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第144話
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「その日、ちゃんと隣にいてね。手、離さないでよ?」
言葉にするまで、少しだけ勇気がいった。
でも、伝えた瞬間、胸の奥がじんわりと熱くなった。
それは、ただのお願いじゃなくて、
私の不安と願いが混ざった、心の奥からの声だった。
人混みで迷子になるのが怖いとか、そんな単純な話じゃなくて、もっと怖いのは…。
私が怖いのは、
先輩が“自分の意思で”手を離すこと。
わたしがどんなに手を握っていても、先輩がその気になれば、簡単に離れてしまう。
その可能性が、ずっと胸の奥に張りついてる。
想像はしたくないけど。
それが現実になるかもしれないという怖さが、心の隅にある。
「もちろんだよ。約束」
そう言って小指を差し出した。
その仕草が、なんだか子どもみたいで、でも、すごく誠実で、あたたかかった。
言葉だけじゃなくて、ちゃんと形にしてくれるその優しさが、どうしようもなく嬉しかった。
わたしは、少しだけためらってから、自分の小指をそっと重ねた。
その瞬間、指先がじんと熱くなった。
「…約束」
声は小さかったけれど、ちゃんと先輩の目を見て言った。
先輩の瞳は、私の言葉を静かに受け止めてくれていた。
そのまなざしに、少しだけ勇気をもらえた気がした。
「ごめんね、引き止めて」
その言葉に、私は少し驚いた。
玄関先で長く引き止めてしまったことに、罪悪感を感じているらしい。
でも、私はむしろ、
先輩がここに来てくれたことが嬉しかった。
私の話に耳を傾けてくれて、ちゃんと向き合ってくれた。
それだけで、心が救われた気がした。
「ううん。ちゃんと話せて嬉しかったよ」
そう答えながら、私は先輩の目を見た。
その瞳の奥に、私の言葉が届いてほしいと願いながら。
「そっか。じゃあ…名残惜しいけど、そろそろ行こうかな」
その言葉が落ちた瞬間、胸の奥がきゅっと締めつけられた。
その言葉は、この時間の終わりを告げていた。
私は、まだこの空気の中にいたかった。
でも、それを言う勇気はなかった。
「あ、うん。そうだよね」
そう返したけれど、声が少しだけ上ずっていた。
心の奥では、まだここにいてほしいって思っていた。
でも…
まだ行ってほしくない。なんて言えない。
先輩だって、きっと疲れてる。
私と話すために待っててくれて、
抱きしめてくれて、
約束までしてくれた。
それだけで、十分。
だから、これ以上望んじゃいけない。
もう少しいて欲しいなんて言ったら、わたしのわがままになってしまう。
「心桜、?」
その声に、私ははっとして顔を上げた。
先輩の瞳が、まっすぐに私を見ていた。
優しくて、不思議そうで、
まるで、私の心の揺れを感じ取ったような目だった。
言葉にするまで、少しだけ勇気がいった。
でも、伝えた瞬間、胸の奥がじんわりと熱くなった。
それは、ただのお願いじゃなくて、
私の不安と願いが混ざった、心の奥からの声だった。
人混みで迷子になるのが怖いとか、そんな単純な話じゃなくて、もっと怖いのは…。
私が怖いのは、
先輩が“自分の意思で”手を離すこと。
わたしがどんなに手を握っていても、先輩がその気になれば、簡単に離れてしまう。
その可能性が、ずっと胸の奥に張りついてる。
想像はしたくないけど。
それが現実になるかもしれないという怖さが、心の隅にある。
「もちろんだよ。約束」
そう言って小指を差し出した。
その仕草が、なんだか子どもみたいで、でも、すごく誠実で、あたたかかった。
言葉だけじゃなくて、ちゃんと形にしてくれるその優しさが、どうしようもなく嬉しかった。
わたしは、少しだけためらってから、自分の小指をそっと重ねた。
その瞬間、指先がじんと熱くなった。
「…約束」
声は小さかったけれど、ちゃんと先輩の目を見て言った。
先輩の瞳は、私の言葉を静かに受け止めてくれていた。
そのまなざしに、少しだけ勇気をもらえた気がした。
「ごめんね、引き止めて」
その言葉に、私は少し驚いた。
玄関先で長く引き止めてしまったことに、罪悪感を感じているらしい。
でも、私はむしろ、
先輩がここに来てくれたことが嬉しかった。
私の話に耳を傾けてくれて、ちゃんと向き合ってくれた。
それだけで、心が救われた気がした。
「ううん。ちゃんと話せて嬉しかったよ」
そう答えながら、私は先輩の目を見た。
その瞳の奥に、私の言葉が届いてほしいと願いながら。
「そっか。じゃあ…名残惜しいけど、そろそろ行こうかな」
その言葉が落ちた瞬間、胸の奥がきゅっと締めつけられた。
その言葉は、この時間の終わりを告げていた。
私は、まだこの空気の中にいたかった。
でも、それを言う勇気はなかった。
「あ、うん。そうだよね」
そう返したけれど、声が少しだけ上ずっていた。
心の奥では、まだここにいてほしいって思っていた。
でも…
まだ行ってほしくない。なんて言えない。
先輩だって、きっと疲れてる。
私と話すために待っててくれて、
抱きしめてくれて、
約束までしてくれた。
それだけで、十分。
だから、これ以上望んじゃいけない。
もう少しいて欲しいなんて言ったら、わたしのわがままになってしまう。
「心桜、?」
その声に、私ははっとして顔を上げた。
先輩の瞳が、まっすぐに私を見ていた。
優しくて、不思議そうで、
まるで、私の心の揺れを感じ取ったような目だった。
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