12 / 13
第十二話
しおりを挟む
私は山奥の村で育った。
子供の頃は森が遊び場だったし、獣の通り道なんかも分かる。
私は、地面に四つんばいになって、鼻をスンスンさせた。
「こっちだべ!」
「おまっ、すげーな」
「よっしゃ、芋洗、先導頼むで!」
みんな、興奮気味に走り出そうとした時だった。
山猫さんの冷静な声が響いた。
「みなさん、落ち着いて。 相手は猟銃を持っています。 追いかける前に、骨塚さんは警察に一報、入れましょう」
「……せ、せやな」
流石、人生の先輩だ。
私らだけでどうにか出来る相手とは限らない。
めくっちも心配だけど、このまま全員あの世行き、なんてシャレにならない。
「芋洗さんと私、玲央さんで森林さんの後を追いましょう。 骨塚さんは、ここでトーマスさんを見ていて下さい」
「ワイは留守番かいな」
「私たちで、警察の到着まで時間を稼ぎます。 警察が来たら、誘導頼みますよ」
私らは、骨塚さんを残し、森の深みへと足を踏み入れた。
めくっちの匂いが近い。
私は、後ろに続く山猫さんを置き去りにして、一気に駆けだした。
開けた道に出た。
そこには、めぐっちと、猟銃を担いだ男が一人。
「めぐっち!」
私が叫ぶと、めぐっちがこちらを向いて、驚いた顔をした。
すぐに、男が銃口をこちらに向けてきた。
「何だ、おめぇっ!」
心臓が跳ねる。
男が冷静さを欠いた殺人鬼なら、呆気なく殺されてしまうだろう。
だけど、まだ生きている。
話し合いの余地は、あるだろうか。
「わ、私は、怪しいもんじゃねぇべ。 ただ、友達を迎えに来ただけだ」
「……おめぇ、そのしゃべり方。 青森か?」
……!
この男の訛り、同じ青森出身か?
「青森の、芋洗村出身だべ。 おめぇも、青森だべか?」
「まさか同郷とここで会えるとはなぁ。 東京さ出て来て、世知辛れぇことばかりでよ。 俺ぁ、やっぱり山で暮らすのがいいわ。 だけども、こいつら……」
「きゃっ!」
再び、めぐっちに銃口を向ける。
「東京モンは、冷てぇ。 上京してきた俺を馬鹿にして、ハブりやがった。 俺ぁ、もう人間が嫌いになっちまったよ」
それで、ここに隠れるようにして、暮らしていたのか。
世捨て人。
そういう人かも知れない。
「分かるよ。 でも、怒りの矛先、違うと思うよ」
「……おめぇ、東京モンを庇うのか?」
その時、後ろから何かが飛び出してきた。
玲央さんだ。
「ウオオオオーーーッ」
「な、なんだっ」
玲央さんは姿勢を低くして、猟銃を構えた男に飛びかかった。
何て無茶な人だ……
命がいくつあっても、足りないよ。
目の前で、玲央さんと男が揉み合う。
玲央さんが、猟銃を取り上げた。
「コノヤロッ」
猟銃の持ち手の部分で、男を一発、殴りつける。
男が怯んで尻餅を着くと、上乗りになり、ここぞとばかりに何度も殴りつけた。
「クソッ、死ねっ、このっ、このっ……」
玲央さんが立ち上がり、こちらを振り向いた。
「もう、大丈夫……」
そう言って、崩れ落ちる。
「えっ」
私は、固まった。
男が、短刀を玲央さんの背中から引き抜いた。
「はあっ、はあっ……」
男は、そのまま向こう側へと、走り出した。
つんざくような悲鳴が、森に響いた。
子供の頃は森が遊び場だったし、獣の通り道なんかも分かる。
私は、地面に四つんばいになって、鼻をスンスンさせた。
「こっちだべ!」
「おまっ、すげーな」
「よっしゃ、芋洗、先導頼むで!」
みんな、興奮気味に走り出そうとした時だった。
山猫さんの冷静な声が響いた。
「みなさん、落ち着いて。 相手は猟銃を持っています。 追いかける前に、骨塚さんは警察に一報、入れましょう」
「……せ、せやな」
流石、人生の先輩だ。
私らだけでどうにか出来る相手とは限らない。
めくっちも心配だけど、このまま全員あの世行き、なんてシャレにならない。
「芋洗さんと私、玲央さんで森林さんの後を追いましょう。 骨塚さんは、ここでトーマスさんを見ていて下さい」
「ワイは留守番かいな」
「私たちで、警察の到着まで時間を稼ぎます。 警察が来たら、誘導頼みますよ」
私らは、骨塚さんを残し、森の深みへと足を踏み入れた。
めくっちの匂いが近い。
私は、後ろに続く山猫さんを置き去りにして、一気に駆けだした。
開けた道に出た。
そこには、めぐっちと、猟銃を担いだ男が一人。
「めぐっち!」
私が叫ぶと、めぐっちがこちらを向いて、驚いた顔をした。
すぐに、男が銃口をこちらに向けてきた。
「何だ、おめぇっ!」
心臓が跳ねる。
男が冷静さを欠いた殺人鬼なら、呆気なく殺されてしまうだろう。
だけど、まだ生きている。
話し合いの余地は、あるだろうか。
「わ、私は、怪しいもんじゃねぇべ。 ただ、友達を迎えに来ただけだ」
「……おめぇ、そのしゃべり方。 青森か?」
……!
この男の訛り、同じ青森出身か?
「青森の、芋洗村出身だべ。 おめぇも、青森だべか?」
「まさか同郷とここで会えるとはなぁ。 東京さ出て来て、世知辛れぇことばかりでよ。 俺ぁ、やっぱり山で暮らすのがいいわ。 だけども、こいつら……」
「きゃっ!」
再び、めぐっちに銃口を向ける。
「東京モンは、冷てぇ。 上京してきた俺を馬鹿にして、ハブりやがった。 俺ぁ、もう人間が嫌いになっちまったよ」
それで、ここに隠れるようにして、暮らしていたのか。
世捨て人。
そういう人かも知れない。
「分かるよ。 でも、怒りの矛先、違うと思うよ」
「……おめぇ、東京モンを庇うのか?」
その時、後ろから何かが飛び出してきた。
玲央さんだ。
「ウオオオオーーーッ」
「な、なんだっ」
玲央さんは姿勢を低くして、猟銃を構えた男に飛びかかった。
何て無茶な人だ……
命がいくつあっても、足りないよ。
目の前で、玲央さんと男が揉み合う。
玲央さんが、猟銃を取り上げた。
「コノヤロッ」
猟銃の持ち手の部分で、男を一発、殴りつける。
男が怯んで尻餅を着くと、上乗りになり、ここぞとばかりに何度も殴りつけた。
「クソッ、死ねっ、このっ、このっ……」
玲央さんが立ち上がり、こちらを振り向いた。
「もう、大丈夫……」
そう言って、崩れ落ちる。
「えっ」
私は、固まった。
男が、短刀を玲央さんの背中から引き抜いた。
「はあっ、はあっ……」
男は、そのまま向こう側へと、走り出した。
つんざくような悲鳴が、森に響いた。
0
あなたにおすすめの小説
勇者の様子がおかしい
しばたろう
ファンタジー
勇者は、少しおかしい。
そう思ったのは、王宮で出会ったその日からだった。
神に選ばれ、魔王討伐の旅に出た勇者マルク。
線の細い優男で、実力は確かだが、人と距離を取り、馴れ合いを嫌う奇妙な男。
だが、ある夜。
仲間のひとりは、決定的な違和感に気づいてしまう。
――勇者は、男ではなかった。
女であることを隠し、勇者として剣を振るうマルク。
そして、その秘密を知りながら「知らないふり」を選んだ仲間。
正体を隠す者と、真実を抱え込む者。
交わらぬはずの想いを抱えたまま、旅は続いていく。
これは、
「勇者であること」と
「自分であること」のあいだで揺れる物語。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
別れし夫婦の御定書(おさだめがき)
佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★
嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。
離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。
月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。
おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。
されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて——
※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
恋愛
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
不機嫌な侯爵様に、その献身は届かない
翠月 瑠々奈
恋愛
サルコベリア侯爵夫人は、夫の言動に違和感を覚え始める。
始めは夜会での振る舞いからだった。
それがさらに明らかになっていく。
機嫌が悪ければ、それを周りに隠さず察して動いてもらおうとし、愚痴を言ったら同調してもらおうとするのは、まるで子どものよう。
おまけに自分より格下だと思えば強気に出る。
そんな夫から、とある仕事を押し付けられたところ──?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる