建ち並ぶ街並み。
すし詰め状態の満員電車。
便利な家電や、カラフルで可愛いお菓子や、ハンドメイドした雑貨と聖書というなの薄い本。神本とも言う。
危険な魔物や、守護精霊、魔法が存在しない代わりに科学が発達した世界。戦争もあるが私が暮らしていた国は平和だった。
そっか。そっか。これは、私の前世の記憶だ。
『紫月!洗濯バサミプリーズ!』から始まった違和感の正体が分かりスッキリすると同時に、前世のお父さん、お母さん。友人にもう会えないのかと実感すると悲しくなる。
『葉月様!?何処か痛いのですか?まさか私めの気付かぬ場所で、糞婆に何かされたのですか?』
つなげた洗濯バサミを放り出し、私の足元に駆け寄るバカ。…バカだけど、この世界で私のことを唯一心配する存在。
前世を思い出したの、てへ。なぁ~んて言ったら、バカ改め私の守護精霊は何て言うかな?今までの行動が奇想天外すぎて予想できん。
何も言わない私に焦れたのか、『糞共をまとめて、あの世に破棄しましょうかね?』と口角を上げる私の守護精霊は、悪鬼か悪魔のように、何かが黒い。恐ろしい。…え?まさか私の守護精霊は守護悪魔とかなのか?信頼して後ろを向いたら、背中から魂を引っこ抜かれる案件なのか!?
『大丈夫ですか、葉月様?』
澄んだアメジストのような目が、私を見つめる。んんん!?この目、前世で見た事あるかも!!
このアメジストのような目は、野良犬にカミカミされてたところを、救出した人形にそっくりなのだ。
持ち主を探したが持ち主は名乗り出ず、救出した手前捨てるのはちょっとできなくて、仕方ないから持ち帰ったのだ。取れかけた手足を縫い直し、目の色と私の名前の一文字から紫月と名前をつけて、…不審者避けに日あたりが良い玄関に置いていた。
顔が日に焼けして色褪せたが、無視したんだよね…。大切にした記憶がない。え?恨まれてる?怨まれてるよね!?油断したら、包丁で背中刺されるヤツですか?まさかの案件事案発生!?
いや、でも人形の紫月と目の前の守護精霊が同一人物と決まったわけじゃないし。
殺人鬼が乗り移った人形のホラー映画を思い出し、生まれたての子鹿のようにプルプル震えながら、私は確認するため勇気を振り絞る。
『あの…。もしかして、キミって昔、人形だった?』
何言ってんだ私!言語力がなさすぎじゃあありませんか?これじゃあ伝わる物も伝わらないぞ。
『はい。葉月様にお助けいただき、名前までつけて頂いた紫月です!私めは、葉月様に思い出していただける事を、ずっと待っていたのです!今日はなんと素晴らしい日なのでしょうか!!』
案件でござる!案件発生でござりまする!!背後の攻撃に備えるのじゃぁぁぁぁ!!!
頭の中でグワングワンと警報が鳴り響き、私はよろめいた。
『ああぁぁぁぁ、葉月様。前世を思い出されて、お加減がよろしく無いのですね。私めが不甲斐ないばかりに、気づかず申し訳ありません。すぐにお部屋でお休みください!』
『え?でも仕事が終わってないから、休めないわ』
情報、記憶を整理する時間は欲しいが、休めば継母とリアナの嫌がらせが酷くなるから、紫月のありがたいもうしでに素直に頷けない。
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