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第2話
しおりを挟む「うっ、」
前も見ずに走ったから、誰かとぶつかった。
「ごめんね…あ、心桜ちゃん」
「朝陽先輩」
柊先輩の友達で、仲良くしてもらってる。
それはそれは優しくて頼りになる先輩だ。
「目赤いけど大丈夫?」
「大丈夫…です」
大丈夫なんかじゃない。
朝からあんなとこ見て、嫉妬しないわけない。
「何かあった?柊と喧嘩した…とか。まぁ、柊に限ってそんな事はないと思うけど」
「何も無いです、」
柊先輩の友達だし、私が言ったら伝わっちゃうかもしれない。…いや、違う。
朝陽先輩は告げ口するような人じゃないって分かってる
分かっているから…隠し事をさせてしまうのが申し訳ないんだ。
「嘘ついてるってバレバレだよ。俺には言いにくいかな?」
「いや、そうじゃなくて…」
言いにくいんじゃなくて、
「言いたくなかったら、無理に言わなくていいけど、いつでも相談してね。柊の友達だからこそ、言いにくい事もあるだろうし」
私の気持ちに気づいてくれてる…?
「…あの、柊先輩には内緒にしてくれますか?」
「もちろん」
「実は…」
さっきあったことを全て話した。
「あー、きっと山口さんの事だろうな」
「あの人、山口先輩って言うのか、」
「心桜ちゃんにこれを言っていいのか…」
「なんですか?」
「でも、心桜ちゃんは彼女なんだし、知る権利あるよね。その…山口さん、柊にベッタリ引っ付いてて、周りの人も好意を抱いてるって事、分かってるんだよ。あ、柊以外はね。あいつは…モテるくせに鈍感だから」
「やっぱり…」
「柊は心桜ちゃんの事すごく大事にしてるからさ、向こうに好意があったとしても間違いを犯すような奴じゃないから安心して…って言っても不安だよね」
「…」
私も、分かってる。つもり、なんだけど、いつか取られるんじゃないかって、怖い。
「ちゃんと心桜ちゃんの気持ち伝えな?一人が我慢しないといけないような関係はすぐ壊れちゃうからね」
「先輩…」
私の気持ち…
「心桜、ここにいたんだ」
「柊先輩、どうして、」
さっきの先輩は?一緒じゃないの?
「追いかけてきたんだよ」
「追いかけてこなくても、」
「あのまま放っておけないよ」
「じゃあ俺は行くよ。心桜ちゃん、俺が言ったこと忘れないでね」
「はい。ありがとうございます」
優しく頭を撫でて去っていった。
こんな事されたらほかの女子はすぐ落ちちゃうんだろうな…
それを無自覚でしている先輩は強すぎる。
「心桜、さっきはごめんね、」
「別に、大丈夫だよ、」
「普段はいい子なのに、今日はどうしたんだろう」
先輩は絶対に人の悪口を言わない。
どれだけその人が悪くてもそういうこともある。って、なんと言うか…
そこがいい所なんだけど偶に嫌になる。
「そうなんだ」
普段いい子なのはきっと、先輩の前だけだよ。
「心桜『チャイム鳴りそうだから、もう行くね』あ、うん」
あぁ、もう。そんなつもりじゃなかったのに…
正直に自分の気持ちを伝えようとしたのに、何故か冷たい態度を取ってしまった。
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